第48話 雨とか聞いてない
―大沢晴美の「静かな朝」は、土砂降りの雨と8人の子供たちによる大混乱に終わった!!―
湖で慌ただしい一日を過ごした翌朝―
タケルは目を覚ますと、完全に誰かに囲まれていた。
ユウはうつ伏せに倒れている。
ソラの手がタケルの顔に当てられている。
腕は誰かの「鎮静剤」として使われている。
身動きが取れない。
一方、晴美は大量の買い物袋を抱えて帰宅途中だった。
そして、盛大に転んでしまう。
しかしその瞬間…
タケルが黙って彼女の代わりに半分の袋を持ち上げてくれた!?
そして、思いがけず
「ありがとう、大沢さん!」
これはただの雨ではなかった。それは「家族のひととき」の始まりの音だった―
どすっ。
健。
起床。
理由。
腹の上に足。
優だった。
「……」
片目開ける。
空。
顔の横で爆睡。
しかも。
手。
顔面に乗ってる。
重い。
最悪。
健。
無言でどかそうとした。
動かない。
なぜなら。
誰か。
健の腕を抱き枕にしてた。
確認。
健太。
「……なんで」
答える者はいない。
全員寝てる。
平和。
いや。
人口密度が終わってる。
健。
天井見つめた。
「……買い出し行くか」
その時。
ガサッ。
ガサガサッ。
音。
大量。
健。
首だけ動かした。
そこにいたのは。
はるみ。
スーパー袋まみれ。
両腕。
限界。
片方落ちそう。
もう片方。
足に当たってる。
しかも。
つま先歩き。
完全に泥棒。
そして。
ズルッ。
「わっ」
壁。
ドン。
ギリ生還。
健。
目見開いた。
はるみも見た。
止まる。
沈黙。
二人。
フリーズ。
そして。
健。
ふっと力抜けた。
少しだけ笑う。
立ち上がる。
袋。
半分持った。
「……ありがとうございます」
小声。
はるみ。
表情。
完全に限界。
“かわいい”
が溢れ出そうだった。
でも我慢。
大人だから。
なお。
心の中。
『いまああああああ!!!』
大暴れ。
数十分後。
家。
完全起床。
ドタドタドタ。
「うわ洗面所混んでる!!」
「歯ブラシどこ!?」
「俺の靴下ぁぁ!!」
戦争。
はるみ。
タオル畳んでた。
その後ろ。
気配。
振り返る。
いた。
八人。
寝起き。
髪ボサボサ。
顔むくみ。
服ぐしゃぐしゃ。
でも。
めちゃくちゃ元気。
芽衣。
はるみの服ちょん。
「はるちゃん」
「みんな起きた」
「見ればわかるねぇ……」
はるみ。
笑った。
その瞬間。
愛子。
一歩前へ。
「お、おはようございます!」
「愛子です!」
「勝手に物とか触りません!!」
沈黙。
はるみ。
吹きそうになった。
「すごい具体的!!」
「よろしくね愛子ちゃん!」
雛。
その後ろで手ぶんぶん。
「ひなです!」
そして。
はるみ見た。
ぽろっ。
「……かわいいです」
静寂。
はるみ。
停止。
顔。
赤。
「えっ」
「えっ」
「えええええええっ!?!?」
抱きしめた。
「ありがとおおおお!!!」
「ひなちゃんもかわいい!!」
雛。
潰れた。
優。
前出た。
「ぼく優!!」
「走るの速い!!」
そして。
転んだ。
ドシャッ。
沈黙。
優。
床。
「……証明完了」
「実演型なんだ」
はるみ。
拍手。
健太。
手上げる。
「健太です」
真顔。
「飯あります?」
その瞬間。
グゴゴゴゴゴゴ。
腹。
全員。
同時。
鳴った。
沈黙。
誰か笑った。
はるみだった。
「はっ――」
「ははっ」
「ダメだこれぇ!!」
全員。
つられて笑った。
家。
朝からうるさい。
でも。
楽しそう。
蓮。
後ろ。
帽子直しながら。
「……蓮です」
「泊めてくれてありがとうございました」
「いいのいいの!」
「楽しかったでしょ?」
その時。
はるみ。
突然思い出す。
「あっ!!」
全員見る。
「きみたち!!」
「宴会の日!!」
「湖飛び込んでた子たちだ!!」
沈黙。
全員。
『今!?』
って顔した。
空。
健の肩組みながら笑う。
「なぁタケル」
「お前ん家おもろすぎ」
「……」
「ていうか」
空。
はるみ見た。
「お前の母ちゃんマジいい人」
はるみ。
固まる。
視線。
健へ。
期待。
超期待。
でも。
健。
視線逸らした。
耳。
赤い。
「……母親じゃない」
小声。
空。
ケラケラ。
「いやわかってるって」
「でもなんて呼べばいいんだよ」
「保護者?」
「ほぼ母ちゃんじゃん」
健。
さらに赤くなる。
終了。
はるみ。
口元押さえた。
危険。
ニヤける。
完全にニヤける。
「よぉぉし!!」
パンッ。
手叩く。
「ごはんもうすぐだから!」
「自由にしててねー!!」
「おおおお!!」
歓声。
そして。
追撃。
「あと制服洗ってあるよー!」
静止。
八人。
止まった。
「……洗った?」
「うん!」
「……全部?」
「うん!!」
沈黙。
なぜか。
ちょっと感動してた。
はるみ。
さらに笑顔。
「その前に」
指差す。
「お風呂ね」
空気。
凍る。
「……風呂」
「……めんど」
「昨日湖入ったじゃん」
「湖は風呂じゃないよ!?」
正論だった。
誰も勝てない。
その時。
空。
突然叫ぶ。
「ホースでいいじゃん!!」
「え?」
「外で洗えば早い!!」
数秒後。
全員。
庭。
移動。
はるみ。
ホース持った。
蛇口ひねる。
ポタ。
ポタ。
そして。
ザーッ。
……じゃなかった。
ゴロゴロ。
空。
見上げる。
「……あ」
空。
暗い。
そして。
ドバァァァァァッ!!
豪雨。
「ええええええ!!」
「うそぉぉぉ!!」
全員びしょ濡れ。
芽衣。
しょんぼり。
「……おふろできない」
沈黙。
その瞬間。
はるみ。
空。
同時。
「雨だあああああ!!!」
顔見合わせる。
笑う。
走る。
庭へダッシュ。
「うおおおお!!」
「冷たぁぁぁ!!」
「きゃあああ!!」
「転ぶぅぅ!!」
泥。
水。
笑い声。
全部混ざる。
はるみ。
両手広げて。
雨の真ん中。
ぐるぐる回ってた。
十七歳みたいに。
全力で。
笑ってた。
その日。
誰も。
未来のことなんか考えてなかった。
ただ。
濡れて。
笑って。
生きてた。
それだけで。
十分だった。
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