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地底の未来  作者: Spumante Rock


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第31話 改変の代償 ― 歪む均衡 ―

いつも読んでいただきありがとうございます。

「暴動は当たり前だ!」

橘国政の声が、静まり返ったスタジオに響いた。


先ほどまでの騒然とした空気は、

どこか張り詰めた緊張へと変わっていた。


外では群衆の怒号が続いている。


扉を叩く音が、規則的に重く響く。

それでも橘は動じなかった。


「今、我々が向き合うべきは未来ではない」

「“この国が、なぜこうなったのか”国民と議論するべきだ…」

木下 芳樹が

「あの暴動と話し合うのか?」


橘は首を振った

「違う…国民と言うのは、ここに居る皆さんだ、

政治家である前に国民だ…」


芦田総理が続けた

「私達政治家は、国民の苦しみを他人事のように語っていたかもしれない…生活が苦しいと言う国民に対して、自分は関係ないと必要な議論を先送りにして来た結果だ…」


橘が頷いた…

「木下さん…我々は政治家である前に国民だ…」

その言葉に、

観客の視線が一点に集まる。


「政治家が腐敗したからか?

官僚が隠したからか?

報道が歪んだからか?」


橘は首を横に振った。

「違う」


「それらは全て、“結果”だ」

スタジオに沈黙が落ちる。


「本質は、“構造”にある」

その瞬間

控室で、梓が目を開いた。


(今だ……)

視界に、

無数の未来が重なっている。


群衆が突入する未来。


警察が衝突する未来。


流血が起きる未来。


その中で、

わずかに“違う流れ”があった。


(これなら……間に合う)

「迅くん」

「やるのか……?」

迅の声は震えていた。


「行動するしか未来は変わらない。」

梓は強く頷いた。


「未来を、変えよう」

その瞬間

梓の視界が歪んだ。


無数の選択肢が、

一本の線へと収束していく。


『梓、歴史は修復される、

今から選ぶ選択肢が何を変えるか……』

蓮の声が、どこか遠くで響く。


『それは“選ばなかった未来”を、

切り捨てるということだ』

梓は目を閉じた。


(それでもいい……)

(今、目の前の人を守れるなら)

「迅くん、香坂さんに伝えて」

「え?」


「橘さんに、〝今から何が出来るか?”

聞いてと…」


「それから、

外の状況を“そのまま”中継してって」


迅は一瞬戸惑ったが、

「わかったと、香坂に伝えた。」


スタジオ

橘の言葉が続く。

「我々は、もう一度初心に帰るべきだ…」


その時、

香坂のインカムに指示が入る。

(香坂さん、橘さんに今から何が出来るのか聞いて欲しい…それから、

外の状況を“そのまま”中継するように…」


一瞬、驚いた表情を見せた後、

香坂は橘に向かい

「今から何が出来るってんだ?」

会場がざわついた。


香坂はモニターに、

局の外の映像を映すように指示した。


群衆達の様子は

そのまま全国に流れた。


怒り、焦り、不安。


その全てが、

“隠されることなく”可視化された。


その瞬間、スタジオの空気が変わった。

「……なんだこれ」

「こんなに人が……」

視聴者の意識が、

一気に“現実”へと引き戻される。


橘は、その変化を感じ取っていた。

「これが、“今の日本”だ」

静かに言い放つ。


「怒りも、不安も、全てここにある」

「だが…今の制度では変わらないんだよ…」

「それを“破壊”に使うのか、

それとも“変化”に使うのか」


「選ぶのは、我々だ」

その言葉が、

画面越しに群衆へ届く。


叫び声が、徐々に変わっていく。

「……話、聞けよ」

「壊しても意味ねえだろ……」

完全ではない。


だが、確実に流れが変わっていた…

控室で、

梓はその変化を見ていた。


(……止まった?)

群衆の動きが、わずかに鈍る。


衝突の未来が、消えていく。

(やった……)

その瞬間だった。


片山が、橘に向かって

「どうして今まで、まともな政治が出来なかったんですか?」

「今更、謝って済むと思いますか?」

橘は片山を見て

「我々政治家は謝罪では済まされない…」


「漏れなく、全員だ…」

「この討論会には、政治家は3名しか居ないが、

我々が代表して、皆さんと対話しましょう。」


討論会の参加は皆、真剣な顔に変わっていた。


司会の石原研二が改めて進行を進めた。

「では、総理…何から始めましょう…」

総理大臣の芦田が、

ゆっくりと立ち上がった。


スタジオは静まり返り、

外から聞こえる群衆のざわめきだけが現実を突きつけていた。

芦田は一度、深く息を吸い込む。


「……まず、謝罪をさせてください」

その一言に、空気が張り詰める。


「私達は、“国民の苦しみ”を理解しているつもりでいました」

「だが実際は、理解していなかった」

「物価が上がり、税負担が増え、

将来に希望が持てない」


「その声を、数字として処理してきた」

芦田は視線を落とした。


「それが、今の結果です」

沈黙。


だが彼女は続けた。

「しかし……謝罪で終わらせるつもりはありません」

ゆっくりと顔を上げる。


「今、この場で“何を変えるのか”を、

国民と共に決めたい」

会場にざわめきが広がる。


木下が眉をひそめる。

「そんな事が、この場で出来ると?」

芦田ははっきりと答えた。


「出来るかではない。やるんです」

その言葉には、迷いがなかった。

橘が静かに頷く。


芦田は続けた。

「まず一つ」

「政治と金の関係を、完全に透明化します」

会場がどよめく。


「企業献金、政治資金、

全ての流れをリアルタイムで公開する」

「例外は認めない」


片山がすぐに反応した。

「それが出来るなら、とっくにやっているはずだ」

芦田は即答する。

「出来なかったのは、“やらなかった”からです」

その一言に、空気が変わる。


「政治家にとって都合が悪いから、

先送りにしてきた」

「だが、その結果が今です」

外の群衆の映像がモニターに映る。


怒りに満ちた顔。

「次に…」

芦田は一歩前に出た。


「世襲の制限です」

再びざわめきが走る。


「政治は“特権”ではない」

「同じ家系で権力が固定される構造は、

民主主義とは言えない」

橘が静かに目を閉じた。


「三親等以内の連続立候補を制限する」

「これだけでも、政治の入口は大きく変わる」

坂下が思わず呟く。


「……そこまで言うんですね」

芦田は頷いた。


「そして、三つ目」

少し間を置く。


「税の使い道を、

国民が選択できる仕組みを導入する」

会場が一斉にざわついた。


「自分が納めた税金の一部を、

どの分野に使うか選べるようにする」

「医療、教育、防衛、福祉」

「国民が“意思を持って納税する”仕組みです」

木下が口を開く。

「そんな事をすれば、バランスが崩れる」


芦田は首を横に振った。

「すでに崩れている」

静かな一言だった。

「だからこそ、国民に選ばせる」


橘がゆっくりと口を開いた。

「……それでも、全ては変わらない」

芦田は橘を見た。

「ええ、変わらない部分もあるでしょう」

「だが、“変えようとする意志”は示せる」

その時だった。


モニターに映る群衆の様子が、

明らかに変わり始めていた。

怒号が減り、

立ち止まる者が増えている。

「……聞いてるぞ」

「今の、マジかよ……」

誰かが呟いた。


スタジオの声が、

確実に外へ届いている。


橘が静かに言う。

「これが、“対話”だ」

「押さえつけるのではなく、見せること」

「隠さないこと」


芦田は頷いた。

「我々は、国民の為ではなく、自分の為に政治をしていた。」

「だから隠し、操作し、国民を騙して先送りにした」

「だがそれは間違いだった、

いや、間違いとわかってやっていた。」

「国民は、税金から逃げらない…

国の為…イヤ政治家や国家公務員の為に税金を納めている事実にを知り憤っている…」

「もう、誰が見てもおかしい…」


「税金で働く人間が、贅沢な生活をしているのに、税金を納める人間が切り詰めた生活をしている。」


その言葉が、

画面越しに広がっていく。


控室で、

梓はその変化を見ていた。


(……変わってる)

群衆の動きが、確実に鈍っている。


衝突の未来が、

一つ、また一つと消えていく。

(間に合った……)

安堵が広がった、その瞬間

頭に、鋭い痛みが走る。


「っ……!」

視界が歪む。


未来の断片が、

ノイズのように崩れていく。


『忘れるな』


蓮の声。

『均衡は、必ず保たれるが、歴史は自己補正される、

だから我々は先導者にはなれない…

観察者と言われる意味も知っているはずだ、』


その中で、

一つの映像だけが残った。

橘国政が暗殺される…

梓は、迅の顔を見て

「橘国政が暗殺されるわ!」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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