表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
PR
70/86

第70話 「あーん」の法則

【事件】午前二時、黒沢圭が大沢ハルミの新説に巻き込まれました。


――「『あーん』する時って、一緒に口を開ける人と開けない人がいるんですよ!」


ようやく終わった残業。


ようやく始まった晩ご飯。


……のはずが。


気付けば始まっていたのは、

大沢ハルミによる

"あーん理論"の研究発表。


今日も黒沢は、

大沢ハルミという現象に、

少しずつ慣れていきます。

 


黒沢のキッチン。


 


狭い。


 


本当に。


 


狭い。


 


でも。


 


そんなことは。


 


大沢には。


 


関係なかった。


 


気が付けば。


 


そこはもう。


 


即席料理フェスティバル。


 


最初に聞こえてきたのは――


 


ふん♪


 


ふふん♪


 


小さな鼻歌。


 


にんにく。


 


刻む。


 


トントントントン。


 


次は。


 


玉ねぎ。


 


目。


 


少し痛い。


 


涙。


 


少し出る。


 


それでも。


 


楽しそう。


 


「ふんふふ〜ん♪」


 


一方。


 


黒沢。


 


仕事。


 


書く。


 


止まる。


 


書類確認。


 


プリンター。


 


ウィィィィン……


 


立つ。


 


紙を取る。


 


ホチキス。


 


席へ戻る。


 


付箋。


 


一枚。


 


貼る。


 


ため息。


 


その頃。


 


大沢。


 


第二段階。


 


卵。


 


小麦粉。


 


ボウルへ。


 


ぽちゃん。


 


ぽちゃん。


 


「よし。」


 


「きっとうまくいく。」


 


しゃかしゃか。


 


混ぜる。


 


野菜。


 


切る。


 


また。


 


鼻歌。


 


ふん♪


 


ふふ〜ん♪


 


ここまでは。


 


普通だった。


 


でも――


 


歌い始めた。


 


ポルトガル語で。


 


最初は。


 


小さく。


 


少しずつ。


 


リズムが。


 


乗ってくる。


 


鍋を混ぜる。


 


小さく。


 


ステップ。


 


くるっ。


 


くるっ。


 


調味料。


 


一つ。


 


また一つ。


 


さらに。


 


もう一つ。


 


黒沢。


 


仕事に。


 


集中しようとする。


 


でも。


 


耳に入る。


 


歌。


 


何を歌っているのか。


 


全然。


 


分からない。


 


でも。


 


リズムは。


 


悪くない。


 


ふと。


 


キッチンを見る。


 


そして。


 


気付いた。


 


「…………」


 


キッチン。


 


いっぱいだった。


 


調理台。


 


荷物。


 


開いた袋。


 


きれいに並ぶ。


 


調味料。


 


掃除用品。


 


モップ。


 


ほうき。


 


いい香りの。


 


スプレー。


 


そして――


 


「……」


 


「踏み台まで。」


 


「持ってきたんですか。」


 


そう。


 


折りたたみ式。


 


小さな。


 


踏み台。


 


広げれば。


 


ちょうどいい。


 


物置になる。


 


大沢。


 


片耳だけ。


 


イヤホン。


 


歌って。


 


混ぜて。


 


味見して。


 


少し踊る。


 


深夜一時半。


 


会社の上司の家。


 


なのに。


 


まるで。


 


自分の家みたいだった。


 


黒沢。


 


一度。


 


瞬きをして。


 


何も言わず。


 


また。


 


仕事へ戻った。


 


部屋には。


 


小さく。


 


ブラジルの音楽だけが。


 


流れていた。


しばらくして――


 


黒沢。


 


仕事。


 


終わった。


 


大沢も。


 


ちょうど。


 


最後の盛り付け。


 


くるっ。


 


振り向く。


 


満面の笑み。


 


「できました!」


 


「よかったら。」


 


「よそいましょうか?」


 


「お願いします。」


 


大沢。


 


「はーい!」


 


お皿。


 


一枚。


 


まずは。


 


ご飯。


 


よそう。


 


まだ。


 


よそう。


 


もう少し。


 


よそう。


 


黒沢。


 


「……」


 


山だった。


 


次。


 


魚。


 


一切れ。


 


二切れ。


 


三切れ。


 


さらに。


 


大きなお肉。


 


どーん。


 


「よし!」


 


「完成です!」


 


まるで。


 


賞状でも。


 


渡すみたいに。


 


両手で。


 


差し出した。


 


黒沢。


 


受け取る。


 


少しだけ。


 


目を丸くした。


 


「……」


 


「おいしそうですね。」


 


大沢も。


 


向かいへ。


 


座る。


 


黒沢。


 


一口。


 


ご飯を。


 


食べる。


 


「……」


 


止まる。


 


大沢。


 


びくっ。


 


「このご飯。」


 


「少し。」


 


「いつもと違いますね。」


 


その瞬間。


 


大沢の頭。


 


かちっ。


 


止まる。


 


(しまった。)


 


(考えてなかった。)


 


(ブラジル風のご飯……。)


 


(作っちゃった……。)


 


にんにく。


 


玉ねぎ。


 


炒めて。


 


香りを出して。


 


日本のご飯とは。


 


全然。


 


違う。


 


大沢。


 


口元を押さえる。


 


「あっ!」


 


「ご、ごめんなさい!」


 


「夢中で作ってたら……」


 


「いつもの癖で……」


 


黒沢。


 


少しだけ。


 


笑う。


 


「大丈夫です。」


 


「すごく。」


 


「おいしそうですよ。」


 


大沢。


 


ぱあっ。


 


一瞬で。


 


復活。


 


黒沢。


 


もう一口。


 


食べる。


 


その間――


 


大沢。


 


じーーーっ。


 


見ていた。


 


黒沢。


 


少し。


 


緊張。


 


(……)


 


(なんで。)


 


(そんなに。)


 


(見てるんだ。)


 


(ちゃんと噛もう。)


 


(ご飯……。)


 


(顔についてないよな……。)


 


もう一口。


 


食べる。


 


まだ。


 


見られている。


 


そして――


 


「あっ!!」


 


大沢。


 


立ち上がる。


 


黒沢。


 


びくっ。


 


箸。


 


止まる。


 


(まさか。)


 


(何か。)


 


忘れてた……?)


 


「よかった!」


 


「これも作ったんです!」


 


戻ってきた。


 


お皿。


 


いっぱい。


 


色鮮やかな。


 


野菜。


 


いい香り。


 


黒沢。


 


少し。


 


笑う。


 


「野菜なのに……」


 


「おいしそうですね。」


 


「えへへ。」


 


大沢。


 


照れる。


小さなテーブル。


 


もう。


 


限界だった。


 


大きなお皿。


 


二つ。


 


野菜。


 


書類。


 


付箋。


 


ペン。


 


置く場所。


 


ほとんど。


 


ない。


 


大沢。


 


また。


 


黒沢を見る。


 


黒沢。


 


野菜を。


 


一口。


 


食べる。


 


しゃくっ。


 


ゆっくり。


 


噛む。


 


少しだけ。


 


目を見開いた。


 


「……」


 


「これも。」


 


「おいしいです。」


 


「本当ですか!?」


 


「はい。」


 


「このご飯も。」


 


「初めて食べました。」


 


「でも。」


 


「好きです。」


 


大沢。


 


顔いっぱい。


 


笑顔。


 


「よかったぁ……!」


 


胸をなで下ろす。


 


「子どもたちも。」


 


「このご飯。」


 


「大好きなんです。」


 


黒沢。


 


少し笑う。


 


魚を。


 


ほぐしながら。


 


聞いた。


 


「家では。」


 


「どうですか。」


 


「今日は。」


 


「みんな。」


 


「緊張してますか?」


 


その一言で――


 


大沢。


 


完全に。


 


"お母さんモード"


 


起動。


 


「大丈夫です!」


 


「芽衣ちゃん!」


 


「ぐらぐらの歯も!」


 


「全然怖がらなくなったんですよ!」


 


「私だったら。」


 


「絶対無理です!」


 


「それに!」


 


「最近は!」


 


「新しい野菜が届くたびに!」


 


「畑へ行くようになって!」


 


黒沢。


 


くすっ。


 


少しだけ。


 


笑う。


 


「そうですか。」


 


「じゃあ。」


 


「浩さんも。」


 


「元気なんですね。」


 


大沢。


 


ぱちっ。


 


瞬き。


 


「えっ!」


 


「覚えてるんですか!?」


 


「もちろん。」


 


「昔。」


 


「数学の先生に。」


 


「点数をもらいに。」


 


「よく畑へ行ってましたよね。」


 


大沢。


 


「ち、違います!」


 


「点数のためじゃありません!」


 


黒沢。


 


じーっ。


 


「本当に?」


 


「ほ、本当です!」


 


「えっと……」


 


「畑が好きで……」


 


「それで。」


 


「たまたま。」


 


「点数も上がって……」


 


「…………」


 


黒沢。


 


「なるほど。」


 


「たまたま。」


 


「はい!」


 


「たまたまです!」


 


少しだけ。


 


昔話。


 


数学の先生。


 


そのお父さん。


 


畑。


 


学校帰り。


 


大沢。


 


毎日のように。


 


手伝っていた。


 


先生のお母さんは。


 


いつも。


 


言っていた。


 


「あんたより。」


 


「この子の方が。」


 


「よっぽど働いてるんだから。」


 


「変な点数つけたら。」


 


「許さないよ。」


 


結果。


 


数学。


 


赤点。


 


一度も。


 


なし。


 


「別に。」


 


「頼んだこと。」


 


「ないんですけどね。」


 


大沢。


 


困ったように。


 


笑う。


 


黒沢も。


 


つられて。


 


笑った。



 


笑い声が。


 


少しずつ。


 


落ち着く。


 


そして。


 


また。


 


静かな食卓。


 


……のはずだった。


 


黒沢。


 


ふと。


 


気付く。


 


大沢。


 


まだ。


 


自分のお皿を。


 


見ている。


 


「……」


 


「大沢さん。」


 


「もしかして。」


 


「お腹。」


 


「空いてます?」


 


「えっ?」


 


「い、いえ!」


 


「全然!」


 


「そんなこと――」


 


ぐぅぅぅぅ……


 


静寂。


 


黒沢。


 


眉が。


 


少しだけ。


 


上がる。


 


大沢。


 


観念。


 


「……空いてます。」


 


黒沢。


 


小さく。


 


笑う。


 


スプーンを持つ。


 


ご飯を。


 


一口。


 


すくう。


 


そのまま。


 


大沢の方へ。


 


「はい。」


 


「あーん。」


 


大沢。


 


ぱくっ。


 


「ん~♪」


 


幸せそう。


 


黒沢。


 


少しだけ。


 


驚く。


 


「……?」


 


「どうしました?」


 


大沢。


 


真面目な顔。


 


本当に。


 


真面目。


 


「黒沢さん。」


 


「一つ。」


 


気付いたことがあるんです。」


 


黒沢。


 


嫌な予感。


 


「……」


 


「聞くの。」


 


「少し怖いですね。」


 


大沢。


 


うなずく。


 


「人に。」


 


「あーんってして。」


 


「食べさせる時。」


 


「黒沢さん。」


 


「口。」


 


「開けないんですね。」


 


沈黙。


 


黒沢。


 


停止。


 


「…………」


 


「はい?」


 


大沢。


 


続ける。


 


「この前。」


 


「芽衣ちゃんに。」


 


「あーんってした時。」


 


「私も。」


 


「一緒に。」


 


「口を開けてたんです。」


 


「そしたら。」


 


「健くんが。」


 


『それ変だから。』


 


って。」


 


「言うんですよ。」


 


「だから。」


 


「気になって。」


 


「最近。」


 


「観察してたんです。」


 


「人によって。」


 


「開ける人と。」


 


「開けない人が。」


 


「いるんですよ!」


 


「黒沢さんは。」


 


「開けない派です!」


 


静寂。


 


黒沢。


 


じーーーっ。


 


大沢を見る。


 


まるで。


 


新種の生き物でも。


 


発見したような目。


 


数秒後。


 


ぽつり。


 


「……」


 


「やっぱり。」


 


「大沢さんたち。」


 


「ちょっと変です。」


 


大沢。


 


少し考える。


 


「そうかもしれません!」


 


あっさり。


 


認めた。


 


黒沢。


 


思わず。


 


吹き出す。


 


「ふっ……。」


 


笑った。


 


その夜。


 


久しぶりに。


 


心から。


 


笑った。




読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡


もしこの作品で少しでも笑顔になっていただけたら、★で応援していただけると、とっても嬉しいです!


皆さんからいただく評価は、

「もっともっと面白い作品を作りたい!」

と思える大切な励みになっています


(´▽`)


Pixivではキャラクターデザインやイラストも投稿しています!


最近は、春海をいつもと少し違うタッチで描いたイラストも公開しましたので、よかったらぜひ遊びに来てください~!


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


また次回もよろしくお願いします~!!♡♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ