04:夏の夜の出会い(その4)
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「ルリ! どこに行ってたのかと思ったら、森に行って、しかも妖精にあった? なにをやってるんだ」
父親のケビンは怖かった。
「森には見張りがいるんだ。生半可なことではすまないかもしれないんだぞ」
「大丈夫よ。なかよしになったんだもの。一緒にお茶もしたのよ」
「おまえは妖精の怖さを知らないからそんなことを言っていられるんだ。下手をしたら命を落とすんだぞ、わかってるのか」
どなられてびくっと体をふるわせたルリの胸元にちらりと揺れたペンダントを、母親のさらに見つけられてしまった。
「ルリ、そのペンダント見せなさい」
いけない、見つかった!
が、時すでに遅し。皿ははルリからペンダントを取り上げようとはしなかったが、はっきり見えるように、ときつく言ってきた。両親からにらまれて、ルリはおそるおそるペンダントを見せるはめになってしまった。
「あなた、これ、この文字」
「なんだ」
「賢者と会ったというのは本当だわ。今こんな文字を知っているのは賢者くらいの物よ。しかも魔力がある」
「悪いものなのか?」
ケビンが一瞬ひるむ。
「いいえ。この力は魔除け。お守りだわ。それにこはくでできてる。この大きさはかなり珍しいものよ。こはくの中の混じり物も魔力を持ってる。あなた、ルリの話は本当みたいね」
真剣な顔の皿を見て、ルリは思わずもうひとつの言葉を口にしてしまった。
「ねぇ、あたしが人間と妖精のハーフって、本当なの?」
その瞬間、両親がかたまったように見えた。顔が引きつっている。しまった、と思ったけれど、もう後には引けなかった。
「あたしには妖精の力があるから、『森』に入っていけたんだって言われたわ」
「なにをまたそんな馬鹿なことを」
「オークの精が言ったのよ」
「アランが?」
サラが思わず口にしたその名前を、ルリが聞き逃すはずはなかった。
「ママ、アランを知ってるの?」
部屋に沈黙が流れた。三人とも、どうしていいかわからないといった空気が流れ、時計の音だけがやけに大きく聞こえた。
沈黙を破ったのはケビンだった。
「ルリ、ここの森のことは知っているね」
「『見張りのいる森』でしょ?」
ケビンは視線をルリの目の高さに合わせると、ルリの両肩に手を置いた。
「そう、人間にとってのの禁足地だ。これが何を意味するかはもう分かる年だね」
「はいったら危ないことが舞ってるかもしれない」
「そうだ。人間にとっては危ない場所と言えるだろう。見張りがいるんだからね」
「でも、あたしははいれたわ。全然怖くなかった。森はきれいだった」
「見張りが森を守っているからだよ。そして、変な人間が近づかないように、私たちはここに住んでいる」
「あたしたちも『見張り』なの?」
「そうなるかな。そこまでえらくはないけれどね」
「見張りと、ハーフだっていう話はどこでつながるの?」
「妖精なのは、私よ」
仕方がない、とサラが告白した。
「昔パパがね、あなたと同じようにちょくちょく森に遊びに来る人だったの。妖精でも賢者でもないのに、なぜか『森』にはいれる不思議な人でね。アランと私は興味を持ったのよ。そんなパパを見ていて、私はだんだんパパに恋をしていったのよ。そしてついにパパのところに押しかけちゃったの」
「ママが妖精?」
いきなり言われても、ルリには信じられない。でも、いつも若い若いと言われているママは、確か愛しの取り方が遅いようにも感じる。
「そのペンダントの中にあるのはオークのかけらよ。あなたも魔法が使えるようになるかもしれないわね」
「おい、ルリをあんまりおだてるんじゃない。つけあがる」
「ママ、ほんと?」
「さて、どうかしらね。それはこれからのあなた次第」
一瞬、外で大風が吹いた。




