第74話 伝説のほうき、一撃必殺
【超速報】伝説のほうき、まさかの味方特攻!?
― 大沢ハルミ、ねずみ退治が“家族総出の大運動会”へまさかの進化!! ―
伝説のほうきが、
ついに炸裂!!
……しかし。
倒れたのは、
ねずみではなく床!!
飛んだ床板でタケル負傷!!
逃げるねずみ!
追う黒猫!
さらに猫を追うハルミ!!
そして気づけば――
全員、
猫しか追いかけてない!?
広すぎる家を駆け回り、
最後は三人まとめて大激突!!
これは本当にねずみ退治なのか。
それとも、
大沢家名物の大運動会なのか!?
カオスは今日も、
自己ベスト更新中!!
春海。
大きく。
息を吸う。
いや。
大きくなんて。
そんなものじゃない。
本気だった。
肺いっぱい。
限界まで。
思いきり。
吸う。
肩が上がる。
髪が揺れる。
目。
一点集中。
もう。
ねずみしか。
見えていない。
「今だぁぁぁぁぁ!!」
「覚悟ぉぉぉぉぉぉ!!」
伝説の。
ほうき。
頭上へ。
高く。
掲げる。
静寂。
一秒。
そして――
ぶぉんっ!!
「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
どぉぉぉぉぉんっ!!
家中に。
衝撃が響いた。
ほこり。
ぶわっ。
舞う。
春海の。
威厳まで。
一緒に舞った。
勢い余って。
ぴょんっ。
少しだけ。
跳ねる。
着地。
そのまま。
ほうきを握る。
決めポーズ。
完全に。
必殺技を放った。
主人公だった。
静寂。
「……」
春海。
小さく。
つぶやく。
「……やった?」
ぴきっ。
床が。
答えた。
「……え?」
ぎしっ。
床板。
大きく。
反る。
次の瞬間。
ばきんっ!!
木片が。
勢いよく。
飛んだ。
ぴしっ!!
「いったぁぁぁぁぁ!!」
竹流。
目を押さえる。
「目ぇぇぇぇ!!」
「床が!!」
「床が攻撃してきましたぁぁぁ!!」
「竹流くん!?」
春海。
ほうきを。
ぽいっ。
放り投げる。
全力で。
駆け寄る。
「大丈夫!?」
「半分しか見えません……」
「あと半分は痛いです……」
「ご、ごめんなさぁぁぁい!!」
春海。
完全に。
パニック。
もちろん。
応急処置なんて。
知らない。
でも。
とにかく。
何とかしようとしていた。
その頃。
芽衣。
食器棚から。
ぴょん。
また。
ぴょん。
器用に。
飛び移る。
まるで。
アスレチック。
いや。
本人の中では。
普通だった。
春海。
まだ。
竹流の目を見ている。
「痛い?」
「すごく痛いです……」
「どうしようぉぉぉ……」
完全に。
二人だけの世界。
そこへ。
芽衣。
ちょこん。
近づく。
「ねぇ。」
春海。
「うん?」
「何探してるの?」
「……」
止まる。
一秒。
二秒。
三秒。
言えない。
絶対に。
言えない。
その言葉だけは。
春海。
天井を見る。
考える。
必死に。
(考えて。)
(春海。)
(考えて。)
頭の中。
フル回転。
「えっと……」
「その……」
「私たち。」
「探してるのは……」
長い。
沈黙。
そして。
ぴかっ。
ひらめいた。
「……ハムスター!」
「……」
竹流。
ゆっくり。
振り向く。
「ハムスター?」
「うん!」
春海。
笑顔。
でも。
目だけ。
笑っていない。
「ちょっと。」
「大きめの。」
「元気な。」
「ハムスター!」
「……」
竹流。
何も。
言わなかった。
いや。
言えなかった。
芽衣。
「あ。」
春海の後ろを。
指さす。
「分かった。」
「ちょっと。」
「大きいね。」
「……」
「……」
春海。
固まる。
振り向きたくない。
ものすごく。
振り向きたくない。
でも。
振り向くしかない。
ゆっくり。
本当に。
ゆっくり。
くるっ。
いた。
ねずみ。
いた。
春海を。
見ていた。
春海も。
見ていた。
見つめ合う。
数秒。
「……」
「……」
そして――
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
家中が。
揺れた。
反射で。
春海。
ほうきを掴む。
そのまま。
振り下ろそうとして――
ぴたっ。
止まる。
ねずみ。
横を見る。
黒猫。
そこにいた。
ねずみ。
ほんの一瞬。
間を置く。
そして。
ひょいっ。
黒猫の頭上を。
飛び越えた。
「えっ。」
春海。
完全停止。
「猫ちゃんは!!」
「叩けなぁぁぁぁぁい!!」
その瞬間。
黒猫。
しゃあぁぁぁっ!!
家中へ。
一直線。
完全に。
ミサイルだった。
「猫ちゃん!!」
春海。
叫ぶ。
「猫ちゃんを追いかけなきゃ!!」
だっ!!
全力疾走。
「竹流くん!!」
「一緒に来て!!」
「走りながら目も見るから!!」
竹流。
一瞬。
止まる。
「走りながらぁ!?」
「そんなのできるんですかぁ!?」
言いながら。
ちゃんと。
追いかける。
手には。
鏡。
もう片方の手。
目を。
ごしごし。
「待ってくださぁぁぁい!!」
「春海さんんん!!」
「ワンダーウーマンじゃないんですからぁぁぁ!!」
その頃。
黒沢も。
反対側から。
参戦。
三人。
全力疾走。
リビング。
廊下。
台所。
また。
リビング。
勢い余って。
机にぶつかりそうになり。
絨毯で。
つるっ。
滑り。
方向転換。
全員。
息切れ。
ものすごく。
そして。
ぴたり。
同時に。
気付いた。
「……」
「……」
「……」
春海。
叫ぶ。
「みんな!!」
「猫ちゃん追いかけてるぅぅぅ!!」
沈黙。
一秒。
二秒。
三秒。
「あっ。」
全員。
同時だった。
春海。
急ブレーキ。
きゅっ。
「猫ちゃんは私が行く!!」
「二人は!!」
「ねずみぃぃぃ!!」
黒沢。
「了解!」
竹流。
「はいっ!!」
三人。
一斉に。
方向転換。
だっ!!
……。
失敗だった。
こういう時。
広い家は。
便利じゃない。
ボス戦の。
ステージだった。
右へ。
左へ。
また右。
「いた!?」
「いない!!」
「こっち!!」
「違うぅぅぅ!!」
全員。
走る。
走る。
走る。
誰とも。
会わない。
家なのに。
広すぎた。
春海。
廊下の角。
勢いよく。
曲がる。
「猫ちゃぁぁぁぁん!!」
返事。
ない。
当然だった。
数秒後。
「あれ?」
「さっき。」
「ここにいたよね?」
「猫ちゃん……」
消えていた。
完全に。
ねずみも。
いない。
どこにも。
いない。
代わりに。
どこかで。
がたんっ!!
何かが。
倒れる音だけが。
響いた。
「また何か壊したぁぁぁぁ!?」
春海。
泣きそうだった。
数分後。
もう。
誰が。
何を。
追いかけているのか。
誰にも。
分からなかった。
ねずみ。
消える。
猫。
突然現れる。
そして。
また消える。
リビングへ戻るたび。
なぜか。
みんな。
装備だけ。
増えていた。
竹流。
鏡装備。
黒沢。
スリッパ装備。
春海。
伝説のほうき装備。
完全に。
パーティーだった。
「ねずみはぁぁぁ!?」
「知りません!!」
「猫ちゃん捕まえてぇぇぇ!!」
「やってますぅぅぅ!!」
その時――
黒猫。
びゅんっ!!
花瓶の横を。
駆け抜ける。
その花瓶。
きれいだった。
高そうだった。
ネットで買った。
お気に入りだった。
時間が。
ゆっくりになる。
ものすごく。
春海。
顔面蒼白。
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
花瓶。
ぐらっ。
くるっ。
ふわっ。
落ちる。
ごとっ。
「……」
「……」
割れない。
静寂。
春海。
ぱちっ。
瞬きをする。
「……あ。」
「これ。」
「ガラスっぽく見えるだけのやつだった……」
「よかったぁ……」
ほっ。
胸をなで下ろす。
その瞬間。
止まる。
完全に。
黒沢。
叫ぶ。
「大沢!!」
「止まるなぁぁぁ!!」
遅かった。
右。
黒沢。
左。
竹流。
春海。
真ん中。
「えっ。」
どんっ!!
「わぁぁぁっ!!」
三人。
正面衝突。
そのまま。
ごろんっ!!
床へ。
派手に。
転がった。
春海。
竹流の腕へ。
そのまま。
すとん。
「いったぁぁぁぁ!!」
「ご、ごめん!!」
春海。
飛び起きる。
「竹流くん!!」
「腕つぶしちゃった!?」
竹流。
顔をしかめる。
「う、腕がぁ……」
「僕の腕がぁ……」
黒沢。
まだ床。
天井を見る。
ぼそり。
「……作戦。」
一拍。
置く。
「必要ですね。」
春海。
真剣。
何度も。
頷く。
「うん。」
「絶対。」
「必要。」
三人。
ようやく。
同じ結論に。
たどり着いた。
遅かった。
ものすごく。
竹流。
床に。
手をつく。
起き上がろうとする。
ぐっ。
力を入れた。
「……」
違和感。
少し。
いや。
違う。
痛い。
変な痛みだった。
眉をひそめる。
「……大沢さん。」
「ん?」
春海。
すぐ振り向く。
「腕が……」
「ちょっと。」
「変な感じです。」
「えっ!?」
春海。
顔色が変わる。
一瞬で。
「ど、どういう変な感じ!?」
「だ、大丈夫です!」
竹流。
ぶんぶん。
首を振る。
「転んだだけですし!」
「たぶん!」
「普通の痛みです!」
笑う。
少しだけ。
ぎこちなく。
もう一度。
腕を。
動かす。
ずきっ。
「……」
痛い。
全然。
普通じゃない。
(これ。)
(絶対。)
(やっちゃった気がする……)
でも。
深呼吸。
一回。
笑顔。
作る。
「本当に。」
「後で見てもらえば大丈夫です。」
「今は。」
「それより。」
「ねずみです。」
そう。
今。
家の中には。
ねずみがいる。
優先順位は。
はっきりしていた。
一方――
台所。
芽衣。
冷蔵庫の上。
ちょこん。
座っていた。
器用に。
バランスを取りながら。
冷蔵庫の扉へ。
手を伸ばす。
「うーん……」
「もうちょっと……」
「こうしたら……」
ぐいっ。
「ジュース。」
「取れるかなぁ。」
家の中。
大騒ぎ。
でも。
芽衣だけは。
今日も。
平和だった。
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