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"付き合う"ということ

加納(かのう)さんと付き合うことになった』

そう浅井(あさい)君からメッセージが届いたのは、夏祭りの翌日だった。

グループの方で送ってくれてもよかったのに、

律儀に個人メールに。

『よかったね、おめでとう』

そう返信する。

晴れて二人の恋は成就したわけだ。

加納さんにもお祝い送るべきかな。

…いや、加納さんから報告がない限りはよそう。


 朝起きて、急いで家を出る必要もないのでゆったりお茶を飲みながらテレビを見る。

連日の猛暑が〜とか、暑い夏を乗り切る〜とか。

いつもと同じような内容ばかり。

ぼーっとテレビを眺めながら考える。

"付き合う"って、なんだ。

そばにいるだけなら、付き合う必要はない。

そういう行為も、別に付き合っていなくてもできてしまう。

二人きりでどこかへ行く、友人でもできる。

互いの家に遊びに行く。恋人でないとできない行為ではない。

…つまるところ、関係に名前が欲しいのだ。

友人、知人、そんなものではなく、もっと他者を断絶するような名前が。

恋仲じゃないと駄目なことなんて1つもない。

だが当人同士は二人じゃないと駄目なのだ。

「友達と遊びに行く」

という発言に対して、

「自分も行きたい」

と言うのは簡単な話。

たが、それが

「恋人と遊びに行く」

に変わった瞬間、他者である自分が入り込む余地がスッとなくなるのだ。

彼らはそれを望んでいるのだ。

「ここから先は俺たちだけの領域だから、踏み込むな」

それが、"付き合う"という行為の持つ意味だ。

「残酷だなぁ〜。」

お茶を啜り、テレビに向かって、僕は一人呟いた。


 "付き合う"目的は、2人きりになること。

昨日やっと気づいたことだが、僕は中学時代、確かに恋をしていた。

世の中では、というか僕もなのだが、

"恋"="付き合う"だと思っていた。

けれども、今更になって恋心を自覚した僕が、中学時代好きだった彼女と付き合いたいか考えてみても、そういう訳では無い。

 彼女、水瀬叶(みなせかなう)と一緒にいる時間は心地よかった。

それでも付き合いたいと思わなかったのは、

彼女が僕を好きではないことに気づいていたからだろう。

彼女の目的は、僕の実家のお金だった。

厳密に言えば、彼女の家庭の目的なのだが、まぁそこはどうでもいい。

僕の実家が訳ありなのもあって、学校では煙たがられていた。

そんな僕に明るく話しかけてくれていた彼女に、恋心を抱くというのは無理のない話だ。

 頼めば付き合えたのだろうか。

おそらくそうだろう。

でもそうしなかったのは、

それこそ、僕の彼女への恋心なんだろう。

 彼女と付き合えば、当然彼女が嫌いな奴と一緒にいる時間が増える。

それは僕にとってよくないことだった。

単純すぎるくらいだが、好きな人に我慢を強いたくなかった。

できることなら、好きな人に好いてほしかった。

そうなれば、晴れて僕は彼女と対等、"恋人"になることができる人間になれるから。

 今になって整理がついた。

なんだか笑えてきた。

僕が好かれる、そんなことはたぶん不可能だ。

浅井君を見ても、三津家(みついえ)君を見ても、何かが欠けている。

大人になるためのパーツというか、人として生きるためのパーツが、僕にはない。

そんな感じがする。

それは家柄のせいじゃないし、過去せいじゃない。

圧倒的に、僕自身が足りていない。

それを理解したうえで、誰かに好いてもらえたなら、なんてことを本気で思ったのだから。

 婆ちゃんが起きてきた。

「ねぇ、俺、誰かに好きになってもらえるかな。」

何か考えていたわけではない。

自然と、誰かに聞きたいと思った。

求める返答はYesだ。

でも、祖母はそこに気を遣わない。

「わからんねぇ。」

とだけ言って、トイレへ入って行った。

 祖母、他者から見て分からないことを、僕自身が分かるわけがない。

考えるのが面倒になってきた。


 結局のところ、

将来僕に好きな人ができるのか、

僕を好いてくれる人に出会えるのか、

それはわからない。

ならせめて、今だけを見ていこう。

友人の恋路を応援しよう。

いつか、もう一度、恋をしたい。

恋をして、"付き合う"を知りたい。

2年かかって、僕は僕のトラウマを克服した。

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