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ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
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第57話 こんな時間に怖い話するのやめてください

【発覚】ついに前進!?深夜の雑談が思った以上に重たすぎた件!!


―― ただ話を聞いていただけなのに、なぜか泣いている大沢ハルミ ――


少しずつ語られる昔の話。


少しずつ繋がっていく記憶。


そして――


見えてきた新しい手がかり。


前に進めそう。


うれしい。


でも。


それ以上に。


話の内容が重すぎる!!


ハルミ、


本日も涙腺崩壊です――!!

リビングは暗かった。


静かだった。


窓を叩く風の音。


それから、


まだ消えていないパソコンの画面の光。


 


ハルミはゆっくり目を開けた。


 


頭が重い。


 


夢のせいだ。


 


あまりにも理不尽な夢だった。


 


「……信号機に負けた……」


 


ぽつり。


 


その後ろ。


 


タケルはまだ起きていた。


 


リビングの床に座って、


ゲームをしている。


 


「寝言で言ってた」


 


「言わないで」


 


即答だった。


 


沈黙。


 


ハルミは顔をこする。


 


「はぁ……」


 


そしてパソコンを見る。


 


まだログインできていない。


 


まだ進展ゼロ。


 


「忘れよう……」


 


無理だった。


 


忘れられるわけがない。


 


「タケルくんのお母さんが働いてた場所だけでも分かればなぁ……」


 


ぽつり。


 


「苗字でもいいし」


 


「職場でもいいし」


 


「とにかく何か手がかりが欲しい……」


 


タケルが顔を上げた。


 


「それなら」


 


「ん?」


 


「俺が何とかできるかも」


 


ハルミ。


 


停止。


 


「え?」


 


「何が必要なんだっけ」


 


「えっと……」


 


頭の中を整理する。


 


「お母さんの苗字」


 


「働いてた場所」


 


「連絡が取れそうな情報」


 


「とにかく何でも」


 


タケルは少し考えた。


 


そして。


 


普通に言った。


 


「働いてた場所なら覚えてる」


 


沈黙。


 


ハルミ。


 


停止。


 


もう一回。


 


停止。


 


「……え?」


 


「覚えてる」


 


「え?」


 


「だから覚えてる」


 


「ええええええええええええっ!?」


 


タケルが眉をひそめた。


 


うるさい。


 


ハルミは椅子から半分立ち上がっていた。


 


「ど、どういうこと!?」


 


「住んでたの!?」


 


「少し」


 


簡単だった。


 


あまりにも簡単だった。


 


ハルミだけが大騒ぎしている。


 


「少しって!?」


 


「少しだよ」


 


タケルは肩をすくめた。


 


そして。


 


少しだけ昔を思い出すように、


静かに話し始めた。


 


「俺が生まれた頃」


 


「そこの人たちが面倒見てくれてたらしい」


 


ハルミは黙った。


 


タケルの声は落ち着いていた。


 


まるで昔話をするみたいに。


 


「働いてた人たちが交代で」


 


「俺の世話してくれてた」


 


「じいちゃんから聞いた」


 


少し笑う。


 


本当に少しだけ。


 


「みんな貧乏だったから」


 


「職場の上にある部屋で暮らしてたんだ」


 


「だから自然とそうなったらしい」


 


ハルミは聞いていた。


 


いつものツッコミもない。


 


ただ真面目に。


 


タケルは続けた。


 


「俺」


 


「手のかからない子だったらしい」


 


「だから結構かわいがられてた」


 


ハルミ。


 


即反応。


 


「その人たち超ラッキーじゃん……」


 


「……」


 


「なにその沈黙」


 


「いや」


 


タケルは真顔だった。


 


「俺が手のかかる子みたいに聞こえる」


 


「違う違う!」


 


ハルミは慌てる。


 


「全然違う!」


 


「ただ……」


 


「今のタケルくん知ってるから」


 


「なんかこう……」


 


「育てやすそう」


 


「褒めてる?」


 


「褒めてる」


 


「そう」


 


納得した。


「褒めてる」


 


「そう」


 


タケルは納得した。


 


そして。


 


少しだけ視線を落とす。


 


昔を思い出すみたいに。


 


静かに。


 


「母さんもまだ働いてた」


 


ハルミは黙って聞く。


 


「ご飯作ってくれたり」


 


「時間がある時は世話してくれたり」


 


「普通だったと思う」


 


少し考える。


 


言葉を選ぶ。


 


「……良い母親ではなかったけど」


 


「すごく悪い母親でもなかった」


 


沈黙。


 


ハルミ。


 


感動。


 


そして。


 


数秒後。


 


理解した。


 


「いや待って」


 


「ん?」


 


「タケルくん」


 


「なに」


 


「その評価基準ちょっと見直そう?」


 


「?」


 


「今の話だけで私の涙腺かなり危険なんだけど?」


 


タケルは聞こえなかったことにした。


 


完全に無視である。


 


そして続ける。


 


「でも」


 


「芽衣ちゃんが生まれてから変わった」


 


空気が少しだけ変わる。


 


ハルミも気付いた。


 


タケルは少し息を吐く。


 


「母さん」


 


「働けなくなった」


 


「体の調子が悪くなって」


 


「仕事も続けられなくなった」


 


静かな声だった。


 


怒ってもいない。


 


責めてもいない。


 


ただ事実を話しているだけ。


 


「それで仕事を辞めた」


 


ハルミは黙る。


 


タケルも続けた。


 


「だから」


 


「芽衣ちゃんのこと」


 


少し言葉が止まる。


 


「……あんまり好きじゃなかった」


 


部屋が静かになる。


 


風の音だけ。


 


ハルミは視線を落とした。


 


「そうか……」


 


小さく呟く。


 


タケルは頷いた。


 


「職場の人たちも面倒見れなくなった」


 


「子供二人は無理だったらしい」


 


「母さんももう働いてなかったし」


 


少し間。


 


「だから」


 


「じいちゃんの家に行った」


 


「俺が四歳くらいの時」


 


ハルミはゆっくり聞く。


 


「それから?」


 


「それから会ってない」


 


あっさり。


 


本当にあっさり。


 


「俺も」


 


「芽衣ちゃんも」


 


「一度も」


 


ハルミ。


 


唇を噛む。


 


「……芽衣ちゃん」


 


「本当に会ったことないの?」


 


「ない」


 


タケルは即答した。


 


「生まれた時も」


 


「母さん寝てたし」


 


ハルミ。


 


停止。


 


「え?」


 


タケルは続ける。


 


「俺は見たけど」


 


「母さんは見てなかったと思う」


 


さらに停止。


 


「え?」


 


タケル。


 


普通に続ける。


 


「芽衣ちゃんが生まれた時」


 


「俺もいたから」


 


ハルミ。


 


完全停止。


 


数秒。


 


そして。


 


「待って待って待って待って」


 


「ん?」


 


「タケルくん」


 


「うん」


 


「見たの?」


 


「見た」


 


「出産を?」


 


「見た」


 


「四歳で?」


 


「四歳で」


 


沈黙。


 


ハルミ。


 


脳内大爆発。


 


タケル。


 


平常運転。


 


「しかも手伝った」


 


「え?」


 


「手伝った」


 


「え?」


 


「助産師さん手伝ってた人の手伝い」


 


ハルミ。


 


両手で顔を覆う。


 


理解不能。


 


情報量過多。


 


「……」


 


「……」


 


「タケルくん」


 


「なに」


 


「四歳児じゃないよそれ」


 


「ありがとう」


 


「褒めてない!!」


 


タケルは少しだけ首を傾げた。


 


なんでだろう。


 


そして。


 


少しだけ笑った。


 


本当に少しだけ。


タケルは少しだけ笑った。


 


本当に少しだけ。


 


そしてまた続ける。


 


「芽衣ちゃん」


 


「なかなか病院から出られなかった」


 


「詳しくは覚えてないけど」


 


少し考える。


 


遠い記憶を探すみたいに。


 


「よく聞こえてた」


 


「何が?」


 


「大変そうだって」


 


「手がかかるかもしれないって」


 


「そんな話」


 


ハルミは黙った。


 


タケルは続ける。


 


「じいちゃんの介護士さんも」


 


「いつも芽衣ちゃん見てた」


 


「よく泣いてたし」


 


「大変だったらしい」


 


少し眉を寄せる。


 


「問題の多い赤ちゃんだって」


 


「言われてた気がする」


 


ハルミ。


 


静かに聞いている。


 


胸が少し痛い。


 


でも。


 


タケルは淡々としていた。


 


もう昔のことだから。


 


たぶん。


 


それから。


 


ふと。


 


何かを思い出した。


 


「そういえば」


 


「ん?」


 


「ファイルがあった」


 


「ファイル?」


 


「うん」


 


タケルは頷く。


 


「紙がいっぱい入ってた」


 


「じいちゃんが大事だって言ってた」


 


ハルミ。


 


停止。


 


「え?」


 


「でも何かは知らない」


 


「子供だったし」


 


「ただ」


 


少し考える。


 


「なんか秘密っぽかった」


 


沈黙。


 


ハルミ。


 


完全停止。


 


タケル。


 


普通。


 


ハルミ。


 


瞳キラキラ。


 


鼻すすり。


 


ハンカチ握りしめる。


 


タケルは首を傾げた。


 


「……なんで泣いてるの?」


 


「だってぇぇぇぇぇ……」


 


もう泣いていた。


 


「それ絶対大事なやつじゃん……」


 


「そう?」


 


「そうだよ!!」


 


ハルミは立ち上がる。


 


「タケルくん!!」


 


「なに」


 


「それ普通の話じゃない!!」


 


「そう?」


 


「そう!!!!」


 


机を叩く。


 


「それ実話系ホラーだよ!!」


 


「ホラー?」


 


「ホラー!!」


 


タケルは本気で分からなかった。


 


本当に分からなかった。


 


だから。


 


ただ見ている。


 


泣いているハルミを。


 


「大沢さん」


 


「なにぃ……」


 


「いつもこうなの?」


 


「こうって?」


 


「すぐ泣く」


 


即答。


 


「泣く」


 


「そう」


 


「絶対泣く」


 


「そう」


 


「これからも泣く」


 


「そう」


 


タケルは納得した。


 


なるほど。


 


そういう人なんだ。


 


ハルミは鼻をすすった。


 


涙を拭く。


 


深呼吸。


 


一回。


 


二回。


 


三回。


 


そして。


 


顔を上げた。


 


「よし」


 


「じゃあ明日だね」


 


「明日」


 


タケルも頷く。


 


「場所はたぶん覚えてる」


 


「芽衣ちゃんは畑行くし」


 


「すぐ終わると思う」


 


ハルミ。


 


少し緊張した。


 


少し不安だった。


 


でも。


 


それ以上に。


 


嬉しかった。


 


初めてだったから。


 


本当に。


 


前に進めそうだったから。


 


「……タケルくん」


 


「ん?」


 


次の瞬間。


 


ハルミ。


 


飛んだ。


 


「だいすきぃぃぃぃぃ!!」


 


「ありがとうぅぅぅぅ!!」


 


タケルに抱きついた。


 


突然だった。


 


完全に突然だった。


 


タケル。


 


固まる。


 


真っ赤。


 


耳まで真っ赤。


 


でも。


 


なんとか平静を装う。


 


「……寝よう」


 


「うん!!」


 


「あと」


 


「ん?」


 


「想像上のロボットと喧嘩するのやめて」


 


沈黙。


 


そして。


 


ハルミ。


 


大声。


 


「私ロボットじゃないもん!!!!!」


 


「寝て」


 


「今行く!!」


 


部屋の灯りが消える。


 


静かな夜。


 


風の音。


 


遠くの虫の声。


 


そして――


 


初めて。


 


本当に初めて。


 


二人は見つけた。


 


前に進むための道を。


 


小さい。


 


でも確かな。


 


希望の欠片を。


 


その手の中に。



楽しんでいただけたら嬉しいです!

もしよければ、ポイントを入れていただけると、とても励みになります

また次回もよろしくお願いします!

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