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ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家庭内混乱マニュアル:初心者版!
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第105話 作戦:男子の尊厳を粉砕せよ

【緊急速報】玄関に猛獣出現!? 迎え撃つのは美容パック中の男子二名!!


――突然のチャイム! 開かれた扉! そこにいたのは巨大なネコ科動物を抱えたイツキ! 絶体絶命の二人をよそに、サイコ先生だけが大歓喜!?――


居間は。


妙に、静かだった。


タケルとソラは、ソファに沈んでいた。


スパに敗北した人たちみたいに。


足は、ローテーブルの上。


頭は、後ろへ。


目は、半開き。


顔全体を覆う、クレイパック。


目の上には、きゅうり。


髪には、縛りつけられたビニール袋。


爪は。


驚くほど、綺麗だった。


息をするだけでも、難しい。


話すとなると?


不可能。


タケルが、ゆっくり唇を動かした。


「……」


音は、出なかった。


ソラが、返事を試みた。


「……」


何も、出なかった。


本当に。


何も。


美しさの、代償だった。


どうやら、このクレイパックは。


話すことも。


息をすることも。


生きることも。


難しくするらしい。


静寂。


くつろぎ。


平和。


そこへ。


ピンポーン。


二人が、目を開けた。


ゆっくり。


沈黙。


ソラが、ドアを指さした。


「……」


タケルが、首を振った。


「……」


だいたい、訳すと。


『お前が行け』


『死んでも嫌だ』


『早く行け』


『死んだ方がマシだ』


もう一度、チャイム。


ピンポーン。


沈黙。


タケルが、ため息をついた。


立ち上がる。


足を、引きずって。


顔のパックが、ひび割れていた。


髪には、袋。


手には、きゅうり。


ドアを、開けた。


そして。


固まった。


外にいたのは、イツキ。


無表情。


その手には。


首の後ろをつかまれた、巨大な動物。


普通の飼い猫みたいに。


でも。


絶対に。


普通の飼い猫では、なかった。


ネコ科。


大きい。


巨大な、足。


捕食者の、目。


重そうな、体。


しかも。


生後二か月。


サイコによれば。


その動物が、頭を上げた。


家の中を、まっすぐ見た。


全員の、魂の奥まで。


沈黙。


ソラが、青ざめた。


タケルも。


二人が、まったく同じことを考えた。


『……ここで死ぬんだ』


イツキが、二人の反応を見た。


それから、落ち着いて言った。


「ここで死んだら……悲惨だな」


ソラが、即座に両手を合わせた。


「小さなリズちゃん……どうか、お慈悲を……」


イツキは、ソラを見ていた。


「その顔のことを言ってるんだけど」


ソラが、瞬いた。


「……え?」


イツキが、指さす。


顔に、クレイパック。


髪を包む、ビニール袋。


綺麗に整えられた、爪。


美容サロンの幽霊みたいだった。


「顔にそれ全部つけたまま、死んでるところを見られるんだぞ。想像してみろよ。笑えるだろ」


ソラは、魂が抜けるのを感じた。


その前で。


タケルは、ただ動物を見ていた。


無言で。


リズが、首を傾げた。


全員を、観察する。


沈黙。


重い、沈黙。


そこへ。


「リズちゃーーーーん!!」


サイコが、走ってきた。


動物へ、飛びついた。


首を、抱きしめる。


巨大なネコ科の表情が、一瞬で変わった。


命を奪う、捕食者から。


甘えん坊の、猫へ。


サイコへ、頭をすり寄せた。


ごろごろと。


喉を、鳴らして。


サイコは、その顔をむぎゅっと挟んだ。


「あああ、私の愛しい子!!可愛い可愛い、私の宝物!!ママ、会いたかったよーーー!!」


イツキは、立っていた。


「……」


あの怪物を。


二十分も、運んできた。


ありがとうの、一言もない。


居間にいた全員が。


イツキと、同じ顔になっていた。


半分閉じた目。


まっすぐな口。


何とも言えない、あの顔。


そこで、ようやく。


サイコが、イツキを見た。


「ありがと、イツキくん!」


リズを、抱き上げた。


物理的には、不可能に見えた。


でも。


抱き上げた。


「一緒に行こうね、私の赤ちゃん!」


サイコが、ハルミへ顔を向けた。


別れを告げるために。


「じゃあね、ハルミちゃん!!明日、朝早くにチャイム鳴らすからね!!」


男の子たちにも、手を振った。


そして、帰っていった。


ドアが、閉まった。


でも。


サイコとイツキの。


ぶつぶつ言い合う声と。


言い争う声は。


まだ、聞こえていた。

読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡


もしこの作品で少しでも笑顔になっていただけたら、★で応援していただけると、とっても嬉しいです!


皆さんからいただく評価は、

「もっともっと面白い作品を作りたい!」

と思える大切な励みになっています


(´▽`)


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また次回もよろしくお願いします~!!♡♡


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