表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

物語が終わるとき ②

 文化祭の最終日。


教室の片付けでも、クラスの打ち上げも、帰り道でさえ、

僕は極力男子たちとだけ過ごした。


その間蘇我(そが)さんがどんな顔をしていたのか。

僕は見ていない。


 ◆


こういう行事の時の帰りはいつも田沼(たぬま)さんと一緒だった。


けれど今日は、どうしても1人でいたかった。


もし、彼女たちの優しさに甘えたくなってしまったら、僕はきっと抗えない。


窓に映る僕を、静かに僕は睨んだ。


 ◆


翌日の振替休日。

特に何をする気にもなれず、ただダラダラと時間を潰し、

夕方になってようやく、買い物をしに外へ出た。


買い物が終わったらまたダラダラして、課題だけ終わらせてすぐに寝た。


 ◆


ー学校、行きたくないな。


こんな事を思ったのは、いつ以来だろう。

制服のネクタイを締めながら思う。


どうしてこうなったんだろう。


僕がいけないんだろうか。


 「好きです。」


あの時、彼女はそう言った。


それは…君だけが持ってる気持ちじゃない。


なのに。


なんで…。


やっぱり行きたくない。


それでも、ずる休みをするような度胸も、僕にはない。


 ◆


学校ではいつも通り過ごすだけで問題はなかった。


男女でグループがきっちり分かれているから。


いつも通り男子の友人たちと楽しく時間を潰すだけで良かった。

けれど、心の中には、いつまでも彼女の言葉が響いていた。


そしてそれが、僕をいっそう焦らせた。


 ー逃げるな。


違う。まだ決められないのは、逃げているんじゃない。

待っているんだ。


 ー何を?


僕が一番わかってる。

僕を好きな人の、その想いを聞くことを。


 ーいつまで待つ?


それは、分からない。


 ーそんなんでいいの?


いいはずないのは知ってる。

けど、その誠実さだって周りからの押し付けで僕自身の性格じゃない。


 ーじゃあ迷う意味ないだろ。


駄目だろ。ちゃんと考えないと。


 ー逃げてるんだ。


違う、違う、違う、違う。


そんな自己問答を繰り返した。


 ◆


…今日の授業、なんだったっけ。


気づけば終わっていた学校からの帰り道。

今日も僕は1人で歩いていた。


前まではそれが普通だったのに、なんで今更、寂しくなるんだ。


 ー噛み締めろ。それがあの子の寂しさだ。


また出てくる…。さっきからなんなんだ…!


誠志朗(せいしろう)くん?」


背中から、僕を呼ぶ声が聞こえた。

「なにかあった?」


泣きたいくらい、叫び出したいくらい。

その優しさが僕の胸を締め付けた。


声のする方へ振り向く。


「…一緒に帰ろう?」


そう言って、田沼優羽(たぬまゆう)は微笑んだ。


 無言のまま、時間は過ぎた。


多分だけど、田沼さんは昨日のことを知っている。


どうすればいい…?


そんな事を、聞ける相手ではない。


「誠志朗くん、私ね。」


そう、彼女は口を開いた。


「私ね、今までずっと恋した〜いって言ってたじゃん?」


そうだね。

しかしその相槌は、喉につかえて出てこない。


「でも実際、恋って簡単じゃないらしくてさ。」


あの導入から、僕が恐れていない方向の話題は断たれていた。


だから、黙って聞こう。


「想いをつたえたって、届かないこともあるし、伝えられる側にだって都合がある。」


やっぱり、彼女は優しい人なんだ。


「もう知ってるとは思うから、一応。」


こちら見て、また微笑んで彼女は言った。


「準備できたら、言ってね。」


もう…逃げられない。


何度も、何度もそう思ってきた。


覚悟を決めた…。


そうやって、自分に嘘をついていた。


「…準備なんて、できるわけない…。」


どうしたって、僕は2人が大切なんだ。


2人といる時間が、大好きだった。

だから、何とかその時間を続かせようとして、

一本道をわざわざ行ったり来たりした。


この苦しさは、多分そのことへの罰なんだろう。


「そんなの…。三玲(みれい)だって、私だって…。」


田沼さんはそこまで言って、続きを言わなかった。


それでも、彼女の震える声は、僕の耳の奥まで届いた。


…クソ!


悔しかった。


情けなかった。


まっすぐ、誠実に、そうやって生きれるように。

頑張っていたつもりでいた。


でも、


自分はみんなに迷惑をかけることしかしてない。


「わかってる…。」


だから…もう。


「…準備なんかしない。」


いつ、この物語が終わろうとも、


その終わり方は、もう決まっている。


すべて、僕が決める。


 ◆


物語が終わる時。


それは誰かが何かを選び、捨てたときである。

次回『物語を終えるとき』


長かった恋の物語。


いよいよ、選択のとき。


明日2/27 20:00公開です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ