第58話 離れてください
【悲報】大事な手がかりを探しに行くだけだったのに!?なぜか命の危険を感じる件!!
―― 出発五分で後悔した人が約三名います ――
行き先は不明。
記憶はあいまい。
運転手はハルミ。
不安しかない!!
さらに現れた空良まで巻き込まれ――!?
今日も平和なはずだった。
たぶん。
きっと。
おそらく――!!
朝だった。
珍しく。
平和だった。
本当に珍しく。
「……大沢さん……」
遠くから声がする。
「大沢さん……起きて……」
布団の中。
反応なし。
そして。
「大沢さーーーん!!」
「……起きてる……」
起きてない。
完全に寝ている。
その頃。
反対側の部屋では。
芽衣が毛布に包まれていた。
もはや人ではない。
毛布の塊だった。
タケルはため息をつく。
慣れている。
もう慣れすぎている。
芽衣を抱き上げる。
そのまま洗面所へ。
「口開けて」
芽衣。
半分寝ながら。
ぱか。
開いた。
歯磨き。
終了。
髪。
整える。
そして。
椅子へ。
ぽすん。
五分後。
芽衣。
ぽつり。
「……ごはん?」
起動した。
芽衣システム。
正常起動。
朝食開始。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
まだ眠そう。
目も半分しか開いていない。
なのに。
食べる速度だけ速い。
不思議だった。
そして。
数分後。
「おはよーーー!!」
完全復活。
タケル。
「おはよう」
芽衣は椅子から飛び降りた。
元気。
急に元気。
部屋へ走る。
そして。
戻ってきた。
服。
決定済み。
よく分からない絵が描かれたエプロン。
かわいいブーツ。
本人。
超満足。
「準備できた!!」
「三分前まで寝てたよね」
「できた!!」
大事なことなので二回言った。
その頃。
ハルミ。
まだクローゼットの前。
動かない。
「こっちかな……」
服を見る。
「いやこっち……?」
別の服を見る。
「こっちは信頼感あるかな」
考える。
「こっちはちゃんとしてそう」
さらに考える。
「こっちは過去を調べないでください感ある」
なかった。
そんな服は存在しない。
ソファ。
タケル。
待機中。
ずっと待機中。
かなり前から待機中。
沈黙。
「大沢さん」
「今行く」
「大沢さん」
「今行くって」
「大沢――」
ピンポーン。
全員。
止まる。
タケルが立ち上がる。
玄関へ。
扉を開ける。
沈黙。
「……空良?」
そこにいた。
空良だった。
しかも。
制服なし。
満面の笑み。
嫌な予感しかしない。
「おっす」
「何してるの」
「遊びに来た」
「学校は?」
「休んだ」
即答だった。
タケル。
嫌な顔。
かなり嫌な顔。
「なんで」
空良。
胸を張る。
誇らしげ。
「計算した」
「何を」
「週に一回なら休める」
「問題ない」
タケル。
無表情。
完全無表情。
頭の中。
たぶん。
こうだった。
『簡単な方程式も解けないくせに』
『サボる計算だけ天才かよ』
「週に一回なら休める」
「問題ない」
タケル。
無表情。
完全無表情。
「……」
「……」
空良。
笑顔。
タケル。
ため息。
長い。
すごく長い。
「それで」
「ん?」
「なんで来たの」
「暇だった」
即答。
迷いゼロ。
「帰って」
「ひどい」
空良。
胸を押さえる。
傷付いた演技。
百点満点。
でも。
タケルには効かない。
「今日は来るなって言ったよね」
「言われた」
「じゃあなんで来たの」
「気になった」
「何が」
「何するのか」
タケル。
沈黙。
嫌な予感。
的中。
「俺も行く」
「行かない」
「行く」
「行かない」
「行く」
「行かない」
二人。
見つめ合う。
小学生だった。
完全に。
空良は突然。
しゅん。
肩を落とした。
捨てられた子犬モード。
発動。
「だって……」
「……」
「タケルが何もないのに断る時って」
「うん」
「だいたい俺のこと嫌いな時だし……」
「そんなことない」
即答。
そして。
一秒後。
「いや」
「ある」
「え」
空良。
停止。
心。
折れた。
「……」
「……」
「傷付いた」
「そう」
「めっちゃ傷付いた」
「そう」
タケル。
全くブレない。
鉄壁だった。
しかし。
少しだけ優しかった。
「でも今日は違う」
「?」
「本当に用事」
空良。
復活。
早い。
ものすごく早い。
「じゃあ行けるじゃん」
「行けない」
「なんで」
「用事だから」
「俺静かにしてる」
「無理」
「なんで!?」
「空良だから」
ひどかった。
でも正論だった。
空良も否定できない。
少しだけ。
本当に少しだけ。
否定できない。
「アイス食べたり」
「無理」
「新しい靴屋行ったり」
「無理」
「公園行ったり」
「無理」
「人生楽しもうよ」
「今日じゃない」
空良。
むくれる。
完全にむくれる。
その瞬間。
後ろから声。
「何してるのー?」
ハルミだった。
ようやく着替え終わった。
長かった。
本当に長かった。
タケルは振り返る。
助かった。
そう思った。
完全に油断した。
「空良が来た」
「おー!」
ハルミ。
普通に喜ぶ。
嫌な予感。
タケルの嫌な予感。
本日二回目。
「一緒に行きたいんだって」
「へぇ!」
嫌な予感。
急上昇。
「じゃあ行こう!」
即決だった。
タケル。
目を閉じる。
一秒。
二秒。
三秒。
考える。
そして。
結論。
無理。
どうにもならない。
運命だった。
「……」
空良。
大勝利。
「やったーーー!!」
飛び跳ねる。
大喜び。
タケル。
敗北。
完全敗北。
そして。
三人は外へ向かった。
目的地は。
まだ分からない。
でも。
とりあえず。
車だけは待っていた。
あの。
嫌な意味で有名な。
ハルミの車が。
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