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ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
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55/64

第55話 大沢治美、自分に敗北する

【事件】メールに入れません

―― 犯人は私でした ――


メールを開きたかった。


ただそれだけだった。


本当に。


ただそれだけだった。

なのに――


パスワードを忘れる。


スマホの充電がない。


メモは見られない。


パソコンは止まる。


そして発覚する。


自分を守るために入れたソフトが、

自分を攻撃していたことを。


怖い。


色々と怖い。


そして治美はまだ知らない。


 本当の敵は外にはいないことを――

 


部屋。


 


暗かった。


 


静かだった。


 


真面目だった。


 


無駄に。


 


とても。


 


机の中央。


 


青白いパソコンの光。


 


その前に――


 


大沢治美。


 


座っていた。


 


真剣な顔で。


 


完全に。


 


これはもう遊びじゃない。


 


調査だった。


 


任務だった。


 


そして。


 


治美がそう思い込んだ時。


 


大体ろくなことにならない。


 


本当に。


 


 


眼鏡。


 


鼻の先。


 


ぎりぎり。


 


髪。


 


お団子。


 


戦争に負けたみたいな状態。


 


服装。


 


サーフィンしているパンダのTシャツ。


 


そして。


 


明らかに大きいスウェット。


 


タケルのだった。


 


 


理由。


 


「ちゃんとした服は洗濯中です」


 


タケル談。


 


 


「精神的な嫌がらせです」


 


治美談。


 


 


机の上。


 


飲みかけのスムージー。


 


メモ帳。


 


開いたまま。


 


 


『プランA』


 


『プランB』


 


『プランドラマチック


 


 


パソコン。


 


 


ガリガリガリ。


 


 


異音。


 


 


かなり。


 


 


治美。


 


目を細める。


 


「よし……」


 


「調査第二段階」


 


 


キーボード。


 


叩く。


 


 


みずき。


 


 


検索。


 


 


結果。


 


 


ゼロ。


 


 


「苗字知らなかった」


 


 


致命的だった。


 


かなり。


 


 


もう一回。


 


 


みずき。


 


町の名前。


 


 


検索。


 


 


結果。


 


 


ゼロ。


 


 


「よし」


 


 


「SNSだ」


 


 


何もよくなかった。


 


全然。


 


 


治美。


 


SNSを開く。


 


 


「みずき……」


 


 


「みずき……」


 


 


「みずき……」


 


 


スクロール。


 


 


さらにスクロール。


 


 


もっとスクロール。


 


 


「何でこんなにいるの!?」


 


 


「日本中みずきだらけじゃん!!」


 


 


怒り。


 


 


理不尽だった。


 


とても。


 


 


「この人は歯医者」


 


 


「この人はパン屋」


 


 


「この人は猫の動画ばっかり上げてる」


 


 


「違う」


 


 


「集中」


 


 


「治美」


 


 


自分で言った。


 


自分に。


 


 


そして。


 


深呼吸。


 


一回。


 


 


「プロの時間です」


 


 


別サイト。


 


開く。


 


 


読み込み中。


 


 


止まる。


 


 


さらに止まる。


 


 


パソコン。


 


 


ガガガガガ。


 


 


咳みたいだった。


 


 


「頑張れ……」


 


 


「君ならできる……」


 


 


「私達は仲間だ……」


 


 


数秒後。


 


ログイン画面。


 


表示。


 


 


治美。


 


笑顔。


 


 


勝利を確信。


 


早かった。


 


 


「メール!!」


 


 


入力。


 


 


成功。


 


 


パスワード。


 


 


入力。


 


 


エラー。


 


 


「……」


 


 


もう一回。


 


 


エラー。


 


 


さらにもう一回。


 


 


エラー。


 


 


「……いや」


 


 


もう一回。


 


 


エラー。


 


 


沈黙。


 


 


長い。


 


とても。


 


 


「……ない」


 


 


「そんなはずない」


 


 


ある。


 


 


確実にある。


 


 


でも思い出せない。


 


 


全然。


 


 


治美。


 


ゆっくり振り向く。


 


扉の方へ。


 


 


「タケルくん」


 


 


足音。


 


 


とことこ。


 


 


現れる。


 


 


パジャマ姿。


 


 


疲れていた。


 


存在するだけで。


 


 


「何ですか」


 


 


「私のパスワード何だっけ?」


 


 


沈黙。


 


 


タケル。


 


瞬き。


 


一回。


 


 


「知るわけないですよね?」


 


 


正論だった。


 


残酷なくらい。


 タケル。


 


ため息。


 


小さく。


 


でも慣れていた。


 


かなり。


 


 


「どこかにメモしてませんか?」


 


 


治美。


 


頷く。


 


自信満々に。


 


 


「してる」


 


 


「どこですか?」


 


 


「アプリ」


 


 


「何のアプリですか?」


 


 


「メモアプリ」


 


 


沈黙。


 


 


「じゃあ見ればいいじゃないですか」


 


 


「携帯の充電がない」


 


 


沈黙。


 


 


さらに沈黙。


 


 


タケル。


 


目を閉じる。


 


少しだけ。


 


 


「充電してないんですか」


 


 


「……」


 


 


「治美さん」


 


 


「……」


 


 


「充電してないんですね」


 


 


「充電器が壊れてたの!!」


 


 


即答だった。


 


とても。


 


 


「本当ですか?」


 


 


「……」


 


 


「治美さん」


 


 


「ごめんなさい」


 


 


早かった。


 


謝罪まで。


 


とても。


 


 


「忘れてました」


 


 


「知ってました」


 


 


タケル。


 


即答。


 


 


容赦なし。


 


完全に。


 


 


治美。


 


少し傷付く。


 


 


少しだけ。


 


たぶん。


 


 


「でも大丈夫!!」


 


 


突然。


 


復活。


 


 


「人類には知恵がある!!」


 


 


なかった。


 


この後。


 


全然。


 


 


タケル。


 


指をさす。


 


 


「じゃあ」


 


 


「パソコンから開けばいいんじゃないですか?」


 


 


沈黙。


 


 


治美。


 


停止。


 


 


一秒。


 


 


二秒。


 


 


三秒。


 


 


そして。


 


 


目。


 


輝く。


 


 


「天才」


 


 


「タケルくん天才」


 


 


「知ってました」


 


 


タケル。


 


全然嬉しそうじゃなかった。


 


 


治美。


 


すでに移動。


 


 


パソコンへ。


 


全力で。


 


 


カチカチ。


 


 


カチカチ。


 


 


ログイン画面。


 


表示。


 


 


治美。


 


笑う。


 


勝利を確信して。


 


 


「終わったな」


 


 


何も終わってなかった。


 


 


全然。


 


 


画面。


 


表示。


 


 


『スマートフォンでQRコードを読み取ってください』


 


 


沈黙。


 


 


長かった。


 


かなり。


 


 


治美。


 


読む。


 


もう一回。


 


 


さらにもう一回。


 


 


結果。


 


変わらない。


 


 


当然だった。


 


 


「……」


 


 


「……」


 


 


タケル。


 


横を見る。


 


 


治美。


 


遠い目。


 


 


すごく遠い目。


 


 


「携帯いるね」


 


 


「いますね」


 


 


「絶対?」


 


 


「絶対です」


 


 


「……」


 


 


「……」


 


 


「ふざけてる」


 


 


誰もふざけていなかった。


 


本当に。


治美。


 


椅子へ倒れる。


 


ゆっくり。


 


敗北者みたいに。


 


完全に。


 


 


「メール……」


 


 


「入りたかっただけなのに……」


 


 


人生。


 


うまくいかない。


 


とても。


 


 


タケル。


 


見る。


 


治美を。


 


 


少しだけ。


 


可哀想だと思った。


 


 


少しだけ。


 


本当に少しだけ。


 


 


そして。


 


思い出したように言う。


 


 


「パスワード忘れました」


 


 


沈黙。


 


 


治美。


 


顔を上げる。


 


 


「……」


 


 


「……」


 


 


タケル。


 


頷く。


 


 


「押せばいいじゃないですか」


 


 


世界。


 


開けた。


 


 


一瞬だけ。


 


 


「それだーーー!!」


 


 


治美。


 


復活。


 


 


ものすごい勢いで。


 


 


マウスを握る。


 


 


クリック。


 


 


運命の瞬間。


 


 


だった。


 


 


本当に。


 


 


画面。


 


 


反応しない。


 


 


「ん?」


 


 


もう一回。


 


 


クリック。


 


 


反応しない。


 


 


さらにクリック。


 


 


反応しない。


 


 


沈黙。


 


 


治美。


 


固まる。


 


 


少し。


 


 


いや。


 


かなり。


 


 


パソコン。


 


 


唸る。


 


 


ヴゥゥゥゥゥゥ……


 


 


嫌な音だった。


 


 


とても。


 


 


画面。


 


 


ぴかっ。


 


 


一瞬暗くなる。


 


 


そして。


 


 


停止。


 


 


完全停止。


 


 


マウス。


 


動かない。


 


 


キーボード。


 


反応しない。


 


 


何もかも。


 


 


終わった。


 


 


「……」


 


 


「……」


 


 


治美。


 


ゆっくり振り向く。


 


 


「なんで?」


 


 


タケル。


 


画面を見る。


 


 


そして。


 


治美を見る。


 


 


嫌な予感。


 


 


発生。


 


急成長。


 


 


「何か入れました?」


 


 


「入れてない」


 


 


即答。


 


 


怪しかった。


 


とても。


 


 


「治美さん」


 


 


「入れてない」


 


 


「治美さん」


 


 


「ちょっとだけ」


 


 


あった。


 


やっぱり。


 


 


「何をですか?」


 


 


治美。


 


視線を逸らす。


 


 


露骨に。


 


かなり。


 


 


「セキュリティソフト」


 


 


沈黙。


 


 


タケル。


 


嫌な予感。


 


さらに成長。


 


 


過去最高。


 


 


「どんなやつですか?」


 


 


「えっと」


 


 


「パスワードを守ります!!」


 


 


「個人情報を守ります!!」


 


 


「侵入者を完全排除!!」


 


 


「みたいな」


 


 


タケル。


 


目を閉じる。


 


 


静かに。


 


 


とても静かに。


 


 


「治美さん」


 


 


「はい」


 


 


「それ」


 


 


沈黙。


 


 


長かった。


 


 


かなり。


 


 


「ウイルスです」


 


 


沈黙。


 


 


今度は。


 


治美だった。


 


 


完全停止。


 


 


「……え?」


 


 


「でも守るって」


 


 


「守ってます」


 


 


「え?」


 


 


「治美さんから」


 


 


「え?」


 


 


「治美さん自身から」


 


 


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 


 


立ち上がる。


 


 


勢いよく。


 


 


とても。


 


 


「なんで!?」


 


 


「なんで私を守るために私を攻撃するの!?」


 


 


「知りませんよ」


 


 


「ひどい!!」


 


 


「ウイルスですから」


 


 


正論だった。


 


 


残酷に。


 


とても。


 


沈黙。


 


長かった。


 


とても。


 


 


治美。


 


パソコンを見る。


 


 


じっと。


 


 


とてもじっと。


 


 


パソコン。


 


動かない。


 


 


完全に。


 


 


「……」


 


 


治美。


 


さらに見る。


 


 


パソコンを。


 


 


まるで。


 


 


見つめ続ければ直ると信じる人みたいに。


 


 


実際。


 


少し信じていた。


 


 



 


五秒。


 


 


十秒。


 


 


二十秒。


 


 


結果。


 


 


何も変わらない。


 


 


当然だった。


 


 




 


治美。


 


天井を見る。


 


 


ゆっくり。


 


 


とてもゆっくり。


 


 


そして。


 


 


呟く。


 


 


小さく。


 


 


本当に小さく。


 


 


「……負けた」


 


 




 


タケル。


 


頷く。


 


 


「負けましたね」


 


 


即答だった。


 


 


優しさゼロ。


 


 


完全に。


 


 




 


「私は悪くない」


 


 


治美。


 


反論。


 


 


最後の抵抗。


 


 


小さく。


 


 


とても小さく。


 


 


「そうですね」


 


 


タケル。


 


頷く。


 


 


「ウイルスが悪いですね」


 


 


「そう!!」


 


 


治美。


 


復活。


 


一瞬だけ。


 


 


「私は被害者!!」


 


 


「そのウイルスを入れたのは?」


 


 


「私」


 


 


沈黙。


 


 


復活終了。


 


 


速かった。


 


 


とても。


 


 




 


タケル。


 


立ち上がる。


 


 


眠そうだった。


 


 


かなり。


 


 


「もう寝ます」


 


 


「待って」


 


 


「まだ調査が」


 


 


「もう無理です」


 


 


「でも」


 


 


「おやすみなさい」


 


 


即終了だった。


 


 


容赦なく。


 


 




 


タケル。


 


部屋へ戻る。


 


 


扉。


 


閉まる。


 


 


静かに。


 


 


ぱたん。


 


 




 


治美。


 


一人。


 


 


部屋。


 


暗い。


 


 


静か。


 


 


パソコンだけ。


 


青く光っている。


 


 


不気味に。


 


少し。


 


 




 


画面。


 


 


そこには。


 


 


『パスワードをお忘れですか?』


 


 


その文字。


 


 


表示されたまま。


 


 


動かない。


 


 


全然。


 


 




 


治美。


 


じっと見る。


 


 


数秒。


 


 


さらに数秒。


 


 


そして。


 


 


結論。


 


 


「……嫌い」


 


 




 


パソコン。


 


無反応。


 


 


当然だった。


 


 



治美。


 


机へ突っ伏す。


 


 


力尽きた。


 


 


完全に。


 


 


「ボタン一つ押したかっただけなのに……」


 


 


人生。


 


難しい。


 


 


とても。


 


 



 


目。


 


閉じる。


 


 


少しずつ。


 


 


ゆっくり。


 


 


本当にゆっくり。


 


 


そして――


 


 


大沢治美。


 


 


近所で一番の自称名探偵。


 


 


調査中。


 


 


睡眠。


 


 


開始。


 


 




 


その夜。


 


 


彼女を倒したのは。


 


 


犯人でもなく。


 


 


謎でもなく。


 


 


ウイルスでもなかった。


 


 


大沢治美だった。


 


 


完全勝利。


 


 


自分に対して。





読んでいただきありがとうございます!♡


もしよければ、ポイントを入れていただけると、とても励みになります~!


(´▽`)


キャラクターデザインやイラストはPixivにも投稿しています!

ぜひ遊びに来てください!


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


また次回もよろしくお願いします!♡


 

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