第41話 — 運命のニンジン
― 大沢ハルミ、ただの外食のはずが“人生イベント”に発展!? ―
今日は平和な一日……のはずだった。
しかし奇跡が起きる。
ハルミとメイが――早起き。
それだけでも事件なのに、
テンションはなぜかお祭りレベル。
初めての外食に大興奮!
コーディネートに全力!
朝からカオス全開!
そして――
道に迷い、たどり着いたのはまさかの畑。
そこにいたのは、町のレジェンド・ヒロシさん。
記憶を全部持ってる系おじいちゃん。
さらに登場する――
一本のニンジン。
ただのニンジンじゃない。
運命を動かすニンジン。
バイトのお誘い!?
子どもたちの新しい日常!?
これはただのランチじゃない。
未来がちょっと動き出す、
“始まりの一日”!!
その日は、何かが違った。
いや正確には――
違いすぎた。
なぜなら。
奇跡的に。
ハルミとメイが。
早起きしたからだ。
— メイちゃん!起きて! — ハルミが声をひそめているつもりで、全然ひそめずに言った。
— もう起きてる! — メイはクリスマスの朝みたいな勢いでベッドから飛び起きた。
家の反対側では、タケルがすでにテーブルに座り、静かにコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
まるで“引退したおじいちゃんが、なぜか中学生の体に入ってる”みたいな空気。
騒ぎの気配を感じて、顔を上げる。
— …なんで朝7時からそんなテンション高いの。
— だって今日は初めての外食だから!! — ハルミが叫びながら家の中をくるくる回る。
— 初めて!! — メイも一緒に回る。
タケルは新聞を折った。
— ただ外で食べるだけでしょ。
— “ただ”じゃない!! — ハルミがビシッと指をさす。 — これは歴史的イベントなの!!
シャワーは早かった。
でも――服選びは違った。
— このワンピース?
— それ!
— でもこっちは?
— それもいい!
— 合わせてみる?
40分後――
ハルミが現れた。
ふわっとしたロングスカート。
やたら楽しそう。
機能性より気分優先。
メイはショートパンツにカラフルなトップス。
そして完璧すぎるお団子ヘア。
もはや子ども界のファッション神。
二人は見つめ合った。
— おそろいだね!
— いっしょ!! — メイ大喜び。
— 45分かけてそれ?
— スタイルには時間がかかるの!! — ハルミ即答。
そのあとタケルが現れた。
— なんか…君、
— かわいい? — ハルミがくるっと回る。
— …銀行員っぽい。
— えぇぇ。
タケルの服装はシンプルだった。
黒のゆるいパンツ。
白Tシャツ。
下に長袖。
キャップ。
完成済み。
20分前に。
— タケルくん、めっちゃオシャレ!!
— いつもだけど。 — 真顔。
そして――出発。
…のはずが。
— 大沢さん。 — タケルが呼ぶ。 — それ道違う。
— 合ってるよ!心がそう言ってる!
— 心が畑を指してる。
ハルミ、急ブレーキ。
— …あ。
— どうしたの? — メイ
— ヒロシさんの畑だ。
町で一番の古株。
ハルミが子どもの頃から知ってる人。
— ちょっと挨拶だけ! — すでに降りている。
おじいさんが顔を上げた。
— おやおや、ハルミちゃんじゃないか!
そして止まらない。
— マコトくんの娘で、小学校でうちの息子と一緒で、そのあと私の教え子になって、放課後ここ手伝いに来てて、うちの奥さんが先生に頼んで成績下げさせなかったくらい優しい子で――
ハルミ、目が見開く。
— 私です!!それ私です!! — 強引に割り込む。 — お久しぶりです!!
そして――
しゃべる。
しゃべる。
まだしゃべる。
— ヒロシさんお元気そうで!でもちょっとだけ年取りましたね!いやでも変わってないというか――
ヒロシさん、呼吸が危ない。
その時。
グゥゥゥゥゥ。
音。
メイ。
沈黙。
メイ、真っ赤。
— ご、ごめんなさい…
おじいさん、大爆笑。
— お腹すいてるのかい?
土からニンジンを一本引き抜いて、メイに渡す。
— ほら。
メイ、両手で受け取る。
— ありがとうございます!ヒロシさん!
そして――
そのまま食べた。
生で。
— …ウサギだ。 — ハルミが小声で。
— 栄養あるし。 — タケル。
おじいさんが笑う。
— この子たち、君の子どもかい?
— いえいえ違います!! — ハルミ即答。 — ちょっと面倒見てるだけで!
帰ろうとしたその時。
ヒロシさんがしゃがんで、メイの目線に合わせた。
— よかったら、たまにここ手伝ってくれないかい?お小遣いも出すし…野菜もあげるよ。
メイの目がキラキラ。
— やります!!いっぱい手伝います!!
おじいさん、びっくりしてから笑う。
— 気に入ったよ。
頭をなでる。
ハルミは嬉しそうに笑う。
— いいですね!私も昔ここ大好きでした!
タケルが言う。
— お金はいりません。畑に使ってください。でも手伝います。
おじいさん、ちょっと感動。
— じゃあ月曜日においで。サプライズを用意しておくよ。
三人は笑顔で別れた。
そして――
ようやくラーメン屋へ向かう。
メイはまだニンジンをかじっている。
ハルミは軽やかに歩き。
タケルは静かにそれを見ている。
ただの外食。
でも――
どこかで。
何かが、始まった気がした。
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