第13話 「うるさいんですけど……」
13話 「うるさいんですけど……」
次の日、沙月が起きたのはやはり昼近かった。昨夜は薄っすらと外が明るくなるまで起きていたので睡眠時間は5時間くらいだ。すでにグラビスのベッドは空。一方、シエラはまだ寝ている。
(「軽くなら昼食も食べれそうかな……」)
沙月はそう思いながら一階に向かう。手にはグラビスが貸してくれた"はじめての魔法"という本を持っている。早速、勉強しなきゃ……、を実行しているようだ。
居間にはグラビスの姿はなかった。少し早いが一人で食堂に向かって昼食を済ましてから、居間のソファーに座って本を読み始める。
はじめから読む……、ということではなく、興味のある所を読むようだ。パラパラとページを捲って、目当ての場所に辿り着いて、そこを読み始める。静かな時間。まさに休日、、という感じだ。
しばらくしてシエラが居間にやってくる。
「おはよう。沙月」
「おはよう。シエラ。ご飯食べれそう?」
「ううん。いらないわ。さっきエリスさんに会って"お昼、いらない"って言ったら、笑ってたわ……」
「そう。」
沙月は満足そうに笑うエリスを想像して少し笑う。
沙月は昨夜のことを思い出す。シエラは昨夜も次から次へとお菓子をつまんでいた。まんまとエリスの思うツボにハマっている訳だ。確かに……、あのお菓子は美味しかったわ……、クク……。そんな感じだ。
しばらくして、グラビスも合流する。お昼を済まして、ここで仕事の続き……、ということのようだ。
シエラは沙月の隣りに座って沙月の読んでいる本を覗き込んでいる。本にはたくさんのイラストが載せられていて、
「この絵は下手だわ。……こんな感じじゃないのよ。……もっとこう……」
こんな風にシエラが口を挟むので、沙月は本を読んでいられなくなる。
(「シエラ………………、うるさいんですけど…………。」)
そんな感じだ。
グラビスは書類や手紙に目を通しながらも、そんな沙月とシエラを見てニコニコしている。
シエラが時々、「うーん。これも違うのよ……、」などと言う以外は、いかにも休日……、という穏やかな時間が流れている。
その静寂を破ったのはファイだった。
「沙月様、通信が入っています。」
当然、沙月は少しビックリだ。でも、すぐに体は動く。立ち上がって、グラビスとアイコンタクトを交わす。前回と同じ感じね……、という意味のようだ。パーソナルステータス画面を出しながら、グラビス側に移動する。沙月を真ん中にしてグラビスとシエラが挟む配置だ。
「ファイ、前回みたいにしてくれる?」
ファイがコクリとうなずいて、画面を沙月の正面に移動させる。
画面にはアイカとヨウコの2人が映し出される。
「こんにちわ。沙月さん」
ヨウコの声だ。
「こんにちわ。ヨウコさん、アイカちゃん。」
沙月が短く答える。
「こんにちわ。」
アイカの声だ。少し不機嫌?と沙月は思う。
ヨウコが続ける。
「ごめんなさいね、いつも突然で……、3人揃ってるのね……、いいタイミングだったかしら?……。」
「あ、はい。大丈夫です。」
「そう。ちょっと、進捗を報告しておこうと思ってね……。あの後、この子の両親と私とで話し合ったの。……それでね、結論は"私とアイカがチス国に行く。"ということになったの……。」
「あ、はい。」
一瞬、早っ!……、と思ったものの、予想通り、想定内……、でもあったので、沙月は冷静だ。グラビス、シエラを順に見る。2人もニコリと笑う。沙月と同じ気持ちのようだ。
(「アイカちゃん、こっちに来れるんだ……。それにしても……、元気がない?」)
やはり、画面に映ったアイカはご機嫌斜め……、な表情だ。
ヨウコが続ける。
「ただし、条件があってね……。まず、アイカはちゃんと学校に通うこと……。アイカはまだ13歳ですからね……。ちゃんと学校に行ってもらいます……。あと、私が連れて帰る、という判断をしたらそれに従うこと……。この2つね。」
「学校なんて行ってもしょうがないのに……」
アイカの声が割って入る。不満そうにしていた原因はこれだ。沙月も笑顔になる。
ヨウコはアイカを無視して続ける。
「それでね……、私は、特に何もしてないとは言え、宮廷に勤めている身ですからね……。いろいろ、手続きとかご挨拶とか色々あってね……、それをはじめたところね。」
「よく分かりました。連絡ありがとうございます。」
「ええ。今日のところはこれだけね……。また、連絡するわ……。」
すると、突然、アイカが割り込んでくる。
「あっ!沙月さん!、嵐が近づいてるので、明日は家にいてくださいね!出来れば明後日も!!」
アイカが最後にそう言って、通信が切れる。
「沙月様、通信が切れました。」
ファイがそう言って、パーソナルステータス画面も消える。
「嵐?」
「嵐?」
「嵐?」
沙月はグラビス、シエラを順に確認するが、二人とも分からないわ……、という顔だ。それから窓を見る。薄っすらと薄い雲も見えるがいい天気だ。
「ちょっと、確認してくるわ……。」
そう言ってシエラが立ち上がって居間から出ていく。
(「確認?……、何を?」) と沙月は思う。
沙月がグラビスを見る。グラビスも分からない……、という顔だったが、"あっ"と言う。理解したようだ。
グラビスが無言のまま、"クンクン"、"クンクン"という動作をする。
沙月も理解する。無言のまま、大きく首を2,3度、縦に振る。なぜか、二人とも無言だ。
(「……ということは、シエラ、庭にでも行ったのかな?……。」) と沙月は思う。
2人の沈黙を破ったのは執事のセバスチャンだった。グラビスに用がある、とのことだ。シエラが出て行ったので、割り込んでも大丈夫……、と判断したようだ。そして、グラビスはセバスチャンと一緒に居間を出て行ってしまう。
(「セバスチャンさん……、久しぶりに見たような……、忙しそうね……、」)
瞬間的にそう思うが、今はそれどころではない。先程の通信、いくつか気になることがあった。そして、普通ならグラビスとシエラと話しをする……、という流れだが、気がつくと部屋に一人だけになっている。
沙月はまず、思考を嵐に戻したようだ。
「嵐か……、あっ、ファイ、分かる?」
ファイなら分かるかも……、と思いついて、聞いてみる。
「すみません。分からないですね。近ければ分かると思うんですが。」
「そう。……そう言えば、天気予報ってあるの?……、まあ、無いわよね?……。」
「天気予報ですか……、言葉としては分かりますが、この世界に"あるか"と言われたら"ない"ですね。」
「そう。」
(「天気予報をするには人工衛星を打ち上げないとダメなのよね……、確かに……、人工衛星なんてあるわけ無い……、だから"天気予報"という言葉さえないわよね……。」)
沙月はそんなことを考えて、とりあえず納得したようだ。そして、これ以上考えても意味ない……、と思って、別のことを考えることにする。
やはり、一番のニュースはアイカとヨウコがチス国に来る……、ということだ。そして、真っ先に思ったことは、
(「大人ってすごい……。」)
ということだ。行動力。今回の場合はヨウコの行動力だ。"チス国に行く"という話はほんの数日前に出てきたに過ぎない。そして、ほんの数日で、(「まあ……、何とかなるでしょ……、」)とか(「チス国で暮らす……、楽しそうね……、」)などという結論に至ったわけだ。沙月にはヨウコがどう考えたのかは分からなかったが、やはり、"すごい……。"と思わずにはいられなかった。そして、続けてアイカのことを考えてつぶやく。
「学校か……」
チス国で学校はまだ見ていない。(「確か、アルクくんが通ってるって言ってたっけ……、学校に行きながら、トレジャーハント……、休みの日だけになるのかな……。」) そんなことを考えているとシエラが戻ってきた。
「ちょっと、分からなかったわ……、多分、まだ遠いのね……、後でまたやってみるわ。」
「そう……、ファイも分からないって。」
どうもグラビスの予想は当たりらしい。沙月は感心している。
(「シエラ……、そんなことも分かるんだ……、すごいな……。」)
沙月はまた、窓を見つめる。やっぱり、いい天気だ。
(「それにしても……、アイカちゃん……、何でそんなこと分かるんだろ……。」)
---
地獄みたいなところ。悪魔見習い学園だ。
教壇に立つ長身で痩せていて骨でゴツゴツした女性が話しはじめる。
「最近ね、私の出番が増えてきました。評判もいいそうですよ。インターネットって言うんですか、私を主人公にすべきだとかってね、書き込みがあるらしいんですよ。私はね、これまで自分のことばかり考えて生きてきました。それがいよいよ実を結ぼうとしているんですね。あとね、これも言っておきます。とても重要ですからね。"長いものには巻かれろ。"これはね、とても重要な言葉なので、みなさんも私を見習ってしっかり身につけて下さいね。」
教壇に立つ女性が話を止めると、生徒が一斉にノートを取る。カリカリという音が教室に響く。
ポポは、ポカーンと口を開けている。
「それで、えっと、今日は何の話でしたかね……、ああ、そうでした、人間界に派遣される8人ですけどね、決まったそうですよ。またね、例のごとく2日間、議論したそうですよ。専門家も入れてやったとか、第三者委員会っていうのを作ったとか、なんちゃら検討委員会とか……、詳しくはよく知らないですけどね。でも事務局の人がね、"やってる感を出すのには成功した。"って言ってましたから、うまくいったんでしょうね。」
教壇に立つ女性が話を止めると、生徒が一斉にノートを取る。カリカリという音が教室に響く。
ポポは、ポカーンと口を開けている。
「専門家とか第三者委員会とかなんちゃら検討委員会とかは、私もね、見習わないとって思いましたよ。耳障りがいい言葉ですからね、今度、やってみようと思っていますよ。学校の予算会議なんかがあるので、第三者委員会を作りました。って言えば聞こえも良くなりますからね。私にとっても得になるでしょ?……、私にとって得かどうかがとても重要ですよ。」
教壇に立つ女性が話を止めると、生徒が一斉にノートを取る。カリカリという音が教室に響く。
ポポは、ポカーンと口を開けている。
「そう言えばね、5丁目の花屋さん。ネコが3匹生まれたって言ってました。でも、ほんとにタイミングが悪いんです。臨時理事会中だったら、お祝いできたのにね。今、生まれても私には何の得もありませんからね……、ほんとに、タイミング悪いわって隣の奥さんと話したんですよ。」
教壇に立つ女性が話を止めると、生徒が一斉にノートを取る。カリカリという音が教室に響く。
ポポもしょうがないのでノートを取る。
"子犬は4匹。" の隣に、"子猫は3匹。"
「ああ、そう。8人でしたね。8人は結局、あみだくじで決めたそうですよ。ああ、でも大丈夫ですよ、ちゃんと書類には専門家の意見を参考に厳正な選考の結果って書いてありました。まあね、私には関係ない話なのでどうでもいいんですけどね。事務所の人がね掲示板に貼っておくって言ってましたよ、掲示板ってどこにあるか知らないですけどね……、だって、そうでしょ?……、私には何の得もありませんからね。」
教壇に立つ女性が話を止めると、生徒が一斉にノートを取る。カリカリという音が教室に響く。
ポポは思う。
(「後で、掲示板、確認しなくちゃ。」)
---
沙月はいつの間にか部屋に移動したようだ。そして、部屋でもシエラに解説?介入?邪魔?をされながらも読書を続けていた。グラビスが夕飯の準備が出来たと呼びに来て、食堂に向かう。夕食を取りながらグラビスがニコニコしながら言う。
「いいもの注文したの……、明日には届くから、楽しみにしててね。」
シエラが食いつく。
「いいもの?……、何かしら……、ヒントは?」
「ヒント?……、うーん。大きさはこれくらいかな……、」
そう言ってグラビスが両手で球のような形を作る。ボールより一回り大きいくらいだ。
「ん?……、難しいわね……、」
沙月も一緒に考える……、でも、
(「うーん……。見事に何も思い浮かばないわ……。」)
そんな感じだ。
グラビスがそんな二人を見てニコニコしながら言う。
「多分……、絶対にわからないと思うわ……、明日のお楽しみよ。」
夕食後、いつものようにお風呂に入る。そして、いつものように湯船に浸かりながらの沙月とファイとの会話がはじまる。沙月だ。
「ねえ、ファイ。なぜ、この世界には魔法を使える人と使えない人がいるの?……才能っていうのは分かるんだけど……、もっと分かりやすくって言うか……」
「はい。以前も言いましたが、よく分かっていない。というのが答えになるんですが、エーテルに対する親和性は関係していると思われます。」
「エーテルに対する親和性?……、世界はエーテルで満ち溢れている……、ってやつね。」
「はい。私はエーテルから生み出された存在です。そして、多くの人や動物は私を認識出来ません。極めて一部の人間や魔物、魔王が私を認識します。エーテルに対する親和性が高いため、と考えられます。」
「……うっ、そうか……、私は魔物や魔王と同じグループってことね……、あれっ?動物も認識できないの?」
「はい。ポトやミーシャも私を認識できていません。」
「そ、そうなんだ……」
「はい。これを、人間の進化の一つ、と考えることも出来ますが、すみません。私にもよく分かりません。」
「ふーん。……進化か。……環境が変わったとか?」
「はい。その可能性もあると思います。」
「ふーん。……ねえ、ファイはアイカちゃんの魔法って何だと思う?」
「はい。難しいですが……、未来予知の可能性は高いですね。……でも、沙月様のことを知っている……、と言っても、どの程度知っているのか分かりませんし……、天気を予測するということも別の魔法の可能性もあります。」
「そうなんだ、、魔法で天気を予測することは難しくない?」
「はい。」
「ふーん。……でも、すごい……、っていうのは間違いなさそうね……、そーか、……エーテルに対する親和性ね……、分かったような……、分からないような……。」
「あまり深く考えることでは無いかもしれませんよ。」
「ん?そう?」
「はい。例えば、沙月様は心臓を1分間止めることが出来ますか?」
「え?……、もちろん、出来ないわ。」
「なぜ、止めることが出来ないのか……、を考えるのに似てます。」
「ん?……、えーっと?……、元々、止めることが出来ないように出来てる……、だから止められない……、魔法も同じ?……、使えるから使う……、使えないから使わない……。おー、なるほど……、さすが、ファイ先生ね。」
「……」
「なるほど……、確かにそうかもね……。」
「はい。止められない理由を考えることはムダではありません。でも、考えて理解できたら止められる……、というものでもありません。」
「ふーん。……さすがファイ先生ね。」
"私は魔物や魔王と同じグループ"。このことは沙月にとっては少しショックだったようだ。
(「でも……、そう、そうよ……、そうなんだからしょうがないのよ。……このことで、他人にとやかく言われる筋合いはないわ。他人と同じである必要性なんてどこにもないんだから……。」)
沙月はそんなことを考えながらゴシゴシ体を洗った。
お風呂から上がって、沙月はポトとミーシャと遊びながら、注意して見ていたが、確かにファイを認識していない様に思えた。特にミーシャならプカプカ浮かぶファイに襲いかかってもおかしくない。猫じゃらしには果敢に襲いかかるのに、ファイは全く無視だ。
3人が揃っていつものようにミーティングが始まる。口火を切ったのはやはりグラビスだった。
「明日は、トレジャーハントの予定だったけど、アイカちゃんの忠告通り、家にいたほうがいいかと思うんだけど、それでいい?」
「うん。」
沙月とシエラが同時にうなずく。
沙月は少し不思議な感じがした。アイカちゃんのことをそれほど知ってる訳ではない……、それなのに3人ともアイカちゃんの言葉を信じて疑わない。
グラビスが続ける。
「それで、少し、話題にのぼった学校について説明しておくわ。」
「うん。」
ここも沙月とシエラが同時にうなずく。
そして、シエラが追加する。
「グラビス先生、お願いします。」
3人が笑顔になる。グラビスが笑みを浮かべながら続ける。
「学校がいくつあるかは、ごめんなさい。私もよく知らないわ……、私の弟がガラ地区にいるって言ったでしょ、ガラ地区にも学校はあるらしいんだけど、弟は通ってないわ。家庭教師を雇って勉強してるの。こういうのはかなり一般的なの。家庭教師のところに10人くらいの生徒が通う……、とかね。」
(「塾みたいなものね……。」) と沙月は思う。
「でも、私は学校に通ってたの。シェリー王立学園が近くにあるからね。多分、ヨウコさんもシェリー王立学園のことを言ってたんだと思うわ。シェリー王妃が創立した学校で、2,3年前に創立300年って言ってたから、かなり歴史のある学校なの。」
王立という言葉に少し引っかかったが、理由は予想できる……、沙月はスルーすることにする。
グラビスが続ける。
「この辺りでは珍しい、レンガ造りの建物でね、レリーフとかの飾りもあって、なかなか豪華な建物なの。古くて小さい建物だけどね。……昔のほうが裕福だったのかもね。」
"昔のほうが裕福"かどうかは分からないものの、昔の建物が豪華……、というのは、ありがちね……、と沙月は思う。グラビスが続ける。
「それで、ここからが重要なんだけど……、授業は週に3日ほどなの……、でも、毎週レポートの課題が課せられるし、テストもあるの……、私の時は入学時、同年代の子は100人くらいいたんだけど、卒業したのは30人にも満たなかったわ。……つまり、勉強についていけない子は通わなくなるのね……、それで、さっき言ったみたいな家庭教師のところに行ったりするの……、こっちは、その子に合った授業をする……、っていうのが売りにもなるのね……、つまり……、かなり大変だと思うわ。」
「き……、厳しいのね……。」
沙月が苦笑いしながら言う。(「3割しか卒業できないなんて……、き、厳しい……。」) と思っている。
「うん。基本的には、学びたいという意欲のある人だけ来て下さい……、そうでない人は来なくていいですよ……、って感じね。」
「……」
「じゃあ、私は無理ね!」
沙月は無言だが、シエラが自信満々に言う。
私も無理かも……、と沙月は思いながら笑っている。グラビスが続ける。
「だから、多分、アイカちゃんがトレジャーハント出来るのは、週末だけじゃないかな……、少なくとも、毎回来るってことにはならないと思うわ。」
これは沙月の予想通りだった……、いや……、予想より厳しいものだった。……沙月は自分なら週末も無理かも……、と思った。そして、こうも思った。学校に通わないといけないのはむしろ私かもしれない……。沙月は思い直してつぶやくように言う。
「アイカちゃん、頭良さそうだから……、大丈夫だと思うわ。」
シエラがすぐに反応する。
「おお!……アイカ先生ね!……楽しみだわ。」
沙月が笑顔で続く。
「うん。……アイカ先生。いろいろ、教えてもらわなくっちゃね……。」
年下のアイカ先生に教えてもらっている沙月とシエラを想像して、3人が笑う。
しばらくして、グラビスが言う。
「ちなみに、私の友達が教師を目指して教師見習いをしてるの。カメイラって言うの。アイカちゃんが来たら、よろしくって言っておかなきゃね。」
明日も休み、今日も夜更しできる……、ということになって、3人のテンションが上がる。
お菓子にジュース、ゲームを部屋に持ち込む。
沙月はこの世界のゲームの多さに驚いていた。主にボードゲーム、カードゲームだが、もう10種類くらいは遊んだ。陣地取りゲーム、連想ゲーム、記憶力ゲーム、ブラフゲーム、チキンレースゲーム、スピードゲーム、、、など様々だ。ルールを覚えるのが少し大変だったが、やってるうちに理解できる。グラビス曰く、ゲームは子ども達はもちろんのこと、一家団欒でやることが多い……、とのことだった。
沙月は、一家団欒……、といえば、テレビかな……、と思った。そして、
(「この世界の子どもたちは、案外、幸せなのかもしれない……。」)
そう思った。
---
場面変わって、地獄みたいなところ。悪魔見習い学園だ。
読者の予想通りで申し訳ないが、やはり回収せざるを得ないので、回収しに行こう。
授業が終わって、ポポは掲示板を見に行く。掲示板は校舎の外にある。何もないところにポツンとだ。適当に立てたのだろう。
そして、生徒が5人ほど集まって見ている。恐る恐る、ポポが近づく。ポポは心臓がドクドクしているのを感じている。
1.切り裂きマスオ
2.ショッカーJoe
3.サーナエヘイーゾ
4.白黒十二字
5.スペースエンペット
6.ダースベイゴーマ
7.ザンスフンガー
8.ポポ
上記8名は、明日 15:00 に転移の門に集合すること。(時間厳守)
ポポは真剣な表情で掲示板を見つめている。残念がるでもなく喜ぶでもなく、呆然とでもなく。
ポポがつぶやく。
「…………がんばらなきゃ……。」
13話完




