第7話「嘘の蔓延」
放課後、下駄箱で靴を履き替え、校門に出る。
そういえば、ヒビキは放課後また会うと言ったが、どこにいるのだろうか。
連絡先など持っているハズもないし、彼が携帯を持っているとも思えない。
「ん?」
なぜか、校門に人だかりができている、主に女子生徒の。
生徒の帰路を塞ぐとは、なんとけしからん。
一体なんの騒ぎだと言うのだ。
「ねぇ、あの人誰?」
「かっこいい〜♡」
「誰かの彼氏?」
「うちの生徒じゃないよね」
「いいな〜♡あんな彼氏、ウチもほし〜」
「いやいや、彼女持ちって決まったわけじゃないでしょ」
「誰か、声かけて来てよ♡」
私は女子たちの合間を縫うように視線を送る。
この目は便利だ、女子たちの乱れた…いや、淫れた視線の矛先に沿わせることができる。
少し表現が困難だが、感情の流れを物質的に捉えることができる?といった感じだろうか。
故に、離れた場所からでも、その淫視の先を私は容易く見届けることができた。
「あれって…」
女子たちの先にいたのは、校門の柵に寄りかかり、暇そうな、どこか凛とした横顔をこちらに向けているヒビキだった。
「げっ…」
突然、何かに気づいたように、ヒビキがこちらを向く。
どうやら彼も、自身に向けられた感情の矛先を理解したようだ。
ヒビキが私を見つけた。
顔を少し傾け前髪が揺れる、爽やかであり、少しあどけない笑顔で、こちらに小さく手を振る。
「「「キャァァァ///♡♡」」」
ヒビキを見ていた女子たちが一斉に叫び始める。
周囲はちょっとしたパニック状態だ。
斯く言う私も不覚ながら、彼の笑顔に少し…ほんの少し……本当にほんの少し!………ドキットシテシマッタ
彼は、彼はそう、超がつくほどの…
………イケメンだ
ヒビキは騒ぐ女子には目もくれず、未だ私の方に手を振っている。
確かに、放課後に待っているとはいったが、こんなに目立った彼のもとに駆け寄った日には、彼女たちが彼に向けるものとは真逆の感情の視線を喉元に突き刺されるだろう。
どうにかして、彼との関わりを知られぬままでいたい。
どうしたものかと考えているうちに、何の反応も示さない私を不思議に思ったのか、彼がキョトンとした顔になる。
私がそれに気づいた頃には、もう策を練る猶予は残っていなかった。
ヒビキは柵に寄りかかるのをやめ、体幹を真っ直ぐこちらに向ける。
両手を頬の横に持ってきて、大きく息を吸う。
「っ!?」
「は〜や〜t」
その時の私の動きは、光とまでは行かずとも、高速道路を駆ける車など、ただの道端に佇むパイロンであるかのような、そんな逃げ足だったと思う。
シュビィィィンッ!!
「はやッ!?」
校門脇の植木を飛び越えるように消えていった私を追うように、ヒビキも校門を抜け、走り出す。
集まっていた女子達は残念そうに、ヒビキの背中を目で…速すぎて追うことはできなかったが、秋の訪れを知らせるような、木の葉の揺り音を聞いていた。
「「「また会えるといいな〜…」」」
ー
学校から少し先にある小路に入り、先程までの走りによって生まれた気流を汗の流れる額で受け流す。
どうやらその汗も走った反動で出た訳ではなく、先の焦りから来たようで、息も全く上がっていない。
本当に私の平穏な日々は戻ってくるのだろうかと、彼を少し疑ってしまった。
「あっ、見つけた!」
「げっ、見つかった…」
対極的な表情がぶつかる。
「見つかったって、何でよ〜。放課後会いに行くって言ったじゃん」
「あんなに注目されてる男に「お待たせ❤️」なんて言ってみなさいよ。今度は私が目立っちゃうでしょ…」
「どうして語尾にハートが付いてるの?」
「っ…あ、いや…別に深い意味はないわよ!!」
「???」
「とにかく!今後学校には来ないでよね!あんな風に女子の目を引いちゃ仕方ないし」
「女の子達、俺の方向いてたけど、見た目なんか変だった?もしかして人間じゃないってバレた!?」
不安そうに自分の体をあちこち見渡す。
「いや、そうじゃなくて、その…女子達にはあんたの見た目が、そのちょっとだけ魅力的に映るんだよ」
「魅力的って、どう言う意味?」
「好意的…す、好きって意味」
「スキ…スキ…スキ………」
ほんわかしたヒビキの脳内で必死に好きなものを思い浮かべる。
ポンッと音を立てるように今朝食べたおにぎりが頭に浮かんだ。
「おにぎり」
「え?」
「おにぎりは美味しいから好き、いっぱい食べたい。つまり、俺を食べたいってコト!?」
「いやちがっ…まぁ「食べる」ことが目的の人も居なくはないけど。そう言う意味じゃなくて、人を好きになるってことは、その人と一緒に居たいとか、そ、その人を、も…もっと知りたいとかそう言う気持ちのことを言うのよ…」
我ながら、こんなぴゅあぴゅあな言葉をこの口から発するとは思ってもみなかった。
ヒビキは青ざめた顔を元に戻し、また空を見つめて考え込んだ後、突然俯いてしまった。
「ど、どうしたの…?」
「知りたい…知られる…一緒に…巻き込む…(小声)」
「え?」
「!!、な、何でもない!」
ヒビキは私の声に驚き顔を上げる。
「好き…うん。好きって何だかわかった気がした」
彼の行動と思考はまだ掴めずにいる。
それは、彼が人間特有の掴み所を持ち合わせていないからか、もしくは…
「う〜ん、すっきりした!家まで送るよ、快月」
「え?あ、うん」
ヒビキは小路を抜ける方向へと歩き出す。
私もそれに続いて歩きながら、先程の思考の続きも行おうとした。
しかし、脳内の方隅に忘れ物があるのを思い出した。
思わず、あっと言葉が出て、ヒビキが私の方を振り返る。
「あっ!そうだ、今日はスーパーで買出ししないと」
「すーぱー?」
ー
「絶対に!変なことしないで、大人しくしてて!」
「了解」
私は悩んだ。
ヒビキを買い出しに付き合わせるかどうか。
確かに、私が彼に釘を突き刺しながら、買い物をすれば良いのだが、このスーパーは学校から近い。
もし、うちの生徒(特に女子)に見られたりしたら、それはもう……
ただの同棲カップルの甘々な夕飯買い出しじゃないか!!!
「どうしたの?顔赤くして」
「え?な、なんでもない。いいからここで大人しく待っててね?」
「うんうん、わかってる」
ヒビキをスーパーの外に立たせて待たせるのも一つの手だったが、それではなんなので、スーパーの二階にある中古品ショップで待たせることにした。
「じゃあ、色々買ってくるね」
「いってらっしゃい」
サヤは階段を降り初め、彼女が見えなくなるまで一瞬たりともヒビキから鋭い眼差しを離さなかった。
ヒビキは苦笑いを浮かべながら、彼女が見えなくなるのを確認し、建物内の壁に触れる。
耳鳴りに似た音が、高く頭に伝わり、ゆっくりと手を離す。
「これなら、一人にしても問題ないかな」
ヒビキは中古品ショップに入り、サヤが戻るまで辺りをブラつく事にした。
一通り店内を回ってはみたが、電化製品の多いこの店の品をヒビキが理解できるはずもなく、例えるならばそう、美術館にあるカオスとニヒルを模ったような彫刻を流し目で見るような感覚。
しかし、唯一彼の目を引いたものがあった。
「スーハー…スーハー…」
そう、アニメのフィギュアだ。
ヒビキは文字通りショーケースに齧り付く勢いで、中にある個性豊かなフィギュアを眺めた。
当然だが、ヒビキは「漫画」や「アニメ」といった文化に触れたことがない。
ではなぜ、こんなにも食い付いているのか。
「なるほど…そこに武器を隠しているのか。こんな技を出せるとは…」
答えは……戦略調査とでも言おうか…。
「?」
ヒビキは一際目を惹きつけられる像を見た。
そのフィギュアは、溢れそうな乳房とムチムチな尻をビキニアーマーで包み(包みきれていない)、大剣を振るう女騎士の像だった。
「防具を着けているのに、体を守る気がない?どうしてこんなに露出の多い格好をして、戦ってるんだろう…」
「それは一つの美学だからです」
「!?」
いつの間にはヒビキの横に眼鏡をかけたエプロン姿の女性店員が並んで立っていた。
その女性はヒビキの方を見るでもなく、じっとショーケースの反射の先にある女騎士を見据えていた。
「びがく?」
「そう、美学です。騎士とは本来、高潔な意志と鎧を纏い、剣を振るう存在しかし!!揺れ動く肉美!陰影と白肌の無常!女騎士の高潔さなど、一皮剥けばこの始末…だが、そこに新たな騎士道を私たちは見出しているのです」
「な、なるほど…?」
「ここで一つ。他のビキニアーマードスケベ女騎士のフィギュアを見てみましょう。何か共通点を感じませんか?」
「?、うーん」
横にも10体ほど並んだ、それぞれ別作品のフィギュアを眺める。
「む…胸が大きい…とk」
「不正解です。そんなもの、息を止めれば人は死ぬと言っているようなものですよ。そんなありふれたこと………。!!!………貧乳…というのも一つの美ですね」
店員様エプロンの胸ポケットからメモ帳を取り出し、何かを熱心に書き連ねている。
ヒビキはキョトンとした目線を店員に向け、それに気づいた店員は、すぐさまメモ帳を了い、コホンと咳払いをする。
「正解は、ほとんどの作品で大剣を使っているところです」
「確かに?」
「ではなぜ、ビキニアーマードスケベ女騎士は皆、一般的な騎士の剣ではなく、大剣を振るっていると思いますか?」
「力があるから…?」
「及第点です。確かに、大剣を振るうのには全身で遠心力を使い、四肢、乳房、お腹のラインにダイナミックな動きと捩れを与えてくれます。しかし!!真の意味はそこにはない!!大剣という大きく猛々しいものを強く握り込み、汗の伝落ちる肌と共に流れるように扱う!それはもう…もうそれは…それは!!」
「ゴクリ…」
「男k…!」
「あ、大根安い。買っておこうかな…でも太くて大きいの一本買うと、帰りがなぁ。あっヒビキのせい?おかげ?で、疲れにくい体になってるんだった。2本買っちゃえ!」
サヤは一通り買うべき物を籠に入れ、会計へ向かう。
「お会計1830円です」
「はい」
(ちゃんと大人しくしてるかな…)
心配になる気持ちに釣られ、トートバックに野菜や肉を詰める速度が、いつもより少し速くなる。
若干の駆け足で階段を登り、2階にある中古品ショップの自動ドアを通過する。
「あ!快月、おかえり〜」
「ちゃんと大人しく待ってた…?」
「うん!ねぇねぇ快月、人間ってみんなとっても親切なんだね」
「?、なんかいいことでもあったの?」
「うん!店員さんが、ビキニアーマーの良さを教えてくれたんだ」
「び、びきにあーまー…?」
ー
私たちは、昨日教え損ねたヒビキの居住地へ向かっていた。
どうやら、私の家からそう離れてはいない位置にあるらしく、帰宅の道を兼ねることができた。
「ふぅ…ちょっと疲れたから、座ろう?」
「え?うん」
私の家から徒歩10分程の位置にある、広めの公園の広場の二つ並んだベンチの片方にヒビキが急に腰掛け、座面を叩いて私を隣に招く。
その眼差しと横長の座面とはいえ、彼の隣に座るのが少し照れくさかった。
彼は一々距離感が近すぎるのだと思いながら、私はヒビキの座っていないもう片方のベンチの中央に腰掛ける。
ヒビキは腰掛けるサヤの方を向き、哀愁にイタズラな笑顔のベールを被せた。
「ふふ、にしても今日も楽しかったなぁ〜」
「そ、そう?楽しいと思う特別なことは何もなかったと思うけど」
「ん〜?快月と学校の屋上であって〜学校の前で待ち合わせして〜一緒に買い物に行って〜ふふ、ふふふふ」
「それ、そんなに楽しい要素あった?要所要所におかしなことはあったけど、まぁ普通の一日だったけど」
「…普通」
突然、ヒビキが私の座るベンチに飛び移り、にじり寄って来る。
「な、ななな何、何!?」
迫り来る恐怖から逃げるため、座面をスライドして移動する。
しかし、ベンチの座面は無情にもドラマのラストシーンの崖のように終わりを告げ、私の逃げ場をなくす。
すると、彼もピタリと止まり、俯いた顔を私に向けて上げる。
「普通ってことは…こんなに楽しい日を毎日過ごしてるってこと!?」
「え?う、う…ん?」
私の半信半疑の肯定を聞き入れた彼は、明るく笑って、自分の元いた場所に戻っていく。
私の普通を彼が特別と呼ぶのは、彼がそれまで全く違った環境にいたことを示すと同時に、人間としての当たり前が欠けている、言葉通り彼が人間ではない存在であるということも示していた。
(ただの人もどき、か)
彼の言葉が脳内に残り、離れない。
彼と人間にどんな違いがあるのだろうか、確かに不思議な力を使ったり、常識知らずだったりする。
しかし、人のように血を流し、嬉しいことがあったら素直に喜ぶ。
人間と彼の間にある違いには『気』を超えた何かがある?もしくは………
「…き…つき!快月ってば!」
「え?あぁごめん、何?」
「そろそろ家に帰った方がいいんじゃない?送るよ」
「え?まだヒビキの家にも着いて無いでしょ?」
「「???」」
徐にヒビキがベンチに横寝になり、私の方を向く。
「よーこそ!我が家へ」
……………。
「えぇー!?住む家がないっ!?」
「う、うん…」
盲点だった…
人間社会に不慣れな彼が、どうやって家を借りるというのだ…
もしかしたら、今彼が服を着ていることも奇跡に等しいのかもしれない。
やはり、彼に人間としての当たり前は通用しないと、肝に銘じた方が良さそうだ。
「もしかして…お金とか」
「持ってない」
「!?。じゃあ、今着てる服は…?」
「落ちてた」
「落ちてた!?じゃ、じゃあ、食べ物は!?食事はどうしてたの?」
「お腹は空くけど、人間じゃないから別に何も食べなくても、死にはしないよ」
「本当に…?」
「うん。あ、でもあまりにも長い間何も食べないと、急に空腹感が引いて、さっきまでが嘘みたいに体が動かせるんだ〜それで、次の日になると全身がビクビク震えて、無意識にそこら辺にある草とか土を食べ始めるの。で、気づいたらお腹いっぱいになってるんだ〜」
「怖い怖い怖い!!!おかしいよ絶対大丈夫じゃないよそれ!!」
「?……うん」
「絶対わかってない!!」
サヤは呆れた顔で大きなため息を吐いて、ベンチに座り直す。
「仕方ないから、今日はウチでご飯食べさせてあげる」
「え!?いいの!?」
「まぁ、私とあなたが招いた事とはいえ、私が元の状態に戻るまで、付いててくれるんでしょ?守ってもらって何もしないのは、気持ち悪いし」
「!、ありg…」
「短い付き合いだしね」
「………」
気はすぐに体から抜けていくよ。
大丈夫。
安心して。
そんなことは起きないよ。
自分の口から出た言葉たちが、胸を何度も突き刺してくる。
抉られるような激しい痛み。
これが……………
嘘の痛み。
「ヒビキ?どうしたの?ま、まさかお腹空きすぎて、草とか土食べ始めるやつ…?」
「ふふ。今日はそんなにお腹空いてないよ〜」
「本当…?」
「あ、でも朝に食べたおにぎりが、胃袋を刺激して、もっと食わせろ〜って言ってるかも?」
「ひぃぃ…」
「冗談冗談!」
ヒビキの建もの探訪を終えた二人は公園を抜け、サヤの家へ向かい始める。
「…快月」
「ん、何?」
………。
……。
…。
っ。
……………。
「早く行こう?もう真っ暗だし」
「うん」
ー
おまけ「あれこれサヤちゃん」
ヒビキに夕食をご馳走することになったサヤ。
ヒビキはご機嫌な顔で今夜の夕食を楽しみに歩いている。
しかし、サヤの脳内ではそんな日常、安寧は崩れ去っていた。
(夕飯を食べさせるだけとはいえ、い、一応?ヒビキも男だし…なんだか緊張する……いやいや大丈夫よ、前にナツを家に呼んで遊んだ時みたいにしてればいい、何にも意識することなんて…)
「この服も汚れてきたな…そろそろ洗濯して〜お風呂にも入らないとね!」
ヒビキが自分の服の袖を掴み、白いTシャツについた土汚れを確認する。
それを見たサヤは、ふと自分の世界に入ってしまう………
「ふぅ…ご馳走様。快月の料理とってもおいしかった」
「そう?それはよかった」
ヒビキは無邪気で満足げな笑顔を私に向ける。
腕白な子供らしい笑顔。
「「………」」
二人の間に沈黙が訪れる。
夕食を食べ終わった、それは新たな何かの始まりを意味する。
ヒビキは、食後の一息と言おうか、深呼吸を何度か繰り返す。
彼の仕草や表情を除けば、そこにあるのはもう、男らしいゴツゴツとした骨格と肉惑的な身体だけ。
先程まで、小学生ほどの子供を相手しているような、そんな感覚だった私は、彼が外面的な男を持っていることをその時強く実感した。
彼は徐に、Tシャツの襟元を掴み、少し下げて胸元を覗かせて仰ぎ始めた。
「ふぅ…汗いっぱいかいちゃったな」
男の体を意識した私は、もう彼から目を離すことは叶わなかった。
首を斜めに走る筋肉とそれに沿うように流れる汗が妙に艶かしく光り、私の瞳と身体の芯にある何かを染める。
ヒラヒラと動き、強調される首元からは、力強くそして滑らかに浮き出た鎖骨が、一種の美学と私の視線を招く。
首筋から滴り落ちた汗が鎖骨を伝い、躯幹の中央へ集まる。
大きな胸元に若干張り付いたシャツはその姿体を浮き彫りにしている。
汗が両側の胸筋の間を伝ってゆっくりと流れ落ちるのと同時に、私は熱に染まった生唾を飲み込む。
私は乾いた口腔と震える口唇で唐突に口走る。
「じゃ…じゃあお風呂入っていく…?」
?…?!?!!//
彼の真っ直ぐな眼差しが、もう取り返しのつかないことを示唆する。
「本当に?ありがとう快月」
暑さで火照っているせいか、彼の言葉にも妙な柔らかさが生まれ、それもまた私の何かを熱らせる。
もう、まともに彼の顔を見ることもできない。
「快月も…一緒に入ろ?」
「えっ!?」
恋や男女の関係を理解できていない彼から発せられた言葉。
おそらく、まだ幼い子供が親と一緒に風呂に入るといったニュアンスで彼も発したのだろう。
熱に支配された身体は、思考を鈍らせる。
「えっ…と、どうして?」
「その…しゃんぷー?とかりんす?とかまだ良く分かってなくて、その教えてもらいながら、洗いたいんだ。それと…肩の怪我が少し痛くて、背中とか上手く洗えないんだ。その…お願い快月」
「えっと//その//だから//、えっと//」
「そんなの絶対ダメェェェ!!!!!」
バシィィィン!!!
突然サヤは叫び出し隣を歩いていたヒビキに強烈なビンタを炸裂させる。
ヒビキは声も上げず、宙に投げ出され、地面に落ちる。
「ぁ、ぁぁ…な、何が…?」
ヒビキは最初から、サヤの家の風呂など借りる気などない。
サヤの家で夕飯を食べた後、公園で水浴びをしようと考えていただけなのだ。
形は違えど、相手を振り回すという意味では、二人は似た者同士かもしれない。
公園住みって…ヒビキくんだいぶニオイがしそうですね。
私自身あまり匂いというものを深く考えてこなかったのですが、ニオイキツめのわんぱくイケメンですか…
なんか…わかってきた気がしますよ!
まあまあ首筋に汗なんかかいちゃって…漆みたいに重ね塗りみたいな?
あー…結構いいですね。
サヤちゃんもなかなかになかなかな妄想をしちゃうんですね。
ほほぉぉん…




