第9話 逃亡のシナリオ ── 新しい未来 ──
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⸻夜が明けた翌日の東京
冷たい朝の光が、曇りガラス越しに喫茶店のテーブルを照らしていた。
桧山はすでに席で待っていた。
「待たせたな桧山、」慌てて席に座った、、
香坂が姿を見せたとき、彼女の目はどこか張りつめていた。
「……梓ちゃんには、何も伝えてないわね?」
「梓は今日は高校がある。迅も日勤だ。巻き込まなくていい、」
「急に呼び出すなんて珍しいな、、何の用だ?」
香坂はコーヒーを一口すすりながら問いかけた。
桧山は頷き、テーブルに広げた資料を指差す。
そこには新幹線のダイヤと地図。
「放映当日、あなたはスタジオには来ないで逃げて、、」
香坂は一瞬表情が固まった、、
「俺が消されるからか?」
「昨日梓ちゃんも言ってたけど明日、暗殺されるわ。だから逃げて、、、」
「だからって、放映日に、、、?」
「死にたいの?」
「いや、、家族もいるしよ~助かる方法でもあるのか?」
「私に全て任して欲しいの、、
まずは、片山の尾行を振り切る必要がある、だから朝早く仙台行きの新幹線に乗るの。東京駅から東北新幹線で仙台へ。
到着したら即Uターン新幹線に発車ギリギリに飛び乗って、東京へ戻る。
そのまま名古屋行きに乗り継いで。」
新幹線に乗るときはできるだけギリギリに飛び乗って!
「……ずいぶん手の込んだ逃亡だな。」
「尾行を振り切るには、それくらい必要よ。
片山はあなたを“消すため”に動いているよ、、
彼の筋書きに、あなたが存在していては困るの。」
桧山の声は落ち着いていた。
しかし、その奥に微かな震えがあった。
「名古屋では“富士山テレビの大金ひさし”の名義でホテルを取ってある。本人は海外出張中。疑われる心配はない。」
桧山はさらに続けた。
「携帯はここに置いていって。GPSで追われてる。
代わりにこのスマホを使って。」
テーブルの上に、黒いスマートフォンが置かれた。
香坂は一瞬、彼女の瞳を見つめた。
その奥に、何かを隠しているような影。
だが、問い詰める時間はなかった。
「……やるしかねえな。未来を信じるしかない。」
「ええ。あとは私に任せて。」
二人は軽くうなずき合い、香坂は席を立った。
扉が閉まる音がして、静寂が戻る。
桧山は冷めかけたコーヒーを見つめ、
小さく呟いた。「ごめんね、香坂さん……」
その言葉は、誰にも届かない。
⸻ 翌日
― 放映当日(土曜日)
朝から報道センターは慌ただしかった。
全国ネットの特番「介護報道の闇」が、まもなく放送を迎える。
梓は早朝からメイクルームにいた。
“アルバイトの加藤あずき”として潜入する日。
制服の代わりに黒のパンツスタイル、金髪ウィッグに眼鏡なし。
迅は夜勤明けで、午後に合流する予定だった。「香坂さんは今日来ないの?」
モニターを見つめながら梓が尋ねた。
桧山は短く答えた。
「危険だから、逃げるように伝えたの。しばらく連絡も取れない。」
梓は静かに頷いた。
「……分かりました。」
心の中に小さな違和感を抱えながらも、それ以上は何も言わなかった。
照明スタッフの声が響く。
「――本番、30秒前!」カウントダウンが始まる。
スタジオのモニターにタイトルが映し出される。
『介護報道の真実 ― 闇に葬られた声』
「3、2、1――オンエア!」
全国ネットで、番組が始まった。
結局、番組の途中、
桧山が流した映像は、片山が持ってきた映像だった・・・
番組スタッフを含め、国民の多くに衝撃が走った、
橘が平泉を恫喝する映像が全国に放映される事となったのだ、、
桧山が梓に小声で伝えた、
「今回はこれがベストよ、あやの映像はしかるべきタイミングで仕掛ける」
梓は小さく頷いた
「はい」
しかしその裏で、香坂の行方を追う高山の影が、静かに動き始めていた。
⸻仙台行きの新幹線
ちょうどその頃・・香坂は新幹線で仙台に向かっていた、、
「ホントにこの新幹線に、片山の追手がいるのか・・・?」
辺りを見渡すと、空席ばかりで怖いくらいだ、、、
仙台駅に到着したが、、
新幹線を降りたお客は皆ホーム下りのエスカレーターに
並んで順番に改札に向かう、、
香坂はホームのベンチに座り靴紐を結んでいた、、、
向かいのホームには、
東京行きのはやぶさが発車準備をして停車していた、
発車ベルが鳴り、、、
香坂はゆっくり下りのエスカレーターに向かって歩きだした、、
次の瞬間、、香坂は走り出し”新幹線はやぶさ”に飛び乗った、、
同時にドアが閉まった、
ホームに立ち尽くす、、2人の男が見えた、
明らかに香坂を尾行していたようだ、、
香坂は指定の席に座り、洋服を着替えた、、
その後、上野駅で新幹線を降りると、
人込みに紛れ山手線で品川まで移動、
品川から、名古屋行きの新幹線に乗り込んだ、、、
⸻
その夜 桧山の行動
介護報道番組に高山が持ち込んだ映像を差し込み
世間は大きな反響で混乱していた・・・
桧山は番組終了後、次の行動を取っていた・・・
場所は東京・ホテルオオムラ
呼び出したのは、富士山テレビの報道部長・大金ひさし。
「久しぶりね、大金さん。少し話せる?」
「こんな時間にホテルに呼び出すなんて、何の用だ?」
「平泉の件よ。あなた片山に協力してたでしょ?」
「……なんで知ってる。」
「あなたの立場、危ういのよ・・・私も巻き込まれてる。
どうしても話しておきたいことがあるの。」
緊張した大金は、
桧山の差し出したワインを受け取り、
一口飲んだ、
「俺を脅迫するつもりなのか?やめた方がいい、、」
桧山は静かな口調で
「そんな事しないわ、、ただ私も仲間に入れてほしいだけ、」
そう言って大金をシャワーに誘導した。
どれくらい待っただろう、、、
大金がシャワーから出てきた所、後ろからワインボトルで頭部を殴った!
「が、、桧山、、なにするんだ・・・!!」
桧山:「国仲あや 知ってるわね」
大金は頭から血を流しながら、、朦朧とする中、答えた、
「あ、、あぁ 知ってる」
桧山:「私の妹なの、、」と言いながらもう一度 ワインボトルで頭部を強打した。
大金は絶命した・・・
――その瞬間、
桧山は静かに行動を始めた。
香坂の衣服を取り出し、
大金が脱いだスーツとすり替えバスルームに置いた、
香坂のスマートフォンを、ベッドのシーツの中、
枕の隙間に深く押し込んだ。
「これでいい……」
血飛沫が白い壁に弧を描く。
桧山は無言で見下ろし、
大金の顔と手にライターオイルを掛け火を付けた、
顔と指紋を消した、、
そしてホテル中の警報ベルが鳴り、スプリンクラーが作動した!
スプリンクラーの水がシャワーの様に巻き散る中、、
大金のスマホを床に置き、原型が分からないほどワインボトルで粉砕した。
「……ごめんなさい。」それは謝罪ではなく、
生き延びるための祈りのようだった。
⸻
ホテルオオムラでは、火災報知器が鳴り響き、
あわただしく避難する客達、
桧山は雑踏に紛れ逃亡した、、、
深夜23時を過ぎた頃、大金の死体はホテル従業員により発見され、
警察が駆けつけていた、、、
現場からは壊れたスマホ1台、
そしてベッドのシーツの中からもう1台――
香坂のスマートフォンが発見される。
ホテルの予約名は「香坂 ひろし」
だが、遺体の身元は判別不能だった。
⸻
そのころ、
名古屋のホテルでは、
香坂がカーテン越しに名古屋の街を見つめていた。
「これで、未来は変わるはずだ……」
彼は小さく呟いた。
テレビのニュースではまだ何も報じられていない。
だが、東京ではすでに“事件”が始まっていた事を香坂は知らない、、
⸻翌日のJBSテレビ
東京・JBSテレビの介護ドキュメンタリーの生放送の翌日
JBSテレビは報道番組で昨日の映像が話題になっていた、、
流石に、あそこまで鮮明な画像で世に出てしまうと、
話題にしない訳にもいかない、、、
桧山は表情ひとつ変えず、進行を見守っていた、
梓はアルバイトスタッフとして撮影に参加していたが、
番組の途中で、梓の視界が歪んだ。
胸の奥に痛みが走り、息を詰める。
――1時間後の梓の見る未来・・・
スタジオが騒然とし、
速報のテロップが点滅する。
【報道局員死亡 東京のホテルで遺体発見】
梓は震える手で口を押さえた。
「……やられた。」
涙がこぼれ、視界が滲む。
傍らの迅が慌てて駆け寄った。
「どうしたの? 大丈夫?」
梓は小さく首を振り、震える声で言った。
「香坂さんが……殺されたわ。」
「え……どうして……?」
梓はただ俯き、
未来を見た目の奥で、静かに呟いた。
「1時間後に、香坂さんの死がテレビの速報で流れる……」
桧山は一瞬、微笑み、、
番組が終了まぎわ、局から姿を消していた・・・
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




