第101話 穏やかで、ごく普通の午後
【悲報】女子三人、「静かに遊ぶ」という概念を知りません。
――ゲームで大転倒。テレビで三人そろって号泣。髪を結んだら、次はお菓子作り。何でもない午後なのに、三人集まるだけで全部がちょっとした大事件です。――
家の中。
静か。
窓から。
やわらかい日差し。
キッチンからは。
できたてのおやつの。
いい匂い。
そして。
リビングの床。
カラフルな。
マット。
その上には。
三人の女の子。
現在。
全力で。
転ばないように。
頑張っていた。
ヒナ。
ルーレット。
くるっ。
そして。
「足!」
「青ぉぉぉ!!」
アイコ。
「もう青ないんだけどぉぉぉ!!」
体。
ぐらぐら。
今にも。
転びそう。
ヒナ。
「何とかして!」
「ルールはルール!」
「無茶言わないでよ!!」
アイコ。
足。
ぐぐぐぐっ。
伸ばす。
あと少し。
もう少し。
その時。
ぐらっ。
「わっ!!」
メイの方へ。
倒れかける。
「ちょっとぉぉ!!」
メイ。
笑いながら。
必死に。
バランス。
維持。
「倒れるなら!」
「あっちに倒れてよ!!」
「重力は!」
「私の言うこと聞かないの!!」
ヒナ。
もう。
だめ。
笑いすぎて。
お腹。
押さえている。
そして。
アイコ。
奇跡的に。
足。
青。
到達。
「できたぁぁぁ!!」
ただし。
その状態。
約。
〇・五秒。
次の瞬間。
どさっ。
三人。
まとめて。
床。
「……」
沈黙。
一秒。
二秒。
そして。
「……ぷっ。」
「あはははははは!!」
「無理無理無理!!」
三人。
大爆笑。
お腹。
痛い。
息。
できない。
それくらい。
笑った。
メイ。
床に転がったまま。
宣言。
「もう終わり。」
「私。」
「正式に。」
「運動神経ない。」
アイコ。
床に座る。
姿勢。
なぜか。
堂々。
「私はあるよ。」
「ただ。」
「使わないだけ。」
ヒナ。
「さすがボス。」
「転んでもボス。」
アイコ。
「ふふっ。」
笑った。
こういうの。
好きだった。
みんなで。
ふざけて。
笑って。
何も。
考えなくていい。
ここでは。
それが。
簡単だった。
そして。
少しして。
三人。
今度は。
ソファ。
ぎゅうぎゅう。
一枚の毛布。
三人で。
共有。
真ん中には。
スーパーで買った。
大きな。
ポップコーン。
テレビ。
番組。
放送中。
いつから。
こんなに。
感動的な話になったのか。
誰も。
分からない。
でも。
現在。
メイ。
目。
うるうる。
「……帰ってきた……。」
ヒナ。
すでに。
鼻。
すすっ。
「だから言ったじゃん……。」
「絶対。」
「帰ってくるって……。」
アイコ。
耐える。
まだ。
耐える。
大丈夫。
泣かない。
泣か――
テレビの中。
その人が。
お母さんを。
ぎゅっ。
抱きしめた。
「……」
アイコ。
「あぁぁ……。」
「それはダメ……。」
声。
すでに。
震えていた。
五秒後。
三人。
号泣。
ただし。
静かに。
「……」
ティッシュ。
一枚。
ヒナへ。
もう一枚。
メイへ。
もう一枚。
アイコ。
自分用。
メイ。
「こういう……。」
「綺麗な話……。」
「嫌い……。」
ヒナ。
「私も……。」
鼻。
すすっ。
「でも……。」
「好き……。」
アイコ。
何も言わず。
こくっ。
クッション。
ぎゅっ。
三人で。
一緒に泣くのも。
なんだか。
悪くなかった。
番組。
終了。
部屋。
静か。
でも。
嫌な静けさではない。
ふわっとした。
落ち着く。
そんな。
沈黙。
その時。
ヒナ。
突然。
「ねえ。」
「髪。」
「やってあげる。」
メイ。
「私の?」
「うん。」
ヒナ。
にやっ。
「ボスには。」
「ボスにふさわしい。」
「髪型が必要だから。」
アイコ。
腕を組む。
考える。
ふり。
一秒。
「よぉぉぉし!!」
「許可する!!」
メイ。
「なんでアイコが許可するの!?」
アイコ。
「ボスだから。」
「関係ないでしょ!!」
三人。
また。
笑った。
メイ。
床。
ちょこん。
背中。
ヒナの方へ。
ヒナ。
髪。
少しずつ。
丁寧に。
分けていく。
アイコ。
横から。
じーっ。
「……」
「なんか。」
「すごいプロっぽい。」
ヒナ。
「当然。」
「私。」
「お泊まり会ヘアアレンジの。」
「専門家だから。」
アイコ。
「資格あるの?」
「あるよ。」
「退屈した友達国際協会。」
「……」
アイコ。
「ふふっ。」
小さく。
笑った。
ヒナ。
「痛い?」
メイ。
「ううん。」
数秒後。
「今。」
「ちょっと痛かった。」
「大げさ。」
「本当に痛かったもん。」
ヒナ。
ヘアピン。
一つ。
手に取る。
「これ。」
「つけてもいい?」
「うん。」
そして。
数分後。
ヒナ。
メイの肩。
くるっ。
「できた!」
メイ。
すくっ。
鏡へ。
ぱたぱたぱたっ。
見る。
「……」
シンプルな。
三つ編み。
横には。
小さな。
ヘアピン。
派手ではない。
でも。
ちゃんと。
可愛い。
メイ。
目。
ぱぁぁっ。
「……可愛い!!」
声。
少しだけ。
小さい。
でも。
ものすごく。
嬉しそう。
ヒナ。
胸を張る。
「当然。」
「私たちの仕事に。」
「失敗はないから。」
アイコ。
「私。」
「何もしてないけどね。」
「気持ちで参加してた。」
「それ参加って言うの?」
三人。
ソファへ。
戻る。
さっきより。
少しだけ。
近い。
足。
触れる。
肩。
触れる。
でも。
誰も。
気にしない。
アイコ。
膝。
抱える。
その上。
顎。
ちょこん。
「で!」
「次!」
「何するぅぅぅ!?」
ヒナ。
メイ。
一瞬。
顔を見合わせる。
そして。
メイ。
「あっ!!」
「マグカップケーキ!」
「作らない!?」
アイコ。
目。
ぱっ。
「えぇぇぇぇ!!」
「何それ!!」
「作れるの!?」
メイ。
にやっ。
小さな。
得意げな。
笑顔。
知っている人の。
顔。
「へへっ。」
「お母さんに。」
「教えてもらったの!」
もう。
キッチンへ。
向かっている。
「一番おいしいレシピなんだって!」
ヒナ。
アイコ。
同時。
立ち上がる。
「作るぅぅぅぅ!!」
「やろやろやろ!!」
メイ。
振り返る。
そして。
胸。
張る。
「ボスは。」
「失敗しないから。」
アイコ。
即答。
「その通り。」
誰が。
ボスなのか。
もう。
よく分からない。
三人。
キッチンへ。
向かう。
笑いながら。
話しながら。
ごく普通の。
穏やかな。
午後。
友達と。
一緒に。
遊んで。
笑って。
その瞬間だけは。
何もかも。
大丈夫なような。
そんな。
安心した気持ち。
ただし。
三人は。
知らなかった。
同じ頃。
町の。
反対側。
三匹の。
巨大な魚が。
こちらへ。
向かっていた。
そして。
もう一つ。
知らなかった。
これから向かう。
キッチン。
そこでは。
穏やかでも。
普通でも。
快適でもない。
何かが。
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