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アカネイロ物語  作者: うっこ


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9/17

第9話:推論

「ねぇ、アカネ? 過去に飛ばすって聞くからにはなにか思い当たることがあるのよね?」

ミサはあらためてアカネに問いかけた。

アカネもまた、時間を飛び越えている可能性を告げたもののどのように切り出していいか迷っていた。


そこに、まずはルーベンから切り出していった。

「まずは改めてご説明いたしますが、私とアカネ様は自らの城の書庫にて、とある肖像画を見ていたら光に包まれ、気がついたらこのマグダット城近くの草原に飛ばされていたのです」

「その肖像画ってどんなものなの?」

「我が国に古くから伝わる女性剣士を描いたものです」

「すっごく素敵な女性で私の……」

「アカネ様。今は、それよりも他に話すべきことが」

「そ、そうね。ごめんなさい」

アカネは、肖像画の話になり、思わず口走ってしまったが、ルーベンにたしなめられた。


「ふーん。なんだか、わからないけど、昔からあるのね? それなら、その絵に触れたことがある人は1人や2人ではないのよね?」

「えぇ。絵は厳重に保護されておりますが、額縁の上からであれば多くのもの、加えてアカネ様や私も触れたことはこれまでにも何度もあります。ましてや見るだけならその絵を見たものは数えきれないでしょう。そして、今回の事象についても私たちは特別変わったことはいたしておりませんでした」

「うーん。その肖像画が原因でアカネたちが飛ばされている以上、何かしらの原因にはなっているんだろうけど、現物がない以上ここで何かできることはないわね……」

ミサはひとまず、肖像画についてはおいておくことにし、ルーベンも話を続けた。


「光に包まれ気がついたときには、最初はどこか別の場所や国に飛ばされたのだと考えました」

「えぇ。私もルーと同じように考えたわ。でも、アイナを助けに入った草原からマグダット城に向かうまで、まわりの風景は私の知っているものと違うんだけど、どこか面影があって、城にいたるまでの道を私は知っていたわ」

ミサ、ミア、アイナはそれぞれ真剣な面持ちでアカネたちの話に耳を傾けていた。

「そして、マグダット城下町の商店や家なども、もちろん私の知っているものではないけれども、町が存在している場所、そして城の形状こそ違うもののマグダット城が建っている場所もまた、私の知っている城と全く同じ場所に存在していたの」


「…………」

ミサとミアは相変わらず真剣な表情をしているなか、アイナがこわごわと口を開いた。

「じゃぁ、もしかしてその城って……」


アカネも腹をくくり、ミサたちに素性を明かすことを決意した。ルーベンからの視線もまた、アカネに同意しているようだ。


「えぇ。そここそが、私のいたお城アカネイト城よ。そして、国の名前はアカネイト王国。私はそこの第一王女アカネ=マグダットよ」

それぞれが、まさかといった表情をしている。アカネは話を続けた。


「そして、ここからが私たちの考えの決め手になっていくものかしら。大きく言って二つあるわ。どちらから話しましょう…… そうね。まずは城の話をしていたわけだし、こちらからで。今、私たちがいる、このマグダット王国。私はこの国を知っているわ。もちろんルーもね」

「はい。私どもはマグダット王国を存じております。ですが、それは過去の歴史においてなのです。私たちが暮らしていた時代のはるか昔。それこそ、どれほど前かわからない。ひょっとしたら数千年レベルであるかもしれないほど昔の時代の国なのです。そして、そのマグダット王国こそ、我がアカネイト王国の前身の国なのです」


「な……」

「じゃ、じゃぁ、アカネ様がマグダット姓を名乗っているのって」

ミアからの問いかけに、アカネは臆することなく推論を展開する。

「えぇ。推測が正しければ、今の国王様も私の遠い祖先ということになるのかもしれないわね」

「でも、国の名前が変わったということは、なにか戦争や、危機があって為政者が変わっているんじゃなくて? それなのに、マグダット姓が続いているの?」


ミサからの質問にはルーベンが答える。

「いえ。私の知る限りの歴史の流れでは、国をかけたような争いは聞いたことがありません。絶対とも言い切れませんが、平和裏に国名が変更されているはずです」

ミサは、とりあえずは納得しようという感じである。


アカネはさらに話を続ける。

「そして、二つ目ね。それはつい先日も聞いたことあるもので、ずばり黒竜王の話よ」


「黒竜王?!」


「えぇ。黒竜王の話は私たちのなかでも有名な話で。有名というよりも伝説的な感じかしら。大賢者様が封印したと伝えられているわ。そして私たち国民の間ではここまでしか伝えられていないの」


「あれ? でも、それだと、昨日の話だと黒竜王の封印が解けそうになっているって。この時代にはもう、大賢者様は生存していませんから、復活したら結末はどうであれ、全く違うものになってしまいますよ?」

ミアが疑問を呈した。


「そうね。ここからがまた不思議な話で、私たちの国では黒竜王は大賢者様が封印して倒したことになっているって言ったじゃない? そのこと自体は実際に起こっていたことで間違いではないでしょ?」

3人はうなずく。

「そして、肖像画の話に戻るんだけど、そこに描かれている女性剣士って、私たちの国を救った英雄ってことになってるものなの。でも、どういう経緯で国を救ったかは伝えられていない、なんとも不思議なものなのよ。でもね、ルーの家には昔から伝えられていることがあるって。ね?」

「はい。私の家には口外することははばかられる形で、代々伝えられている伝説があります。それは、黒竜王は大賢者様の封印のあと復活を果たしており、その黒竜王を見事に討ち果たしたものが、その肖像画の女性だと言われております。事実だとして、なぜこのことが広められなかったのかは全く不明です」

「えぇ。そして、今起こっていることがその歴史通りにすすんでいるのかもしれないと思っているの」


話を聞いていた3人はそれぞれ、何か思案しているようだ。

やがて、ミサが最初に口を開く。

「はい、そうですかと素直に聞ける話ではないけど、アカネたちの推測も全くの見当違いとも思えないわね。ここは、もう少し、決定的なものを掴めるよう行動してみましょう。そして、この出来事が仮に魔法の力なら私もとても興味があるし、ミアももちろん協力してくれるわよね?」

「はい。まだ、少し驚いていますけど、お姉ちゃんの言う通りで、私も可能な限り協力します!!」

「二人とも、ありがとう」

姉妹の頼もしい言葉にアカネは微笑み、そこに、アイナも慌てて

「わ、私ももちろんお姉さまの力になりますよ!!」

「えぇ、アイナにも期待しているわ」

そのとき、アイナは何かに気がついたように

「あれ? でも、お姉さまの話が本当だとしたら、私の方がずっと年上なわけで私がお姉さま? ん。あれ?」

斜め上からのアイナの言葉に一同は肩の力が抜け

「いえ、ややこしいから、私がお姉さまでお願いするわ」

アカネの一言で周囲は和んだ。続けて

「そして、この話なんだけど、今はここだけのことにしておいて欲しいの。もっと、決定的なことが現れれば別だけど、現状はおとぎ話のようなものだし、むやみに混乱を招きたくないわ」

「そうね。私も賛成よ」

ミサの意見に二人も同意する。


「では、あらためてどうするべきか、考えなくちゃね」

「そうですね。まずは……」

意気込む姉妹たちのところに、突然、部屋の扉が開かれた。


「お話し中のところ、失礼いたします」

カインが深刻な表情で飛び込んでくる。

「カイン。なにか重大なことが?」

「はい。アイナ様、皆さま、こちらをご覧ください」

そこには、国王からの指令を携えたカインと使いのものが現れ、一枚の手紙を提示し


「たった今、黒竜王の動きに関して重大な事変が起きたとのことで、一同速やかに登城せよとのお達しが書かれております」


カインは火急の出来事であることを伝えていた。



「なんですって?」

「これからちょうど、アカネの今後について考えなきゃってところだったのに。でも、黒竜王についてなら放ってはおけないわね」

「そうだね、お姉ちゃん」

「アカネ、さっきのことについては、そのあとにまた考えましょう」

「えぇ。お願いするわ」

アカネたちはその知らせに素早く出立の準備を整えると家をあとにし、馬車に乗り込んでいった。


外は、正午を過ぎたころであろうか。今から旅立てば、日が暮れる前には城へと着くだろう。

それぞれ、伝説の魔物である黒竜王の話とあって、支度中は戦々恐々としている様子も伺えた。


道中の馬車内、ミサはルーベンに話しかけた。

ちなみに、アカネたちが乗ってきた馬車には、アカネ、ミサ、ミア、ルーベンが乗り込み

アイナとカインは、国王の使いの者が利用してきた馬車に乗り合わせている。

街中の道はところどころ荒れているところもあるが、大半は綺麗に整備されており、国の力が垣間見えるようだ。


「ねぇ、ルーベンさん」

「はい。ミサ様なんでしょう」

「さっきの黒竜王の話なんだけど、それってその女性剣士一人で倒したの?」

ミサは、女性剣士について興味を持っていた。

「いえ。おそらくはそうではないと思います。伝聞だけなので、詳しくはわかりませんが、魔導士や剣士など何人かの仲間とともに立ち向かっていったようですね」

「ふーん。それでも何人か程度で挑んだんだ。それで討伐できるなんてたいしたものね」

「もろもろわかりませんが、その剣士は実力もあったのでしょうけど、ことさら人を惹きつける女性だったようです」

「もっと詳しいことが知りたいわね」

「申し訳ありません。私も昔、母に聞いたことがあるだけで、そこまで詳しくは覚えていないのです」

「いえ。責めているわけではないのよ。こちらこそ、ごめんなさい」

「また何か思い出したらお伝えいたします」

「えぇ。頼むわね。きっと重要な手がかりだと思うもの」

「ちなみにルーベンさんもこの辺の街並みについては覚えがあるの?」

「そうですね。アカネ様がおっしゃっていた通り、存在している家や店は全く違いますが、街の造りに関しては懐かしさを覚えます。今、突然どこかの街中に降ろされたとしても、なんとなく城までたどり着くことは難しくないでしょう」

「そう。やはり、考えは当たっているのかしらね……」



ミサが少し考え込むようなそぶりをしているところ、今度はアカネがミサたちに話しかけた。

「ねぇ。ミサに、ミアちゃん。二人は魔法が得意なんだよね?」

アカネの問いかけに、ミサは気分を切り替え

「もちろんよ。私に勝てる魔導士なんて私の知る限りではミアくらいかしらね」

「お、お姉ちゃん、そんな大げさな。私なんて、まだまだで」

しきりに謙遜するミアをよそに、アカネは

「あら? ミサなら私が一番よ。というのかしらと思ったわ」

悪戯っぽい微笑みに

「私もそう言いたいけど、きっとミアにはかなわないわ。でも、簡単に負けるとも思ってないわよ。ふふ」

「ちなみに、二人はどんな魔法が得意なの?」

「せっかくだから当ててごらんなさい? まぁ、私の言動や容姿からも想像できる系統よ」

(攻撃魔法だろうなぁ……)

(攻撃魔法でしょうね……)

アカネとルーベンは同じことを考えていた。


「さぁ、答えは浮かんでいるかしら?」


二人は攻撃魔法と答えていいのか、言い淀んでいた。


「ん? なにか、はっきりしないわね。まぁ、いいわ。じゃぁ、答え合わせよ、正解は……」

答えを言い始めたミサに対し、アカネとルーベンもまた口を開いた。

「攻撃……」

「回復魔法よ!!」


「えっ!!」

二人は絶句した。


「攻撃って聞こえたけどなによ? 私の言動や可憐な見た目からは、回復や補助魔法しか想像できなくない? 私ほど癒しの象徴もいないと思うわ」

ミサは自慢のツインテールをアピールしている。

どうやら、癒しや可憐さを演出しているようだ?

「お、お姉ちゃん……」

ミアはなんともいえない表情をしている。


思いもよらない回答にアカネは続けざまに

「じゃぁ、ミアちゃんも? ミアちゃんなら確かに癒されるわ」

「なによ。私には癒しがないっていうわけ?」

ミサの突っ込みもそぞろに

「いえ。私は、その、……攻撃魔法が得意なんです」


「えー!!」


アカネたちは再び驚いた。


「そうよ。ミアを怒らせると怖いわよ」

なぜかミサが得意げになっている。

「もう、お姉ちゃんはさっきから」

ミアは、頬をふくらませながらミサを軽くこづいた。


「でも、ミサが補助系の魔法が得意って本当なの?」

ミサのかわりにミアが答える。

「はい。お姉ちゃんの回復魔法や、補助魔法にかなうものはいないと思います」

「そうね、そしてミアに勝てる魔導士もまたいないと思うわ」

二人はお互いをたたえながら、どちらも嬉しそうにしている。

その姿は年頃の少女そのものだ。

「じゃぁ、いつか披露してくれる機会を期待しているわ」


「えぇ。待っていて。……きっとそう遠くないうちに披露することになると思うわ」

そう口にするミサの顔はさっきまでの笑顔とはうって変わって真剣な表情になっていた。


そんな会話を繰り広げていくうち、馬車はマグダット城に到着。

馬車から降りたアカネに、アイナが駆け寄り開口一番に

「お姉さまたち、なにか馬車で楽しそうでしたよ。時折、叫び声とかも聞こえましたし、ずるいです」

「そんなに変わった会話はしていないわ。ミサが可憐で癒しの象徴だってことに気づいただけよ」

「えっ?」

アイナの心底驚いた声に

「アイナまでなによ」

ミサの突っ込みに場に、笑いの渦が巻き起こった。

やがて、落ち着きを取り戻すと、そこからは皆、気を引き締め城内に入っていったのだった。


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