第111話 プレゼント選び会議、全員そろって大失敗!?
【緊急速報】男の子5人、プレゼント購入前にまさかの財政危機!? ピンクだらけの店内で大混乱!!
― 所持金の計算すらできない!? ぬいぐるみもワンピースも却下され、メイちゃんへのプレゼント選びは難航中!! ―
日曜日。
太陽が昇っていく。
五人の少年が、当てもなく歩いていた。
「そろそろ決めないと」
タケルは、もう少し疲れていた。
「もう決まったじゃん」
ソラが答えた。
「何も決まってない」
「ピンクの物を買うって」
「それは決まったって言わない!」
沈黙。
五人は道の途中で立ち止まった。
輪になった。
真剣な時間だった。
非常に、真剣だった。
「……まず、いくらあるか確認しよう」
レンが言った。
厳かな沈黙。
全員がうなずいた。
そして。
混乱が始まった。
いや、史上最悪の金勘定が始まった。
五人は輪になったまま、ポケットに手を入れた。
「俺は、これ」
タケルが硬貨とお札を一枚出した。
少ない。
とても少ない。
「……はい」
ケンタも出した。
少し多かった。
それでも、悲しい状況だった。
ユウは、お札を一枚出した。
きれいで。
折り目もなく。
威厳のある、一枚だった。
「……」
「……金持ち」
ソラがつぶやいた。
「貯めたんだよ」
「ブルジョワ」
「黙れ」
そして。
ソラ。
手を開いた。
そこには。
じゃらじゃらじゃらじゃらっ。
硬貨しかなかった。
大量の硬貨。
本当に、大量だった。
「……うわ」
レンが言った。
「俺、全部取っておくんだ!」
ソラは誇らしげだった。
「これ、いくらあるの?」
沈黙。
「……数えよう」
タケルが決めた。
間違いだった。
重大な間違いだった。
「五枚ずつ分けて!」
「どれが五円!?」
「これ!」
「それ違う!」
「じゃあ、どれ!?」
「知らない!」
「ケンタの手に置いて!」
「分かった、ちゃんと手に――」
「それ、ユウの左手!」
「こっちは俺の手!」
「じゃあ、ケンタくんの手はどこ!?」
「反対側!」
「俺、手は二本あるんだけど!」
「全員、二本ある!」
「それじゃ分かんない!」
硬貨が落ちる。
数が分からなくなる。
三度目を数え直している者。
諦めた者。
「全員、黙って!」
沈黙。
荒い息。
「……いくらだった?」
ユウが尋ねた。
沈黙。
「……たぶん、三」
ソラが答えた。
「三、何!?」
「知らない!」
結論。
お金は少ない。
けれど。
「何かは買えるだろ」
ケンタが言った。
「買えるよ。飴一個。五人で分ければ」
レンが認めた。
「黙って、レンくん!」
ようやく店を見つけ、中へ入った。
第二の間違いが、始まろうとしていた。
入った瞬間、甘い匂いがした。
「女の子……この店、女の子の匂いがする!」
ソラは幸せそうだった。
少し、顔も赤かった。
「ずいぶんカラフルだな」
「いや、ほとんど全部ピンクだけど」
「ピンクって、こんなに種類あったんだ……」
全員で、沈黙。
「……未知の領域だな」
ケンタがささやいた。
「普通にして」
タケルが答えた。
「普通にしてる」
「してない」
ソラは、店員を探して店内を歩いていた。
その時、一人が小さなクマを見つけた。
そのクマだけのために用意されたような、ガラスケースの中にいた。
小さくて。
かわいくて。
上品で。
いい匂いがして。
ピンクだった。
「……メイちゃん、好きそう」
タケルが言った。
「じゃあ、買おう」
ユウが答えた。
「……」
タケルは考えた。
考えた。
さらに、考えた。
「……やっぱり、違うかも」
「何で!?」
「似たのを、もう持ってる」
沈黙。
「……だから何!?」
ソラ。
「好きってことだろ!」
ケンタ。
「違う、もう持ってるってこと!」
「だから、喜ぶんだろ!」
「違う!」
「そう!」
「違う!」
「そう!」
「タケルくんが正しい!」
ソラが、タケルをかばおうとした。
「ソラは黙って!」
ほかの四人が、同時に叫んだ。
「ひど……」
ソラは、店員の隣にいた。
すぐに、捨てられた子犬の顔になった。
「見ました? お姉さん……いつも、俺にこうなんですよ……」
「まあ、かわいそうに……」
店員は、手伝おうとした。
「その女の子が、もう似たクマを持っているなら……」
(こんなに高いもの、本当に持っているのかしら……)
「ほかの商品を見てみてもいいかもしれませんね!」
「お姉さんの話、聞いたよね?」
ソラが妙な顔で言った。
「わ、分かった!」
「は、はい!」
「ちぇっ、面倒くさいな……」
その店での結論。
帰る。
そして、どうしても帰りたがらないソラを、髪を引っ張って連れ出す。
「嫌だあっ!」
「またお越しください!」
店員は笑顔で見送った。
五人は、次の店へ向かった。
少し先に、見るからに女の子向けの店があった。
ピンクとオレンジ。
壁にまで、きらきらした飾り。
けれど、いちばん目を引いたのは、そこではなかった。
入口に続く、長い列。
並んでいるのは、女の子ばかりだった。
「何か、安くなってるんじゃない?」
「行こう!」
「列、すごく長いけど!」
どうやら特定の商品を買う人の列らしく、店内には普通に入れた。
「ふむ、ふむ……こっちの方が、もっと女の子らしい匂いがする……!」
ソラが匂いを評価していた。
「ソラくん、ちゃんとして!」
ユウには、かわいくて繊細な物を見つけるレーダーがあるらしかった。
黄色い花柄のワンピースを見つけた。
「皆、これ見て!」
「すごいな、ユウくん。女の子が好きそうな、かわいい物を見つけるの、上手だね!」
ユウは誇らしくなった。
「当然。あの子たちを理解するために、かなり勉強したから」
「女の子は、それくらい真剣に研究する価値がある!」
何もしていないソラまで、誇らしげに言った。
「妹たちの話だけど」
ユウは、今でも自分を苦しめる何かを思い出したようだった。
「あいつらのことを理解できなかったり、反対したりすると……」
劇的な間。
「俺が終わる」
「うん。それは疑ってない」
「誰かさんが、塀を越えようとしただけで、武器を持ち出すのを見たからね」
タケルは、明らかにソラへ言っていた。
ソラは目をそらした。
タケルの怒りに反論できる材料は、何もなかった。
「よし! このワンピースはどう?」
ユウが提案した。
「ふむ……ふむ……ふむ……」
専門家のソラが、分析していた。
「いいと思う。メイちゃん、こういうのは何着も持ってるし、もう一着くらいなら――」
「別に変わらない?」
レンがタケルの言葉を引き取った。
「もう持ってるなら、何でまた同じようなのを買うの?」
「でも、何着も持ってるのは、好きだからだろ?」
ケンタが言った。
「それもそうだけど、女の子は同じような物を嫌がるっていうし」
ユウが言った。
「ああ、もう、女の子って面倒くさい!」
ソラが突然叫んだ。
「ソラ、黙って!」
「分かった。じゃあ、メイちゃんの好みらしい、そのかわいいピンクと黄色のワンピースは買わないんだね」
黄色い生地に、ピンクの花が咲いていた。
ちなみに、皮肉ではなかった。
「そう! 別の物を買おう!」
こうして、五人の任務は、かわいいワンピース一枚では終わらなかった。
まだまだ、先へ続くのだ。
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