↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
PR
112/113

第112話 任務完了(その間に世界はたぶん燃えていた)

【緊急速報】プレゼント購入に成功した5人、帰宅先が無事かどうか分からなくなりました。

― 奇跡の全員一致、包装の達人、突然切れる電話。それでも恐竜だけは勘弁してほしい!! ―

日曜日。


高く昇った太陽。


少年、五人。


回った店、三軒。


買えたプレゼント、ゼロ。


……ここまでは。


「あそこ」


レンが言った。


こぢんまりした店だった。


行列なし。


「ここから先は未知の領域です」とでも言いたげな気配もなし。


壁一面のラメもなし。


ただの店。


普通の。


プレゼントを売っている店。


五人は中へ入った。


そして。


そこで、ついに。


最初に見つけたのはタケルだった。


足が止まる。


タケルが止まったので、ほかの四人も止まった。


「……何?」


ソラが聞く。


タケルは答えなかった。


ただ、見ていた。


四人もその視線を追う。


そして――


沈黙。


いい沈黙だった。


何かを見つけた時の。


店の奥。


壁際に置かれた、小さな棚。


きれいに並んでいた。


色とりどりの。


ヘアピン。


ヘアゴム。


カチューシャ。


柄のついた靴下。


「……」


ケンタが口を開けた。


「……」


ユウがまばたきをした。


「……」


レンが首をかしげた。


「……」


ソラが黙った。


今日、初めて。


タケルが一歩、近づく。


もう一歩。


ほかの四人も、自然についていった。


まるで五人で一つの生き物になって、重大な決断を下したみたいに。


棚の前まで来る。


見る。


そして――


確信した。


説明はいらない。


議論もいらない。


大声で主張する必要もない。


ただ、そうだと分かる。


あの確信。


「……これだ」


タケルが言った。


異論はなかった。


ソラからさえも。


選ぶ時間は、驚くほど穏やかだった。


今日、一番。


「これ」


タケルが手に取ったのは、青いラメ入りのヘアピン。


二個セット。


先端には、小さな黄色い星。


小さくて。


ぴったりだった。


「あと、これ」


ユウが靴下を指さした。


片方。


もう片方。


一足。


紫色の大きな鍋。


笑っているゼリー。


きらきらした二つの目。


そんな絵柄だった。


「『ピポとゼリーのほし』じゃん!!!」


ソラが、ささやき声で絶叫した。


目は喜びでまん丸。


「メイちゃんが見てるやつだ」


ケンタが確認する。


「誕生日会のテーマも、それ」


レンが続けた。


「完璧だな」


タケルが言った。


そこでソラが、ヘアゴムを見つけた。


一つだけ。


表面に凹凸があって。


きらきらしていて。


ピンク色。


ソラはそれを指二本でつまむと、厳かに四人へ差し出した。


秘宝でも献上するような顔で。


「諸君」


敬意に満ちた沈黙。


「……買おう」


ユウが言った。


「採用」


ソラがうなずいた。


レジで。


店員は商品を見た。


五人を見た。


もう一度、商品を見た。


「こちらは……?」


「プレゼントです」


タケルが答える。


「誕生日の」


ケンタが付け足す。


「絶対、喜びます」


ソラは胸に手を当てて断言した。


店員は一秒ほど黙った。


それから、にこり。


この光景がかわいくて仕方ないけれど、口には出さない。


そんな笑顔。


「かわいいですね」


出した。


「知ってます!!」


ソラが答えた。


かわいいと褒められて、感動していた。


うれしかった。


タケルは目を閉じた。


店を出る。


顔に日差し。


手には袋。


任務完了。


しばらくは、ただ歩いた。


黙って。


何時間も苦しんだ末に、ようやく向こう岸へたどり着いた者たちの。


満ち足りた沈黙だった。


そこへ――


「なあ」


レンが言った。


全員が見る。


「……そのスーパーの袋みたいなので渡すのは、やめた方がよくない?」


沈黙。


「え、なんで?」


ケンタ。


「この立派な袋に何か文句でもあるのか、レン!?」


ソラが袋を掲げた。


トロフィーのように。


「女の子は、そういうの喜ばないだろ」


沈黙。


全員がレンを見た。


ゆっくりと。


あの顔で。


「……」


ソラ。


「……」


ユウ。


「……」


ケンタ。


「……」


タケル。


「……レンが」


ソラが口を開いた。


「女心を語ってる」


「新展開!!」


ケンタ。


「生まれつきのモテ男か!!」


ユウ。


「誰か記録しとけ」


ソラ。


「俺には――」


「何も言うな」


レンが先回りして止めた。


「何!? お前には何がいるって!?」


ソラが食いつく。


「何でもない」


「好きな子いるの!?」


「そんなこと言ってない」


「顔に書いてある!!」


「普通の顔してるだろ」


「隠し事してるやつの普通の顔だ!!」


タケルがレンを見る。


レンがタケルを見る。


そしてタケルは、どこまでも落ち着いた声で言った。


「姉ちゃんがいるんだよ」


沈黙。


レンが目を閉じた。


「……ありがとう、タケル」


「どういたしまして」


「皮肉だからな」


「知ってる」


「姉ちゃん!?」


ソラが復活した。


「お前、姉ちゃんいるのに一回も言わなかったの!?」


「話すことないだろ」


「山ほどあるだろ!!」


「例えば?」


「名前とか! 年とか! 俺のことどう思ってるかとか――」


「お前の存在を知らない」


「……それは話が変わってくるな」


ユウがレンの肩をたたいた。


「まあ、ラッピングに詳しい理由は分かった」


レンは黙った。


それから。


「……三年連続で、姉ちゃんのプレゼント包まされた」


ケンタが、敬意を込めてうなずく。


「苦労は人を育てるんだな」


この問題を解決したのは、ソラだった。


当然のように。


二軒の大きな店に挟まれた、小さな店の前で足を止める。


木の看板。


窓辺の造花。


店の中では、白髪のおばあさんが籠を整理していた。


時間なら、いくらでもある。


そんな落ち着いた手つきで。


「おばちゃーん!」


ソラが入っていく。


自分の店みたいに。


四人も、何も分からないまま続いた。


おばあさんが顔を上げる。


眼鏡を直す。


「ああ、ソラくん。どうしたの」


「プレゼント買った!」


ソラは誇らしげに、袋をカウンターへ置いた。


「なんか、かわいいラッピングない?」


おばあさんは袋を見た。


少年たちを見た。


また袋を見た。


何も言わず、引き出しを開ける。


取り出したのは、小さなラッピング。


ピンクと白のしま模様。


リボンもついている。


それをソラの手に載せた。


「ほら」


「いくら!?」


「いいから行きな」


「おばちゃああん――」


「ほら、行った行った」


しっしっ、と手を振る。


ソラはラッピングを胸に抱いた。


目がきらきらしていた。


「大好き」


「知ってるよ。ほら、出た出た」


五人は店を出た。


おばあさんは籠の整理に戻った。


ケンタがラッピングを見る。


「……ソラ、秘密のおばあちゃんいたんだ」


「俺のばあちゃんじゃない」


ソラが言った。


「完全に孫への対応だったけど」


「……」


長い間。


「俺のばあちゃんです」


帰り道の広場で、五人はプレゼントを包んでいた。


ソラは集中して、舌をちょっと出している。


ユウはリボンを持つ。


ケンタは紙を折ろうとする。


レンは黙って、全部直す。


タケルは見ていた。


「……曲がってる」


タケルが言う。


「完璧だろ」


ソラ。


「斜めになってる」


「そういうデザイン」


「違う」


「現代アート!!」


「貸して」


レンが受け取った。


全員が自動的に下がる。


三十秒後――


完璧。


しわなし。


左右対称。


リボンは真ん中。


一同、感嘆の沈黙。


「……三年分の苦労」


ユウがつぶやいた。


「無駄じゃなかったな」


ケンタもうなずく。


ブブッ。


ユウの携帯が震えた。


画面を見る。


表示は。


【母さん】


電話に出る。


「もしも――」


『ユウくーん!! 今、何時だと思ってるの!?』


そして。


電話の向こう。


さらに、その奥から。


二つの声。


幼くて。


大きくて。


同時だった。


『ママ!! ママ見て!! ママ、これ見て!! お願い、ママ見て!!』


『ママあああ――』


『二人とも!』


ユウの母が何とか言う。


『ちょっと待っ――』


『ママこっち見て!!』


『ママ!!』


『今――』


全員に聞こえた。


スピーカーにしていないのに。


「えっと……」


ユウが口を開く。


『ユウくん、今すぐみんなで大沢さんのおうちに戻って! もう――』


ブツッ。


沈黙。


ユウが携帯を見る。


通話が切れていた。


まばたき。


「……妹たちが、母さんの電話の線切った」


沈黙。


タケルがユウを見る。


「聞こえた」


「……」


「行こう」


タケルはもう歩き出していた。


四人が走って追いかける。


十時五十八分。


少年、五人。


全力疾走。


「なあ、ハルちゃんち、火事にでもなったのかな!?」


ケンタ。


「あり得る」


タケルは足を止めない。


「あのでっかい庭に、宇宙人が着陸したとか!?」


ソラ。


「あり得る」


「黒沢が――」


「あり得る」


言い終わる前に、タケルが切った。


「まだ最後まで言ってない!!」


「言わなくても分かる」


息の上がった沈黙。


「庭に恐竜でも出た?」


レンが、抑揚のない声で言った。


「あり得る」


タケルは即答した。


ケンタがレンを見る。


「お前までそういうこと言うとは思わなかった」


「長い一日だったから」


通りの先に、ハルミの家が見えてきた。


外からは、いつもどおり。


煙なし。


宇宙人なし。


少なくとも、見える範囲に恐竜もなし。


ただ――


「中、騒がしくない?」


ユウが言った。


「いつもだろ」


ソラ。


「いつもより」


タケルが窓を見る。


影が、さっと横切った。


もう一つ。


くぐもった笑い声。


キッチンの方からは、明るくて大きな声。


明らかに、ハルミの声ではなかった。


門の前で足を止める。


四人も、その後ろで止まった。


「……で」


ケンタがつぶやく。


「俺らがいない間に、何があったわけ?」


沈黙。


タケルが息を吸う。


門を開けた。


「確かめるしかないだろ」


そして、五人は中へ入った。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!

(*´꒳`*)


皆さまが読みに来てくださること、そして応援してくださることが、本当に嬉しいです!


よかったら、絵文字で今回の感想を教えてくださいね!

★で応援していただけたら、さらに大喜びします!!

ヽ(>∀<☆)ノ


いつも温かい応援を、本当にありがとうございます!

次のお話でも、もっと楽しんでいただけますように!


それでは、また次回お会いしましょう~!!

(。・ω・。)ノ♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。