23話 もう嫁姑の蟠りが生まれてますね…
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サラマとカイル達が飛び去っていった。
「それでは部屋に案内をしよう」
「「ありがとうございます」」
ウィルがそう言ってリーシア達を案内しようとしたとき、城の扉からリアが出てきた。
「あら?お祖父様どうして庭に?」
リアは庭にいたウィルへと話しかけた。
「なに、神竜様方を出迎えていたんだ」
「そうだったのですね、では後ろの方々は神竜族なのでしょうか?」
そう言って、リアはリーシア達を見た。
「私は神竜族のリーシアです。この子達は竜人族です」
リーシアがそう言うと、背後にいた3人は頭を下げた。
「そうなのですね、私の名前はリア・シュトラスです」
「リアさんですね、では国王様のお孫様なのですね」
「シン王子の婚約者でもあります」
「え?!」
リーシアはリアの言葉に目を丸くした。
「シ、シ、シ、シン様に…婚約者が…」
リーシアは慌て出した。
「婚約者はもう1人いますよ」
「もももももう1人!!」
リーシアがそう言った途端に倒れた。
「リーシア様!」
「いけませんわ!」
「錯乱していらっしゃいます」
リーシアの背後にいた竜達がリーシアの体を支えた。
「奥の木陰で休んでくれ」
「「「ありがとうございます」」」
『ドス、ドス、ドス』
竜達はリーシアを木陰へと運んで行った。
「もしかして、3人目ですか?」
「そうだ」
「聞いてませんが…」
リアはそう言ってウィルに向かって圧を出した。
「い、いや、先程決まったのだ!」
ウィルは慌ててリアに弁明した。
「シンは知らないのですね?」
「リーシアとは面識はあるが、婚約者になったことは知らん」
「そうですか…」
リアは木陰で休んでいるリーシアを見た。
「どうした?」
「リーシアさんと話してきますね」
「な、なにを言うつもりだ?!」
「誤解しないでください、ただシンの婚約者として話すだけです」
「分かった」
「それでは失礼します」
そう言ってリアはリーシアのもとへ向かった。
「大丈夫だろうか」
「何がです?」
そう言ったのはアリスだった。
「アリス、なぜ庭に?」
「リア姉様を探してたの」
「リアなら…今は話し中だ…」
ウィルはチラリと木陰の方を見た。
「お父様はなぜここに?」
「お客様を迎えていた」
「神竜族の皆さんが来たの?」
アリスは木陰にいる竜達を見て言った。
「ああ、ん?結界が破れた!?」
その言葉と同時に空気を割くような音が聞こえた。
ゴオオオオオッ!
何かが高速で城の庭へ向かって飛来してきた。
「まずい!アリス!」
「お父様?」
ウィルはアリスをかばうように抱き寄せ、唱えた。
「物理障壁!」
その言葉と同時にウィルとアリスを包むように膜ができた。
ゴオオオオオッ…ズドォォォン!!
高速の飛行物体は庭へ激突した。
「アリス大丈夫か?」
「お父様、ありがとう」
土煙が晴れ、飛行物体の姿が現れた。
「…うぅ…急に変な薬かけるからッスよ!」
「…イタタ…お主も乗り気だったではないか!我のせいだけではないのじゃ!」
現れたのは水色の鱗を持つ竜と竜の背中でぐったりしている少女だった。
「水竜様!!」
ウィルはスカイに駆け寄る。
「ひ、久しぶりッスね…」
スカイはオドオドしながら答えた。
「水竜様、お手数でしょうが検問所で許可を貰ってください」
「悪かったス…」
「結界が破られたときは襲撃かと思いましたよ」
「それはこの子のせいッス!」
そう言ってスカイは少女を示した。
「スピードポーションの効果が高く、思った以上の性能が出てしまったのじゃ!」
「シリア!!」
ウィルは少女に向かってそう怒鳴った。
「おお!親父殿!久しいのじゃ!」
「手紙を何百回書いても返事すらないとは!心配していたんだぞ!」
「昨日、研究室に積み上がっておった手紙をようやく読んで、急いで来たのじゃ!」
「いつの話をしているのだ!シンはもう10歳だぞ!」
「スカイよ!10年も経ってしまったのじゃ!」
「オレっちが乗せてたのは1日だけッスよ!」
「いや〜研究に没頭してたのじゃ」
シリアは自分の頭をかきながら言った。
「はぁ」
ウィルはシリアに呆れてため息を吐いた。
「お父様、この方がお姉様なのですか?」
「ああ、ヴァンの次に生まれた子だ、見た目はアリスと変わらんが長生きしている」
「おお!もしやお前がシンか!」
「違う!シンは男だ!」
「ではこの子は?」
「シンの次に生まれた子だ」
「では我の妹か!」
そう言われ、アリスは前に出る。
「初めましてアリスです」
「うむ、我はシリアなのじゃ!」
アリスとシリアはお互いに名乗った。
「それで、しばらくは城にいるのか?」
「うむ、久しぶりに兄上達に会いたいのじゃ!」
「私、シリアお姉様とお話ししたい」
「そうだな、ではアリスお茶を飲みながら話すのじゃ!」
「はい!」
そう言って2人は城へと入っていった。
「はぁ、全く誰に似たのか…」
ウィルは頭の中でルシアの姿を浮かべた。
「水竜様はどうされますか?」
ウィルは壊れた庭を修復していたスカイへと尋ねた。
「シンくん達をメーティスまで乗せて行くッスからしばらく庭にいさせてもらうッスよ!」
「承知しました」
そう言ってウィルも城へと戻るのであった。
―――――――――――――――――――
シン達がナガリオを出発して1週間が経った頃、シン達はヒメノ国の王城へと到着していた。
「シン様!」
そう言って出迎えたのはシンの婚約者であるヨミだった。
「ヨミ、またすぐに会えたね!」
「は、はい…」
ヨミは顔を赤らめて下を向いた。
「ゴホン!あらあら…仲が良いのはいいことだけど私達は急いでいるのよ…イチャイチャしてないで早く準備しなさい!」
「「は、はい!」」
ルシアにそう言われシンとヨミは荷物を収納袋にしまっていった。
「あれ?」
「ヨミ、どうしたの?」
「城に忘れ物をしてしまいました!」
「あとは僕達がやっておくから取ってきなよ」
「ありがとうございます、少々待たせるかもしれないので小屋でお待ちください!」
そう言って駆け足でヨミは城へと向かった。
「ふぅ、終わった」
「王女様の荷物多くねぇか?」
シンの言葉にガイが言った。
「ガイはそれだから相手が見つからないんですよ〜」
「なんでだよ!」
女心が分からないガイにライがそう言った。そうしているとルシアが言った。
「じゃあ、ヨミちゃんの言っていた小屋で待っていましょうか」
シン達は訓練所にある小屋にて休んでいた。
「それにしても外観と違って中は掃除されてますね」
「最近まで誰かが長居していたのかしら?」
セリーの言葉にルシアが言った。
「ああ、僕達がここで生活してましたから…」
「最初来たときはホコリだらけでしたね…」
その言葉にルシアとセリーが反応した。
「シンちゃん達をこんなところで生活させてたの!?」
「お二人ともお身体は大丈夫ですか!?」
セリーに言われ2人は思い出す。
「最初はやばかったねぇ…」
「初日で大怪我するとは思いませんでしたしね」
「何があったのよ!」
「最初の訓練で剣撃を食らってこの小屋に吹っ飛ばされたんです」
「小屋が半壊してましたね」
その言葉を聞きルシアは声を上げた。
「なによそれ!ヤミに文句言ってやるわ!」
「次に会ったときは血祭りにあげましょう」
「そうね…」
そう言ってルシアとセリーは悪い笑みを浮かべた。
「お待たせしました!」
そう言って、ヨミが紙を持ってやってきた。
「それって僕があげたレシピ?」
「はい、このレシピを作ってから料理するのが好きになってしまいました」
「それは良かったよ、今度ヨミの料理を食べてみたいよ」
「ぜひ!」
「はいはい!仲良くするのは後にしなさい!」
「「は、はい!」」
そう言ってシン達は馬車へと乗り込み、セリーがルシアに言った。
「もう嫁姑の蟠りが生まれてますね…」
「ち、違うわよ!」
ルシアはぷんぷんとしながら馬車へと乗り、シン達はシュトラス国に向かって出立したのだった。
―――――――――――――――――――
シュトラス国から遠く離れた小国バボロの王都にて、夜にも関わらず灯りがともり屋台が並び賑わっていた。
「準備完了だね〜」
高台に立つ黒いローブの者が言った。
「2人とも〜魔力ちょうだい〜」
「……」
「キ…」
そう言って黒いローブを着た2人はもう1人の者に触れた。
「それじゃ行くよ〜」
そう言ってその者は夜空に向かって手を掲げた。
そのとき、バボロ国の王都上空に何者かが現れた。
「ちゃんと首輪してるね〜」
「キ…」
現れたのは、暗い灰色の肌をした異形の生物だった。背中には翼が生え、口元からは長い牙が覗き、黒い眼に赤い瞳孔を宿した双眸は不気味な光を放ち、鋭く伸びた爪を持っていた。体長は二メートルほどあり、その姿からは見るものに恐怖を与えた。
「空を飛んでるぞ!!!」
「なんだあの化け物は!!」
街中から人々の声が響く。
「それじゃ、やっちゃって〜」
そう言って黒いローブの者達はその場から去った。
「グガァ」
異形の生物は、バボロの王都に向かって口を大きく開いた。
『ボウッ』
異形の生物がゆっくりと口を開くと、その口内に黒い炎が渦を巻き、一つの球体を形作った。黒炎の玉は脈打つように膨れ上がり、瞬く間に人の背丈ほど――直径約一メートルになった。
次の瞬間、その黒炎の玉をバボロ王都へ向けて撃ち放った。
『ドゴォォォォン!』
黒炎の玉は轟音とともに炸裂し、漆黒の炎が一気に広がった。その炎は次々とバボロの建造物や人々を飲み込んで行った。
黒炎が消えた頃には、バボロ王都は跡形もなく消え去っていた。
「いや〜割と良い収穫だね〜」
「……」
「キキキ…キキ…」
黒いローブを着た3人は上空にて今の光景を見ていた。
「それじゃ、帰ろっか」
そう言い残し、黒いローブの者達と異形の生物は消え去った。
王都に残っていた命は、その瞬間すべて消え去った。
こうして、バボロ国は何者かの手によって一夜にして滅亡したのであった。




