第15話 真実の朝 ― 再会 ―
いつも読んでいただきありがとうございます。
午前8時45分。
鎌倉の海辺は、冬の朝らしい冷たい光に包まれていた。
前夜、桧山の部屋を後にし、逃げるようにしてこの町に戻ってきた迅と梓。
翌日の朝、カフェで香坂と再会を果たしていた、
再び行動の刻を迎えていた。
テーブルの上には、桧山から託された小さなSDカード。
香坂の前には、彼女の形見となったスマートフォンが置かれている。
それは、桧山のスマホだった、
迅が香坂の顔を見て、
「香坂さん、そのスマホに、パスワードはメモされてませんでしたか?」
「ねーよ、、そんなもん。
大体電話くらいしか使わねーから、わかんねーよ」
「ちょっと、見せてください、」
そう言って、香坂からスマホを取り上げ
スマホをチェックしてみた、
「特に何も情報は無いですね、」
梓がコーヒーを両手で包み込みながら、ため息をつく。
「もうすぐ、総理の記者会見です……」
迅が頷く。
「午前10時から、全局同時配信。通信が復旧するのもそのタイミング……
つまり、政府が国民の耳と目を取り戻す瞬間だ。」
香坂はスマホの画面を見つめながら、呟くように言った。
「いや、違う。“国民を再び支配する瞬間”だ。」
***午前9時30分
香坂のスマホが、かすかに振動した。
メール着信の表示
差出人は「桧山あかり」
3人は顔を見合わせた。
「桧山さんから?!」嬉しそうに梓が言った
震える指でメールを開く、
“このメールが届く頃、私はもう生きていないでしょう…。”
その冒頭の一文だけで、すぐに理解できた。
それは桧山が命を懸けて送った“最後の伝言”のようだった、
メールの末尾には、たった一行の文字列。
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香坂は、無言のままノートPCを開いた。
SDカードを差し込み、パスワード入力画面にその文字を打ち込む。
――認証成功。
デスクトップに並んだ多数のフォルダ。
「ayano」「politics」「record」「press」。
その全てに、何かの“記録”が詰まっている。
迅が息をのむ。
「開きましょう……これが、桧山さんが命懸けで守った真実です。」
香坂は静かにマウスを動かし、最初の動画ファイルをクリックした。
画面に映し出されたのは、
>>>若き日の橘議員の姿だった。
「国民のための政治を。未来を信じ、共に歩む社会を!」
街頭で演説する橘は、汗に濡れた顔でまっすぐにカメラを見ていた。
そこに、かつての理想が確かにあった。
その声には、まだ偽りの臭いはなかった。
香坂はモニターを見て、小さく笑った。
「こんな頃もあったんだな……“政治”を信じてた時代が。」
「通信は10時に復旧だ」
梓がラジオの小さな画面を指し示す。
「復旧すれば、すべてが一度に流れる」
香坂が淡々と答える。
彼の顔は眠気を帯びているが、目には決意の炎が宿っていた。
迅はSDカードを手で転がしながら、静かに頷いた。
三人は言葉少なに、今出来ることを確認する。
使える武器は三つ。
桧山の残したデータ、梓のメンタリズム(1時間先の未来予知能力)、
そして、香坂の業界に通じた人的ネットワーク。
計画は緻密に、しかし短時間で組み立てるしかなかった。
『そろそろ見えるかも、』梓はゆっくり目を閉じた
テレビに注目が集まる。
やがて店内のテレビに映像が映し出された。
芦田首相の姿が見える、
全国同時放送
【************】
梓の沈黙の中、迅は桧山のデーターに目を通していた、
突然梓が目を開き、
「片山の計画が分かったわ!芦田首相の緊急記者会見を横取りして、
国仲あやの映像と裏金に関するデーターを流す計画よ。」
部屋の空気が一変した。
その事実を知れば、国民はきっと怒るだろう、
だからって、なんの目的があるんだ?
俺達がやろうとしてた事と一緒じゃねーか?
これで、橘をはじめ政治の悪い部分をあぶり出せるんじゃないか?
迅は橘議員について悪い印象が無い、
昔の優しい姿が脳裏の片隅に残っている、
「片山の目的は何でしょうか?政権交代が狙いでしょうか?」
香坂が迅と梓に問いかけた、
「迅君と梓ちゃんは、片山の目的は何だと思う?」
「正直わからないです、国民自由党の支持率を奪う事が目的なら、
他の政党と繋がってるはずだが、あいつは根っからの1匹狼だった、」
香坂が珈琲を飲んで言った、
「確かに他の政党なんて、眼中にもねーだろーよ。」
「だとしたら、僕達にとってもそんなに悪い状況ではないんじゃないですか?」
「やろうとしてた事を、やってくれるんなら楽でいいじゃねーか。」
そう言ったものの、嫌な予感は拭えないままだった。
梓が静かに問いかけた
「桧山さんはやっぱり殺されたんでしょうか?、片山に、」
「正直わからない、生きててほしい、本気でそう願ってるよ、
あの銃声、ラジオで聞いた事故死、どれも信じられない。」
「香坂さんが生きててホントに良かった。」
***まもなく芦田首相の緊急記者会見が始まります。***
映像が記者会見会場を映し出し、
多くの記者が、ざわついていた、
まもなく始まる記者会見、
復旧する通信、徐々に通信感度が上がっているせいか、
メールやSNSの更新音が鳴り響いた、
ようやくテレビに、芦田首相の姿が映し出された。
首相は穏やかな口調で、通信復旧に向けた経過を話し始めた。
優しい笑顔には若干の緊張が見えている。
『本日はまず、通信障害の現状についてご報告いたします
大手通信会社3社に対するサイバー攻撃を受け、
国として緊急対応として、システムの一時停止とメンテナンスを指示いたしました。国民の皆様には多大なご迷惑をおかけしますが……』
香坂が低く呟いた。
「くだらねぇ……」
拳が震える。
「くだらねぇ嘘、並べやがって。
“サイバー攻撃”だと? 都合の悪い情報が流出したから、
国民の生活を犠牲にして通信を止めたんだろうが……」
その瞬間、放送に小さなノイズが走ったように感じた、
それから10分~20分
事実が語られる事なく、芦田首相から状況確認の方法や
国民への謝罪が続いていた、
首相の顔が一瞬乱れ、画面がちらつく。
店内の客が顔を上げる。
画面はノイズの波を超えると、切り替わるようにして、
別の映像を映し出した。
そこに映っていたのは、カメラに向かう国仲あやの顔だった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




