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29話 私の名は!ノヴァだ!

人々が群がる中心には、少女と派手な装飾を身にまとったふくよかな男の子がいた。

「貴様!私にぶつかってタダで済むと思うなよ!」

「すみません!」

少女は深く頭を下げた。

「お前達、こいつを連れて行け!」

男の子はそばに控えていた騎士達に命令した。

「はっ」

「やめてください!」

少女は抵抗するが、騎士達が強引に連れて行こうとしていた。

「待ちなさい!」

そう言って、リアが止めに入った。

「なんだ貴様?」

男の子が偉そうに言った。

「ぶつかっただけでしょ、その子を離しなさい!」

「お前可愛いな、そこのお前もな〜」

男の子がリアとヨミを見ながら言った。

「アイツらも連れていくぞ」

「はっ」

「ちょっと!」

「やめてください!」

騎士達がリアとヨミの腕を掴んで連れていこうとしていた。

「そこまでだ!」

「ぐあ!」

「がはっ!」

「ぐはっ!」

少女とリア、ヨミを捕らえようとしていた騎士達が、何者かによって倒された。

「な、何をする!?貴様は誰だ!」

「私の名は!ノヴァだ!」

そう言ったのは、白いパーカーを身にまとい、フードを深く被り、笑顔の仮面をつけた人物だった。

「こいつを殺せ!」

男の子は騎士に命令した。

「ふざけんな!」

「もう!てめぇのお守りは嫌だぜ!」

騎士達は悪態をつきながら、その場から去っていった。

「なっ!」

「君の護衛、逃げちゃったね〜」

「そこの女二人!痛い目に合わせてやるからな!」

男の子はリアとヨミを見て言った。

「その二人には婚約者がいるんだよ!」

「ぐはっ!」

笑顔の仮面の者が剣の柄頭で男の子の腹部を強打し、男の子はその場に倒れた。

「リア達に尻に敷かれていいのは婚約者だけだ!」

倒れた男の子に向かって仮面の者が言った。

「スカッとしたぜ!」

「かっこよかったぜ!」

「素敵!」

見ていた人々が仮面の者に拍手をしながら賞賛した。

「ナンノサワギ?」

騒ぎに気づき、魔導騎士達がやってきた。

「ヤベッ!私はこれで失礼する!」

そう言って、仮面の者はその場から立ち去った。

「ハァハァ、もう大丈夫か…」

仮面の者は人気のない路地に逃げ込んでいた。

「普通に助けなさいよ」

リアはそう言って、仮面の者に近づいた。

「目立たないように仮面を被ってたでしょ?」

シンは仮面を外して言った。

「シン様が急に『着替えてくる!』と言って止める間もありませんでしたよ」

アルが呆れながらシンに言った。

「でも、かっこよかったです…」

ヨミは顔を赤くしていた。

「でしょ!」

「ヨミ、こういうときは褒めちゃダメよ…」

「リアは褒めてくれないの〜?」

「フンッ…ありがとう…」

チュッ

リアは顔を赤らめながらシンの頬にキスをした。

「…い、いや、当然のことをしたまでだよ…」

シンは気恥ずかしそうにしていた。

「わ、わ、わ、私も!」

チュッ

ヨミも顔を真っ赤にしながらシンの頬にキスをした。

「あ、あ、ありがとうございました…」

「う、う、うん…」

シンはどう反応していいか分からず内心は混乱していた。

「気まずいですね」

アルは気まずそうな表情を浮かべていた。

「お昼ご飯を食べに行きましょうか…」

「うん…」

「賛成です…」

シン達はしばらく目を合わせられなかった。

シン達が食事処を探して歩いていると見知った声が聞こえてきた。

「すみませんでした!」

「申し訳ございません!」

「ごめんなさいですぅ〜!」

「この声って…」

「あの三人ね…」

シン達は声が聞こえた場所へと向かうと、そこにはメイド三人とシンと同い年ぐらいの少年がいた。

「大丈夫なので頭を上げてください」

少年は申し訳なさそうに言った。

「すいません……この三人がどうかしましたか?」

シンは少年に尋ねた。

「シン様〜」

メイド達は涙目でシンを見た。

「私達の不注意でこの方とぶつかってしまって!」

「あなたが悪いのよ!食べ物を食べながら歩くから!」

「二人も食事処の匂いに夢中だったですぅ〜!」

「人を食いしん坊扱いしないでちょうだい!」

三人は言い合いを始めた。

「やめなさい!見苦しいわ!」

「すみません!」

「申し訳ございません!」

「ごめんなさいですぅ〜!」

リアが三人を怒鳴って喧嘩を止めると、シンは少年に頭を下げた。

「うちのものが申し訳ない!」

「大丈夫だよ、怪我もないし、ズボンが少し汚れた程度だから」

「ありがとうございます!」

「ほら、あなた達も!」

「許していただき感謝します!」

「感謝申し上げます!」

「ありがとうですぅ〜!」

リアに言われメイド三人は慌てて感謝した。

「それにしてもさっきのヤツと大違いだね…」

「比べちゃダメよ、この人に失礼よ」

シンとリアは小声で言った。

「君はここの住民かい?」

「違います」

「あぁ〜堅苦しいのはやめて〜」

「お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」

「もしかして、学園に入学するのかい?」

「そうだよ」

「僕もなんだ!」

柔和な少年が嬉しそうに言った。

「僕の名前はアーサーだ」

「僕はシンだよ」

「シン?」

アーサーは少しの間考えた素振りをして思い出したように言った。

「君がシュトラス国の王子なの!?」

アーサーの言葉に歩いていた人々が振り返る。

「ここでやめてよ!」

「あ、ごめん!」

「それで、なんでわかったの?」

「それはね…」

「シン様、話に割って入って申し訳ありませんが場所を変えましょう」

リアが丁寧にシンに助言をした。

「うん…」

シンはなんとも言えない表情になりながらも食事処へと向かった。

「それで、なんでシンのこと知ってるのよ?」

食事処の席に着いてすぐ、リアが疑惑の目でアーサーを見ながら聞いた。

「ねぇ、さっきと雰囲気違わない?」

「いいから答えなさい!」

「怖いね…」

シンは無言で頷いた。

「シンのことは父から聞いてたんだよ」

「あなた、何者?」

「一応、僕も魔人国の王子だよ」

そう言ってアーサーは手にはめてあった指輪を外した。その瞬間、アーサーの青色の髪から角が現れた。

「角?」

「普段は隠してるんだ」

「なんで?」

シンの言葉にアーサーは目を丸くした。

「アハハハハ!シンは知らないの?」

「?」

「魔人族は魔族と同類と思われているんだ」

「だから?」

「シンは怖くないの?」

「なんで?」

「アハハハハ!」

シンの言葉にアーサーは涙を浮かべながら大笑いした。

「なんか変なこと言った?」

「昔話ぐらい覚えておきなさいよ…」

リアはシンに呆れながら言った。

「僕が悪いの!?」

「昔、魔族は各地の国々を襲い大勢の人々を殺めたの」

「魔人族となんの関係が?」

「似ていたからさ…」

アーサーは悲しそうな表情を浮かべていた。

「魔族は角を生やし、異形の姿なんだ」

「人族は、魔人族と魔族を同類だと思っているのよ」

「同類というか魔人族が魔族だと思ってるんだ」

(偏見ってやつか…)

「魔人国はシュトラス国と友好を結んでいるんだ」

「それで僕のことを知ってたのね」

「サラマ様からは面白いやつだと聞いてるよ」

「僕は普通だよ!」

「普通の人は仮面なんて被らないわよ」

「変装だって!」

「アハハ、君ら仲良いね!」

「一応婚約者だからね…」

「一応ってなによ?」

「婚約者です…」

シンは震えながら答えた。

「シンは冒険者登録してる?」

「してるけど」

「だったら僕をパーティーに入れてよ!」

「パーティーなんかないよ?」

「じゃあ作ろうよ!」

「ダメですよ」

アーサーの提案にアルが止めた。

「君は?」

「シン様の従者アル・シュトラスです」

「アル、なんでダメなんだい?」

「出会って間もないのであなたの性格と信用に値するかを知らなくてはなりません」

「一理あるね…」

「私も賛成よ」

「私もです」

アーサー、リア、ヨミが言った。

「僕は別にいいけど?」

「あなたは黙ってなさい」

「はい…」

シンはリアに一喝され、口を閉じた。

「分かったよ、今は諦めるけど必ずパーティーに入れてもらうからね〜」

そう言い残してアーサーは去っていった。

「ガイのときはすんなりダンジョン潜ったのに…」

「止めても無駄だと思って許しましたけど、警戒はしてましたよ?」

「言い訳にしか聞こえません〜」

「今は私と同じくシン様の従者ですが私が一番です」

「どっちも一番じゃダメ?」

「譲りません!」

「はいはい」

(それにしても、パーティーかー)

「ねぇ、アル、冒険者ギルドに行かない?」

「パーティーを作るのですか?」

「うん」

「分かりました」

「そういえば、ガイ達は?」

シンは食事に夢中になっているメイド達に聞いた。

「すみません…」

「私達、はぐれてしまって…」

「迷子になってたですぅ〜」

三人以外のもの達は不安に思った。

「私はこの子たちと屋敷に帰るわ」

「私もお供しますよ」

「じゃあ、お願いね」

そうして、リア、ヨミ、メイド三人は屋敷へ、シンとアルは冒険者ギルドへと向かうのだった。


メイド達が屋敷に帰宅後

「あなた達!」

「セリー様!?」

「自分達がメイドだとわかっているのですか!!」

「申し訳ございません!!」

「それに加え!シン様に頭まで下げさせたとは!」

「すみませんですぅ〜!」

「説教です!正座しなさい!」

三人は夜までセリーに説教された。

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