14.うちにおいで
「まぁ落ち着きたまえ。あの話を聞いたのかな。それで君は不安になったんだね。それは悪いことをした」
え? と全員がケビンを見てしまう。
「君を邪魔者だなんて思っていないよ。君を追い出すなんてこれっぽっちもない。そうか、居場所がなくなると思ったんだね。もっと君の事情をさするべきだった。悪かったね。君にここにもっとなじんでもらいたかったし、勉強も必要だと思った。それだけなんだよ」
「で、でも」
「うん、そうだね。この森しか知らない君にとって、ここから離れるのは不安だ。じゃあこういうのはどうかな。秋になったら週に五日、午後になったらうちにおいで。家庭教師を呼ぶから、うちで勉強するといい。ルリも一緒に。これでどうだい? ここなら安心して勉強できる。マナーなんかも身につけないといけないし、ね?」
「え?」
ベリルは信じられない、と首をかしげる。それはそうだろう、追い出されると思ってたのに、真逆のことを提案されたのだ。
「君の事情はコナーから聞いているよ。だから、いまのこの世界がどんなふうに成り立っているか、知っておいた方がいいんじゃないかと思ってね。この先公式な場に出ることもあるだろう。そのときに恥をかかないよう勉強しておくのは、決して君の損にはならない。そして私には教育の用意がある。どうかな、私からの贈り物を受け取ってはくれないだろうか」
ルリは思わずケビンに抱きついてしまっていた。
「パパ、なんて素敵!」
「こら、おまえにじゃない、私はベリルと話をしているんだよ」
「素敵、素敵!」
「これをきっかけに、私たちとも仲良くしてくれると嬉しいんだけどね、ベリル」
ケビンの横でサラがほほ笑んでいる。
「……おじさん」
「コナーのこともおじさんと呼んでいるのかい? そうでなければ、私のことはケビンと呼んでくれると嬉しいな。ここでの、君の育ての親のふたりめになれたらと思っている。うちにはわがまま娘がいてね、彼女のしつけにもなるかとも思うしね」
「パパ、それは余計!」
「ケビン……おじさん」
「言いにくいのなら最初はそれでもいいよ」
真っ赤になってしまったベリルに、ケビンは笑いかける。
「どうかな?」
「……ありがとう、ございます……」
ベリルはそれだけ言うのが精いっぱいで、口元が震えていた。これ以上なにか言うと泣いてしまいそうだ。
「ケビン、ありがとうございます。私も彼にはもうひとつ上の教育が必要だと感じていたので」
「ベリルが来てから君たちのハーブの質も量もよくなった。すばらしいことだよ。これはちょっとしたサプライズ。できれば、私も君たちと一緒に生きているって実感させてほしいだけなんだ。私のわがままを聞いてはくれないかな」
心配そうにおろおろとベリルを見上げるハーリーをよそに、コナーはほんの一瞬涙で目を光らせて、極上の笑顔を見せてくれる。
「もちろんですよ」
ぽん、とコナーの手がベリルに置かれて、下を向いたベリルからぽろっと涙が一滴、ハーリーの鼻に落ちた。




