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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
後日談その① エピローグ・エリモス王国

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謎の石の正体は?

 エリモス王国に誕生した新王子の名前を考える。


 口にするのは簡単だが、一国の主となる歴史に名を遺す名前を考えるとなると、そのプレッシャーは半端ない。

 ライハ師匠は俺たちの助言を受け入れて、新王子にどのような王になってほしいという願いを込めることにしたのだが、それだけで決まるほど簡単な話ではない。


『コーイチ、ネイ、もう充分です』


 地下に籠っているのでどれぐらい時間が経ったかわからないが、全く名前が決まらない状況にライハ師匠から声がかかる。


『二人からの助言で少し光が見えてきました。後は私がいくつか案を出すので、その時また意見をもらえますか?』

「わかりました」

「はい、お任せください」


 名付け親になってほしいと頼まれたのはライハ師匠なので、俺たちが手伝うといってもあまり深入りするのはよくない気がするので、この辺が妥当なラインだと思う。


「でも、何かあったら遠慮なく言って下さいね」

『ええ、その時はまたネイを使いに出しますから』

「わかりました」


 そういうことならと、俺はネイさんに泊っている宿を教えておく。


「それじゃあ、俺たちはこれで……」


 長居しても邪魔になってしまうからと、俺はネイさんを連れて立ち去ろうとする。


 すると、


『お待ちなさい』


 背後からライハ師匠から声が聞こえたので、俺はまだ何かあるのかと振り返る。


『コーイチ、あなたこのまま帰るつもりですか?』

「えっ? あ、はい、そのつもりですけど……」


 他に何かあったっけ? と頭に疑問符を浮かべていると、


『あなた、私を探して王宮近くまで来ていたでしょう? その役目を果たさずしていいのですか?』

「……あっ」


 その言葉で、俺は本来の目的を思い出す。


「そ、そうでした」


 このまま宿に帰っていたら盛大に後悔していた。そんなことを思いながら俺はあるもの……スールからレド様に繋がるとミーファに渡された謎の石を差し出す。


「実は、師匠にこれを見てもらいたいと思いまして」

『何ですかこれは……石?』

「はい、一見するとただの石ですが、その石にはレド様……シドたちの母親に繋がる特別な石だそうです」

『……どういうことですか?』

「実はですね……」


 訝し気に石を睨むライハ師匠に、俺はこの石を手に入れた経緯を話した。



『なるほど……興味深い話です』


 ことの経緯を聞いたライハ師匠は、改めて石を手にして光にかざしてみる。


『それで、コーイチは私にこれをどうしろと?』

「その、この石が何処から取れたとか、この船の装置を使って調べられないかと思って……」

『それは無理ですね』


 俺の提案を、ライハ師匠はあっさりと否定する。


『この船は何百年もエリモス王国周辺しか索敵していませんので、他所の情報は皆無です。ましてや石が取れた場所なんて、船の機能が生きていたところでできたかどうか……』

「そう……ですよね」


 流石に石を調べただけで、何処で採取されたかなんてわかるのは無理があったようだ。


「すみません、無理を言ってしまって……」


 無理なら無理でライハ師匠には、とっとと新王子の名前を考える作業に戻ってもらいたい。

 そう思っていたが、


『何処で採取されたかを調べるのは無理ですが、この石が何かを調べることはできますよ』

「えっ?」

『見たところこの石、ただの石ではなく鉱物のようです』


 ライハ師匠はコンコン、と石の表面を軽く叩いて中の音を聞くように耳を近付ける。


『詳しくは専用の装置にかけてみないとわかりませんが……どうしますか? よければ石を割って中身を調べることならできますよ』

「ほ、本当ですか!?」


 カナート王国では何も得ることができなかったので、石について少しでも情報を得ることができるなら願ったり叶ったりだ。


「ぜひ、お願いします。中身がわかるなら、割っていただいて構いませんので」

『わかりました。では、これはこちらで預かります』


 てっきりすぐにやってくれるのかと思ったが、ライハ師匠は石を大切に懐にしまってしまう。


『そんなもの欲しそうな顔をしないで下さい』


 するといつも通り表情に出ていたのか、ライハ師匠は苦笑して胸元にしまった石を指差す。


『割るにしても調べるにしても、準備が必要です。数日で結果を報せますから、気を長くして待ってなさい』

「は、はい、わかりました」


 割るにしろ調べるにしろ、準備が必要なのは当然だ。


「焦ってすみません、名付けの仕事もありますし、ライハ師匠の好きなタイミングで調べてもらえれば構いませんから」

『わかってます。少なくとも助言をくれたコーイチを、大切な愛弟子を無下にするようなことはしませんよ』

「それは……恐縮です」


 相手がどの師匠であれ、正面から愛弟子と言われると何だかとても気恥ずかしい。


 思わず顔が赤くなるのを自覚して顔を手で扇いでいると、


『ふむ、そうでした。コーイチは大切な愛弟子でしたね』


 最初の発言とは違い、少し冷たさを感じるような声音でライハ師匠がある提案をする。


『こうして一緒にいるのです。せっかくですから滞在期間中は、みっちり鍛えてあげますよ』

「……えっ?」

『何、遠慮はいりません。まだ伸びしろはいくらでもありますから、早速明日から特訓を開始していきますよ』

「は、はい、よろしくお願いします。」


 この決定事項を覆すことはできそうにないので、俺は素直に頷いてライハ師匠にまた明日来ますと言って、宇宙船を後にした。

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