魔力と魂力と業と悪魔
「なら、魔法を使ってみま〈マスター、それは無理ですよ?〉すかってえ?」
何か聞きたくないことを言われた気がする…
〈ですから、今はまだ魔法が使えませんよ?〉
「え?え?なんでだ?魔力が使えるならあとは何とかなるんじゃないのか?」
〈いえ、マスターの知っている魔法とこの世界での魔法は少し違います。使うのは魔力ではなく魂力です。魔力は、そうですね…わかりやすく例えるなら石油みたいなものでしょうか…そして、魂力はガソリンのようなものですね〉
「つまり俺はその魂力とかいうのを使えるようにならなくてはならないと…」
〈はい。ですが、そんなに難しくはありませんよ?〉
「そ、そうなのか!なら今すぐにでも「ふぅわー」ん?どうした、ナノ。眠いのか?」
「はいなのです」
寿命が長いと思われるエルフの血を引いていたとしても眠いものは眠いのか…俺が全く眠くなってないから気づかなかったな。
「ダミーコア、場所を移そう。ナノ、また明日。お休みなさい。えっと、ベットとかは「このまま蟻さんの上で寝るのです。以外と快適なのですよ」そうか」
〈では、お休みなさい〉
「お休みなさいなのー」
俺は広義で見れば土木作業用のモンスターだからか、夜中にも活動できるようデフォルトで暗視能力があるようだった。ナノもエルフの血を引くため、ほとんど暗闇でも見えるそうだが、心配なのでウィスプを明かり代わりに置いて、部屋を出た。
「さて、ダミーコア。どうやればその魂力とやらを使えるようになるんだ?」
〈簡単に言いますと、気合…でしょうか?〉
「いやいやいやいや、そんな少ない情報じゃ魔力の時より難易度高いだろ!」
〈私には魔力はあれど魂力は存在していないのです。それはダンジョンから生まれてくる存在全般に言えますね。〉
「えっ、てことは俺も使えないんじゃ?」
〈前のダンジョンの記憶だと、マスターは前マスターによって創り上げられたユニークモンスターとあったので、その定義には当てはまりません。〉
「なるほど?」
…俺の今のこの体ってそんな特別なの?なら何で農業用モンスターなんだろうか…
〈なので、マスターには頑張ってもらうしかないのです〉
「うーん、納得いかないこともあるけど、そんなことより魔法だな。よっしゃ、気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合………」
思い出せ、前の世界にいた時の異世界に来るための努力を!!
異世界に来ることができた俺ならきっと何とかなるはずだ!!
俺は夢中になって気合を入れまくっていた…結果、周りの景色が変わっていることに気がつかなかった。
「気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ気合だ「…欲が小さいやつじゃ…業値が高いだけで欲望がちっぽけではないか…こんな小僧に呼び出されてしまうとは…なんとも嘆かわしい」って爺さん誰だよ?」
いつの間にか俺は、部屋いっぱいに金色の物体が散乱している部屋の中にいた…いや、広さ的にも造り的にもここはまさに王の間とでもいうべき場所にいて、さらには玉座?に座っている老人に話しかけられていた。
?がつく理由は、その椅子が座っている老人に対して大きすぎるからだ。
「儂か?儂の名はマモン。人間からは強欲の悪魔と呼ばれているのじゃが…貴様ごときのちっぽけな欲望で呼び出し追ってからに…対価は命だと思っとれ」
…この爺さんはいきなり出てきて何を言っているのだろうか。
それに、この場合呼び出されているのは俺の方な気がするのだが…
「い、命って…というか、やっぱり悪魔いたんだな」
「ん?お主そんなことも知らぬのか…おかしいのう…ダンジョンだったら低級悪魔くらいおるじゃろうに…ちと記憶、覗かせてもらうからの」
と言って、玉座?から立ち上がり俺の頭に手を乗せてきた。
「え?は?ちょっと爺さん!?」
「…ファファファファなるほどのう…お主転移、いや、転生者か。なるほど、悪魔という存在はいたとされていつつ存在は確認されていない世界…か。これはあの世界のことかのう…」
「!!じ、爺さん俺の故郷、いや、俺が元いた世界を知っているのか?」
「確証はないからなんとも言えぬな…じゃが、見当はつく…数千年前、儂が欲の限りを尽くそうとした世界だったはずじゃ…
あの世界の人間どもときたら、思い出しただけで腹がたつ…
無理やり呼び出したかと思ったら私達の欲望を叶えてください、じゃぞ?別にそのこと自体はまぁ、よくあることなのじゃが…対価を踏み倒したのじゃよ…あの世界の人間どもはな…
故に我ら悪魔はあの地にはもう二度と行かぬようになったわけじゃな…
まぁ、いい、ククククク、いいぞ…儂は貴様を気に入った。お主のような業の溜まり方はなかなか珍しい…何か欲しいものがあったら儂を呼ぶといい…貴様の魂を代価に欲を叶えてやろう…まぁ、その前にお主には力の使い方を覚えてもらう必要があるが、な」
「た、魂って…寿命が縮まるとかか?」
「どういう意味じゃ…そんな訳無かろうて…あぁ、お主の世界では魂が命と同義なのか。儂らが一般的に求める代価はお主がさっきから欲しがっておる魂力の話じゃよ」
「え?魂力ってそんな重要なものだったのか?」
「いやいや、普通の人間ではまず、儂並みの悪魔との取引材料になるような魂力を生み出すことすらできまい…
お主は世界の理を無視し、ここに来たからこそ業値が上がったため、儂並みの悪魔と取引できるような魂力が生み出せる…
その上で、儂に対応する魂力を生み出せる存在は非常に珍しいのじゃよ」
「対応する魂力って言ってるからには対応しない場合もあるのか?」
「そうじゃの…お主は儂の次に嫉妬の悪魔…レヴィアタンとなら取引できるじゃろうな…逆に暴食の悪魔…ベルゼブブや、怠惰の悪魔…ベルフェゴールとの取引は不利になるじゃろう」
「?不利になる理由とかってあるのか?」
「あるぞ?儂らのような大悪魔となれば存在しているだけでも業が溜まるのじゃが…やはり、新鮮な方が美味いのじゃよ。
それでじゃな…有利、不利というのはそのものの業がどのように溜まったのかによって変わってくる…
お主の場合、異世界に行って周りを見返してやるという強欲…そして、その根源にある普通な自分に対する卑屈さからくる周りへの嫉妬…その二つが貴様の根本にある…
よって、儂に対しての取引は有利になるのじゃ」
「…それなら俺の場合強欲じゃなくて暴食も有利にならないか?というか、業がメシなのに、どうして魂力を集めるんだ?」
「魂力は、間食というやつじゃ。
で、質問に対する答えなのじゃが…言ってみれば強欲と暴食は似て非なるものなのじゃよ…
そうさな…お主の強欲は自分一人で目標を成し遂げたいと願ったからじゃな…要するに強欲に対応する業は周りを利用してでも、自分で目標を達成したい時、溜まるのじゃ…
対して暴食は、周りのものから採取し尽くすことによって自分の目標の達成を目指す…要するに、暴食に対応する業は、周りの力を奪って自分のものとすることで、溜まるのじゃ…
お主、周りの迷惑も考えつつ業を溜めたようじゃから、完全に強欲よりになっておる…
お主は幸運じゃぞ?何せ、迎える最後が違う…」
「迎える…最後?ってことは、死に方ってことか?」
「その通りじゃ…儂の適応者が迎える最後というものは、悲惨な結末だったこともあったが、たくさんの人に悲しまれつつ死ぬ最後もあった…
対して、暴食は…必ず孤独に死ぬ…当然じゃ、周りのものから全てを奪っておる…ならば、残るのは絶対的強者たるそのものだけ…
な、幸運じゃろう?お主がその欲をどう使うかによって、結末は変わる…
儂としては、お主が悲惨な最後を遂げた方が美味な業を食べられるから、そっちの方でもいいんじゃがな…
最近、業を食っても幸福感が得られにくくなってきておったからな…せいぜい楽しませてくれると助かるのう」
…なんか普通にいいおじいちゃんにしか見えない。
「わかった…あ、とりあえずその魂力の生み出し方とかを教えてくれないか?生み出したら渡して帰るからさ」
「よかろう…では、儂の第一の加護を与えよう」
【第一の加護:強欲の剣】を手に入れた
「その剣は簡単に言えば儂に魂力を捧げる仲介じゃ。捧げた魂力の量によってその剣の性能も上がるから、暇があったら儂に魂力を送っておくれ」
…この会話って…いや、何も言うまい。
「その剣に触れたらお主の持つ魂力を1時間に10%吸収するから、それで魂力の感覚を覚えればいい」
「ありがとうよ、爺さん」
「フォフォフォ、儂は悪魔じゃぞ?それも強欲の。…お主、業の値はずば抜けて高いのだ…きっと、美味のはずだ…そうでなかったら…まぁ、どうにかはするがの」
…と言いつつ、表情から察するにこれは照れ隠し…誰得だよ。
「じ、爺さんとりあえず元の場所に帰りたいんだが」
「この場所に来てから時間の経過はないから安心して帰れるといい」
俺の足元に魔法陣のようなものが現れる。
「あ、そういえば、この場所の具体的な位置ってどこなんだ?」
「地獄じゃよ…では、また今度な」
…もう二度と来たくなくなったよ、爺さん…




