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らしさ

 文化祭まで残り2週間をきった11月1日。

僕は田沼(たぬま)さんと一緒に、文化祭に必要なものを買いに学校を出た。


このくらいの時期になると、どのクラスも放課後に残って準備を進めるようになる。


僕ら5組も例外ではない。


テープ類がなくなった。


ついでにハロウィン用のお化け衣装も揃えようという話になった。


田沼さんは一番に買い出しに立候補して、なぜか僕を同行させた。


 『気づいてるの?』


修学旅行のとき、加納(かのう)さんに聞かれた言葉が胸のなかに響く。


まだ、それは"期待"であってほしい。


確信する勇気が、僕にはない。


「ハロウィンと重なるし、お化け屋敷のチョイスはナイスだったね。」


そういいながら横からひょこっと顔を出す女の子。


「なんで蘇我(そが)さんもいるの?」


彼女はお化け役だ。抜け出してきたのか?


別に嫌なわけではないが、それで彼女が他のお化け役から何か思われてたら嫌だ。


「私もお化けだから、衣装を選ぶ。」


なるほど。


確かにそれなら同行したほうが良かったな。


「貴輝はどう?」


三津家貴輝(みついえたかき)。彼もお化け役の一人だ。


だが彼の性格上、脅かし役は似合っていない。


「あぁ、ちょっと大変そう。」


蘇我さんは答えた。


やっぱり…。


「でも、なんで三津家くんお化け訳になったんだろう。」


田沼さんはそう言う。


やはり女子から見ても、彼の性格はお化け向きではないのだろう。


「知ってる?」


彼女はそう僕に聞いた。


 文化祭の係り決めのあと、僕は彼に聞いた。


「なんで貴輝はお化け役にしたの?」


その時はまだ、彼が三田晴奈(みたはるな)を避けたのだと思っていた。


告白騒動があってからもう2ヶ月。


まぁ、自分が砕いた彼女の恋心との向き合い方を模索しているんだろう。


そんなふうに思っていた。


「俺の彼女がさ。」


だから、彼がそう答え始めたときは驚いた。


「俺の彼女がさ、文化祭、来てくれるんだよね。」


彼の彼女。


中学時代から彼がずっと思いを寄せていたその女の子は、事故に巻き込まれ、体の自由が利かなくなってしまっていた。


車椅子生活を余儀なくされているが、今年の文化祭、

学校のテーマが"誰もが楽しめる文化祭"だった。


バリアフリーもその一環として行われ、迷路系のアトラクションは通路の広さが普段よりも広く取られている。


当然、車椅子の人への配慮。


確かに、彼女が来るなら好都合だ。


「だから、俺が頑張ってるところを見せたかったと言うか、少しでも、楽しんでくれたらと思って。」


彼は照れながら答える。


すごいなぁ…。


本当に。


心の底から。


彼が"イケメン"であることは知っていた。


顔だけでない、こういう性格も含めて。


彼のその真っ直ぐで誠実で優しい性格が、一緒に歩く僕を、余計惨めったらしく感じさせた。


 「なんか、彼女さんが来るから、張り切ってるらしい。」


そんな記憶を思い出しつつ、彼女たちの疑問に答え

た。


「あぁ〜。」


「三津家くんらしいね。」


彼女たちは口々に彼の覚悟へ感想を述べた。


らしい、か。


そうだ。


確かにこの判断は彼らしい。


じゃあ。


僕らしいって、なんだ?


2人と歩きながら考える。


気づいてる?


ふと加納さんの言葉を思い出した。


いいや。


まだ違う。


僕は僕らしさを見せれていない。


僕は三津家貴輝に、まだ()()()いる。


そんな僕が、彼女たちの気持ちを決めて良いわけがない。


少なくとも、僕らしさ。それを見つけられるまで。


僕が自信を持つのは、多分それから。


いつか2人に、


「誠志朗らしい。」


そう言ってもらえる自分を見つけてから。


僕は彼女たちに、覚悟を見せられる。

29話&30話、明日の朝8:00公開です。


いよいよ迎える文化祭本番。


物語が動くとき。

それはーー。

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