05:夏の夜の出会い(その5)
***
「ねぇルリ。明日のお昼ってここに来れる?」
いきなりアランが口を開いた。
「え? うん、今は学校がお休みだから大丈夫だけど、なに?」
「コナー、たのめるかなぁ?」
「いいですよ、やってみましょう。ルリ、明日から魔法の練習をしてみませんか。もちろん、ベリルと一緒に。あなたの能力を生かせるものを探しましょう」
「あたしの能力?」
「あたりまえだろ。おまえ半分妖精なんだから、なにか力があるはずだ」
「ベリル、あんたねぇ」
口の悪いベリルにむかついたルリがベリルにくってかかろうとするところをコナーに止められる。
「風をつかまえる練習をしましょうか」
結び目一つ一つに風が閉じ込めてあるというロープを眺めながら、面白そう、というルリを笑って見つめるコナーの顔はあくまでやさしい。アランは明日は昼間に会えるね、と言ってにこにこしている。
***
親に見つかって、かくす必要のなくなったペンダント堂々と胸元に揺らしながら、ルリはコナーの小屋に向かった。
「やっと来たな」
ベリルの憎まれ口はあいかわらずだけど、悪意があるわけではないのが表情から見て取れるようになっていたので、ルリはたいして気にもとめなくなり始めていた。
「ええ、来たわ。一緒に練習できるのがとっても楽しみ」
「練習なんてかわいいもんじゃないさ。地味な訓練だよ」
「あたしそれでもいいんだ」
にこにこと言ってみせる。
あたしは、やってみるんだ!
「私がやって見せますから、そのあとやってみてください」
「はい」
コナーは縄で輪を作って立つと、風を待った。丘の上に立つと風がそよそよと吹いているが、捕まえるのはその程度ではいけないらしく、コナーは強い風をまっているようだ。これだけで根気のいる時間だった。早く風がふけばいいのに、とため息をつきかけた時、ようやく待ち望んだ風がやってきた。風をじっと見て、風側にはいた瞬間にコナーは縄を強く縛った。
「こうして風を捕まえます。見た目には単純ですが、すぐに抜けてしまうので入りかけたところを縛って封じ込めるのですよ。やってみてください」
ベリルと並んでルリは丘の上に立つと風を待った。アランはいつものきょとんとした顔で日向ぼっこをしながら三人をながめている。
「集中して、風を逃さないように」
コナーの注意が飛んだ。
風よ、来い。……来い。
「うわぁ」
ベリルが驚いたような声を上げた瞬間、大風が丘に吹いた。ルリは、コナーが腕で風をよけるようにしながら自分を見つめているのを感じていた。
「そろそろ休もうよ」
離れてみていたアランがぽてぽてと三人の前に歩いてきた。
「そうですね。ルリは初めてのことだし、疲れたでしょう」
コナーは縄をおろした。アランはぽてぽてとルリに近づくと、にこにこしながら瑠璃の腕に収まる。
三人が座ったところで、コナーが話を切り出した。
「ルリ、あなたは風使いですね」
「はい?」
「風を呼ぶ力をあなたは持っている。練習しておいて損はしないでしょう。ベリルの訓練にも役に立つ」
ルリには今ひとつピンとこなかった。けれど、賢者様の言うことだから、あながち嘘とも言い切れない。
「ぼくね、風好きだよ。さっきの大風はルリの気配があったから、コナーの言ってるのは嘘じゃないよ」
腕の中からにこにことアランが話しかけてきた。これではさらに嘘だと言えなくなってきた。否定材料もないし、否定しようとも思わないけれど、自分の知らない一面を始めた感じたルリは、自分に戸惑いを隠せない。
「大丈夫、みんなついてるよ」
アランが笑いかけるのを見て顔を上げると、コナーの笑顔と、半分すねたようなベリルの顔があった。




