54話 魔王女の太ももはマシュマロより柔らかくて、甘い鳴き声がする
魔王女の太ももはマシュマロより柔らかくて、甘い鳴き声がする
シアはヒビキの姿を見つめると、その透き通るような白い太ももをそっと手のひらで叩き、これ以上ないほど甘く、蕩けるような微笑みを浮かべる。
「さあ、ヒビキ様、どうぞこちらへ。シアの太ももは、この世界で一番柔らかくて、ヒビキ様のためだけに用意された特別な場所ですわ」
断る理由も、別の場所を探す気力もないヒビキは、お言葉に甘えて彼女のすぐ隣へと歩み寄り、そのまま芝生の上へと身体を横たえた。
すとん、と。
シアの、驚くほどなめらかで極上の柔らかさを誇る太ももの上に、自らの頭を預ける。
頭の後ろに伝わる、マシュマロのようでありながら、どこか吸い付くような至高の弾力と、シアの身体から発せられる心地よい体温。そのあまりの心地よさに、ヒビキは無意識のうちに小さく吐息をもらした。
「ああ……っ」
ヒビキを膝の上に迎えた瞬間、シアは脳の芯までとろけてしまったかのような、この世のものとは思えない至福の表情を浮かべた。
愛おしくてたまらないといった様子で、彼女は細く白い指先をヒビキの黒髪へと滑らせ、優しく、羽毛で触れるかのようにその髪を梳いていく。
「ヒビキ様の髪、とても良い匂いがしますわ……。先ほどの嫌なおなごの匂いなんて、もう綺麗さっぱり消えております。シアはこうして、ヒビキ様と一日中、何もしないで、ただお日様を眺めていられたら……それだけで、生まれてきて良かったと心から思えますの」
彼女の言葉は、魔王女としての野心や義務を全てかなぐり捨てた、本物の「サボり魂」からの告白だった。
ヒビキは、太ももの心地よい弾力に身を委ね、青空を見上げながら、気だるげに、けれど深く同意するように呟いた。
「……俺も。サボるの最高」
その一言に、シアのラベンダー色の瞳が、まるで奇跡の共鳴を見たかのように激しく輝いた。
ヒビキにとっての「怠惰」と、シアにとっての「ヒビキと過ごす時間」。二人の至高のサボり精神が、平原の風の中で完璧な一体感となって溶け合っていく。
シアは、膝の上のヒビキをもっと自分の一部にしたいと願うように、さらに上体を深く折り曲げた。
彼女の豊かな胸元がヒビキの視界を優しく覆い隠し、零れ落ちる銀色の髪が、彼の頬を甘くくすぐる。
「ヒビキ様……もしもシアを置いてどこかへ行ってしまわれたら、シア、寂しくて寂しくて、本当に死んでしまいますわ……」
彼女は、まるで耳元で熱い息を吹きかけるように、切なく、そして甘く囁いた。
「だから……ずっと、ずっと、シアを側に置いてくださいませね?」
その必死で、どこか狂おしいほどの甘えぶりに、ヒビキは観念したように小さく目を閉じ、そっと手を伸ばした。
そして、自分を膝枕してくれているシアの小さな頭へと手を乗せ、優しく、その滑らかな銀髪を撫でてやる。
よしよし、と。
無駄な労働を嫌う彼が、ただ彼女の甘えに応えるためだけに、その手を動かす。
「……っ」
ヒビキの掌から伝わる確かな愛撫に、シアは極上の撫で心地に身を震わせる猫のように、喉の奥から無意識のうちに、甘く蕩けた声を漏らしてしまった。
「にゃあ……っ」
ハッと我に返ったシアは、自分がしでかしたあまりにも破廉恥で可愛らしい鳴き声に、頬をこれ以上ないほど薔薇色に染め上げた。しかし、ヒビキの手が頭から離れないよう、さらに深く、恍惚とした表情で彼の掌に自らの頭をすり寄せるのだった。
緑の平原を吹き抜ける風が、甘い沈黙を運んでいく。
どこまでもサボりたがりの少年と、彼にどこまでも甘えたい魔界の王女。
世界を揺るがす力を持つ二人が、ただお互いの温もりを確かめ合うだけの、甘く、贅沢な時間が、平原の陽だまりの中でいつまでも続いていた。




