第96話 もうウンコまみれなら、オナラくらい何よ
【ブラジル速報】「もうウンコまみれなら、オナラくらい何よ」!?
― 謎のことわざ、日本上陸! そして車のシートベルトは冷蔵庫へ!! ―
スーパーは。
なかなかの。
経験だった。
車は。
荷物で。
いっぱい。
そして。
次なる。
難関。
車を。
止める。
「ハルミちゃん。」
サイコ。
前を見る。
「もう着くよ。」
「分かってる。」
「ブレーキ。」
「分かってる。」
「ハルミ――!」
「分かってるってば!!」
ハルミ。
サイドブレーキ。
ぐいっ。
車。
ギギギギギ……!!
抗議。
そのまま。
ずるるるるっ。
さらに。
二メートルほど。
進む。
そして。
停止。
歩道の横。
正確には。
ほんの少し。
歩道の上。
「……」
二人。
数秒。
座ったまま。
動かなかった。
「……着いた。」
ハルミ。
ぽつり。
「着いたね。」
サイコ。
確認。
声から。
生きていることへの。
感謝が。
にじみ出ていた。
二人。
車を降りる。
車を見る。
買い物袋を見る。
お互いを見る。
「……多いね。」
「多い。」
「これ。」
「何往復で。」
運べる?」
ハルミ。
じーっ。
計算。
「……四回。」
「四回!?」
「もしかしたら。」
「五回。」
「ハルミ!!」
「私たち買いすぎたよ!!」
「必要なものしか買ってません!!」
四往復半。
後。
ちなみに。
半。
というのは。
途中で。
袋が。
破れたから。
ようやく。
すべて。
家の中。
二人。
キッチン。
大量の。
買い物袋を前に。
立つ。
「よし。」
サイコ。
深呼吸。
「作戦。」
「作戦。」
ハルミ。
頷く。
「甘いものと。」
「それ以外。」
「分ける。」
「うん。」
「肉と。」
「冷蔵品。」
「冷蔵庫。」
「うん。」
開始。
整理。
分ける。
積む。
また。
分ける。
そして。
ハルミ。
冷蔵庫。
がちゃっ。
「……」
停止。
サイコ。
隣へ。
「……」
停止。
冷蔵庫。
満員。
上。
下。
奥。
手前。
最後の。
一センチまで。
ぎっしり。
もう。
何も。
入らない。
「……」
ハルミ。
「……」
サイコ。
しばらく。
沈黙。
そして。
ハルミ。
「あ。」
「私。」
「もう一個。」
「冷蔵庫あるよ。」
サイコ。
ゆっくり。
振り向く。
「……何?」
「奥の部屋。」
「もう一個。」
「冷蔵庫ある。」
「……」
「あそこ。」
「格闘する部屋じゃなかった?」
「それも。」
「兼ねてる。」
「……」
「格闘スペースと。」
「予備の冷蔵庫が。」
「同じ部屋にあるの?」
「広い家だから。」
「サイコちゃん。」
「……」
サイコ。
処理中。
「……分かった。」
「行こう。」
冷蔵庫。
あった。
大きい。
古い。
そして。
なんというか。
人生で。
いろいろなものを。
見てきた。
そんな。
顔をしていた。
問題。
コンセント。
遠い。
冷蔵庫。
遠い。
かなり。
遠い。
「押そう。」
ハルミ。
「うん。」
二人。
冷蔵庫へ。
手をつく。
「せーの!」
ぐぐぐぐぐっ。
「……」
冷蔵庫。
動かない。
もう一回。
「せーのぉぉぉ!!」
ぐぐぐぐぐぐぐっ!!
冷蔵庫。
一応。
考えた。
検討した。
そして。
拒否した。
「ちょっと……。」
サイコ。
冷蔵庫に。
両手をついたまま。
息を整える。
「これ。」
「重すぎない?」
「ハルちゃん。」
「確認して。」
「何を?」
「中に。」
「死体。」
「入ってないよね?」
「え?」
「確認して。」
「ハルちゃん。」
「今。」
「確認して。」
ハルミ。
言われたせいで。
急に。
怖くなった。
おそるおそる。
冷蔵庫。
がちゃっ。
その隣。
サイコ。
スリッパ。
装備。
用途。
ゾンビ。
または。
それに近い。
何か。
「……」
ハルミ。
中を見る。
「空。」
「ちゃんと。」
「確認して。」
「してるよ!!」
引き出し。
開ける。
棚。
見る。
奥。
見る。
下。
見る。
「空!!」
「サイコちゃん!!」
「本当に?」
「本当!!」
「誓う?」
「誓う!!」
「じゃあなんで!!」
「空なのに!!」
「こんな重いの!?」
「古いから!!」
「古い冷蔵庫は重いの!!」
サイコ。
じーっ。
まだ。
完全には。
信用していない。
でも。
もう一度。
押す。
ぐぐぐぐっ。
「……」
何も。
起きない。
ハルミ。
コンセントを見る。
冷蔵庫を見る。
コンセントを見る。
もう一回。
冷蔵庫を見る。
(……。)
(思いついた。)
三つの。
変換アダプター。
二本の。
ケーブル。
そして。
明らかに。
これ用ではない。
延長コード。
ハルミ。
接続。
接続。
さらに。
接続。
真剣。
ものすごく。
真剣。
まるで。
世界の命運を握る。
重要な装置を。
組み立てている。
そんな。
集中力。
なお。
実際に。
組み立てているのは。
かなり。
危なそうな。
延長コード。
サイコ。
隣から。
見守る。
「これ。」
「燃えるよ。」
「燃えない。」
「ハルミちゃん。」
「どう見ても。」
「燃える。」
「一時的だから。」
「火事だって。」
「一時的だよ。」
「サイコちゃん!!」
「経験者として言ってるの!!」
「いつ!?」
「今は関係ない!!」
「何が燃えたの!?」
「関係ないってば!!」
ハルミ。
最後の。
コード。
接続。
カチッ。
ブゥゥゥン……。
冷蔵庫。
起動。
二人。
じっ。
見る。
五秒。
十秒。
「……」
何も。
燃えない。
ハルミ。
得意げ。
「ほら。」
サイコ。
「……今のところ。」
「進歩。」
ハルミ。
冷蔵庫の。
扉。
閉める。
ぱたん。
……。
ぱかっ。
開く。
「……」
もう一回。
ぐっ。
半開き。
さらに。
強く。
ぐぐっ。
ぱかっ。
むしろ。
さっきより。
開いた。
「……」
ハルミ。
扉を見る。
「……」
サイコ。
隣で見る。
「ゴム。」
「くっつかない。」
「くっつかないね。」
「扉。」
「閉まらない。」
「閉まらないね。」
「……」
「……」
ハルミ。
スマホ。
取り出す。
「叔父さんに。」
「電話する。」
ぷるるるる。
ぷるるるる。
がちゃっ。
『おお!』
『俺の一番かわいい姪っ子じゃないか!』
「叔父さーん!」
「冷蔵庫が。」
「ちょっと大変なの!」
『どうした?』
「ドアのゴムが。」
「くっつかなくて。」
「閉まらないの。」
話しながら。
ぐっ。
ぱかっ。
ぐっ。
ぱかっ。
閉める。
開く。
閉める。
開く。
『おお。』
『じゃあ。』
『ゴム交換すればいいぞ!』
「今。」
「そんな時間。」
ないんだよね……。」
『じゃあ。』
『お前の母ちゃんの。』
『誰も使ってない車あるだろ?』
『あれの古いシートベルト。』
『取ってこい。』
(誰も使ってない……。)
(はは……。)
ハルミ。
乾いた。
心の笑い。
「い、いいアイデアだね。」
「叔父さん……。」
「あ、ありがとう!」
『おう!』
『じゃあな、ハル!』
「うん!」
「またね!」
ぷつっ。
ハルミ。
スマホを。
持ったまま。
停止。
情報。
処理中。
そして。
部屋へ。
戻る。
「……」
「シートベルトの。」
「バックル。」
「取ってこいって。」
サイコ。
ぱちっ。
「……車の?」
「車の。」
「……冷蔵庫に?」
「冷蔵庫に。」
「ドアに付けて。」
「閉める時に。」
「カチッて。」
「ベルトを。」
「バックルに入れれば。」
「開かないって。」
「……」
沈黙。
サイコ。
ハルミを見る。
冷蔵庫を見る。
また。
ハルミを見る。
「それ。」
「本当に。」
「できるの?」
「叔父さんは。」
「できるって。」
「叔父さん。」
「やったことあるの?」
「叔父さん。」
「いろんなこと。」
「やるから。」
それは。
答えに。
なっていなかった。
でも。
ハルミ。
もう。
車へ。
向かっていた。
サイコ。
ついていく。
車。
到着。
ハルミ。
ドア。
開ける。
ぐらっ。
ドア。
揺れる。
そして。
シートベルトへ。
手を伸ばす。
サイコ。
その光景を。
じーっ。
見る。
そして。
ものすごく。
穏やかな声。
「ああ。」
「よかった。」
「何が?」
「この車。」
「フロントガラスがない。」
「ブレーキも。」
「ほぼない。」
「ドアも。」
「グラグラ。」
「そして。」
「今から。」
「シートベルトも。」
「なくなる。」
「……」
ハルミ。
一秒。
考える。
そして。
何の迷いもなく。
言った。
「もう。」
「ウンコまみれなんだから。」
「オナラの一発くらい。」
「何よ。」
「サイコちゃん。」
「……」
サイコ。
停止。
処理中。
「……何それ。」
「ブラジルの言い方。」
「……」
もう一度。
処理。
そして。
「……好き。」
「今度から。」
「私も使う。」
採用。
ブラジルの。
謎のことわざ。
日本上陸。
そして。
サイコは。
冷蔵庫へ。
シートベルトを。
取り付けるのを。
手伝った。
十分後。
冷蔵庫。
扉。
閉める。
カチッ。
あの。
シートベルト特有の。
音。
二人。
冷蔵庫を見る。
「……」
サイコ。
「……閉まった。」
ハルミ。
「言ったでしょ。」
「ハルミちゃんの叔父さん。」
「天才なの?」
「それとも。」
「変人なの?」
「たぶん。」
「両方。」
買ったもの。
収納。
完了。
二人。
キッチンへ。
戻る。
調理台の前。
立つ。
そして。
突然――
プルルルルルルッ!!
「ひゃっ!?」
「うわっ!?」
二人。
びくっ。
ちょっと。
跳ねる。
電話。
ただの。
電話。
「びっくりしたぁぁぁ!!」
「心臓止まるかと思った!!」
「わ、私出る!!」
ハルミ。
なぜか。
電話にまで。
怯えながら。
受話器を取る。
「も、もしもし!?」
『大沢さん。』
『タケルです。』
「あ。」
「タケルくん。」
『俺とソラで。』
『大沢さんの家の池に入れる。』
『魚を買いに行ってきます。』
「……」
ハルミ。
片方の眉。
すっ。
上がる。
口。
ぽかん。
たぶん。
今日。
聞いた言葉の中で。
一番。
唐突だった。
「さ。」
「魚……?」
『はい。』
『暗くなる前には。』
『戻ります。』
「そ、そっか。」
「気をつけてね!」
『はい。』
『じゃあ。』
「うん。」
「またね……。」
がちゃっ。
タケル。
切る。
ハルミも。
切る。
「誰?」
サイコ。
ハルミの顔を見る。
「っていうか。」
「何その顔。」
「幽霊でも見た?」
一秒。
考える。
「あ。」
「電話だから。」
「幽霊の声でも。」
「聞いた?」
「タケルくん。」
「ソラくんと。」
「うちの池に入れる魚。」
「買いに行ったって。」
「……」
沈黙。
サイコ。
「……そっか。」
「うん。」
今日。
深く考えてはいけないこと。
また。
一つ。
増えた。
「まあ。」
ハルミ。
深呼吸。
「それは。」
「置いといて。」
「何から。」
「始める?」
「ケーキ?」
サイコ。
「クリーム?」
ハルミ。
「こういうケーキ。」
「作ったことある?」
「ない。」
「ハルミちゃんは?」
「ない。」
「……」
「……」
ハルミ。
「楽しみだね。」
サイコ。
「うん。」
まったく。
安心できない。
沈黙。
その時。
ハルミ。
ぴんっ。
人差し指。
上げる。
「私。」
「専門家。」
「知ってる。」
スマホ。
取り出す。
電話。
故郷へ。
ぷるるる。
ぷるるる。
二回。
がちゃっ。
「おばあちゃん?」
『ハルミィィィィィ!!』
『かわいい孫ちゃぁぁぁぁん!!』
「おばあちゃーん!」
「誕生日ケーキ。」
「作るんだけど!」
「何から始めればいい!?」
『まあ!』
『素敵ねぇ!』
『まずは。』
『スポンジを先に。』
『作っておきなさい。』
「……」
「それだけ?」
電話の向こう。
おばあちゃん。
ふふっ。
笑う。
『「それだけ?」』
繰り返した。
穏やかな。
笑い。
人生で。
いろいろなものを。
見てきた人の。
笑い。
そして。
何か。
知っている人の。
笑い。
『そのうち。』
『分かるわよ。』
『頑張ってね。』
「え。」
「おばあちゃ――」
ぷつっ。
「……」
ハルミ。
スマホを。
持ったまま。
停止。
サイコを見る。
「……切られた。」
「聞いてた。」
「『そのうち分かる』って。」
「言われた。」
「それも。」
「聞いた。」
「……」
沈黙。
サイコ。
ふと。
思う。
「ハルミちゃんの家族って。」
「職業ごとに。」
「一人ずつ。」
「専門家いるよね。」
「何でも直す叔父さん。」
「お菓子作れるおばあちゃん。」
「ああ。」
「お母さん。」
「十三人きょうだいだから。」
「たぶん。」
「探せば。」
「全職業いるよ。」
「……」
サイコ。
停止。
「……十三?」
「十三。」
「……」
「お母さん。」
「十三人きょうだい?」
「うん。」
「……」
サイコ。
頭の中で。
計算。
そして。
何かに。
気づいた。
「十三人が。」
「同じところから――」
「サイコちゃん!!」
「ケーキの生地!!」
サイコ。
ぴたっ。
口。
閉じる。
一秒。
沈黙。
「……これ。」
「あとで。」
「ちゃんと。」
「考えさせて。」
「あとで。」
「今は。」
「小麦粉。」
サイコ。
調理台を見る。
ハルミを見る。
「……」
「スポンジって。」
「何から。」
「始めるの?」
ハルミ。
「いい質問。」
二人。
スマホの。
レシピを見る。
調理台を見る。
そして。
お互いを見る。
「……卵?」
サイコ。
「たぶん。」
ハルミ。
「たぶん?」
「知ってるんじゃなくて?」
「……」
「たぶん。」
サイコ。
深呼吸。
「……分かった。」
そして。
二人は。
始めた。
まだ。
ケーキ作りの。
本当の恐ろしさを。
何一つ。
知らないまま。
読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡
もしこの作品で少しでも笑顔になっていただけたら、★で応援していただけると、とっても嬉しいです!
皆さんからいただく評価は、
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(´▽`)
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