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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
後日談その① エピローグ・エリモス王国

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これってお高いんですかね?

「はひ……はひ……つ、辛い……」


 エリモス王国の外周にある砂漠地帯を、俺はフラフラになりながら必死に足を動かし続ける。


 再びライハ師匠から師事を受けることになったが、そのメニューは至って単純、日中はひたすらランニングで、夜は実戦形式で軽く手合わせをすることになっている。


『これから先、より一層戦闘が激しくなった時に何より大切なのは体力です』


 というライハ師匠のもっともな言葉をいただき、持久力を養うため、下半身を鍛えるためにひたすら砂漠を走り続けていた。


 もう何ヶ月も砂漠が身近にある生活を送っているが、それでも砂地でのランニングはどんなトレーニングよりもキツイ。

 遮るものが何もない砂地を走り続けるだけでも相当体力を消耗するのに、そこに優に四十度は超えている外気温で焼かれ、時折吹き荒れる強風によって巻き上げれる砂が体を容赦なく叩くので全身が悲鳴を上げる。


 そして何より、ただでさえ喉が渇くのに、水分補給が満足にできるわけではないので、一歩間違えれば熱中症になって命の危機に陥ってしまう。


 つまり何が言いたいかというと……砂漠でのトレーニングは、マジでデメリットが多過ぎるので全くお勧めしない。


 だが、そんな俺の世界での理屈は、基礎能力から桁違いに違うこの世界の人たちには当然ながら通用しない。


『あと少しですよコーイチ、気合を入れて足を動かしなさい』

「わか……りまし……た」


 すぐ横から聞こえるライハ師匠の涼しい声に、俺は最後の力を振り絞って足に力を込めて駆ける。


 滝のような汗を流し、全身ボロボロの俺とは違い、ライハ師匠はいつもの袴姿で汗ひとつかくことなく涼しい顔で並走している。

 ライハ師匠が並走しているのは、砂漠で俺に何かあった時にすぐに助けてくれるためなのだが、裏を返せば師匠がすぐ近くにいるので、砂漠でのトレーニングの危険性を訴えても意味がないとも言えた。


『さあ、ゴールは目と鼻の先です。後は思いきり飛び込みなさい』

「……くあああぁぁぁぁ! み、みずうううぅぅぅ!」


 フラフラと倒れそうになりながら足を動かし、俺はそのまま倒れ込むようにゴールとなる湖の中へとダイブする。


 …………ああ、生き返る。


 砂漠の真ん中にあるのに、不思議と冷たい水に全身を身を委ねた俺は、赴くままにゴクゴクと喉を鳴らして水を飲んでいく。


 水が綺麗とか汚いとか、後でお腹が痛くなるかも? 何て考えない。

 とにかく体の隅から隅まで潤したくてしょうがなかった俺は、本能のままに水を飲み続けた。



 たらふく水を飲んで腹を満たしたところで、俺はゆっくりと立ち上がる。


「はぁ……はぁ……」

『お疲れ様でした。この数日で大分砂地を蹴る力がついてきましたね』

「あ、ありがとうございます」


 全身濡れ鼠の俺を気にする様子もなく、ライハ師匠は手を引いて水から引き上げてくれる。

 とはいえ熱気激しい砂漠の地では、このまま数分立ち尽くしていればすぐに乾いてくれるので、濡れることへの抵抗は少ない。


「はぁ……はぁ…………ふぅ……」


 大きく深呼吸を繰り返して息を整えた俺は、額に張り付いた前髪を退けながら、どうしてかニコニコと笑顔でいるライハに尋ねる。


「し、師匠、何でしょう?」


 もしかして、新王子の名前が決まったのか?


 そう思っていると、


『さて、コーイチ。これが何かわかりますか?』


 ライハ師匠は、懐から子供のこぶし大ぐらいの物体を取り出して俺に差し出してくる。


「えっ?」


 困惑しながらも、ライハ師匠が差し出したものを受け取った俺は、改めて手の中のものを見てみる。

 それは、多面体にカットされた透き通った石だった。

 よく磨かれているのか、表面はとても滑らかで触り心地はとてもよく、クルクルと回すと陽光を受けて青や紫色にキラキラに輝いている。


 全く宝石に興味がないのでこれが何の宝石なのかは見当もつかないが、これ一つで家の一つや二つは買えるんじゃないかと思う。


 手にしたものが宝石だと認識した途端、疲れとは違う嫌な汗が流れてきたが、渡されたからには俺と無関係ではないだろう。


「あ、あの、師匠……これは一体?」

『わかりませんか? それはあなたが持ってきたあの鉱石を割って削ったものです』

「えっ、これが!?」


 あのゴツゴツした武骨な石の塊が、こんな綺麗な宝石に生まれ変わったのか?

 驚く俺に、ライハ師匠がわかったことを教えてくれる。


『これはアイスライトアズールと呼ばれる宝石です。宝石商に聞きましたが、この石が採れるのは、ここより遥か北の大地だそうです』

「北……」

『ええ、といっても北の大地の広い範囲で採れる石ではあるので、流石に地域までは特定できないそうです』

「なるほど……」


 だが、少なくとも石の正体と、採取できる地域がわかっただけでも大きい。


『……それで』

「ん?」


 まだ何かあるのかと思っていると、ライハ師匠は俺の手の中にある宝石を指差してある提案をする。


『その石、宝石商曰くかなり高価な石のようです。ですので私の相談に乗ってくれたお礼に、好きなように加工しますが何かリクエストはありますか?』

「えっ、そ、そうですね……」


 いきなりそんなこと言われても困るんですけど。


 そう思ったが、


「あっ!?」


 脳裏に天啓のように妙案が思いついた俺は、ライハ師匠にあるリクエストをした。

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