第71話 安心してください、医学は専攻済みです!
【深夜】上司、完全保護!?ハルミ流“看病フルコース”で黒沢の理性が限界突破!!
— 深夜一時。
仕事を終えた黒沢を待っていたのは、
まさかの“ハルミ式看病”。
「医学は専攻してました!」
……もちろん嘘。
熱チェック。
保湿。
目元パック。
部屋の大掃除まで始まり、
気づけば黒沢は完全に患者扱い。
そして最後は――
「今日はうちで寝ましょう!」
疲れた上司は、
もう断る気力すら残っていなかった。
ぱん。
ぱん。
小さく。
手を叩く。
春海。
満足そう。
頭の中。
作戦。
完成。
そのまま。
黒沢の背中を。
ぐいぐい。
ベッドへ。
押す。
「はい!」
「ここに座って!」
「患者さんは。」
「先生に逆らっちゃダメ!」
黒沢。
「……。」
おとなしく。
座る。
壁へ。
もたれる。
少しだけ。
ぼんやり。
春海。
また。
どこかへ。
ぱたぱた。
戻ってきた。
両手いっぱい。
袋。
袋。
また袋。
ベッドの上へ。
どさっ。
黒沢。
目を細める。
「安心して。」
春海。
胸を張る。
「私。」
「医学。」
「専攻してたから。」
黒沢。
二秒。
止まる。
「……。」
「大沢さん。」
春海。
にこっ。
「うそ!」
黒沢。
ため息。
「ですよね。」
「でも!」
「今は!」
「ちゃんと。」
「プロ仕様!」
胸ポケット。
ごそごそ。
しわしわの紙。
取り出す。
誇らしげ。
黒沢。
嫌な予感。
「……。」
「それ。」
「どこで。」
「もらったんですか。」
「薬局!」
即答。
「薬を買いに行ったら。」
「薬剤師さんに。」
『どんな症状ですか?』
って聞かれて。」
「私は。」
『いい質問ですね!』
って答えたの!」
黒沢。
静かに。
理解する。
(今日。)
(死ぬかもしれない。)
春海。
止まらない。
「それでね!」
「病気の見分け方を。」
「全部。」
書いてくれたの!」
「だから!」
「もう診断できる!」
黒沢。
確信。
(間違いない。)
(今日が。)
(命日だ。)
春海。
返事も。
待たない。
黒沢の隣へ。
ちょこん。
座る。
手。
そっと。
取る。
ぴたり。
止まる。
「……。」
「熱い。」
黒沢。
停止。
頭。
真っ白。
「あ……。」
「そうですか。」
「気付きませんでした……。」
春海。
しわしわの紙。
確認。
「最初は。」
「熱があるか。」
確認!」
うん。
真剣。
そして。
何のためらいもなく。
ちゅっ。
額へ。
キス。
黒沢。
思考停止。
「…………。」
(え。)
(今。)
(何を。)
(された。)
春海。
大まじめ。
「うん!」
「熱あるね!」
「かなり熱い!」
自分の手の甲へ。
さらさら。
メモ。
書き始める。
完全に。
医者気分。
黒沢。
耳まで。
真っ赤。
心臓。
完全に。
暴走。
「ぼ、僕は……。」
「大丈夫です。」
「震えてる!」
「いえ。」
「これは……」
「落ち着いて!」
春海。
立ち上がる。
「最終兵器!」
「体温計!」
ぱたぱた。
戻る。
ぴっ。
体温計。
脇へ。
腕組み。
待機。
数十秒。
ぴっ。
春海。
画面を見る。
固まる。
「……。」
「え?」
黒沢。
恐る恐る。
「何度ですか。」
「平熱。」
静寂。
黒沢。
じーっ。
春海を見る。
「……。」
「体温計。」
「最初から。」
「あったんですね。」
春海。
悪びれない。
「うん!」
「でも。」
「おでこにチューする方が。」
「早いもん。」
「……。」
「昔からの方法!」
「……。」
「文化!」
「科学に。」
「逆らっちゃダメ!」
黒沢。
もう。
何も。
言わなかった。
その間に。
ぺたっ。
冷却シート。
額へ。
「はい!」
「できた!」
黒沢。
指で。
触る。
「……。」
「ゼリーみたいですね。」
春海。
うんうん。
「そう!」
「でも。」
「お腹すいても。」
「食べちゃダメだからね!」
黒沢。
少しだけ。
笑った。
その瞬間。
春海。
また。
手を。
握る。
「……。」
「乾燥してる。」
「クリーム!」
「持ってくる!」
「大丈夫――」
遅かった。
春海。
もう。
戻っていた。
手。
ぬりぬり。
丁寧。
真剣。
「うん。」
「これでよし。」
次。
顔。
じーっ。
「うわぁ……。」
「黒沢さん。」
「ドラマの最終回みたいな顔。」
「大沢さん……。」
ぺたっ。
ぺたっ。
目元。
アイパック。
装着。
「はい!」
「これで。」
美容完了!」
「薬!」
「保湿!」
「冷却!」
「美容!」
「完璧!」
黒沢。
ベッド。
横になる。
額。
冷却シート。
両目。
アイパック。
両手。
ハンドクリーム。
完全武装。
「……。」
「首も。」
「動かせません。」
春海。
満足そう。
うなずく。
「よし!」
「絶対安静!」
春海。
部屋を。
片付けながら。
ふと。
立ち止まる。
振り返る。
「……。」
「そういえば。」
「その額。」
「放っておいて。」
「いいの?」
黒沢。
少しだけ。
身体を起こす。
春海を見る。
「大沢さんこそ。」
「額。」
「どうしたんですか。」
春海。
反射的に。
額へ。
手を当てる。
「あっ。」
「気付いた?」
黒沢。
小さく。
うなずく。
「コンシーラーで。」
「隠してますけど。」
「まだ。」
「少し腫れてます。」
春海。
えへへ。
困ったように。
笑う。
「大丈夫!」
「ちょっとぶつけただけ!」
そう言って。
すぐ。
話を変える。
「よーし!」
「掃除の続き!」
黒沢。
「……。」
止める暇。
なかった。
そこから。
春海。
大暴れ。
書類。
種類ごとに。
箱へ。
きれい。
積み上げる。
洗濯物。
かごへ。
しゅぽっ。
床。
ほうき。
さっさっ。
モップ。
すいーっ。
キッチン。
ぴかぴか。
折りたたみ椅子。
ぱたん。
収納。
食器。
全部。
元の場所。
洗面所。
お風呂。
ついでに。
掃除。
最後。
シュッ。
シュッ。
シュシュシュシュッ!!
ルームスプレー。
大量。
黒沢。
「……。」
「くしゅん。」
鼻。
少しだけ。
痛い。
四十分後。
部屋。
別世界。
黒沢。
天井を見る。
(ここ。)
(僕の部屋……?)
疑いたくなるくらい。
きれいだった。
その頃。
春海。
ぺたん。
床へ。
座る。
そのまま。
手に。
顔を乗せる。
「……。」
「疲れたぁ。」
黒沢。
少しだけ。
身体を起こす。
春海を見る。
「お疲れさまでした。」
そっと。
頭を。
なでる。
「本当に。」
「ありがとうございます。」
「こんなに。」
「きれいになるなんて。」
「思ってませんでした。」
春海。
少し照れる。
「えへへ……。」
「全然!」
「大したことじゃないよ!」
黒沢。
少し迷う。
それでも。
静かに。
言った。
「……。」
「少しだけ。」
「ここに来ませんか。」
「一緒に。」
「テレビでも。」
「見ましょう。」
春海。
ぱっと。
笑う。
「うん!」
でも。
その前に。
冷凍庫。
ごそごそ。
氷。
取り出す。
自分の額へ。
ぴとっ。
黒沢。
その様子を。
静かに。
見ていた。
春海。
ベッドへ。
よいしょ。
当然のように。
布団へ。
もぐる。
黒沢。
停止。
(二回目。)
春海。
もう。
眠そう。
目。
とろん。
黒沢。
小さく。
笑う。
「今日は。」
「疲れましたよね。」
「少し。」
「横になってください。」
春海。
ふるふる。
首を振る。
「だめ……。」
「まだ……。」
「やること……。」
黒沢。
優しく。
答える。
「大丈夫です。」
「起きる時間になったら。」
「僕が起こします。」
春海。
「でも。」
「氷……。」
黒沢。
手を伸ばす。
氷を。
受け取る。
「これは。」
「僕が持ちます。」
そのまま。
腕が。
春海の肩を。
そっと。
包む。
氷を。
額へ。
当て続ける。
二分後――
すぅ……
春海。
熟睡。
黒沢。
固まる。
(……。)
(落ち着け。)
(大人だろ。)
(肩で。)
(人が寝てるだけだ。)
(普通だ。)
(……たぶん。)
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