25話 一生そばにいるわよ…
シン達は露店で買い物を終え、服屋マーガレットへと入った。
「あら〜大きくなったわね〜」
「マーちゃん久しぶり〜」
「シンちゃん今日はどうしたの?」
店主のマーガレットがシンに尋ねた。
「こういう服を作って欲しいんです」
シンはマーガレットに服のデザインが書かれた紙を手渡した。
「こ、こ、これは!」
「このパーカーっていう服と半ズボンを作って欲しいんですけど、作れますか?」
「…」
マーガレットは服のデザインを見て固まっていた。
「いいわ!いいわね!初めて見るデザインよ!全く新しいデザインの服ね!作るのが楽しみよ〜!」
「では!」
「ええ、作ってあげる〜!」
「ありがとうございます!」
「それで、お代だけど…」
「はい」
マーガレットは先ほどと打って変わって真面目な表情になった。
「この服のお代は要らないわ」
「え?」
「だけど、このデザインを売って欲しいのよ〜。この服を販売して得た利益の二割をシンちゃんに定期的に支払うわ〜」
シンは少し考え、口を開く。
「いいですよ」
「ありがとう〜!じゃあ早速契約と素材選びをしましょう〜!」
そう言ってマーガレットは店の奥へと向かった。
「シン、二割は安いんじゃないの?」
「僕もそう思うよ」
リアとレイツがシンに言った。
「前世にあった服を参考に描いただけだからね」
「ちょっと見せてちょうだい」
「はい」
シンはリアとレイツに紙を渡した。
「不思議なデザインね…」
「何のためにこの服を作るんだい?」
「動きやすい服が欲しかったんですよ」
「なんでよ?」
「これから学園で学んだり、ダンジョンに行ったりするからだよ」
「戦闘服ってことかい?」
「そうです、これなら王子だと思われないですし、堅苦しくないから欲しかったんです!」
「はぁ、本当に王子と名乗らないの?」
「もちろん!このフードを被っていれば、僕を見たことがある人でも分かりにくいでしょ?」
「いや〜さすがに被り物をずっとはダメだよ…」
「えぇ〜」
レイツの言葉にシンは項垂れる。
「授業以外はいいんじゃない?」
「そうだね!」
「はぁ、婚約者としては普通に振る舞って欲しいのだけど…」
「今更じゃない?」
「…そうね…」
シンの言葉にリアは呆れた表情を浮かべた。
「お待たせ〜」
そうしていると、マーガレットが戻ってきた。
「まずは契約書ね〜」
「はい」
シンは契約書を読み、署名した。
「これで契約完了よ〜他にもデザイン画あったら来てちょうだいね〜!」
「また落ち着いたときに来ますね」
シンは苦笑しながら言った。
「それで、どんな素材で作る〜?」
「戦闘服でもあるので通気性が良くて丈夫な素材ってありますか?」
「いいわね!これなんてどうかしら〜」
マーガレットが出したのは、白く滑らかな糸だった。
「この糸は空気の通りが良くて刃が通りにくいのよ。それに、魔法による攻撃も軽減されるわ」
「おお!では、この糸でお願いします!」
「分かったわ〜三日後に届けに行くわね〜」
シンは服の依頼を終え、次の場所へと向かう。
「次はどこに行くの?」
「魔導書と本を買うために本屋にね」
「何の本を買うんだい?」
シンはレイツにそう聞かれた。
「この世界を知らないことが怖くなったんです…なのでこの世界について詳しく知りたいんです」
「なるほどね…」
レイツはしばらく考えてシンへと言った。
「魔導店に行こうか」
「ここにもあるんですか?」
「ああ、シンが欲しい物があるかもよ?」
「はい」
シン達は街中をしばらく歩き、人通りの少ない場所にある店へと入った。
「おお!兄上なのじゃ!」
魔導店にいたのはシンの姉であるシリアだった。
「シリア、ここにいたのか」
「うむ、掘り出し物を探しに来たのじゃ!」
シリアはシンとリアに気づいた。
「お主がシンか!」
「えっと…」
「シン、この方は貴方のお姉様よ」
「母様が話していた方ですか?」
「うむ、お前の姉のシリアなのじゃ!」
「初めまして、シンです」
「それで、なぜお主らはここに来たのじゃ?」
「レイツ兄様の勧めで…」
シンはここで合っているのかとレイツに視線を向けた。
『グッ!』
レイツは親指を立てて大丈夫だと伝えた。
「そういえば、シリア姉様は学園がある都市にいるんじゃ?」
「まぁ…お主らの案内役じゃ!」
シリアは誤魔化すようにそう言った。
「もしかして、学園の教師なんですか?」
「違うが、時々講習をすることもあるのじゃ!」
「そうなんですね」
そう話しているとシンの懐が光る。
「シン!懐の中が光ってるのじゃ!」
「ん?」
シンが懐から杖を出した途端にリリが現れた。
「な、なんなのじゃ!」
「精霊だね…」
「初めて見たわ…」
突然現れたリリに、シン以外の三人は驚いた。
「リリ、どうしたの?」
『……』
グイッ!
「いひゃい!」
リリはシンの頬を引っ張った。
「ちょっと!やめなさいよ!」
リアがリリに向かってそう言った。リリはシンの頬を引っ張るのをやめてリアを睨んだ。
「リリ、この子はね僕の婚約者なんだ」
『……』
べーっ!
リリはリアに向かって「あっかんべー」と挑発した。
「なっ!!」
リアはリリに挑発され、顔を真っ赤にしていた。
「リリ、ダメだよ」
『……』
プイッ
リリはそっぽを向いた。
「シン!なんなのよ!この子は!」
「僕の杖に住んでいる精霊のリリだよ」
『……』
シンに紹介され、リリは両手を腰に当てながら胸を張った。
「フンッ!その精霊がなんで出てきたのよ?」
『……』
「いひゃいよ〜」
リリはシンの頬を引っ張り、棚に置かれていた小さな箱の前まで連れていった。
「何これ?」
シンは小箱を手に取って中を確認した。
「種?」
「普通の種ね」
『……』
小箱に入っていたのは何の変哲もない種が一つだけだった。
『……』
ジーッ
リリはシンを見つめる。
「…買えってこと?」
『……』
コク
シンの言葉にリリは頷いた。
「げっ!金貨一枚……」
「はぁっ!?」
「普通の種にしか見えないけど!」
「シン!買っちゃダメよ!絶対ボッタクリよ!」
『……』
べーっ!
「ムカっ!」
リアはまたもやリリに挑発された。
「今日は僕が代わりに払ってあげるよ」
そう言ったのはレイツだった。
「ありがとうございます!」
「いいんだよ」
レイツは金貨一枚を小箱の横に置いた。金貨を置いた瞬間、その金貨は消えてしまった。
「え!?」
「消えた!?」
「この店の支払いはこうやってするんだよ」
「相変わらず面白い店なのじゃ!」
『……』
リリは飛び回って喜んでいた。
『……』
チュッ
「んっ!?」
リリはシンの頬にキスをした。
「ち、ちょっと!何してるのよ!」
リアはそう言って声を荒らげた。
『……』
クスッ
リリはクスッと笑うと、そのまま杖へと戻った。
「シン!その杖売っぱらって!」
「そうはいかないよ…」
「まぁまぁ…」
「面白い子じゃったのじゃ」
シンとレイツがリアを宥め、シリアは一人そう言った。
「それよりも、シン、コレを」
レイツはシンに白く輝く立方体を手渡した。
「なんですか、これ?」
「きっといいことがあるよ」
「これでこの世界について知れるんですか?」
シンはレイツを疑いの目で見た。
「お代は僕が払うから…」
「分かりましたよ…」
シンは収納袋に購入した種と不思議な立方体を仕舞った。
「次はどこに行くの?」
「うーんとね、木製の仮面を売っている場所」
「何に使うのよ?」
「変装用」
「ねぇ、いったい何をするの?」
「平穏に生活するため」
リアは『何を言っているの、この人』という表情を浮かべた。
「先が思いやられるわね…」
「婚約解消したい?」
「いいえ、しないわよ」
「そう…」
「なんで残念そうにするのよ!」
「いやー…」
「フンッ、一生そばにいるわよ…」
リアは小声で言った。
「なんて?」
「な、なんでもないわよ!」
後ろで二人を見ていたレイツとシリアは、ニヤニヤと笑っていた。
「じゃあ、木工工房に行こうか」
そうして、シン達は木工工房へと来ていた。
「らっしゃい!」
店員に出迎えられ、シンは店の中を歩く。
「おっ!これいいね!」
シンは笑顔が描かれた仮面を被りながら言った。
「怪しいわね…」
「逆に目立つよ…」
「危ないヤツなのじゃ…」
「よし!これにしよう!」
シンは三人の言葉を気にも留めず、仮面を買った。
「あと、これもください」
そう言ってシンは木工用具と木を購入して、城へと帰って行くのだった。
シンが仮面をつけながら城に帰っているときの人々の反応
「シン様だ…」
「変装かしら…」
「それにしても不気味な仮面だな…」
騎士達の場合
「なんというべきか…」
「黙って見守ってればいいんだよ」
アルの場合
「返品してきなさい」
「え?」




