第47話 家、人口密度バグる
【あらすじ】
― 大沢はるみ、帰宅したら知らない間に"子ども8人の宿泊施設"になっていた件 ―
疲れ果てて帰宅したはるみを待っていたのは――
静寂? いいえ。
8人の子どもたちが床に転がる、謎の光景。
ユニフォーム。泥だらけの靴。湖の匂い。
あちこちに転がる、夏の残骸。
はるみは瞬きした。
もう一回。
……そうか。
いつの間にか、この家には"居場所"ができていた。
ご飯を食べ、親に電話して、布団をかけて、眠る。
ただそれだけ。
でも――
それだけで、十分だった。
静かで、あたたかい、ある夜の話。
ガララッ。
「ただいまー……」
はるみの声。
死んでた。
仕事帰り。
疲労。
限界。
バッグ置いた。
靴脱いだ。
片方。
変な方向飛んでった。
でも。
もう拾う気力ない。
二歩。
進んだ。
そして。
止まった。
沈黙。
そこにいたのは。
子供。
大量。
床一面。
転がってた。
「……は?」
脳。
停止。
まず。
健。
横向き。
リュック抱いて寝てた。
なぜ。
空。
口開いてる。
完全に力尽きてる。
優。
なんか変な姿勢のまま気絶してた。
絶対寝にくい。
健太。
お菓子のゴミ握ってた。
最後まで食ってた。
女子組。
固まってた。
芽衣。
愛子の足を枕にしてる。
愛子。
普通に寝てる。
強い。
雛。
毛布半分取られてる。
でも起きない。
平和。
はるみ。
瞬き。
もう一回。
まだいる。
現実だった。
部屋。
静か。
聞こえるのは。
寝息。
たまに変な寝言。
あと。
なんか湖っぽい匂い。
土。
汗。
夏。
子供。
全部混ざってた。
はるみ。
ぼーっと見つめた。
そして。
肩の力が抜ける。
小さく。
笑った。
「……そっか」
「友達、できたんだ」
ぽつり。
誰も聞いてない。
でも。
すごく嬉しそうだった。
視線。
玄関へ。
靴。
大量。
泥。
砂。
そして。
制服。
ぐしゃぐしゃ。
はるみ。
静かに拾い始めた。
一枚。
また一枚。
「これ誰の……」
「でっか」
「これ健太くんかな……」
靴下。
片方しかない。
しかも。
全員同じ学校。
混乱。
「絶対あとで戦争になるやつだ……」
でも。
ちょっと楽しそう。
洗濯機。
起動。
ゴウンゴウン回り始める。
家の中に。
静かな生活音が増えた。
その時。
はるみ。
ふと思う。
“……ちゃんと学校行かせなきゃ”
自然だった。
本当に。
自然に出てきた。
「明日、電話しよ」
小さく決定。
そして。
キッチンへ。
冷蔵庫。
開けた。
沈黙。
「……ない」
もう一回見た。
「……ない」
食料。
壊滅。
きれい。
びっくりするくらい。
ない。
はるみ。
遠い目。
「育ち盛りってすご……」
その時。
見つけた。
ラップ。
お皿。
置いてある。
白ご飯。
揚げ物。
あと。
メモ。
字。
妙に丁寧。
『はるみさんの分』
沈黙。
はるみ。
止まった。
じぃぃぃぃん。
って顔した。
そして。
両手で顔覆う。
「なにこれぇ……」
「優しぃ……」
完全にやられた。
そのまま。
立ったまま食べる。
一口。
「……おいしい」
疲労。
ちょっと溶けた。
その後。
ソファへ。
スマホ取り出す。
電話タイム。
「はい、大丈夫ですー」
「みんな寝ちゃってて」
「はい、元気です!」
「すみません、お泊まりになっちゃって……」
一件。
また一件。
親たち。
意外と慣れてた。
『あぁ、また空ですね』
『健太食べすぎてません?』
『優、虫除け撒きすぎてませんでした?』
はるみ。
途中で笑いそうになった。
「……みんな、すごいなぁ」
最後の電話終わる頃には。
もう。
眠気限界。
はるみ。
立ち上がる。
電気。
一個ずつ消した。
そして。
寝てる子供たちに。
毛布かけていく。
空。
蹴飛ばした。
「こら」
もう一回かける。
健太。
寝ながらなんか食ってた。
怖い。
芽衣。
ぎゅって。
毛布掴んだ。
離さない。
かわいい。
最後。
健。
静かに寝てた。
はるみ。
少しだけ。
立ち止まる。
そして。
頭。
ぽん。
「おやすみ」
返事はない。
当然。
爆睡。
でも。
少しだけ。
健の表情が緩んだ気がした。
その夜。
家は。
人でいっぱいだった。
散らかってて。
うるさくて。
洗濯物も多くて。
冷蔵庫も空っぽで。
でも。
不思議なくらい。
あったかかった。
はるみは。
寝室へ向かいながら。
小さく笑った。
「……なんか」
「いいなぁ、これ」
そして。
家が。
静かに軋んだ。
たぶん。
同意だった。
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