27話 半壊の家かな…
シン達は学園のある都市に向かって分厚い雲の中をスカイに乗って進んでいた。
「そういえばいつ学園へ行けばいいんですか?」
シンは疑問に思い、シリアに尋ねた。
「……わからんのじゃ」
「「「………」」」
全員がシリアを見た。
「安心するのじゃ!数日は自由にしていて大丈夫なのじゃ!」
シンはじっとシリアを見つめ、目を細めた。
「…本当に?」
「大丈夫なのじゃ!四日後に領主と会うのじゃ!」
「僕達もですか?」
「もちろんなのじゃ」
「どんな方なんですか?」
アルがシリアに聞いた。
「どんな方か…うーん」
シリアはしばらく思考した。
「綺麗?」
「「「綺麗?」」」
シリアの言葉に全員が反応した。
「領地が綺麗ってこと?」
「容姿が綺麗な領主ってことよ」
「へぇ〜」
リアの言葉に、シンは領主を想像した。
「綺麗なお姉さん…ムフフ…」
シンが領主を想像して鼻を伸ばしていると、リアがシンの頬を引っ張った。
「いひゃい!」
「何考えていたか言ってみなさいよ…」
「……すびませんでじた」
「よろしい」
リアはシンの頬を引っ張るのをやめた。
「着いたッスよ!」
スカイの言葉にシン達が視線を向けると、
シン達の目の前に、雲海の上に悠然と浮かぶ巨大都市が姿を現した。
思わずシンは息を呑んだ。
「すごい…」
「綺麗ですね…」
「綺麗ね…」
スカイに乗っている全員が感動していた。
「あれが、『浮遊探求都市メーティス・セレスティア』なのじゃ!」
白い雲を突き抜けるように巨大な塔がそびえ、その周囲には大小さまざまな建物が並んでいた。
「シュトラス国とは違うね…」
「様々な形の建物が並んでいますね」
シンとアルはメーティスの建物を不思議そうに見ながら言った。
「この都市には、あらゆる分野を研究する者達がおるのじゃ。あれらは、そやつらの研究所なのじゃ」
「なるほど、学園があるのも納得です」
「危険な研究もあるのでは?」
「あるのじゃ、だが、研究はギルドに許可を得なければならぬのじゃ」
「冒険者ギルドにですか?」
「そういえば言ってなかったのじゃ、我は探求者ギルドのギルドマスターなのじゃ!」
「「「………」」」
全員がシリアを疑いの目を向けた。
「ねぇ!ヤバいんじゃないの!?」
「そうですね…」
シンとアルは小声で話した。
「大丈夫なのじゃ!探求ギルドは研究を管理しているのじゃ!」
「そのギルドマスターがいなくて大丈夫なんですか?」
「………大丈夫なのじゃ」
シリアは間を空けて目を逸らしながら言った。
「「「………」」」
全員がシリアを見つめていると、スカイが地面に降り立った。
「到着ッスよ〜」
シン達はスカイの背中から降りた。
「それじゃ、オレっちは行くッスね」
「スカイさんありがとうございました!」
シンの言葉にスカイに乗っていた全員が頭を下げた。
「いいッスよ、また会いに来るッス」
「はい」
スカイは大きな翼を羽ばたかせて飛び去っていった。
「では、我が案内するのじゃ!」
その瞬間、シン達は鎧を着た者達に囲まれた。
「僕ら何かやっちゃった!?」
「そういえば、検問も通っていませんね…」
「私達、無断侵入者ってことね…」
「おいおい!許可出てるんじゃないのかよ!」
「私達、捕まっちゃうんですか〜?」
「シリア様が言い忘れてたってことは…」
ヨミの言葉に全員が理解した。
「姉様のせいか…」
シンの言葉に全員が頷いた。
「姉様説明してください!」
シンが視線を向けると、シリアはひっそりと逃げようとしていた。
「シリアサマ…シゴト…」
「イソグ…」
鎧を着た者が言った。
「書類仕事は嫌なのじゃ!」
「ダメ…ツレテ…イク」
「シゴト…」
そう言って鎧を着た者達がシリアを拘束した。
「嫌なのじゃ!!」
その言葉を残してシリアは連れていかれてしまった。
「どうしよう…」
「私達を捕らえに来たわけではないようですね」
「それなら大丈夫でしょう」
「大丈夫なのかよ?」
「大丈夫ですわ」
不安そうなシン達にリーシアが答えた。
「あれは、メーティスを守る『魔導騎士』ですわ」
「「「魔導騎士?」」」
「はい、なので大丈夫だと思いますわ」
「そうなんだね」
「リーシア様はなぜ知っているのですか?」
「お父様から聞かされてましたので…」
「普通は聞かされるよね…」
シンは遠い目でシリアが連れていかれた方を見た。
「リーシア様、お約束があるのでは?」
竜人族の一人が言った。
「そうでした、シン様私達は失礼しますわ」
「分かったよ、学園でね」
「はい」
リーシアは三人の竜人族と去っていった。
「さて、まずは家を探さないとね」
「そうですね」
「案内役がいないし、家探しと情報収集に分かれましょう」
「そうしようか」
「いい家見つけてやるからなぁ〜」
「ウォン!」
「ヒーン!」
シンはハクとベガを撫でながら言った。
家探しはシン、ヨミ、ガイ、セリー。
情報収集はアル、リア、ライ、ハク、ベガ、メイド三人。
シン達は冒険者ギルドに入り、職員に家を借りたいと話した。
「数軒ございます、今からご覧に行きますか?」
「お願いします」
そう言ってシン達はギルド職員に案内され物件へと到着した。
「ここは…」
シン達の目の前には大きな家だったが半壊していた。
「これなのか?…」
「焼け焦げた跡がありますよ?…」
「事故物件ですね」
「半分はまだ住めますので」
職員は真顔で答えた。
「いや…半壊している家を紹介しないでくださいよ」
「前の家主が薬学の研究を失敗し、爆発事故を起こしたのです。一か月金貨五枚と銀貨七枚です」
「普通の家をお願いします…」
「…」
職員はシンの言葉に微笑むだけだった。
二軒目
「家の中が土!?」
「こちらは魔法陣の研究に失敗したそうです。金貨四枚です」
「どうやって住むんだよ!」
家全体が大きく軋んだ。
メキメキ…
「崩れますよ!」
ドサァッ!
三軒目
「家が植物に飲み込まれてます…」
「こちらは植物を研究していた家です。金貨三枚と白銀貨九枚です」
「家と呼んでいいのでしょうか?」
「おいおい!なんか植物伸びてないか!?」
「昨日全部切ったばかりなんですけどね〜」
「蔓が足に!」
四軒目
「禍々しいですね…」
「呪われてそう…」
「呪いの遺物を研究していた家です。金貨三枚と白銀貨五枚です」
「禍々しい霧がこっちに!」
「逃げて逃げて!!」
五軒目
「目がぁ!」
「眩しくて何も見えねぇ!」
「こちらは机を光らせようとして、家ごと光らせてしまった家です。金貨三枚です」
「一日で目が見えなくなりますね」
六軒目
「おお!庭もあるし家も大きい!」
「家ではなく、屋敷ですね」
「ここが一番だな!」
「最初からここを案内してくだされば良かったのでは?」
「実はここ、家主が全員不運なことになっているんです」
「不運とは?」
「妻に殺された者や、汚職をしていた貴族一家が原因不明で全員亡くなったこともありました」
「ガチの事故物件じゃん…」
「天罰では?」
「ではここにいたしますか?金貨一枚ですよ?」
「「「…………」」」
「…しばらく考えます…」
シン達はアル達と公園で合流した。
「情報収集はどうだった?」
「そうね…研究好きが多いってことが分かったわ…」
シンに聞かれリアは遠い目をした。
「歩いている途中、光る家のせいで目がやられました」
そう言ってアルは何度も瞬きをした。
「それで良い家は見つかった?」
「ウォン!!」
「ブルル!!」
ハクとベガが期待するような視線でシンを見た。
「今のところ…半壊の家かな…」
「家を探しに行ったのよね?」
「仕方ねぇだろ!やべぇ家しかなかったんだよ!」
「何を見てきたのよ…」
「えっとね…」
シンはリア達に見てきた家を教えた。
「たしかに…半壊が一番ですね」
「だろ?」
「ひとまずは半壊の家で生活しようか…」
「待ちなさい!」
そう言ってリアはシンを止めた。
「その金貨一枚の屋敷は悪行をしたものが死んでいるんでしょ?」
「うん」
「じゃあ大丈夫じゃない!」
「ええ〜リアは怖くないの?」
「中に入らなくちゃ分からないでしょう?」
「でも…」
「いいから行くわよ!」
「はい…」
シン達は職員に案内され屋敷へと入った。
「ウォン!」
「ヒーン!」
ハクとベガは広い庭に喜び駆け回っていた。
「何も無さそうだけど?」
「屋敷の中は血まみれかもよ〜」
シン達はハクとベガを庭で待たせ屋敷へと入った。
屋敷の中は、装飾こそシンプルだったが、清潔感が保たれていた。
「こんなに大きいのに金貨一枚?」
「マジでやべぇもんがいんじゃねぇのか?」
「男がビビってないで行くわよ!」
「「はい…」」
シン達は別々に屋敷内を見回った。
「別に変な場所はないわね」
「とても事故物件とは思えませんね」
「それはどうかな…」
シンはリアとアルに苦笑いを浮かべながら職員に尋ねた。
「ここ、誰が掃除してるんですか?」
職員は少し困ったように首を傾げた。
「…分かりません」
その瞬間全員の背筋が凍った。
「おいおい!怖すぎるぞ!」
「怖くて夜も眠れませんよ!」
ガイとヨミが言った。
「半壊の家で決まりだね」
「私はこの屋敷いいと思います〜」
「そうね、今日はここに泊まりましょう、いいかしら?」
「はい、問題ありません」
リアにそう言って職員は屋敷を出て行った。
シンは慌ててリアに詰め寄った。
「リア!何を考えてるのさ!」
「いくら私でも怖いですよ」
「不気味すぎるって!」
「いいから!ササッと荷物を出しなさい!」
「「「はい…」」」
そうして、シン達は不気味な屋敷に一泊することになったのだった。
「フフフッ……」
屋敷のどこからともなく、くすりと笑う声が聞こえた。




