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アカネイロ物語  作者: うっこ


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11/17

第11話:襲来

国王が会場から姿を消すと、周囲は次第に弛緩した空気が流れていく。

参加者たちはみな席を立ち、それぞれ黒竜王のことについて語り始めているようだ。


「なんだか、大変なことになってきているわね」

「はい。本当に黒竜王が復活しそうなんでしょうか」

アカネの言葉にアイナも不安げな言葉を返す。


「残念ながら本当ね」

ミサの返答に、アイナは押し黙った。

重い空気を変えるべく、アカネは

「ところで、さっきの国王様の息子? 騎士団の魔法兵団長も務めているみたいだけど、それほどの人なのに参加されないの?」


その言葉に、ミサやミア、またその発言が聞こえたであろう周囲のものたちすべてが一様に困った顔をしていた。


「いや、うーん」

「えーと」

どうもミサの歯切れが悪い。

ミアも困った顔のままだ。

「悪い人じゃないのよ。むしろ、いい人? なのかもとは思うんだけど…… 魔法の腕前もないわけじゃないのよ。 ないわけじゃ」

ミサの歯切れがさらに悪くなっている。


このままではらちがあかないと思ったミサは、人気のない部屋の片隅にアカネを連れていき

「アーサー王子は本当に悪い人じゃないの。ただ、少し、その、えーと少し馬鹿なんじゃないかなと思うの」

「お姉ちゃん!!」

一緒についてきたミアから突っ込みがとぶ。


「ごめんなさい。口がすぎたわね。正義感もあるし、弱者を救おうという精神も持ち合わせているの。ただ、その、ぶっちゃけていうと実力が伴っていないのよね」

「でも、魔法兵団長って」

「そこは、いろいろと事情があったようでね。ありていに言ってしまえばコネになってしまうのかしら。実際、現場での指揮を含め魔法兵団の多くは実質リロイさんが中心になって動かしているようなものよ」

「じゃぁ、アーサー王子は魔法の腕前もまるでダメってことなの?」

「そこがまたそうでもなくて、さっきも言ったけど魔法の腕前がないわけじゃないというか、見方によってはあるといっても差し支えないわ」

「それはどういうこと?」

「魔導士として60点くらいの実力は持ち合わせているからよ。これは、魔導士全体から見ての評価なので決して悪くはないの。もちろんいいわけでもないんだけど。仮に王子が普通に魔法兵団に志願してきたら取り立てられる可能性は十分あるくらいには実力があるわ。でも、あくまで一団員として並のレベルがあるということで、もちろん魔法兵団長にはなれる実力ではないわ」

そこまでを聞いておおよそのことを察したアカネは

「じゃぁ、少し言いにくいんだけど、王子は自分の実力を勘違いというか過大評価している感じなの?」


「うーん。それがそうでもないと思うのよね。私が思うに、おそらくは、たぶんさっきも本人が言っていたように王族の責務とか責任感からくるようなものだと思うの。人の上に立つもの、こうあるべきだみたいなね。私も何度か魔法兵団についていったことがあるけど、そのときも王子は率先して切り込んでいくような感じだったわ。だから、まわりのサポートも大変でね。本来なら王子の実力なら十分倒せるであろう敵でも、万が一に備えて周囲も構えちゃうから、効率も悪くなってしまうわね」

「なるほど。討伐隊に加えたらきっと足手まといになってしまうだろと考え、それで国王様も困った感じになっていたのね」

アカネは納得したようにうなずくと、ミサはアカネに詰めよってきた。


「それよりもアカネ、さっきちらっと聞こえたけどフライングライオンを撃退したですって?」

「あれ、聞こえちゃってました?」

アカネは少しおどけたように切り返す。

「当り前よ。ひょっとして、今朝、遅かったのって」

「はい。お察しのとおりで、戦ってました」

「魔物と戦ったとは聞いたけど、まさかそんな強敵だとは思わなかったわよ」

「あはは。私も驚きでしたよ。万事休すかって追い詰められてしまって、アランさんたちがきてくれなかったらどうなっていたかわからなかったわ」

「うんうん。運命だよね」

アカネたちの会話にひょっこりとアランが顔を出してきた。

「アランさん」

「やぁ、こんなところで美少女たちが集まって楽しそうだね。僕も仲間に入れてくれないかな?」

アランは相変わらずな感じで加わってきた。

「どうぞ」

アカネたちもその言葉に特に反応することなく、またかという感じで少しあきれたようににアカネが答える。

「アランさん。先ほどのアカネ様の戦いって本当なんですか?」

「ん? ミアちゃんも気になってたのかい? あぁ、本当だよ。そりゃぁ、もうすごかったんだから」

ミアはそれを聞いて少し羨望の眼差しでアカネを見つめている。アカネはいたたまれず

「ちょっとアランさん。あれは少し話を盛りすぎよ」

「そうかな? 話したことは事実なんだから、堂々としていればいいよ。それにその話があったことで、さっき、まわりのみんなも討伐隊への参加にある程度納得してたでしょ?」

「え、えぇ。それは確かにそうね」

「なら、そういうことで。それにしても、黒竜王討伐に選ばれるなんてすごいね。この集まりの前に簡単に国王様から経緯は聞いていたけど驚いたよ」

「驚いているのは私も同じです。まぁ、選ばれるであろうことは先日に聞かされていましたので驚きはなかったですが、今でもわけが分からないままです。君には期待できるんだーみたいなものいいだけでしたから」

「はは。でも、それはよくわかるよ。僕もアカネちゃんにはなんだか期待しちゃうもの」

「アランさんまで」

アカネはぷいっとして顔をそらした。

「それはそうとアカネちゃん。ここにいる人たちのこと全然知らないでしょ? 少し紹介しようと思って声をかけにきたんだ」

「あら。それは、とても助かるわ。私も知らない人ばかりだったから少し困っていたの。ぜひ、お願いしたいわ」

「うんうん。それはよかった。一度に全員紹介するのも難しいから、まずは何人か呼んでくるよ。少し待ってて」

アランはそういって席を外したのち、三人を引き連れて戻ってきた。

いずれも男性で、それぞれが雰囲気を感じさせる出で立ちをしている。


「早速紹介するよ。右から順にマイケル、ギャレンだ」

「はじめまして、マイケル=クラークだ。内政全般を取り仕切らせてもらっている」

「はじめまして、ギャレン=シリングです。私は主に財務関連のことを担っております」

マイケルと名乗ったものは、60代くらいの白髪にひげをたくわえた人物で、少し厳しそうな雰囲気がある。そして、ギャレンと名乗ったものは、マイケルとはうってかわって20代くらいの物静かそうなたたずまいの青年だ。

「彼ら二人はこの国の内政をつかさどる重要な人物でね。討伐隊に加わることはないだろうけど、きっと後方から十分な支援をしてくれるはずだよ」

「まだ、あなたのことがよくわからないのでなんとも言えませんが、こたびの案件は国として非常に重要なことであるため、支援に関しては万全を期しますので、ご安心を」

マイケルはどこか疑うような感じでアカネを見定めている。ギャレンはマイケルの意見に同調するようにうなずいていた。

「こちらこそよろしくお願いします」

アカネはあまり歓迎されていないような空気を感じつつも、挨拶をして頭を下げた。


アランは、続けて最後の一人を紹介する。この会場のなかでもひときわ大きくとても目立っている。

「そして、このでっかいおじさんが、我が騎士団所属の重騎士。ドーンだ。とにかくなんでも攻撃を防いで守ってくれる頼りになる存在さ」

そう言ってアランが紹介したものは、40歳くらいの体が縦にも横にも大きい人物で、背丈は190cm近く、体格はゆうに100kgは超えていそうな人物だった。

「おう。俺は、ドーン=トーレスってんだ。よろしくな、嬢ちゃん」

そう自己紹介して、ドーンは豪快に笑う。

「はじめまして、ドーンさん。とても大きな体をしていらっしゃるのね」

「ん? おぅ。それだけが取り柄だからな。嬢ちゃんも魔物に襲われそうになったら俺の後ろに隠れるといいぞ」

と言いながら「ガハハ」と再び豪快に笑っていた。


「ドーンは見た目通りとても頼りになる人物だよ。戦いではまさに壁となって、敵の攻撃を防いでくれるし、日常においても何かと手を貸してくれる存在さ。アカネちゃんも何か困ったら、ドーンを頼ってみるといい。きっと力になってくれるはずだよ」

「おぅ。難しいことはよくわからないが、とりあえず俺に任せておけ!!」

根拠があるというわけではないが、なぜだか安心感を与えてくれるような人物だ。

「よし、じゃぁ、また、他の人たちも連れてくるよ」

アランがそういったそのときだ。

会場に緊急事態が告げられた。


会場の扉が荒々しく開けられたかと思うと、

「敵襲ー。敵襲です。マグダット郊外に多数の魔物の群れが確認されています」

息を切らせて現れた突然の使者の通達に周囲はさざめく。

しかし、そこはさすが国の重要人物が集められたところである。

みな、すぐさま自分の役割を果たすべく行動を開始した。

アランもまた瞬時に指示を飛ばす。伝令から、魔物の出現地を確認し

「ドーンは騎士団を招集。マリカは魔法兵団を率いてきて。城下外れのいつもの草原で落ち合おう。僕が戦闘でいない場合でも、リロイはそこに残しておくからそこからはリロイに従って」

「は。仰せのままに」

ドーンとマリカと呼ばれた女性はアランの言葉を聞くとすぐさま会場を飛び出していく。

「というわけで、行くよ、リロイ」

「はい。急ぎましょう」

出立の準備を始めるアランたちに、当然と言わんばかりに


「アランさん。今日は、私たちも加勢するわよ」

「えぇ。なんなりとお命じください」

「もちろん娘たちだけ戦場に行かせるなんてことはできませんから、私も加わりますよ」

ミサ、ミア、アルバンもアランに協力を申し出る。


「アルバンさん。ありがとうございます。まずは状況を把握することが先決です。アルバンさんがいてくれることは心強い限りです」

「私が力になれればよいですが」

「アルバンさんに、ミサちゃん、ミアちゃんがいるならこちらの負けなんて考えられませんよ」


そして、今度はカインからも申し出があった。

「兄上。私も参加させてください」

カインの発言にアランは少し戸惑った。

「それはうれしいことだけど、カインはアイナ王女の警護が……」

「私なら大丈夫です。カイン以外のザイン騎士団もまだ城内にいますし、むしろ私からもお願いします」

「えぇ。アイナ様の警護は団員たちにお願いしておきます。むしろ、城への進撃を防ぐことの方が結果的にアイナ様をお守りすることにつながります」

アイナからの進言も受けたことでアランは快諾し

「ありがとう。では、カインよろしく頼むよ。そして、アカネちゃんは……」

アランから話をふられたアカネは当然という感じで参加を表明する。

「もちろん行くわ」


しかし、すぐさまルーベンが止めに入った。

「アカネ様!! 危険です」

アカネの発言は予想はしていたことではあるが、ルーベンはアカネを危機にさらすわけにはいかないという思いにかられてしまう。

しかし、アカネはそれをさえぎり

「ルー。ここで行かなかったら、皆、なぜ私が選抜隊に選ばれているのか、疑問に感じてしまうわよ。大丈夫、今度は私一人じゃないし、無茶なことはしないと約束するわ」

「……」

しばらくの沈黙の後、ルーベンはアカネの意志をくみ取り

「わかりました。でも、本当に無謀なことは避けてください」

「えぇ。わかっているわ」

アランは二人のやり取りを聞き終えると

「よし、アカネちゃん、一つ約束だ。僕のそばを離れないこと。ルーベンくんを安心させるためにもそれだけはお願いしよう。それに万が一の場合でも僕が必ず守るから」

アランの力強い言葉にアカネもルーベンも励まされる。

「わかったわ。足手まといになりそうだったらすぐに身を引くから」

「いや、魔物がどんな感じかわからないけどアカネちゃんなら戦力になるんじゃないかな、きっと。じゃぁ、みんな、いこう」

「おぅ!!」

一同は気合を入れて会場を飛び出していった。


「アカネ様、本当に無茶はだめですよ」

ルーベンはアカネのむこうみずなところがある性格から、どうしても心配な気持ちが勝ってしまい、そう念を押した。

「えぇ、ルーも、私の活躍を期待していてね」

「いえ、活躍よりも無事でいてくれるかだけが気がかりです」

「大丈夫よ。私を信じて」

「はい。くれぐれもお気をつけて」

ルーベンはじっと目を閉じ、覚悟を決めて送り出した。

「そうだ、アイナ。ルーのことをお願いしてもいいかな?」

「はい。ルーベンさんも、我がザイン騎士団のもとお預かりしますわ。いいわよね? カイン」

「もちろんです。アカネ様、お任せください」

「ありがとう。じゃぁ、よろしく頼むわよ」

「お姉さまも、どうかお怪我などなく帰ってこられることをお待ちしています」

「えぇ。また武勇伝をアイナに聞かせてあげるわ」

「はい。楽しみにしています」

アイナもまたルーベンと同じくアカネのことが気がかりだったが、笑顔でアカネを見送った。


アランを先頭に城を飛び出した一同。郊外までは、小一時間ほどの距離があるが、馬車などの手配を待つよりも、走ったほうが早いだろうということで、駆けだしている。それぞれが最低限の装備である軽装なことも要因の一つだ。武器などはあとから加わる騎士団が所持する手はずである。


城下町は、魔物の襲来など嘘のことのように穏やかな日常が送られていた。

家の周りを清掃しているもの、散歩をしている老人、井戸のまわりに集まり談笑している女性たち。

いつもと同じ情景が広がっている。

しかし、そこに騎士団長であるアランたちが勢いよく走り抜けていったため、住民たちは何事かあったのだろうかとにわかに騒然としはじめていた。


そんななか、アカネは自身のアカネイトの街を思い出しながら、活気がみなぎっているこのマグダットの街にも興味を持ち始めていた。この街を知ってからわずか数日しか経っていないものの青果店や服屋、飲食店など、商店はみな人でにぎわっており、大きな道や広場では子どもたちが所狭しと元気に遊んでいる。

街道の整備などをみても、よくよくこの国が正しく治世されていると感じ、この賑わいが今のアカネイトにもつながっているのかもしれないと思うと、アカネは少しうれしくなり


「アランさん。私、まだこの街を知ってから日が浅いけど、活気にあふれていてなかなかいいところみたいね」

「アカネちゃんも気に入ってくれた?」

「えぇ。今度ゆっくりと街をまわってみたいと思っているわ」

「それなら僕が案内役をつとめさせてもらうよ」

「ふふ。考えておくわね」

「お。少しは期待がもてる返事だね。じゃぁ、それを実現させるためにも魔物を食い止めないとね!!」

「そうね。絶対にやりとげましょう」


アカネたちは街を走り続け、次第に郊外の草原が見え始めてきた。

そこには遠目からでもわかるほど、思いもよらない状況が広がっていた。


「な、なんなんだ。これは……」


アランのつぶやきに、その他のものも絶句している。


西の方角からはブラックコンドルをはじめとした飛行集団の群れがあたりを覆いつくさんとしている。

天気は晴天であるのにその集団のせいで曇天になろうかというほどの勢いだ。

総勢100羽近くいてもおかしくないくらいである。

また東からは、三角サイの集団が見え、他にも様々な種族が見え隠れしている。こちらも100頭はいるかのような群れがかまえている。


どちらの集団も、その場にとどまりこちらの様子をうかがっているようだ。

これらが一斉に襲い掛かってきたとしたら、どのような街や城でも多大な被害を被ってしまうであろうことは想像にかたくない。


驚きを隠せない一団に、見張り役だった兵士がアランに駆け寄る。

「アラン様、お待ちしておりました」

「うん。早速だけど、このありえない状況はどういうことだい?」

「はっ。ご覧の通りの集団が少し前に突然現れまして、以後、現在と同様こちらの様子をうかがっているような感じで、たたずんでいるばかりです」

「攻撃は?」

「一度もありません。ただじっとこちらを見据えているままです」


魔物の群れはアランたちの到着を見ると一斉に視線をそちらへと向けた。


「うーん。リロイ、どう思う?」

「不思議ですね。ただの魔物の襲撃でしたらここまで統率もとれませんし、ただただ襲い掛かってくることでしょう」

「うん。さっきからのこの視線、まるで僕たちの到着を待っていたかのようだよね」

「えぇ。今の話を聞いていれば城や城下町を目指していたのならば、そちらはとっくに、襲撃をうけていたことでしょう」

「そうだよね。じゃぁ、やっぱり待っていたのかな?」

「それはわかりませんが、そのような知性を持つものばかりの集団には見えません。複数の種族が混じっている以上これだけの統率が図られていることも不可思議です。何らかの作為的なものを感じますね。ただ、いずれにしてもこのまま放っておくわけにいかないことだけは確かです。なかには、なかなか狂暴な種族も見えますから」

「そうだね。考えていても仕方ない。ここは戦闘をはじめるしかないか」


アランはすぐさま作戦を組み立て、

「僕とまだ到着していない魔法兵団は西の飛行部隊にあたる。カインもまた現れたマグダット騎士団を率いて地上部隊のせん滅にあたってくれ」


「え? 私が指揮をとるのですか」

カインはアランからの指名に少し驚いた。

「そうだ。この場で任せられる最善の選択は君だ。カイン、君に任せたい」

「ですが、私は、ザインのものであり……」

「人々に危機が迫っている以上、国籍がどこであろうと関係ない。ドーンが到着次第、説明する。民を守る。何よりそれが騎士団の務めだろう?」

アランの言葉にカインもはっとして

「かしこまりました、兄上。全力を尽くさせていただきます」

「うん。カイン。君ならできるよ」


「そしてミサちゃんは僕と、ミアちゃんはカインに従って欲しい。アルバンさんは後方に控えて適宜、両部隊のサポートにまわってください」

アランは矢継ぎ早に、役割をふっていく。


「アランくんは、相変わらず手際がいいね。サポートは任せてくれ。ミサとミアもアランくんの指示通り頼むよ」

「わかったわ」

「わかりました」


一方のアカネはこれまで見たこともない魔物の集団に多少の動揺を覚えていた。

(なによ、これ。こんな魔物の群れ初めてだわ。見たこともない種族も多いし……)


そんなアカネに気づいたアランは

「おや、アカネちゃん。怖いかな?」

「そ、そんなことはないわ」

アランは、アカネを落ち着かせるように話し始める。

「無理もないよ。正直、僕も驚いている。一度にこの数の群れは見たことがない」

「そうなの?」

「あぁ、想像以上の襲撃だよ。だから、無理はしなくていい」

「いえ。私も自分の意志でついてきたわけだし、足を引っ張らないくらいには貢献したいわ」

アカネは精一杯の返答をするが、内心ではまだ怖気づいていた。

そんなアカネの心をくみ取ったアランは優しい声で

「そうか。わかった。いずれにしても、僕の目の届く範囲で行動してくれ」

「えぇ。了解よ。でも、私が邪魔になるようだったらすぐに後方に下がるから伝えてね」

「おや? アカネちゃんらしくない物言いだね」

「そりゃぁ、こんな理解に苦しむ状況ですもの。それくらいはわきまえているわ」

「了解だ。でも、なるべくアカネちゃんは僕のそばにいて欲しいかな。そのほうが僕に力が湧いてくるからね!!」

「また、そんなことばかり言って」

アカネはアランの言葉に少し安心して平静を取り戻しはじめているようだ。


「さぁ、このまま指をくわえて見ているわけにはいかない。相手が仕掛けてくる前にこちらからいこう。アカネちゃん、ミサちゃんいくよ」

『えぇ』

「リロイ、君はドーンとマリカが到着次第、状況を説明し、先ほどの役割に誘導してほしい。その後はアルバンさん同様に後方から支援を頼んだ」

「わかりました」

「そしてカイン。ミアちゃんのこと、よろしく頼むよ。作戦は二人で考えてくれればいい」

「はい。兄上」

「じゃぁ、あとはミアちゃん。ミアちゃんもまた、弟の力になって欲しい。なにかおかしなことするようだったら、遠慮なく魔法をぶちあててかまわないよ」

「そんなことしませんから」

「ははは。まぁ、二人なら問題ないと思うけど、まずは騎士団到着までは油断しないよう」

「はい」

「兄上の期待を裏切らぬよう、邁進いたします」

「相変わらずカインはかたいなぁ、そんなに力が入っていたら戦う前に疲れちゃうよ。リラックス、リラックス」

アランはカインの緊張をほぐすように肩をつかんで揺さぶった。

「兄上、い、今は、そのような状況では……」

「うん、うん。少しは力も抜けたかな。さぁ、みんな、スタートだ!!」


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