16話 計画通り
シン達がヒメノ国を出て7日が経過した。シン達は草原を馬車で並走しながらナガリオに向かっていた。
「草原はいいよなぁ〜」
「ヒーン!」
「ベガもそう思うか」
「ヒーン!」
「地図によると今日中にはナガリオに着きますね」
「そうだね、手筈通りに行こうか」
「はい」
シンとアルは悪い笑みを浮かべていた。
(そう言えば、一つ解決しとかないとな)
「ガイー!」
シンは隣を並走しているガイを呼んだ。
「なんだ?」
「紅のダンジョンでの回収物の分配なんだけど」
「俺は勝手についてきただけだ。全部シンたちが受け取ってくれ。」
「え?!」
「ダンジョンに行きてぇって俺が勝手に着いて行ったんだ、その代金みたいなもんだ」
「そういう訳には…」
「いえ、貰っておきましょう」
シンの言葉に対してアルが言った。
「そうだ貰っとけ」
「わ、分かったよ」
ライはシンに話しかけた。
「シンさんは〜鑑定スキルを持っていますか〜?」
「ん?うん、僕とアルも持っているよ」
「なら良かったです〜」
「なぜです?」
疑問に思ったアルがライに聞いたが、答えたのはガイだった。
「ギルド職員が冒険者の素材を騙して買い取る奴がいんだよ」
「騙すってどうやって?」
「例えばレッドゴブリンキングをレッドゴブリンだって言って安く買い取ろうとすんだよ」
「まじか!」
「ですが鑑定スキルと何の関係があるんですか?」
「おいおい、まさかお前ら知らないのか?」
「「ん?」」
「魔物や魔獣を〜鑑定できるんです〜」
(何ー!てっきりステータスを見るだけかと)
「そうだったのか」
「シン様のスキルに頼ってましたしね」
シン達が話していると馬車の前に5匹のレッドゴブリンが現れた。レッドゴブリンが棍棒を振り上げ、一斉に襲い掛かってきた。
「ギャッ!」
「うぉ!」
「急に出てきましたね」
(あっ、鑑定してみるか)
「鑑定!」
―――――――――――――――――――――――――
【レッドゴブリン】
―――――――――――――――――――――――――
「え!これだけ?」
「シン様!来ますよ!」
「あっ、ごめん」
「ファイヤーボム!」
ドォン!
シンはあっという間にレッドゴブリンを倒した。
「すごいですね〜」
「あ、ありがとう」
「シン様、どうされたのですか?」
「いやね、レッドゴブリンを鑑定したら名前だけだったから」
「なるほど、シン様のスキルとは違って詳細はわからないのですね」
「そうだね」
(まてよ、鑑定スキルのレベルが低いから見れないのか?そう言えば最近ステータスを見てないや)
「鑑定!」
―――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
【名前】シン・シュトラス
【種族】新人族・ハイエルフ
【称号】シュトラス国王子・神の後継者
【LV】45レベル
【EXP】840
【HP】300
【MP】480『最大500』
【ATK】100
【VIT】200
【DEF】80
【DEX】50
【AGI】150
【LUK】20
【スキル】
【テイム】Lv3【知恵の本】Lv3
【火魔法】Lv5【風魔法】Lv4
【鑑定魔法】Lv3 【水魔法】Lv3
【氷魔法】Lv3 【剣術】Lv4 【瞬脚】Lv1
―――――――――――――――――――――――――
(おお!レベル45に魔力が500!火魔法がレベル5!剣術を修行してたんだ、剣術スキルが手に入ってもおかしくないよな!それと瞬脚ってなんだ?)
「ねぇアル」
「なんでしょうか?」
「【瞬脚】っていうスキル知ってる?」
「瞬脚ですか?」
アルはしばらく考えてシンに言った。
「グレートラッシュバードが使っていたスキルでは?」
「あれか!ラッシュバードよりも早かった!」
(使ってみたいなぁー!)
「ダメですからね!」
「まだ何も言ってないでしょ!」
そう言ってシン達はナガリオまで近づいていた。
―――――――――――――――――――――――――
【ルシア・視点】
ルシアはセリーとハクと別れ、ヒメノ国の厨房へと向かっていた。
「ここね!」
バンッ!
ルシアはヤミを引きずりながら厨房へと入った。厨房にいたヨミは呆然としていた。
「貴方がヨミちゃんね!」
「は、はい」
「私はシンちゃんのお母さんのルシアよ!」
「シン様のお母様!」
ヨミは自分の父を放置して言った。
「シンちゃんのお母さんとして、貴方とお話に来たわ!」
「わ、私何かしてしまいましたか?」
ヨミは怯えながらルシアに聞いた。
「貴方はシンちゃんのことは好きなの?」
「私は、シン様をとても好いております!」
ヨミは顔を赤らめながらもそう言った。その様子を見てルシアは微笑んだ。
「本心からそう思ってるのね」
「はい!」
「シンちゃんの婚約者だと認めるわ」
「あ、ありがとうございます!」
こうしてヨミはルシアにシンの婚約者であることを許されたのであった。
―――――――――――――――――――――――――
シン達はナガリオの検問所の列に並んでいた。
「そろそろ実行しようか」
「はい」
アルとシンは縄を持ちガイの馬車に乗り込んだ。
「どうした?」
「王子が家出とかさすがにまずいよ」
「ライさんにこれ以上迷惑をかけないでください」
「むがッ!」
シンとアルはガイをぐるぐる巻きに拘束した。
「計画通り」
シンは悪い笑みを浮かべて言った。
「ライさん、検問所で引き渡せばいいのですよね?」
「はい〜2人ともありがとうございます〜」
「むがッ!」
「引き渡すって罪人じゃないんだから」
「罪人同然です〜」
「むがッ!!!」
ガイは布で口を塞がれ、暴れないように縄で拘束された。
「次の者!」
検問所の騎士がシン達に言った。
「そのエルフはなぜ拘束されてるのだ?」
「実は、かくかくしかじかでー」
シンは簡潔にガイのことを説明した。
「な、なるほどドラシエル国の王子様ですか。失礼ですが、紋章などはおありですか?」
騎士の言葉にライが紋章を騎士へと見せた。
「間違いありませんね、わかりました。早急にドラシエル国に知らせ、その間は我々が王子殿下を保護します」
「むがッ!!!」
「私もこれで国に戻れます〜」
その言葉にシンとアルは言った。
「短い間だったけど楽しかったよ!」
「また、会いたいです」
2人の言葉を聞きガイはそっぽ向きライは微笑みながら言った。
「この度は救って頂きありがとうございました、このご恩は一生忘れません」
「いつかドラシエル国に遊びに行くよ!」
「一応我々はハイエルフの血も流れていますしね」
「むが?」
「もしかして!」
ガイは不思議に思ったがライはシン達の正体に気づいた。
「僕はシュトラス国王子シン・シュトラスだよ」
「私はシュトラス国騎士団長の息子アル・シュトラスです」
「むがッ!!!!!!」
「では、ルシアお姉様の!」
「ルシアお姉様って!」
「シンさんのお母様です〜」
「まじか!」
「身内でしたか!」
「むがッ!!」
「では、また会えることを楽しみにしていますね〜」
「うん!」
「それでは」
「…またな」
ガイは布を外しそう言った。ライとガイは騎士に案内され、馬車に乗り去っていった。
(ああ、短い間だったのに濃い日々だった、別れがこんなに悲しいなんて)シンは一滴の涙を落としナガリオへと入った。
―――――――――――――――――――――――――
シンとアルはナガリオの道をベガが引く馬車に乗って進んでいた。
「シン様これからどうするので?」
「さすがに国に帰ろう」
「では、今日は宿を探して明日にシュトラス国に帰りましょう」
「えぇ〜明後日にしない?」
「ダメです!貴方は一国の王子なのですよ!」
「わ、分かったよ」
「分かればいいのです!」
「それじゃあ宿を探そうか」
「ええ」
シンとアルは宿の馬小屋にベガを預け宿の中へと入った。
「いらっしゃい」
中年の女性がシンとアルを出迎えた。
「今から1泊できますか?」
「できるよ、一人部屋を2部屋だと銀貨6枚、2人部屋を1部屋銀貨5枚だよ」
「じゃあ一人部屋を…」
「2人部屋を1部屋お願いします」
「あいよ」
「え?!なんで勝手に決めるの!」
シンが呆然としている間にアルは店員に宿代を支払い、2人は部屋へと入った。
「なんで2人部屋なの?」
「護衛の為です」
「護衛ねぇ〜」
「それより、宿も決まりましたしこの後はどうします?」
「冒険者ギルドで依頼を受けに行かない?」
「瞬脚スキルを使いたいだけでしょう」
ギクッ!
「いいじゃん!」
シンは開き直ってそう言った。2人は依頼を受けるために冒険者ギルドへと向かったのであった。
―――――――――――――――――――――――――
ナガリオ付近の森から武装した男達が抜けてきた。
「手筈通りナガリオは手薄だ!」
「ナガリオの全てが俺たちの物になる!」
「そうだここが俺たち、黒猫の盗賊団のアジトになる!」
「ウヒヒヒヒ!」
「ワハハハハ!」
「アハハハハ!」
男達は大笑いしていた。
ドスン!
振動が響き森からゆっくりと紫竜が姿を現した。
ドスン!
ヒメノ国の厨房にて
「ルシア様、どうぞお召し上がりください」
ヨミはルシアに唐揚げを差し出した。
「シンちゃんの料理ね」
「シン様にレシピを頂き作ってみたのです」
ルシアはヨミが作った唐揚げをパクッと食べた。
「お、美味しいわよ!」
「ありがとうございます!」
「だけど、シンちゃんには負けるわね!」
ルシアは悪い笑顔を浮かべた。
「シン様に喜んでいただけるように精進します!」
「うっ!」
ルシアはヨミの純粋な笑顔に、悪巧みをしたルシアは自分が惨めに思えたのであった。
「俺はいつまで掴まれてんだ?」




