第107話 計画的な大惨事の始まり
【全国緊急ニュース!!】午前8時、大沢家に武装集団出現!? 目的はまさかの誕生日パーティー!!
――グルーガン装備! 大量の荷物! 謎の作戦書! そして塀から侵入する少年まで!? 一見すると大事件! しかし全員の目的はただ一つ――芽衣ちゃんを最高に喜ばせること!!――
チャイムが鳴った。
一回。
二回。
三回。
しつこく。
でも、タケルを起こしたのは、それではなかった。
家だった。
家が。
うるさかった。
「……ん……?」
枕に半分埋もれたまま、ゆっくり目を開けた。
その時。
バンッ。
戸棚の扉。
ブイイイイイイ。
ミキサー。
大音量の音楽。
誰かが走る音。
何かが落ちる音。
「……何……」
タケルが起き上がった。
まだ、頭がぼんやりしていた。
廊下へ出る。
そして、止まった。
ハルミ。
あっちへ。
こっちへ。
走り回っていた。
適当にまとめた髪。
いつもとは違う服。
箱を、いっぱい。
物を、いっぱい。
元気を、いっぱい。
「おはよう、タケルくーーーん!!」
陽気な竜巻みたいに、横を通り過ぎた。
何かを運びながら。
飾りみたいな。
食べ物みたいな。
あるいは、その両方みたいなもの。
タケルは、立っていた。
見ているだけ。
一回、瞬いた。
二回。
「……これには、まだ朝が早すぎる」
ピンポーン。
また、チャイム。
「今、行きまーーーす!!」
ハルミが、もう一度横を通り過ぎた。
危うく、カラフルなリボンまで巻き込みながら。
勢いよく、ドアを開ける。
そして。
光。
想像上の、劇的な風。
二人が、いた。
「来たよ」
イズミが言った。
世界を救いに来た人の、堂々とした姿勢で。
「作戦開始ね」
サイコが続けた。
グルーガンを、銃みたいに構えて。
沈黙。
タケルが瞬いた。
ハルミも瞬いた。
なぜなら。
二人は、武装していた。
おしゃれな布バッグ。
手首に結んだリボン。
イズミの手には、巨大なファイル。
サイコの頭には、テーマに合わせたカチューシャ。
「……二人とも、なんか……」
ハルミが、言いかけた。
「準備万端」
サイコが言った。
「覚悟もできてる」
イズミが言った。
沈黙。
ハルミが、後ろを見た。
すでに、物だらけの家。
いっぱい。
満杯。
物が、あふれそうだった。
そして、二人へ向き直った。
「……物、多すぎない!?」
「何言ってるの」
サイコが、肩をすくめた。
「車に、まだあるよ」
「まだあるの!?」
二人は、入ってきた。
自分の家みたいに。
ここが、作戦本部みたいに。
もしかしたら。
そうなのかもしれなかった。
タケルが、頭をかいた。
「……嫌な予感しかしない」
どすっ。
庭から、音。
すぐには、振り向かなかった。
目を閉じただけ。
「……そりゃ、するよな」
「タケルーーーー!!」
ソラ。
塀を、越えていた。
また。
朝八時に人の家へ侵入することが、ごく普通みたいに。
家の横を、走ってきた。
「タ、タケルくん!!」
「何してるの、ソラ?」
サイコが、ゆっくり振り向いた。
「……聞くところ、そこじゃない」
イズミが、腕を組んだ。
「聞くべきなのは、どうして塀を越えたのかでしょ」
「タケルくん!」
ソラが、縁側へ現れた。
危うく、滑りかけながら。
「みんな呼んで、妹のプレゼント買いに行こう!!」
タケルが、ため息をついた。
でも。
今回は。
「……確かに、そうだね」
顔を、手でこすった。
「プレゼント、忘れてた」
「俺は忘れてない!!」
ソラが、自分を指さした。
誇らしげに。
「すごいね」
「知ってる」
「着替えてくる」
「行ってこい!」
タケルが、いなくなった。
ソラは、残った。
そして。
ゆっくり、台所へ顔を向けた。
そこには、今日の次の課題があった。
ハルミ。
イズミ。
サイコ。
コーヒーを飲んでいた。
大きな声で話していた。
謎のパンを食べていた。
何も起きていないみたいに。
「……お姉さんたち、おはよう――」
ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ。
サイコの、笛。
魂へ、直撃。
ソラが、固まった。
「静かにしなさい、変な子!」
「うわああ、月城せんせ――」
ピイイイイイイイイイイイイ。
「ここでは、あなたの先生じゃありません!あなたなんて、見たこともない……」
「ちょっと、サイコちゃん!!」
ハルミが笑った。
「朝ご飯が欲しいだけでしょ!ソラ、パン食べる?」
「食べる!!」
「そこから取って!」
「ありがと、俺の一番好きなお姉さん、大沢さーーーん!!」
ソラが、パンを取った。
振り向く。
サイコへ、舌を出した。
サイコが、目を見開いた。
憤慨して。
「あんた――」
「黙って、ソラくん」
タケルが、入口に現れた。
もう、準備ができていた。
「行こう」
「今、行く!!」
ソラが、最後に大げさに手を振った。
「じゃあね、お姉さんたち!!」
「どこに行くの!?」
ハルミが聞いた。
「平和のある方へ――」
タケルが、言いかけた。
「メイちゃんのプレゼント、買いに行く!!」
ソラが、上から叫んだ。
「十一時までに帰ってきてね!!」
バンッ。
ドアが、閉まった。
沈黙。
一秒。
二秒。
また、音楽が部屋を支配した。
テレビでは、ニュースが一人で話し続けていた。
鳥が、鳴いていた。
そして、遠くから。
「うわああ、寒ーーーい!!」
「叫ばないで、ソラ!!」
ハルミが、笑った。
振り向く。
二人を、見る。
深呼吸。
一年で一番にぎやかな一日は。
まだ、始まったばかりだった。
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それでは、また次のお話で!♡




