第93話 意地っ張りな車と、話題が千個
【緊急速報】猫のごはんから黒沢くんまで、話題が飛びすぎる!?
― ハルミとサイコの車内トーク、目的地より先に暴走開始!! ―
ハルミの車。
電柱に。
縛られていた。
ロープで。
しっかり。
サイコ。
「……」
一秒。
車を見る。
ロープを見る。
電柱を見る。
もう一度。
車を見る。
「……なんで。」
「車が。」
「電柱に。」
「縛られてるの?」
ハルミ。
「ブレーキが。」
「ちょっと弱くて。」
サイコ。
「ちょっと。」
ハルミ。
「うん。」
「ほんのちょっと。」
「ハルミちゃん。」
「下り坂なら。」
「ちゃんと効くよ。」
「上り坂は?」
「効く。」
一拍。
「……たまに。」
「…………」
サイコ。
ロープを見る。
電柱を見る。
車を見る。
考える。
そして。
別の問題。
発見。
「……で。」
「ガラスは?」
ハルミ。
「どのガラス?」
「前。」
「ああ。」
ハルミ。
ロープ。
ほどきながら。
普通に。
答える。
「それなら。」
「ないよ。」
「…………」
サイコ。
停止。
「……いつから?」
「結構前。」
「…………?」
ハルミ。
にこっ。
「天然換気。」
「サイコちゃんの車も。」
「試してみたら?」
「…………」
サイコ。
二秒。
処理。
失敗。
諦めた。
助手席へ。
行く。
ドアノブ。
掴む。
引く。
ぐらっ。
「……」
ドア。
揺れた。
ドアが。
してはいけない。
揺れ方だった。
まるで。
抜ける直前の。
乳歯。
ガコン。
「…………」
ハルミ。
「たぶん。」
「ネジ一本くらい。」
「外れてるだけだよ。」
サイコ。
「じゃあ。」
「あとで。」
「ちょっと締めれば。」
「直るね。」
ちなみに。
サイコ。
車。
詳しくない。
ハルミも。
同じ。
「ゆっくり乗ってね。」
「そのドア――」
「このドア!!」
「抜けそうな乳歯みたいなんだけど!!」
「早く乗って!!」
「暑いから!!」
サイコ。
慎重に。
乗る。
ドア。
閉める。
ぐらっ。
ガコン。
「…………」
ハルミ。
反対側から。
乗りながら。
ぽつり。
「メイちゃん。」
「思い出した。」
サイコ。
「何が?」
ハルミ。
突然。
「メイちゃんの口の中!!」
「門みたいになってるの!!」
「どういうこと!?」
「サイコちゃん!!」
「あんなに歯って。」
「抜けるものなの!?」
サイコ。
少し。
考える。
「まあ……。」
「ぶつけてもないのに。」
「勝手に抜けるなら。」
「普通なんじゃない?」
「そっか!!」
そして。
ハルミ。
何か。
思い出す。
「あっ!!」
「そうだ!!」
「この前の話!!」
「してなかった!!」
サイコ。
「何!?」
ハルミ。
勢い。
加速。
「もう!」
「大変だったの!!」
「黒沢さんが。」
「家に来て!」
「ネズミが出て!」
「その騒ぎで。」
「タケルの腕にヒビ入って!」
「病院連れてって!」
「黒沢さんが。」
「メイちゃん見ててくれて!」
「その日に。」
「また歯が抜けたの!!」
サイコ。
「待って待って待って!!」
情報。
多い。
でも。
拾ったのは。
一つ。
「黒沢くん!?」
「って!!」
「圭くん!?」
「…………」
ハルミ。
顔。
赤い。
「け。」
「けけけ……。」
「黒沢くん……。」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
サイコ。
一気に。
テンション。
最大。
「全部話して!!」
「え、えっと。」
「私。」
「ちょっと。」
「夜中に。」
「家に行っ――」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「大胆!!」
「違う!!」
「違う違う違う!!」
ハルミ。
ぶんぶん。
首。
振る。
「具合悪かったの!!」
「だから!」
「ちょっと助けに行っただけ!!」
「友達として!!」
サイコ。
「はいはい。」
「なるほどねぇ~。」
「その顔やめて!!」
その時。
エンジン。
ゲホッ。
「…………」
「…………」
沈黙。
ハルミ。
深呼吸。
車から。
降りる。
車体。
横。
コンッ。
軽く。
蹴る。
ブロロロロロ……!!
エンジン。
始動。
ハルミ。
何事も。
なかったように。
戻る。
サイコ。
ぱちっ。
ぱちっ。
「……暴力で。」
「直した。」
ハルミ。
シートベルト。
カチッ。
「暴力じゃないよ。」
「コミュニケーション。」
真顔。
「この子。」
「ちゃんと分かるから。」
サイコ。
「いつから?」
「昔から。」
「…………」
サイコ。
メーター。
見る。
少し。
納得。
していない。
でも。
次。
「で。」
「メイちゃんの歯の続き。」
「そうそう!」
ハルミ。
急に。
秘密話。
みたいな顔。
「これ。」
「誰にも言わないでね!」
サイコ。
口元。
指。
ジッ。
見えない。
チャック。
閉める。
「それでね。」
「全部。」
落ち着いた次の日。」
「メイちゃんが。」
「黒沢くん。」
「すっごく優しかったって。」
「言ってて……!」
ハルミ。
すでに。
目。
うるうる。
「ぐらぐらしてた歯も。」
「手伝ってくれたんだって……!」
感動。
ものすごく。
サイコ。
その光景。
想像。
そして。
笑いそうになる。
「圭くんが!?」
「いや。」
「ハルミちゃん。」
「あの子。」
変えたねぇ~!!」
ハルミ。
「わ、私!?」
「ないないない!!」
「あはははは!!」
二人。
笑う。
その時。
車。
ガタッ。
「…………」
二人。
停止。
ガコン。
「…………」
ハルミ。
ダッシュボード。
ぽんっ。
「協力して。」
車。
その後。
普通に。
走る。
サイコ。
真顔で。
こくっ。
「……確かに。」
「コミュニケーション。」
そして。
次の話題。
もう。
始まっていた。
「そういえば!!」
サイコ。
「木曜日ね!!」
「清水くんが!!」
「リズちゃんの分でもあるからって!!」
「鶏肉。」
「食べなかったの!!」
ハルミ。
横を見る。
「リズちゃんって誰?」
サイコ。
即答。
「うちの猫!!」
「猫飼ってるの!?」
「もちろん!!」
「いつから!?」
「二か月くらい前!!」
「二か月!?」
ハルミ。
眉。
寄せる。
「でも。」
「今。」
『リズちゃんの分でもある』
「って言ったよね?」
「なんか。」
「鶏肉。」
「一緒に食べてるみたいな――」
「私。」
「猫のご飯。」
「手作りしてるの。」
「ハルミちゃん。」
真剣。
「この子。」
「ちゃんと育たないといけないから。」
ハルミ。
「猫に。」
「料理してるの?」
サイコ。
胸に。
手。
「主に。」
「横に。」
「……横?」
「ちょっと。」
「ぽっちゃりしてる時。」
「ものすっっっごく!!」
「可愛いんだよぉぉ……!」
「…………」
ハルミ。
「私。」
「自分のご飯すら。」
「まともに作らない。」
サイコ。
「じゃあ。」
「この愛情。」
「分かるね。」
「…………」
ハルミ。
前を見る。
(サイコちゃんの猫。)
(私より。)
(いいもの食べてる。)
一拍。
(…………)
(大丈夫。)
自分へ。
言い聞かせた。
「それで。」
「清水くん。」
「容器見て。」
「食べなかったの?」
「そう!!」
「容器に!!」
『エサ』
「って書いてあったから!!」
「なんで!?」
「リズちゃんのエサだから!!」
「私が作って!!」
「そこに入れてるの!!」
ハルミ。
「でも。」
『エサ』
「って書いたら。」
「普通。」
「エサだと思うでしょ。」
サイコ。
「エサだもん!!」
「高級エサ!!」
「手作り!!」
「鶏肉!!」
「人間も食べられる!!」
ハルミ。
「それ。」
「普通の鶏肉じゃ――」
サイコ。
「愛情入り!!」
「…………」
ハルミ。
沈黙。
判断。
この話。
ここまで。
「……うん。」
サイコ。
もう。
次。
「で。」
「今日の計画。」
「全部買って。」
「今日から。」
「準備始める?」
ハルミ。
「そう。」
「メイちゃんは。」
「今頃。」
お泊まり会。」
「めちゃくちゃ楽しんでる。」
「何も。」
「知らない。」
サイコ。
「いいね。」
「アイコちゃんにも。」
「ちゃんと話した?」
ハルミ。
「うん。」
「交渉した。」
サイコ。
「交渉?」
ハルミ。
背筋。
ぴんっ。
「なんかね。」
「キャリアウーマン。」
「って感じだった。」
「スーツ。」
「アタッシュケース。」
「会議室。」
「真剣な交渉。」
サイコ。
「相手。」
「十歳でしょ。」
「手強かった。」
「でしょうね。」
ハルミ。
胸。
張る。
「契約成立。」
サイコ。
「ぶはっ!!」
爆笑。
「で。」
「パーティーのテーマは?」
ハルミ。
「あの。」
「メイちゃんが。」
「大好きなやつ。」
手。
ぶんぶん。
説明。
「なんか。」
「ゼリーがいて。」
「惑星があって。」
「可愛いキャラクターが。」
「いっぱい出るやつ!」
サイコ。
「ゼリー?」
「『ピポとゼリーの惑星』!!」
「……知らない。」
「メイちゃんが見てると。」
「すっごく面白そうなの!」
サイコ。
「ハルミちゃんも。」
「見た?」
「…………」
「ところどころ。」
「ハルミ。」
「ちゃんと!!」
「テーマ理解するくらいは!!」
「見たから!!」
「…………」
サイコ。
じーっ。
見る。
考える。
「……分かった。」
信じることにした。
たぶん。
「で。」
「何買うの?」
「食べられる飾りの。」
「材料。」
「それ以外は。」
「もうイズミちゃんと。」
「買ったから。」
サイコ。
「いつ?」
ハルミ。
「ネットで。」
「いつ?」
「…………」
沈黙。
サイコ。
ゆっくり。
「……ハルミ。」
ハルミ。
前を見る。
「落ち着いて。」
「いつ買ったの?」
「かなり。」
「落ち着いて。」
「ハルミ。」
「いつ。」
「買ったの?」
「ものすごく。」
「落ち着いて聞いて。」
「ハルミ!!」
ハルミ。
小さく。
「思ったより。」
「ちょっと。」
「多めに。」
「届いてる。」
「可能性が。」
「あるかも。」
「どれくらいが。」
『ちょっと多め』
「なの!?」
「…………」
ハルミ。
前を見る。
そして。
「あ。」
「着いた。」
車。
停車。
ハルミ。
スーパー。
指差す。
「ほら。」
サイコ。
スーパーを見る。
ハルミを見る。
もう一度。
スーパーを見る。
「……」
一秒。
沈黙。
「準備は?」
サイコ。
聞く。
ハルミ。
即答。
「全然。」
サイコ。
「完璧。」
二人。
車。
降りる。
助手席。
ドア。
ぐらっ。
ガコン。
「…………」
ハルミ。
ドアを見る。
「新しいドア。」
「必要かも。」
サイコ。
「ネジ一本。」
ハルミ。
ぱあっ。
「それ!!」
「やっぱり!!」
「サイコちゃんなら!!」
「分かってくれると思ってた!!」
サイコ。
「当たり前でしょ!!」
そして。
二人は。
スーパーへ。
向かった。
後ろ。
駐車場。
車。
一台。
残される。
「…………」
たぶん。
ちゃんと。
そこに。
いてくれる。
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