16.秋の恵み
森は夏の緑をばっさり脱ぎ捨てて、赤や黄色に染まる、あでやかな秋という衣装を身にまとっていた。それもなんだか薄らいで息が白くなりだした頃。森にはかわいらしい声が響いていた。
「紅葉」
「もーみじっ」
「銀杏」
「いちょーうっ」
「どんぐり」
「どんぐりっ!」
「栗」
「くり!」
「きのこ」
「きーのこっ! すき!」
「はいはい。それはいいから場所は覚えたかな? ばらばらだけどそれなりにかたまってるからね」
「うん、おぼえた! ぼくひとりでいってこれるよ」
「それは頼もしい」
アランは優しく笑うと、
「ついておいで」
と立っている木に向かって走り出して、そのまま木のてっぺんまでのぼってしまう。あわてて同じようにのぼったハーリーに気をよくしたのか、
「うん、いいね」
なんてうなずいて、リズムを取り始めた。ハーリーがどきどきしながら見守っていると、アランは不思議な節で唄いだして、びっくりしたハーリーは乗った枝から落ちそうになってしまうのを必死でこらえる。
「もーりーの、こーだーちーの、みなさぁん? ぼーくらに、こーのみを、わけてくださぁいっ」
透き通る声がきれいに伸びて、森の中をかけていく。
森全体がざわっと揺れたような気がしたのは一瞬で、いまのは見間違いだったように、冷たくなった風に凍えそうになっているように見えるのが不思議。
「アラン、いまのなぁに?」
「森にお願いしたんだよ。ハーリーもやってみて」
「ぼくのぶんも、おねがいしまーすっ!」
なにがなんだかわからないから、もっと説明してほしいのに、と文句を言おうと思った矢先に、
「降りるよ」
とまた、すてててて、と降りて行ってしまうので、ハーリーはまた慌てて追いかけるしかないのが心臓に悪くて。
「やーん、まってー」
足の運びを間違えたら真っ逆さまに落ちてしまうから、怖さと闘いながら後をついていくのに必死です。
「アラン、さいきんおしえかたがきびしいよー」
「おぼえなきゃいけないことはいっぱいあるからね! しっかりついておいで」
にぱっといつもの笑顔で有無を言わせないまま、ぴゅっと飛び出すように走りだしたアランに、完全にタイミングを逃してしまったハーリーは、
「まってー」
と半分甘えた声を出しつつダッシュで走りだして、アランの後を必死で追いかけて、いまでもじゅうぶんたいへんだよー、と心の中で泣くのでした。
何か所目かの休憩で、
「ねぇ、ぼく、あかときいろのはやしにいってみたいな」
とハーリーが頼んでみると、
「ふうん? そういえば最近行ってなかったかな。いいよ、行こう」
「ありがとう!」
と、あっさりと行けることが決まってハーリーの元気が復活して、目が輝いた。
「どんなはやしになってるのかなぁ。いつもよこめでみてるだけだから、きになってるんだー」
とすこぶるご機嫌。
「奇麗なものが見れるといいね」
アランとハーリーがほのぼのと笑顔を交わすと、なんだか体がポカポカとしてくるのが不思議で、気持ちよくて、余計に笑顔になっていくのでした。




