第54話 誰かが違法なものを育てている
【事件】病院に潜入成功!?→なお、開始5秒で撃沈しました
―― 会いたいだけだった。たぶん。本当にたぶん ――
ずっと気になっていた。
ずっと聞きたかった。
だから――
ハルミ、ついに病院へ突撃!!
しかし。
立ちはだかる受付。
厳重な面会拒否。
そして次々と生まれる謎の作戦。
前進しているのか。
後退しているのか。
本人にも分からない。
それでも諦めない大沢ハルミ。
だが――
最後に待っていたのは、
予想外すぎる先制攻撃だった!?
病院より危険な患者がいるかもしれません――!!
病院だった。
大きい。
白い。
静か。
そして。
妙に威圧感があった。
病院というのは不思議だ。
ただ立っているだけなのに。
なぜか。
人生の選択を全部見透かされている気がする。
ハルミ。
病院の前で立ち止まる。
腕組み。
サングラス装備。
誰のものか知らない。
でも格好良かった。
だから使っている。
問題ない。
たぶん。
肩にはバッグ。
高そうだった。
本当に高いのかは知らない。
でも高そうだった。
だから問題ない。
たぶん。
深呼吸。
一回。
二回。
三回。
覚悟完了。
「……」
しかし。
その前に説明が必要だった。
どうしてこの生物がここまで来たのか。
なぜなら。
簡単じゃなかったからだ。
当然である。
大沢ハルミなので。
◇
数時間前。
バシィ!!
顔面。
直撃。
枕だった。
とても。
「起きろーーー!!」
タケルの声。
正確。
冷静。
時間通り。
まるで日本製の目覚まし時計だった。
ハルミ。
目を開ける。
瞬き。
一回。
二回。
そして。
右手を高く掲げた。
天へ。
力強く。
「よっしゃああああ!!」
沈黙。
タケル。
見ていた。
信じられないものを見る目で。
「……」
どうして。
寝起きでそんな元気なんだ。
本当に。
◇
ハルミ。
起きる。
栄養ドリンクを飲む。
強くなった気がした。
無敵だった。
たぶん。
そして。
ソファへ向かう。
ごろん。
寝転がる。
「……疲れた」
早かった。
ものすごく。
◇
その時。
タケル。
皿を持って通過。
ハルミ。
固まる。
目が開く。
大きく。
そして。
思い出した。
「病院ーーーーーー!!」
立ち上がる。
勢いよく。
「今日は日本一冷たい女について調べる日だった!!」
誰のことかは明白だった。
完全に。
◇
そこからは早かった。
着替える。
竜巻みたいに。
サングラス。
たぶん間違えている。
服。
たぶん裏表逆。
でも。
やる気だけは満点だった。
芽衣。
祖父・浩司の畑へ預けられる。
本人は大喜びだった。
まるで国家公認の植物管理官みたいな顔で。
「任せて!!」
と言っていた。
たぶん任せて大丈夫だった。
たぶん。
タケル。
留守番。
ゲームしている気がする。
たぶん。
そして。
心の中で。
ハルミの人生を評価している気もする。
たぶん。
かなり。
◇
そして。
ハルミ。
電車に乗る。
病院へ向かう。
数十分後。
到着。
現在へ戻る。
病院。
ハルミ。
堂々と入る。
口笛。
姿勢完璧。
笑顔完璧。
モード変更。
礼儀正しい一般市民。
とても普通。
たぶん。
受付へ向かう。
そして。
優雅に微笑んだ。
「おはようございます!」
受付。
笑顔で返す。
優しい。
プロだった。
「患者様のお名前をお願いします」
ハルミ。
固まる。
一秒。
二秒。
三秒。
「あっ」
忘れていた。
致命的だった。
ものすごく。
「み、ミズキさんです!」
受付。
待っている。
当然だった。
まだ足りない。
とても。
「……」
ハルミ。
脳内検索開始。
苗字。
苗字。
苗字。
思い出せない。
そして。
適当に言った。
「な、中村さんです!!」
受付。
入力。
カタカタ。
カタカタ。
数秒後。
首を傾げる。
「中村様はいらっしゃいませんね」
ハルミ。
終了。
早かった。
しかし――
「小林ミズキ様ならいらっしゃいますが」
沈黙。
ハルミ。
復活。
ものすごい速度で。
「その人です!!!!」
即答だった。
完全に。
「その人です!!!!」
即答だった。
ものすごく。
受付。
少し驚く。
ハルミ。
続ける。
止まらない。
「旧姓なんです!!」
「中村は旧姓なんです!!」
「いやぁ〜〜〜!!」
頭をかく。
わざとらしく。
ものすごく。
「私って本当に忘れっぽくて〜〜!!」
受付。
納得した。
あっさり。
優しい人だった。
とても。
「なるほど」
「そういうことでしたか」
ハルミ。
心の中。
ガッツポーズ。
大成功。
完全勝利。
まだ何も終わっていないのに。
◇
そして。
ここからだった。
演劇部。
人生で初めて役に立つ。
そんな瞬間が。
「……」
ハルミ。
両手を胸の前で組む。
静かに。
切なく。
遠くを見る。
何もない方向を。
「ミズキさんは……」
受付。
聞いている。
真面目に。
「私にとって……」
一呼吸。
二呼吸。
三呼吸。
そして。
言った。
「とても大切な人なんです……」
受付。
少し揺らぐ。
感情が。
少しだけ。
ハルミ。
続行。
止まらない。
「ずっと会いたかったんです……」
「でも……」
「彼女は面会を断っていて……」
「それでも……」
視線を上げる。
キラキラ。
無駄に。
ものすごく。
「希望は最後まで残ると思うんです……」
受付。
瞬き。
一回。
二回。
三回。
ハルミ。
さらに乗る。
完全に。
「信じる心は……」
「冬でも咲く花みたいなもので……」
沈黙。
受付。
固まる。
少しだけ。
何を言っているのか。
本人も分かっていなかった。
たぶん。
でも。
なんとなく良いことを言っている気がした。
◇
数分後。
受付。
再確認。
カタカタ。
カタカタ。
検索。
検索。
そして。
結果。
「申し訳ありません」
「やはり面会はお断りされています」
沈黙。
ハルミ。
胸を押さえる。
まるで。
悲劇のヒロイン。
完全に。
「そうですか……」
遠くを見る。
存在しない夕日を。
病院のロビーで。
昼間なのに。
「昔から難しい人でした……」
受付。
ちょっと同意した。
実は。
少しだけ。
◇
しかし。
ハルミ。
諦めない。
そんなことで。
絶対に。
「……あの」
受付。
嫌な予感。
急成長。
「はい?」
「無線とか……」
「ありませんか?」
「無線?」
「ちょっとだけ話せれば……」
「ありません」
即答。
早かった。
ものすごく。
◇
ハルミ。
まだ終わらない。
当然だった。
「あの……」
「メモとか……」
受付。
目を閉じる。
数秒。
精神統一。
必要だった。
かなり。
「ありません」
「小さいやつでも……」
「ありません」
「子供たちの未来が――」
「ありません」
「深い感情が――」
「ありません」
「人生が――」
「ありません」
完封だった。
完全に。
◇
ハルミ。
敗北。
ついに。
頭を下げる。
しょんぼり。
ものすごく。
「……分かりました」
「ありがとうございます」
受付。
心から思った。
終わった。
ようやく。
やっと。
しかし。
それは勘違いだった。
大きな。
とても大きな。
勘違いだった。
◇
ハルミ。
階段を上る。
帰るために。
たぶん。
本当にたぶん。
その時だった。
聞こえた。
看護師の声。
上の階。
下の階。
ちょうど間。
完璧な位置。
「ミア!」
「ミズキさん部屋変わったから忘れないでね!」
ハルミ。
停止。
耳。
急成長。
ものすごく。
「えっ!?」
「ついに移動したんですか!?」
「ええ」
「結構時間かかったわね〜」
「まぁあの事件があったからね」
「事件?」
「ほら」
「ドア蹴り飛ばした変な女」
沈黙。
ハルミ。
目を逸らす。
ゆっくり。
とてもゆっくり。
何も聞こえていない顔。
完璧だった。
たぶん。
「ドアまで壊れたらしいわよ」
「怖いわねぇ〜」
「本当に」
ハルミ。
汗。
少し。
いや。
かなり。
◇
そして。
運命の言葉。
看護師。
何気なく言った。
「今は二階の二十一号室よ」
沈黙。
ハルミ。
記憶する。
完全に。
二階。
二十一号室。
二階。
二十一号室。
二階。
二十一号室。
保存完了。
◇
看護師たち。
去る。
ハルミ。
一人。
階段。
静かだった。
そして。
ぽつり。
「……なるほど」
全然なるほどじゃなかった。
でも。
何かを理解した気がした。
とても。
全然なるほどじゃなかった。
でも。
何かを理解した気がした。
とても。
◇
病院の外。
ハルミ。
歩いていた。
ゆっくり。
考えながら。
病院を見る。
思い出す。
前回。
ドア。
キック。
破壊。
騒動。
色々あった。
本当に。
だから。
今回は違う。
成長した。
大人になった。
冷静になった。
たぶん。
「……よし」
深呼吸。
一回。
二回。
三回。
そして。
宣言。
「私は新しい人間です」
「落ち着いています」
「平和主義です」
「進化しました」
数秒後。
パイプを発見。
沈黙。
ハルミ。
上を見る。
二階。
見る。
パイプ。
見る。
二階。
見る。
パイプ。
見る。
脳内。
計算開始。
そして。
結論。
「……二階くらい余裕では?」
全然余裕じゃなかった。
◇
足をかける。
よいしょ。
三センチ上がる。
四センチ滑る。
沈黙。
もう一回。
よいしょ。
二センチ上がる。
五センチ滑る。
さらに後退した。
完全に。
◇
遠く。
警備員。
見ていた。
何か食べながら。
無表情で。
ずっと。
ハルミ。
再挑戦。
滑る。
再挑戦。
滑る。
再挑戦。
滑る。
警備員。
ぽつり。
「……無理だな」
正しかった。
ものすごく。
◇
ハルミ。
敗北。
地面へ戻る。
しょんぼり。
かなり。
しかし。
諦めない。
当然だった。
大沢ハルミなので。
視線を上げる。
庭。
木。
芝生。
花。
鳥。
そして――
閃いた。
「よし」
「プランCだ」
AもBも存在しなかった。
でも。
本人の中ではCだった。
◇
再び受付。
受付。
見た。
帰ったはずの女を。
戻ってきた。
嫌な予感。
再び。
急成長。
「……はい?」
ハルミ。
胸に手を当てる。
演技開始。
第二幕。
「実は……」
震える声。
無駄に。
ものすごく。
「子供たちから電話があったんです……」
受付。
聞いている。
嫌な予感を抱きながら。
「寂しいって……」
「会いたいって……」
「泣いていて……」
受付。
少しだけ罪悪感。
発生。
◇
ハルミ。
畳みかける。
「それで外に出た時……」
「患者さんがお散歩しているのを見て……」
受付。
察した。
全部。
ものすごく。
「……何が聞きたいんですか?」
「その」
「もし」
「本当にもしなんですが」
「ミズキさんがお散歩する時間とか……」
沈黙。
長い。
とても。
受付。
迷う。
職務。
良心。
職務。
良心。
子供。
職務。
子供。
良心。
そして。
負けた。
少しだけ。
◇
「……今日なら」
小声。
とても。
「午後二時です」
沈黙。
ハルミ。
停止。
完全停止。
「……本当に?」
「でも」
受付。
指を立てる。
真面目な顔。
「絶対に無理はしないでください」
ハルミ。
両手を握る。
感動。
大感動。
「あなたは今日」
「たくさんの命を救いました!!」
「違います」
「子供たちの未来が――!!」
「違います」
「幸せが――!!」
「違います」
二人。
少し泣きそうだった。
理由は全然違った。
◇
そして――
時刻。
十三時五十九分。
ハルミ。
茂みの中。
隠れている。
怪しかった。
とても。
十四時。
扉。
開く。
看護師。
出てくる。
そして。
その隣。
ミズキ。
ハルミ。
目が開く。
大きく。
限界まで。
そして。
叫んだ。
心の中で。
「今だぁぁぁぁぁぁ!!」
飛び出す。
勢いよく。
笑顔。
満点。
全力。
そして――
「ミズキさーーーん!!」
パァン!!
沈黙。
ハルミ。
停止。
何か。
顔に当たった。
ものすごく。
勢いよく。
バッグだった。
誰のかは分からない。
本当に。
でも。
敵とはそういうものだ。
どこから来るか分からない。
人生も同じだった。
たぶん。
そして。
聞こえた。
冷たい声。
よく知っている声。
とても。
「帰って」
沈黙。
ハルミ。
立っている。
バッグを顔面に乗せたまま。
完全に。
そして――
そこで終わった。
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