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地底の未来  作者: Spumante Rock


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第18話 静かな暴動前夜  

いつも読んでいただきありがとうございます。

鎌倉駅からほど近い、古い古民家カフェ。

冬の朝の光が、曇ったガラス越しに差し込み、

テーブルのマグカップを淡く照らしていた。


香坂、迅、梓の三人は、言葉もなくノートPCの画面を見つめている。

数分前まで、そこには片山洋介が映っていた。


――討論番組の生放送を行う。


政治家の裏側を、全国に向けて語る、と。

その余韻だけが、店内の空気に張りついている。


沈黙を破ったのは迅だった。

「……香坂さん。あれは、本当に危険です」

介護士として、感情の高ぶりを抑えることに慣れた声。


だが、その奥にかすかな震えがあった。

「生放送で政治家を吊るし上げるなんて……暴動の引き金になりかねません」


香坂は肘をつき、眉間を押さえた。

「分かってる。けど、片山はもう止まらねぇ。


あいつは“怒り”を使って、この国を変えようとしてる」

梓は膝の上で両手を強く握り、

小さく頷いた。「……止まらない。未来でも……すごい勢いで進んでる。

触れられないくらい」


香坂が視線を向ける。

「未来が、見えたのか?」その瞬間、梓の身体がふらりと揺れた。


迅が反射的に支える。

「梓ちゃん、大丈夫?」「……一時間以内の未来が……歪んでる」

「歪んでる?」「討論番組の告知で、国民は一瞬、安心する。

でもその裏で……QRコード付きの個人情報リストが拡散してる」


迅の顔色が変わった。

「それじゃ……政治家が狙われる未来は、消えてない」

香坂は低く唸る。「正直に話せば怒りを買う。

ごまかせば、俺が標的になる……」その時、迅のスマホが震えた。


――鷲尾 祐真。桧山から一度だけ紹介された、元公安の男だ。

『短く言う。片山は、まだ本気を出していない』香坂が顔を上げる。

「討論番組は陽動だ。本命は別にある」


『全国規模で、“怒りの向きを調整するシステム”が動く』

「……調整?」『城戸智志。片山の側近だ。ネットワーク操作の専門家。


桧山が最後まで恐れていた男だ』梓の肩が、びくりと震えた。

「……未来にいた。すごく冷たい目で……私たちを見てた……」


『今夜、そいつが“本当の合図”を放つ。止められるのは、お前たちだけだ』

「……どこへ行けばいい?」『JBSテレビだ。そこが分岐点になる』


通話は、それきり切れた。しばらくの沈黙の後、香坂が立ち上がる。


「行くぞ。JBSへ」迅が慌てて前に出た。

「待ってください!今日は警備も厳しい。僕たち、一般人ですよ。無茶です」


香坂は、穏やかだが強い目で迅を見る。

「分かってる。だが……俺が行かなきゃ、もっと多くの人が倒れる」


梓が、震える声で言った。

「……香坂さんが行く未来、真っ黒だった……戻らない可能性が高い……」


迅は歯を食いしばり、香坂の袖を掴む。

「それでも……人を見捨てるために、介護士になったんじゃない」

香坂は一瞬、驚いたように目を見開き――ふっと笑った。「……分かった」

ゆっくりと言葉を続ける。「全員で行く」梓の瞳に、覚悟が宿る。

「未来が乱れるなら……読むのは私。変えるのは……三人で」迅も、深く頷いた。


「誰かが倒れる未来なら、助けるのも……俺たちです」

香坂は、テーブルの端に置かれた小さなSDカードを一瞥した。


――桧山あかりが、命と引き換えに残した証拠。

「これは……暴力のためじゃない。未来のために使う」

三人は、カフェを出た。


冬の海風が街路樹を揺らし、遠くでカラスが鳴いている。


世界はまだ静かだ。

だが、その静けさは――嵐の直前の呼吸だった。


◆同時刻・JBSテレビ局薄暗いサーバールームで、

城戸智志は無数のコードを見つめていた。赤く点滅するQRコード。


「……ここまで来た」その瞳には、感情がない。

「桧山さん。あなたの未完成の理想――俺が、完成させてあげますよ」

モニターの光だけが、静かに彼を照らしていた。


未来は、確実に歪み始めている。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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