第40話 嫌か、嫌じゃないか、で言うと
翌朝早くにレイフォードさんとマルガレーテさんは館を出発した。会場である村の広場へ向かったらしい。
昨夜のことがあって、なかなか寝付けなかった私は寝不足気味だった。
どうしよう、酷い顔。せっかくのお祭りなのに。
少しでも顔色が明るく見えるように、レイフォードさんのお母さんにもらった化粧道具でメイクする。
――レイフォードさんに抱きしめられるなんて。
以前、聖堂で私が精神崩壊したときは慰める感じで引き寄せてくれた。
あれとは違う。
本当にぎゅっとする感じ。なんというか、しがみつかれるような。
よく分からないけど、すごく切望する雰囲気だった。
まるで、そうせずにはいられないというような。
どうしよう。恥ずかしいけど、嬉しいような。
え、私、嬉しいの?
分かんない分かんない。
でも……嫌じゃなかった。
すごく鼓動がバクバクして、そして押し付けられたレイフォードさんの胸からも彼の心臓の音が聞こえた。
私よりずっとゆっくりで、重く落ち着いた鼓動。
真っ赤になった私とは対照的に彼は表情も声も落ち着いていた。
なにか理由があったのかな?
すごく疲れていたから?
実は手紙が好きで、貰って嬉しかったとか?
でもヒューさんの手紙は忘れてた。
ということは……
――私だから?
そう思ってしまう。
私、自意識過剰じゃない?
でもそうだよね?
そう思いたい。そう自惚れても、いいんだよね……?
問いかけるように私は鏡の中の自分を見つめた。
扉をノックする音がした。
「リリーちゃん、準備できた? そろそろ行くよ」
ヒューさんが私を呼びに部屋まで来てくれたのだ。
「は、はいっ」
私は急いで財布代わりのビーズ刺しゅうの巾着を掴むと部屋を飛び出した。




