思い浮かべて
修学旅行は最終日。
今日はみんな大好きULJ、ユニバーサルランド-ジャパンで遊びつくす。
ある人は想い人を誘い、またある人は一般人へのナンパを試み、さらにある人は同性のみでグループを組む。
僕は想い人を誘うほどの度胸も、ナンパするほどの精神力もない。
必然的に同性と回ることになる。
「なぁ誠志朗、どこ回りたい?」
浅井和輝はいわゆる陽キャというやつで、クラスの派手なグループの中心の一人だ。
「僕はどこでも。」
対して僕は群れられないコミュ障。
これをトラウマのせいにするのも、いい加減やめなきゃいけない。
「誠志朗って遊園地とか行くの?」
そう尋ねてくる三津家貴輝も、陽キャであるが、浅井君とは一線を画す。
明るいタイプという訳ではない。
けれどノリが悪いわけでもない。基本的に器用に何でもできてそのうえ顔がいい。
派手なグループだろうと地味なグループだろうと彼を嫌う人はそんなにいない。
「ん~あんまり。ジェットコースターとかは乗ったことない。」
僕は遊園地に行ったことはある。
あるが、遊びに行く目的はあまりない。
父の付き添いがほとんどだった。
だから今日はワクワクしている。
初めての、ジェットコースター。
結論から言おう。
そんな僕が夢見ていたほど、現実は甘くない。
あほみたいに長い待ち時間の後、ようやく乗ったジェットコースターは、正直言って、死ぬかと思った。
頭から落ちるなんて聞いてない。
あんなに怖いなんて聞いてない。
なんでみんな笑っていられるんだ。
ほぼ失神しかけの状態でライドを終えて、今はベンチに寝そべっている。
隣には派手グループの、誰だっけ。
絡みがないとマジで名前を覚えられない。
「誠志朗って、おもろいな~。」
スマホをいじりながら彼は言う。
「面白くないわ。マジで死ぬかと思ったんだぞ。」
会話はほぼ初めての彼となら、最初からこのスタンスで行けると思った。
「ははは。見ればわかるわ。」
彼はこうやって会話している最中にもスマホを手放さない。
「ていうか、いいの?みんな別のとこ言ったっぽいけど。」
彼だけ僕のせいで残っていたとしたら、それはそれで申し訳ない。
「あぁ。いいのいいの。俺もこういうのは苦手だから。」
…。いやさっき思いっきり楽しんでただろ。
「嘘つけ。」
彼は笑った。
僕も笑った。
こんな時間は初めてだった。
結局、僕は10分ほど休憩してみんなと合流した。
この後はボートに乗ってサメから逃げるアトラクションへ行くそう。
僕としても、今日は楽しむつもりで来たんだ。
何が待っていようと問題ない。
やはり、遊園地という場所は僕には不向きかもしれない。
おとといのお化け屋敷もそうだが、怖いのはだめ、ジェットコースターみたいに速いのもだめ。
今のみたいにスリリングのもだめ。
「誠志朗、俺とお土産選ぼう?」
三津家君の圧倒的優しさに包まれて、お土産ショップへ行った。
お土産屋さんにはたくさんのグッズが売られていた。
もともとエンターテインメント企業の傘下の経営だから、アトラクションもその制作会社の映画やアニメ関連のものが多い。
いわんやグッズをや。
この人形なんか…。
…無意識に手が伸びた商品。
それを棚に戻す。
まったく。
今は恋の熱なんてどうでもいい。
適当なキーホルダーとバイト先へのお土産としてお菓子を買った。
当然それだけで一日は終わってくれない。
まだ集合まで時間があった。
いったんみんなと合流してお昼ご飯にした。
そのあとはまたみんなでアトラクション巡り。
と言っても僕は何にも乗れないことが判明しているので列の外で待機。
僕がいなくなると奇数になってしまうので、強制的に一人が待ちに回るじゃんけん大会を開いていた。
どんな気持ちで見ればいいんだろう…。
でもその大会のおかげで、今まで話す機会があまりなかった人とも話すことができた。
音楽の趣味に、バイトの話。今日のこと、修学旅行のこと、体育祭のこと、みんなのこと。
そしてなぜか。
そんな話をするたびに、脳裏に二人の顔がよぎった。
今は、関係がない。
でも、この話はしてなかったな。
どんな反応するかな。
今何してるかな。
そんな、好きな人、特別な二人。
それを忘れて過ごすことは、やっぱり難しいらしかった。
夕方の新幹線に乗って、東京へ帰ってきた。
明日は一日休み。
明後日から通常授業。そして、文化祭準備の始まりだ。
…何もなかった、かな。
次回からは、誠志朗の知らない物語。
2人の女の子の、物語です。
※文化祭は来週から始まります。
2/15(日)20:000更新です。




