17.変化
トーマがのんびり散歩をしていると、目を見開いたままよろけながら歩いているアランの姿を見つけてしまって、その雰囲気の異様さに、声をかけていいのかどうか戸惑いながら、
「アラン?」
とぽそっとつぶやいてみました。この声が気を得るなら話をしよう、と。
ぬうっと振り返ったアランはなにに驚いたのか、びっくり開いた眼で、耳としっぽの毛が爆発していて、なんだかちょっと妖怪の雰囲気を漂わせていて、初めてみた小動物なら逃げてしまいそう。
「やぁ、さんぽ?」
「うん……、かえるところ……」
言葉もなんだか怪しそうで、トーマは少しおっかなくなった。
「なにがあったの? そんなに驚いて。あ、仔うさぎ拾ったの?」
アランの腕に茶色からオレンジ色のグラデーションに黄色がまだらに混ざった、ふわふわの小さい生き物を見つけて、なんとかは無しの突破口を見つけてみようとするけれど、アランの反応はさらにトーマをびっくりさせるのに十分だったようで、アランが身体をびくっとふるわせるのに、トーマまでつられてからだがゆれてしまった。すると仔うさぎがむくっと起きたかと思うと、
「ぼく、うさぎじゃないもん!」
と叫び声をあげて、トーマはひっくり返りそうになってしまう。
「その声はハーリー?」
「そうだよ。さっき、きゅうにいろがかわっちゃったの。そうしたらアランがびっくりしちゃってこんななの」
アランの腕の中から無理やり起き上がろうとしたせいか、ハーリーがアランから落ちそうになるのを、アランがぎゅうっと抱きしめなおして落ちるのを防ごうとするけれど、ハーリーには姿勢がしんどくてもがいて、落とさないように必死になっているアランの茂垣愛がなんだかかわいそうになってきて、トーマがハーリーをいったん引き受けて、改めてアランに帰してあげると、アランは大事そうにハーリーを抱きしめなおす。
「どうしたの?」
ハーリーを絶対離すもんかという緊張だけは強く強くアランから感じられて、どうしてそんなにかたくななのか、トーマにはさっぱりわからない。
「水晶の光を入れなくちゃ」
やっぱり、トーマにもハーリーにもまったく訳がわからない。
「なに?」
「この子、ぼくに似てるの。ぼくは半年以上水晶林で過ごしたけれど、いまならぼくが瞳に光を入れてあげられるから。そうしたら治るから。ハーリー、ハーリー。ぼくが必ず治してあげるから。もしかしたら蛍石もあったらいいかも。とにかく石の光を入れなくちゃ」
まるでうわごとのようにぶつぶつ言っているアランは、どこか狂気さえ感じられて二匹を黙らせてしまうには充分。
「アラン、ぼくくるしいよ。おろして?」
おずおずと申し出たハーリーだったけれど、
「だめ、いまは地面に降りちゃだめ」
アランにきっぱり否定されて、抱きしめる力が強くて苦しいのか少しせき込んでしまうと、トーマが、
「じゃあもう一度ぼくに預からせて?」
と提案してくれて、アランはしぶしぶハーリーのみを預けてくれて、ようやく少しほっとした空気が流れて二匹は胸をなでおろす。ハーリーがいくら小さいとはいえ、アランとトーマの胸くらいまでの高さがあるので、抱きしめて抱え持つことがそもそも無茶な話で、よくここまで抱えて帰ってこれたものだとトーマが感心していると、よほど息が苦しかったのか、ハーリーは息が上がっていて、時折せき込んでしまっている。改めてアランの必死さが伝わってくるようで、その哀しいまでの強い思いに、トーマは目が涙でいっぱいになってしまって、こぼさなかっただけ誰かに褒めてほしいくらい。
「じゃあ、水晶林に行こう。ぼくがハーリーを担いでいくよ。そこで少しお話しない?」
こくり、と無表情のままアランがうなずいたのを見て、だいぶこちらの言うことが耳に入ってきていることに安心しながら、むずがるハーリーを落ちないように肩に乗せたり、抱きしめなおしたりして、三匹は水晶林に向かうことにした。もう、すぐそこだ。




