第77話 切り札はあった!
【最新ニュース】猫は一匹だけじゃなかった!?
―黒沢と芽衣、二匹の黒猫と思わぬ事件に巻き込まれる!―
早朝、晴美と武は病院へ向かった。
病院に残った黒沢と芽衣に課せられた任務は――
猫を捕まえること。
…少なくとも、二人はそう思っていた。
しかし、その場で衝撃の真実が明らかになる。
一方、芽衣は…
芽衣はあっという間に猫たちと仲良くなった。
芽衣はミルクを用意した。
そして、なんと一緒に朝食を食べ始めた!?
黒沢は家を掃除した。
芽衣は猫たちの心を掴んだ。
二人は果たして…
晴美が帰ってくるまで家を守り切れるのか!? 可愛くて平和な、
朝の任務、スタート!!
ぱたん。
扉が閉まる。
静寂。
午前五時十分。
春海と武は。
病院へ向かって。
嵐みたいな勢いで飛び出していった。
そして――
家の中。
ひどかった。
椅子。
クッション。
謎の猫の毛。
まるで。
ふわふわの台風が。
家の中だけを。
通り過ぎたあとみたいだった。
黒沢は。
深く息を吐く。
芽衣を見る。
芽衣も。
黒沢を見る。
言葉は。
いらなかった。
緊急任務。
開始。
一。
猫を見つけること。
二。
家を。
できるところまで片づけること。
三。
死なないこと。
「……まずは猫だな」
黒沢が小さくつぶやく。
芽衣は。
こくん。
真剣な顔で頷いた。
まるで。
秘密任務に参加する。
小さな隊員だった。
二人は。
そっと階段を上る。
家の中は。
まだ薄暗い。
朝日は。
まだ山の向こう。
最初の部屋。
いた。
黒猫。
一匹。
じっと。
こちらを見ている。
「……いた」
黒沢が。
声をひそめる。
芽衣は。
首をかしげた。
「……もう一匹いるよ」
「……え?」
黒沢は。
隣の部屋を見る。
いた。
もう一匹。
黒猫。
同じ大きさ。
同じ黒。
同じ目。
そして。
同じ。
『ぼく、何もしてませんけど?』
みたいな顔。
黒沢は。
固まった。
数秒ほど。
「……二匹いたのか?」
芽衣は。
当たり前みたいに。
頷いた。
「だから。」
「捕まらなかったんだよ」
……なるほど。
ものすごく。
納得だった。
二匹とも。
少しだけ。
落ち着かない様子。
黒沢は。
部屋の入口で待機。
「飛びかかってきたら。」
「すぐ下がれよ」
芽衣は。
返事をしなかった。
もう。
歩き始めていたから。
一歩。
また一歩。
しゃがむ。
猫と。
目が合う。
「こんにちは」
しん。
静かな部屋。
先に動いたのは。
一匹目だった。
くん。
くんくん。
芽衣の手を。
そっと嗅ぐ。
逃げない。
芽衣は。
ゆっくり。
頭を撫でた。
ごろ……
猫は。
気持ちよさそうに。
目を細める。
そして。
「にゃあ」
もう一匹を呼んだ。
まるで。
『大丈夫。』
『この子はいい子。』
そう紹介するみたいに。
もう一匹も。
近づいてくる。
気がつけば。
芽衣は。
二匹まとめて。
なでなで。
黒沢は。
ぽかん。
「……早すぎるだろ」
猫探し。
終了。
任務完了。
外は。
まだ夜みたいに暗い。
黒沢は。
家の片づけを始めた。
椅子。
戻す。
落ちた物。
拾う。
深呼吸。
(……春美さんが帰るまでは。)
(何とかなりそうだな。)
そのころ。
キッチンでは――
芽衣が。
猫たちと。
おしゃべりしていた。
床に座って。
向かい合って。
まるで。
同じクラスの友達。
「お水?」
「牛乳?」
「どっちがいい?」
少し考える。
(お水のほうがいいかな。)
(喉、渇いてそうだし……)
(でも。)
(牛乳でも喉って潤うのかな?)
「にゃあ。」
「にゃあ。」
満場一致。
牛乳だった。
芽衣は。
冷蔵庫を開ける。
少しだけ。
お皿に入れる。
「あ……」
「ごはんがない」
少し考えて。
食パンを。
ほんの少しだけ。
ちぎる。
「ひとつだけね」
猫たちは。
嬉しそうに食べ始めた。
そのまま。
芽衣の周りを。
くるくる。
くるくる。
まるで。
小さなボディーガード。
芽衣も。
一緒に。
パンを食べる。
もぐ。
もぐもぐ。
猫たちも。
もぐ。
もぐもぐ。
みんなで朝ごはん。
芽衣は。
少しだけ笑った。
(お母さんが見たら……)
(きっと。)
『猫と一緒に食べちゃダメでしょ!』
って。
言うんだろうな。
ふふっ。
思わず。
笑ってしまう。
猫たちは。
牛乳も飲んで。
お腹いっぱい。
一匹が。
あくび。
もう一匹も。
つられて。
ふぁぁ……。
気づけば。
二匹とも。
芽衣のすぐ横で。
丸くなっていた。
すぅ。
すぅ。
静かな寝息。
芽衣は。
そっと。
頭を撫でる。
「おやすみ」
小さな声。
返事はない。
もう。
夢の中だった。
窓の向こう。
少しずつ。
朝日が昇り始める。
長かった夜も。
もう終わり。
黒沢は。
片づいた部屋を見渡して。
小さく息をついた。
「……よし。」
何とか。
間に合いそうだ。
春美が帰ってくるまで。
この家は。
ちゃんと。
守れそうだった。
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