第37話 ― 隣に住むハンサムな隣人
― ハルミ、人生で初めて本格的なケーキ作りに挑戦(?)→ 結果:キッチンは戦場と化す ―
何気ない近所挨拶のはずが、まさかの「記憶の衝突イベント」に!?
「感情溢れるケーキ」を携えて、ハルミは隣人の家へ!
そこに現れたのは…
ハンサムで、背が高く、落ち着いた雰囲気の男。
そして、ハルミの過去を知りすぎている男。
ハルミが忘れていた幼馴染。
暗く封印された過去。
さらに… ロマンスフラグが無理やり復活!?
これはただの近所訪問ではない。
記憶、友情、そしてちょっとした混乱が一気に蘇る ―
強制的な青春リセットイベントが始まる。
すべては、キッチンの時点で間違っていた。
ハルミは髪をまとめ、
「料理は愛♡」と書かれたエプロンを装備し(皮肉すぎる)、
深呼吸。
— ケーキ作る。
人生で一度も“まともなケーキ”を完成させたことのない人間とは思えない自信だった。
— 人はね、食べ物で感謝するの。私は…その…普通の大人だから…
そして――
笑った。
幽霊が引っ越しを検討するレベルの笑いだった。
キッチン、戦闘準備完了。
混ぜる。
全力。
ボウルが「助けて」と言いそうになる。
傾く。
ほぼ落ちる。
生地、壁にスプラッシュ。
スプーン、空を舞う(一回)。
でも――
生まれた。
ケーキ。
ちょっと歪んでる。
真ん中、沈んでる。
情緒が不安定そう。
でも――
いい匂い。
— できた!!
彼女はそれを掲げた。
まるで生命を創造したかのように。
祈りを込めて、ケーキを抱え――
桜の家へ。
コンコン。
ドアが開く。
そして――
いた。
イツキ。
隣の家の、やたら出来すぎてる男。
高い。
黒髪、ちょい無造作。
落ち着いた顔。
ナチュラル。
そして――
現実離れしたイケメン。
ハルミ、即フリーズ。
イツキは少し首をかしげた。
「ああ、このバグり方、知ってる」みたいな顔。
— おはよう、ハルちゃん。
ハルちゃん。
ハルちゃん。
H A R U ち ゃ ん。
魂、離脱。
月まで一周して帰還。
— お、おはよっ!これケーキでその食べてお願いだから今すぐ受け取ってストレスで全部食べる前に—
落下前に回収。
— 話し方、変わってないね。
脳内:
ERROR
ERROR
認識不可
パニック開始
— ごめん…えっと…私たち、会ったこと…ある?
イツキ、笑う。
半分おもしろがってて、
半分ちょっと懐かしそう。
— 入りなよ。
ハルミ、バグったロボットみたいに入室。
リビング。
桜がすでにお茶を準備していた。
— ハルちゃん、おはよう。ケーキありがとうね。
— いえこちらこそいやあのそのどういう仕組みで—
— 大丈夫よ、きっと美味しいわ。
そっと手に触れる。
その瞬間――
胸が、ぎゅっとなる。
いい意味で。
でも――
イツキがソファに座り、少し身を乗り出す。
— ハルちゃん。ほんとに覚えてないの?
見つめる。
見つめ返される。
思い出そうとする。
全力で。
……無。
— ……髪、切った?
イツキ、爆笑。
やかんが震えた。
— 清水。
— え?
— イツキ。
— は?
— 後ろの通りの。学校の。グループの。君の友達。
心臓:三回転。
脳:古いフォルダ検索中…
…発見。
「ITSUKI — 泣き虫だけどいいやつ」
フラッシュバック:
しょうもないケンカ
ちょっと面倒で過保護で泣き虫な少年
「うるさい!この甘ったれ!」と叫ぶ自分
最悪だった遠足
職員室行き
ゼリー共有
泣く→怒る→また泣く
— ……イツキくん!?
— やっと。
腕組み。
ハルミ、自分の頭を叩く。
— 私、記憶バグの化け物じゃん!!
桜、くすくす。
イツキ、やさしく:
— 急に引っ越したしね。忘れてても普通だよ。
お茶タイム、再開。
ハルミはまだ呼吸が荒い。
イツキが少し柔らかい目で見る。
— 今は…子どもいるんだ。
— “いる”っていうか…一緒にいるだけ。別の行き先が見つかるまで。
イツキ、うなずく。
— それでも十分すごいよ。
ハルミ、視線を落とす。
— いい子たちだよ。メイちゃんは自分の世界あるし…タケルくんは…
少し止まる。
— 優しさを、失う前提で受け取る。
イツキ、静かに言う。
— 君に似てる。
— え?
— 先にいなくなるって思ってるところ。
沈黙。
桜、空気を変えるように写真を持ってくる。
そこには――
小さい頃のグループ。
ぐちゃぐちゃで、笑ってて、
真ん中に――黒沢。
イツキ、写真を見ながら。
— まだ気づいてないんだね。
— 何が?
— ケイ。昔からずっと――今も――君のこと好きだよ。
フリーズ。
完全停止。
桜、拍手。
— やっぱりラブコメカップルよね!あとは事故が足りないだけ!
ハルミ、魂レベルで赤。
— え、え、え!?私!?ケイ!?黒沢さん!?いや違う違う違う!!
イツキ、笑い崩壊寸前。
— あいつ、俺のこと毎日追いかけてきたよ。“彼氏”だからって。
— 彼氏!?!?
— うん。
真顔。
— 夏祭りでお菓子くれたでしょ。あれ告白だから。
— あれは代わりに渡しただけで私たち12歳だったでしょ!?
— 俺13歳。大人の恋愛だった。アイスも分けた。
ハルミ、倒れる。
イツキ、遠い目。
— で、そのあとケイが俺を殺そうとした。
— 何で!?
— 毎日。
「近づくな」
「本気だぞ」
「埋めるぞ」
ハルミ、頭抱える。
— ああ…それっぽい…
桜、大爆笑。
イツキ、ため息。
— ハル…ほんと何も気づかないよね。
ハルミ、そらす。
イツキ、少し優しくなる。
— でもさ、変わったよ。ちゃんと大人になってる。
ハルミ、静か。
— 大変そうだけど、それでもちゃんと立ってる。
少しの沈黙。
— みんなでまた会おうよ。近くにいるし。たぶんもう何回かすれ違ってるよ。
— ありえる…
そのあと、二人で買い物へ。
途中――
— きゃああああイツキ先輩!!
— 今日もイケメン!!
イツキ、目を閉じる。
— 終わらない。
— 終わらないね。
ハルミ、三回つまずく。
イツキ、二回キャッチ。
— 危険人物。
— 重力が敵。
— それも懐かしい。
ハルミ、照れる。
— あんた、泣き虫じゃなくなったね。
— ……まあね。
(変わってない。ただ機会がないだけ)
— その髪!長くない!?
— 高校から伸ばしてる。
そして――
ほんの一瞬。
二人は大人じゃなくて、
ただの昔の子どもに戻った。
同じ記憶の中で、
同じ時間を、もう一度見つけたみたいに。
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