第28話 暴かれる代償 ― 崩壊の引き金 ―
いつも読んでいただきありがとうございます。
梓と迅は、討論番組を控え室のテレビで見ながら香坂に指示をしていた。
しかし、今回の討論番組での着地点が誰にも想像できなかった…
「迅くんは、この先どうなる事が良いと思う?」
迅は梓を見て言った
「今の生活について、僕は不満は無かったし
こうなれば良いなんて考えたことも無かった…
無関心と攻める人もいると思うけど…」
「けど?…何?」
迅は少し笑って、
「政治に無関心って良く無いかな?…僕から言わせれば、介護に無関心な人も多いし、関心を持っても行動できる人も少ないから…」
迅は少し間を置いた…
「橘さんが、ウチのケアセンターに視察に来た時の事を、僕は良く覚えていて、橘国政と言う政治家の真剣さに触れた…だから今でも、
信頼しているのかもしれない。」
「梓は僕と初めて会った日…
どうして、僕に声掛けてくれたの?」
「確かに…、ほっといたら良かった…」
そう言って梓はニヤリと笑った。
迅が微笑んで、
「梓は、僕を助けようと行動してくれたんだよね?」
「僕はホントに嬉しかった。
見知らぬ冴えない介護士を助けたところで、
梓には何の徳も無い…
梓の優しさは、僕には幸運だったよ。」
「ありがとう。」
梓は心から嬉しかった。
迅くんは、ホントに素直だ…
梓は少し笑った…
「迅くん…良いこと思いついちゃった…私」
「へ? 何を思い着いたの?」
〜 討論会会場 〜
片山が、香坂に
「香坂さん、私があなたを殺して何の徳があるんですか?
そもそもあなたの代わりに死んだのは、富士山テレビの大金ひさしなんだろ…」
会場がざわついた…
それは極秘事項とされていた内容で、
政府内でも、知る者は少なかった。
「大金ひさしと、誰から聞いたんだ、」
香坂が片山に返すと、
「桧山から聞いたんだ、」
坂下すずが口を挟んだ、
「桧山さんって…先日、事故死で亡くなった方で、
元富士山テレビの報道キャスターですよね?…」
片山は続けた…
「それも事故死では無い、政府に殺されたんだよ…なあぁ、高山さん」
高山は〝 ハッ ”として
「私が知っているはず無いじゃないですか?」
と、答えた。
「平泉たかしの秘書だったあなたなら、
わかるんじゃないですか?
富士山テレビのアナウンサーを娼婦の様に使っていたんだから…
当然、秘書のあなたは一緒にいたんですよね?」
会場がザワザワと、
重い空気が流れ始めた。
高山の身体は震えが止まらなくなった。
「わ、わ、わたしは…」もう、呂律が回らない。
政治家の闇、なんてものじゃない。
梓は一瞬、未来の高山が生放送中に血を吐いて倒れるビジョンが見えた…
「迅くん、何か起こる…」
迅は「何が見えたの?」
「青酸カリを飲んで自殺を計る未来が見える…」
片山は追い討ちを掛ける…
「平泉は自分の事件が、広まるまえに
自分の罪を、芸能人に転化した…」
もちろん、富士山テレビもグルだった…
「高山さん、あんた国民の税金をいくら富士山テレビに渡したんだ…」
高山はもう、真っ直ぐに座る事すら、
困難な状況になった。
「それは…」と、言いかけて、
坂下の顔が、目に飛び込んだ…
「そうか…もう遅い…」
誰か…助けて…
高山は、心の中で呟いた…
その時香坂のインカムに
梓からの指令が入る…
(香坂さん!高山さんが自殺を計わ!
右のポケットに、青酸カリのカプセルを持っている!止めて!!)
高山がゆっくりと右手をポケットに入れた…
その瞬間、香坂は席を立って、
高山の方へ、走り飛びついた。
スタジオは騒然となった…
「香坂さん、落ち着いてください!」
スタッフや司会の石原が、香坂を止めに入った。
「話し合いで解決するんです!
その為の討論会でしょう、生放送なんですよ!」
石原の声が響いた。
梓の声
(香坂さん!阻止しましたか?…)
「そりぁよ、なんとか…」
そう言って、押さえ込む石原とスタッフに、
高山から奪いとった薬を見せた。
「離せって、秘書の高山が自殺しようとしたから、
止めただけだろ…俺が逆上して掴み掛かるわけないだろ…」
「そうなんですか…?」石原が薬を受け取る、
「生放送で自殺をしようなんて、何考えてんだ…」
高山は膝をついて、泣き崩れた…
周囲の出演者も、開始早々の
自殺未遂に困惑するも、
今日の討論番組がどんな意味を持つのか、
改めて実感していた。
スタジオ内の落ち着かない雰囲気の中
芦田首相が話しだした。
「今までの政治に疑問を持たれている方が、沢山いると思います。
それは政治家達が国を良くする為に、
行動して来たのか?が、分かりづらいから…
例えば、政治家が働きやすい環境を作る事、
それは国民にとっては、何の価値もない。」
「政治の変化は、実に遅く、国民の為の議論は、
慎重に検討されるばかり…なのに政治家は働きやす環境作りは改善された。
平泉議員がアナウンサーを娼婦のように使っていたかは、私は知りませんが、
政治が権力になり、企業に国民の税金を回す事が、
普通に行われていると言う事実、
国民が不審に思って当然です。」
「政治家を代表して、謝罪いたします。」
芦田首相は深々と頭を下げた、
「では、この討論会の意味は謝罪ではありません…
変わらない生活への不安と、
私達政治家への不満が今回の課題ではないでしょうか?」
梓は思った、
上手い!!流石に首相だ、国民を落ち着かせて
過去の出来事や問題を暴露する議論を、
未来の議論にすり替えた。
会場内の雰囲気は、期待感に包まれていた。
何かが変わる…そんな空気を感じていた。
その時、
橘国政が立ち上がった
「まだ、未来を語るには早い…」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




