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ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
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81/87

第81話 尊厳は任意です

【超速報】ついに"家族"になりました。


― 大沢春海、人生で一番うれしい名字を受け取る日 ―


ボロボロの見た目。


ボロボロの朝。


でも、


今日だけは譲れない。


書類。


写真。


名前。


そして――


「大沢タケル」


「大沢芽衣」


その瞬間、


家族は"気持ち"だけじゃなく、


正式に家族になった。


笑って。


泣いて。


写真でまた笑われて。


それでも、


これはきっと、


一生忘れない一日。

 


自動ドアが。


 


開いた。


 


静かに。


 


上品に。


 


そして。


 


警備員たちは。


 


心の中で。


 


まったく静かではなかった。


 


見る。


 


足元から。


 


ゆっくり。


 


頭まで。


 


まず。


 


即席の杖。


 


次に。


 


巨大なサングラス。


 


その次。


 


紫色の額。


 


さらに。


 


青い舌の子ども。


 


最後に。


 


ギプスと眼帯の少年。


 


警備員の一人が。


 


ゆっくり。


 


瞬きをした。


 


もう一人は。


 


明らかに。


 


こう思っていた。


 


(この人たち……)


 


(この格好で来たのか?)


 


春海は。


 


見なかったことにした。


 


背筋を伸ばす。


 


まっすぐ歩く。


 


堂々と。


 


少なくとも。


 


堂々としているように。


 


見せようとした。


 


受付番号を取る。


 


椅子へ座る。


 


静寂。


 


呼吸。


 


任務開始。


 


春海は。


 


目薬を取り出した。


 


「タケルくん。」


 


「目、開けて。」


 


「嫌です。」


 


「開けて。」


 


「それ。」


 


「脳まで入るやつですよね。」


 


「入らないよ!」


 


「絶対入ります。」


 


「入らないって!」


 


タケルは。


 


目を。


 


ぎゅっと閉じた。


 


春海。


 


挑戦。


 


一滴。


 


落ちる。


 


頬へ。


 


「……もう。」


 


「ほら。」


 


「言ったじゃないですか。」


 


「瞬きしないで!」


 


「そもそも。」


 


「開けてません!」


 


「じゃあ開けて!」


 


二人は。


 


大声で。


 


囁いていた。


 


緊張。


 


最大。


 


二回目。


 


春海は。


 


まぶたを。


 


少しだけ下げる。


 


目薬。


 


一滴。


 


今度は。


 


入った。


 


「痛っ!」


 


「しみる!」


 


「普通だから!」


 


「酸みたいです!」


 


「目薬だよ!」


 


その隣。


 


芽衣は。


 


平和だった。


 


抜けた歯の隙間へ。


 


指を入れている。


 


触る。


 


確かめる。


 


楽しむ。


 


「ここ。」


 


「舌が入る……」


 


タケルは。


 


片目を押さえたまま。


 


言った。


 


「芽衣ちゃん。」


 


「外でそれやるの。」


 


「やめたほうがいいよ。」


 


芽衣は。


 


不満そうに。


 


頬を膨らませた。


 


どうやら。


 


人前で遊べないことが。


 


残念らしい。


 


「四十二番の方。」


 


「私たちです!」


 


春海は。


 


勢いよく。


 


立ち上がった。


 


先頭を歩く。


 


バッグにつまずきかける。


 


でも。


 


顎は上げたまま。


 


後ろには。


 


目がしみているタケル。


 


青いけれど。


 


楽しそうな芽衣。


 


三人は。


 


窓口へ入った。


 


机の前に。


 


座る。


 


職員は。


 


三人を見る。


 


瞬きをする。


 


「……皆さま。」


 


「大丈夫ですか?」


 


春海は。


 


満面の笑み。


 


「はい!」


 


「もちろんです!」


 


職員は。


 


それ以上。


 


聞かないことにした。


 


「では。」


 


「始めさせていただきます。」


 


まず。


 


タケル。


 


「書類を。」


 


春海は。


 


すぐに差し出した。


 


「はい。」


 


職員は。


 


書類を見る。


 


「……こちらは。」


 


「芽衣さんのものですね。」


 


「えっ。」


 


「あっ。」


 


「すみません!」


 


「こういうの。」


 


「初めてで……」


 


職員は。


 


真顔で答えた。


 


「それは。」


 


「何よりです。」


 


「……確かに。」


 


そう考えると。


 


初めてでよかった。


 


書類を交換。


 


「今度こそ。」


 


「こちらです。」


 


職員は。


 


確認する。


 


タケルを。


 


別の椅子へ呼んだ。


 


簡単な質問。


 


名前。


 


生年月日。


 


確認事項。


 


一つずつ。


 


そして。


 


職員は。


 


正式な口調で。


 


タケルへ言った。


 


「それでは。」


 


「柴田タケルさん。」


 


「十三歳。」


 


「四月三日生まれ。」


 


「書類上のお名前を。」


 


「大沢タケルへ。」


 


「変更いたします。」


 


「よろしいですか?」


 


「は、はい。」


 


タケルの後ろ。


 


春海は。


 


もう。


 


ハンカチを持っていた。


 


目。


 


きらきら。


 


涙。


 


準備完了。


 


誇らしさ。


 


最大。


 


タケルは。


 


気づかないふりをした。


 


次。


 


芽衣。


 


芽衣は。


 


十二歳未満だったため。


 


春海も。


 


隣へ座ることになった。


 


職員は。


 


書類を手に取る。


 


読む。


 


止まる。


 


眉を寄せる。


 


顔を近づける。


 


紙を裏返す。


 


もう一度。


 


挑戦。


 


静寂。


 


春海は。


 


首を傾げた。


 


「……どうしました?」


 


職員は。


 


ゆっくり答えた。


 


「いえ……」


 


「元の姓を。」


 


「読もうとしているのですが……」


 


イギリスの姓。


 


長い。


 


子音が。


 


明らかに多い。


 


職員は。


 


発音しようとした。


 


「メイ……」


 


「フ、フェル……」


 


「フル……」


 


芽衣も。


 


一緒に。


 


言おうとする。


 


失敗。


 


春海も。


 


つられて。


 


笑いそうになる。


 


職員は。


 


静かに。


 


尊厳を手放した。


 


「……分かりました。」


 


入力する。


 


深呼吸。


 


そして。


 


改めて言った。


 


「それでは。」


 


「メイ・ファーンズビーさん。」


 


「九歳。」


 


「十一月二十四日生まれ。」


 


「書類上のお名前を。」


 


「大沢芽衣へ。」


 


「変更いたします。」


 


「よろしいですか?」


 


「は、はい!」


 


春海。


 


「はい!」


 


二人とも。


 


泣いていた。


 


職員は。


 


書類を渡しながら。


 


まるで。


 


ティッシュを差し出しているような顔をした。


 


タケルは。


 


天井を見た。


 


(知らない人たちだ。)


 


そして。


 


恐怖の証明写真。


 


「次は。」


 


「写真撮影です。」


 


静寂。


 


恐怖。


 


まず。


 


芽衣。


 


椅子へ座る。


 


フラッシュ。


 


完成。


 


青い舌。


 


大きな笑顔。


 


抜けた前歯。


 


光に驚いて。


 


少し細くなった目。


 


芸術作品。


 


次。


 


タケル。


 


椅子へ座る。


 


真剣。


 


眼帯を外したため。


 


片目は。


 


まだ赤い。


 


二〇〇二年から。


 


税金を払っている人みたいな顔。


 


でも。


 


写真は。


 


意外なほど。


 


立派だった。


 


仕切りの向こう。


 


春海が。


 


見守っている。


 


「うちの子。」


 


「かっこいいぃぃぃ……!」


 


撮影係は。


 


聞こえなかったふりをした。


 


まだ。


 


手続きは終わらない。


 


別の机へ移動。


 


タケルは。


 


真剣に。


 


署名している。


 


集中。


 


責任感。


 


そこへ。


 


一人の職員が。


 


近づいてきた。


 


少し。


 


緊張している。


 


でも。


 


意を決したように。


 


タケルへ。


 


小声で言った。


 


「ねえ。」


 


「君。」


 


「家で困っていることがあるなら。」


 


「今なら。」


 


「話していいからね。」


 


タケルは。


 


瞬きをした。


 


言葉を。


 


理解する。


 


春海を見る。


 


巨大なサングラス。


 


紫色の額。


 


即席の杖。


 


そして。


 


自分。


 


ギプス。


 


眼帯。


 


タケルは。


 


職員を見る。


 


少し困ったように。


 


笑った。


 


「大丈夫です。」


 


職員の顔。


 


(絶対。)


 


(大丈夫じゃない。)


 


タケルは。


 


自分でも。


 


少し笑ってしまった。


 


芽衣は。


 


署名しなかった。


 


春海が。


 


代わりに書いた。


 


誇らしげに。


 


それから。


 


さらに説明。


 


さらに確認。


 


春海は。


 


最初だけ。


 


真剣に聞く。


 


途中から。


 


少しずつ。


 


分からなくなる。


 


そして。


 


最後は。


 


とりあえず。


 


頷いていた。


 


やがて。


 


職員は。


 


二枚のカードを。


 


差し出した。


 


新しい。


 


正式な。


 


身分証明書。


 


そこには。


 


正しい名字が。


 


書かれていた。


 


静寂。


 


その瞬間の。


 


重さ。


 


春海は。


 


カードを。


 


両手で持つ。


 


息を吸う。


 


「……これで。」


 


「本当に。」


 


「家族なんだね。」


 


芽衣は。


 


春海の脚に。


 


抱きついた。


 


タケルは。


 


自分のカードを。


 


少し強く。


 


握った。


 


任務。


 


完了。


 


そして。


 


特別な写真。


 


帰り際。


 


職員が。


 


声をかけた。


 


「すみません。」


 


「皆さまのプランには。」


 


「記念パネルでの撮影も。」


 


「含まれております。」


 


春海。


 


「本当ですか!?」


 


「ただ。」


 


「撮影の際は。」


 


「頭の布と。」


 


「サングラスを。」


 


「外してください。」


 


静寂。


 


「……え?」


 


「写真撮影では。」


 


「着用できません。」


 


「で、でも。」


 


「手続きは。」


 


「全部この格好で……」


 


「撮影では。」


 


「外してください。」


 


タケルは。


 


もう。


 


笑っていた。


 


芽衣は。


 


春海を庇う。


 


「笑わないで!」


 


「かわいそうでしょ!」


 


春海は。


 


大きく。


 


息を吸った。


 


そして。


 


外した。


 


布。


 


サングラス。


 


現れたのは。


 


紫色。


 


腫れ。


 


限界まで。


 


疲れ切った顔。


 


職員は。


 


笑いそうになった。


 


堪える。


 


咳払い。


 


撮影。


 


結果。


 


全員。


 


笑っていた。


 


春海は。


 


顔より。


 


歯のほうが多く見えるほど。


 


大きな笑顔。


 


綺麗で。


 


感動的で。


 


ほんの少し。


 


怖い。


 


でも。


 


完璧だった。


 


建物を出る。


 


太陽は。


 


すでに高い。


 


時刻は。


 


もうすぐ正午。


 


駐車場を見る。


 


圭は。


 


運転席で。


 


完全に。


 


横になっていた。


 


熟睡。


 


春海は。


 


窓を叩く。


 


反応。


 


なし。


 


もう一度。


 


少し強く。


 


叩く。


 


圭は。


 


飛び起きた。


 


「えっ!?」


 


「何!?」


 


春海は。


 


車へ乗り込むなり。


 


叫んだ。


 


「見てぇぇぇ!!」


 


「二人の名前に。」


 


「私の名字がある!!」


 


身分証明書を。


 


見せる。


 


目。


 


輝いている。


 


誇らしさ。


 


全開。


 


タケルが。


 


横から言った。


 


「写真のことも。」


 


「話したら?」


 


春海は。


 


固まった。


 


「……話さなくていい。」


 


「話したほうがいいです。」


 


結局。


 


春海は。


 


説明した。


 


そして。


 


写真も見せた。


 


なぜなら。


 


一人ずつ。


 


記念写真を。


 


持ち帰ることができたから。


 


圭は。


 


笑いを堪えようとした。


 


本気で。


 


堪えようとした。


 


でも。


 


無理だった。


 


笑う。


 


盛大に。


 


「ごめん……」


 


「ごめん。」


 


「でも……」


 


「これは。」


 


「撮ってよかったな。」


 


春海は。


 


腕を組んだ。


 


「忘れられない写真になった。」


 


タケル。


 


「ひどい写真です。」


 


芽衣。


 


「きれいです!」


 


小さな沈黙。


 


安堵した呼吸。


 


任務。


 


完了。


 


家族は。


 


正式に。


 


ようやく。


 


家族になった。


 


春海は。


 


急に。


 


元気よく叫んだ。


 


「お腹すいた人ぉぉぉ!?」


 


一番。


 


お腹が空いていたのは。


 


春海だった。


 


「はい!」


 


「私も!」


 


「俺も。」


 


「よーし!」


 


「今日は。」


 


「特別なところで。」


 


「お昼ご飯にしよう!」


 


嘘だった。


 


お金は。


 


もうなかった。


 


だから。


 


みんなで。


 


路地裏の角にある店へ。


 


食べに行った。



読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡


もしこの作品で少しでも笑顔になっていただけたら、★で応援していただけると、とっても嬉しいです!


皆さんからいただく評価は、

「もっともっと面白い作品を作りたい!」

と思える大切な励みになっています


(´▽`)


Pixivではキャラクターデザインやイラストも投稿しています!


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また次回もよろしくお願いします~!!♡♡

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