愛せど報われぬとは、一体何なのだろう。
エスペル邸主宅のプライベート医務室には、神経を宥めるアロマの幽かな薫香と、医療用ゲルの微かに苦い匂いが淀みなく漂っていた。
セリアの長い睫毛が微かに震え、激しい目眩の波とともに、その双眸がゆっくりと押し開かれた。
頭の中はまるで大槌で強打されたかのように耳鳴りが響き渡り、割れるような痛みが頭蓋を苛んでいる。だが、肉体の苦痛よりも先に胸を衝いたのは、息も詰まるような恐慌と、底知れぬ自己への疑念だった。
あのリリスという名の魔神の御前で、自分はあまりにも容易く、尊厳すら欠片も残さず徹底的に叩き潰されたのだ。
リリスの操る時間トポロジーと多次元への干渉能力が、次元そのものを覆す絶対的な暴威であることは疑いようもない。
だが、二機の機体は紛れもなく、等しく太古の神秘たる「遺忘シリーズ」の系譜に連なるはずではないか。
基本性能の隔絶が、巨神に立ち向かう無力な赤子の如き絶望にまで達するなどということが、果たしてあり得るのだろうか。
「セリア……気がついたの? 気分はどう、まだ頭は酷くふらつく?」
ベッドの傍らから、溢れ出る憂いを押し隠しきれない柔らかな声がそっと落ちてきた。
カレナはベッドの縁に腰掛け、冷たく細やかな指先で、この上ない愛惜を込めながら、セリアの額に張り付いた汗ばむ前髪を払い、その熱を帯びた肌を優しく撫す。
戦場の無慈悲を誰よりも骨の髄まで知る遺伝子改造兵士として、カレナは眼前の少女の瞳の奥に広がる迷いと挫折を、一目で看取していた。
オフィウクスを駆って以来、成層圏の死線であれ突破戦であれ、セリアは規格外の超高同調率と神格兵装を以て道を切り拓き、ただの一度たりとも敗北を知らなかった。
しかし、辛うじて積み上げられつつあったその淡い矜持は、実の母であるイレーナの手によって、最も無慈悲で原始的な白兵戦の鉄槌の下、わずか数十秒の間に粉々に粉砕されてしまったのだ。
だが、カレナには分かっていた――これこそが、イレーナが周到に企て、セリアへ敢えて課した残酷極まりない試練であるということを。
セリアは自らの手で、知性機械と人類という二大陣営の間に横たわる、分厚い偏見と憎悪の暗雲を切り払おうとしていた。
しかし、暗黒森林の掟が支配するこの星間時代において、氷を砕く調停者たらんとするならば、双方の鋼鉄の巨獣を等しく震え上がらせ、軽挙妄動を許さぬ絶対的な武力を手にしていなければならない。
どちらの首級をも一瞬で刈り取れる刃を喉元に突きつけて初めて、奴らは静かに交渉の席へと着くのだ。
幾重もの時間軸を数百年にわたり輪廻し、天をも欺く謀略を巡らせてきたイレーナですら、両陣営を完全に屈服させられるなどとは保証できずにいる。
ならば、ほんの数ヶ月前まで単位の取得に悩み、直感のままに戦斧を振るうことしか知らぬ小娘が、五体満足で立ち回れるなどと、いったい何を根拠に思い上がれるというのか。
「……うぅ、私……本当に、惨め極まりないよ……」
宙空でボロ切れのように一方的に打ち据えられ、無様に墜落していった記憶が蘇り、セリアは恥辱と悔恨に耐えかねて手近な羽毛枕を抱え込むと、真っ赤に染まった顔をその奥へ力任せに埋めた。
母が立ち塞がったその冷徹な真意と警鐘を、胸のどこかでは理解していた。
頭ではその重苦しい愛を受け止めていながらも――最愛の肉親に情け容赦なく完膚なきまでに叩きのめされた己の無力さと口惜しさは、鋭い逆鱗となって彼女の目頭を熱く焼き焦がしていた。
「悲しむことなんてないわ……セリア。私がずっと傍にいてあげる。永遠に、ずっと。」
カレナの声は、壊れ物に触れるかのように極限まで微かで、柔らかかった。
だが、水のように穏やかな声音の底には、隠しようもない顫えと抑え込まれた狂気の片鱗が滲んでいた――それは、骨身に染み付いた根源的な恐怖の残滓だった。
兵器として生み出された彼女は、血を流し、世界を壊すことには慣れきっていた。だが先ほど、オフィウクスの残骸から意識を失ったセリアが運び出された瞬間、カレナの理性を繋ぎ止めていた細い糸は千切れ飛ぶ寸前だったのだ。
屋敷の中で完全に暴走しなかったこと自体、彼女がどれほどの自制心を削り取って耐え忍んだのか、見当もつかなかった。
いま、微かに冷え切った医務室内で安神の薫香が静かに満ち、空気はどこまでも濃密に澱んでいた。
セリアは顔を覆っていた枕をゆっくりと退けた。涙の膜を張ったその蒼い瞳が、底知れぬ執着と憐愛に満ちたカレナの視線と、至近距離で絡み合う。
もはや、言葉を紡ぐ者はいなかった。
星間の動乱も機械の謀略も遮断されたこの狭隘な箱庭の中で、二人はただ互いの吐息と脈動を間近に見つめ合っていた。
時間すら意味を失い、それが慰めを渇望するセリアの無防備な前傾によるものだったのか、それとも病的な守護欲に抗えなくなったカレナの衝動だったのか、誰にも判別はつかない――
衣擦れの微かな音を合図に、二人の唇は仄暗い光の中で、何一つ遮るものなく重なり合った。
それは、微かに苦い医療用ゲルの香りを帯びながらも、胸が締め付けられるほどに甘く、温かな口づけだった。
初めは慎ましやかな浅い貪りに過ぎず、互いの呼吸が交錯し、熱い湿り気を帯びた吐息が鼻先と頬を撫でていた。だが次の瞬間、カレナの心の底に押し込められていた恐怖と独占欲が、決壊した濁流の如く一気に噴き上がった。
その冷ややかな手の平が、乱れるセリアの銀白の長髪をすり抜け、少女の華奢なうなじを強く引き寄せる。指先が髪の奥深くに食い込む力には覇道に近い執着が宿り、口づけを急速に、そして深く深く貪り食うように変貌させた。
「ん……っ、ふ……」
セリアの唇から糸を引くような吐息が漏れた。残っていた眩暈は、唇と舌から奔流となって注ぎ込まれる痺れるような快感に呑まれ、掻き消えていく。カレナの口づけは綿密で、貪欲だった。
わずかに開かれた歯列をこじ開け、舌先の奥、甘やかな唾液の最後の一滴まで絡め取り、貪り尽くす。それは砂漠で死に瀕した巡礼者が、最後の甘露を求めて狂い悶える姿にも似ていた。
それは単なる温もりなどではなく、声なき確認であり、魂への刻印だった――彼女がまだ生きていること。その鼓動が力強く打たれていること。そしてその体温が、確かに自らの掌の下に存在しているのだということを。
室内のアロマの香煙は、二人の高まり続ける体温に煽られて一層濃密に立ち籠めていく。
セリアに抗う術はなく、無意識のままにカレナの胸元の衣服をその手で固く握り締め、呼吸のすべてを奪われながら、息の詰まるような柔らかさと慕情の泥濘へと堕ちていった。
いまのセリアは、引き裂かれた魂の空洞を埋めてくれる慰藉を、何よりも飢え求めていた。
無数の死線を潜り抜ける支えとなってきた彼女の信仰が、つい先刻、無残にもへし折られたからだ――オフィウクスのコクピットに座り、神経同調率を極限まで高めさえすれば、いかなる絶望の淵をも乗り越えられるという、絶対的な自負。
古の詩篇に謳われる、苛烈を極めた「星殞の戦」においてオフィウクスを駆り、満天の星々を切り落として大局を覆した曾祖母のように。
自分にもそれができると信じ込んでいた。だが、リリスの無慈悲な鉄拳が、その幼き幻想を粉々に磨り潰したのだ。
病室の空気はさらに粘り気を帯び、重なり合う舌の戯れは、どこまでも深く、途切れることなく続いていく。
セリアの力なく垂れていた両手は、いつしかカレナの細い首筋へと絡め取られていた。もはや奪われるがままの受け身ではなく、そこには拙くも我儘な自意識が宿り、相手の唇を逆に甘噛みし、奪い返そうとする。
彼女は己の輪郭を取り戻したかった。他者の従順と、戦慄と、滾る熱情の中に溺れることで、無惨に踏みにじられた統制感と尊厳を、破片の一つからでも拾い集めたかったのだ。
目の前で自分を愛し焦がれる者を、崩れかけた精神の防波堤として利用することが、どれほど残酷で、どれほど利己的であるかを弁えながらも……カレナが惜しみなく差し出す無条件の包容の中に、自分だけのために誂えられた、絶対的な安寧を見出さずにはいられなかった。
カレナとて、腕の中の少女が抱く挫折と独占欲の入り混じった幼い計算高さに、気づかぬはずがなかった。
だが、自らの胸に激しく不規則に打ちつけられる少女の鼓動を感じるたび、その瞳の奥に宿る冷徹な殺戮本能は、際限のない甘やかしと盲愛の海へと融解していった。
魂の深淵に刻み込まれ、五体を粉々に砕かれても守り抜くと誓った、かけがえのない少女なのだから。
過ぎ去りし幾星霜、光を追うように純真に、盲目なまでの思慕と偏愛を注ぎ続けてくれたのは、他ならぬセリアの方だった。
ならば今、運命の輪が巡り、自らがその底知れぬ深情けを「返上」する番が回ってきたに過ぎない。
セリアが自分を単なる避難所として扱おうと、脆さを吐き出す器として利用しようと、果てにはこれからの歳月のすべて、自らの全存在を我が儘に貪り尽くそうと――カレナにとっては、至上の喜びでしかなかった。
かつて、殺戮兵器でしかなかった自分を執拗に追い縋ってくれたのがセリアだったのなら。いま、セリアの意のままに身を委ね、底なしに求められることの、一体どこに躊躇う理由があるというのだろう。
カレナは誘われるままに身を乗り出し、柔らかいシーツの上に両肘をついて、セリアの華奢な肢体を自らの影と熱気の下へと完全に閉じ込めた。
身じろぎする少女の、熟れきった蜜桃のように紅潮した柔肌を見下ろすカレナの、氷の刃の如き双眸は完全に光を失い、焦点が定まらなくなっていた。
セリアは、息を呑むほどに美しかった。銀白の髪が放つ清らかな冷たさと、敗北の淵で見せる無防備な脆さ、そして情欲に揺れて目尻に浮かぶ水晶の涙。
そのすべてが、一呼吸すら見逃すことを惜しませるほどに彼女を狂わせる。
胸の奥で狂乱する偏執が耳朶の奥で喚きたてていた――もし、この少女の唯一無二の伴侶として認められるのなら、たとえその代償が、イレーナの掌の上で使い潰される死線知らずの駒となり、掃除屋に成り果てることだったとしても、喜んでその毒杯を干すだろう。
張り詰めていた理性の糸が、濃密な空気の中でぷつりと音を立てて千切れた。カレナの手が落ち着きを失い、薄い病衣の生地を滑る指先が、微熱を帯びながら、より危険で秘匿された境界の奥へと這い寄っていく。
一歩先へ踏み込みたかった。最も直接的で、不可逆のやり方で、二人の関係を既成事実として刻みつけたかった。
たとえこの先、正気に戻ったセリアが身を引こうと怯えようとも、その身体に決して消えぬ烙印を焼きつけておきたかったのだ。
セリアが禁断の果実を口にする、その最初の相手になりたかった。
這い寄る手が最後の境界線を踏み越えようとした刹那、セリアの全身がびくりと跳ね上がり、残された理性が悲鳴を上げて、慌てて伸ばした両手でカレナの前腕を必死に押さえつけた。
「カ、カレナ……やめて……っ、私たち、まだそんな関係じゃ、ない……!」
セリアは肩を激しく上下させて喘いだ。過負荷に苛まれた身体は、酸素の欠乏と羞恥の熱に包まれて淡い桜色に染まり、薄い衣の下の胸元が波打つように激しく上下している。
まな板の上の鯉でありながら、必死に奥歯を噛んで抗うその生々しい姿は、カレナの喉を酷く渇かせ、燻る欲望に油を注いで狂わせた。
「そんな関係じゃない……? じゃあ、今の私たちは何なのよ?」
カレナは退くどころか、その重心をさらに低く沈め、顫える冷ややかな吐息をセリアの火照る耳朶へと吹きかけた。
「先に手を出してきたのは、そっちじゃない……私の後ろを追いかけて、好きだって言ってきたのも貴女じゃないの……なのに、どうして最後の最後で……このゲームに惨敗するのが、私なのよ……?」
嫉妬と卑屈が綯い交ぜになった口惜しさが、カレナの胸を鋭利に抉り取った。
かつての自分は感情を去勢された冷血な兵器であり、セリアの愛を無価値なゴミのように切り捨てていた。
だが、この暖かな陽光に溶かされ、人を愛することの痛みを真に知ったとき、振り返ればセリアの周囲には、得体の知れぬ野心を抱いた有象無象が群がっていたのだ――底知れぬ実の母親、片時も離れぬ義妹、果ては死を偽装して姿を消したあのジュリアンに至るまで。
それが彼女を発狂するほどに苦しめ、セリアに近づくあらゆる者を八つ裂きにしたいという衝動を幾度となく掻き立てていた。
頬に落ちてきた熱い雫に気づき、セリアは息を呑んでカレナの涙に濡れた瞳を見つめ、罪悪感のあまり全身を強張らせた。
火をつけたのは自分だ。相手をこの感情の泥沼に引き摺り込んだのも、自分自身なのだ……正論による自責がセリアの口を塞ぎ、彼女は無様に横を向き、カレナの焦がれるような視線から逃れるように視界を逸らした。
明確な答えを口にすることが、どうしてもできなかった。
恋人という一線を踏み越えてしまえば、今にも崩れそうな世界が完全に瓦解してしまうのではないかという恐怖があった。
リリスに無惨に蹂躪されたばかりの今のセリアには、人生にこれ以上の取り返しのつかない変数が生じることなど、恐ろしくて耐えられなかったのだ。
少女の怯えと逃避を察し、カレナの胸には引き裂かれるような酸鼻が広がった。拒絶されていると知りながらも、諦めて手を放すことなど到底できはしない。
カレナは凭れかかるように身を沈めた。もはや侵略者の覇気はなく、ただ痛々しいほど優しく、微かな罰を与えるようにセリアの震える下唇を甘く食み、曖昧に途切れる嗚咽とともに、唇の隙間から細い乞いを漏らした。
「お願いだから……もう一度だけでいい……昔みたいに、私だけを愛してくれない……?」
頂点を極めた戦士であり、征服と破壊を本能とする彼女が、硝煙なき感情の戦場において、ただの一人の少女に完全に武装解除されていた。
もしセリアが、ほんの少しの偏愛でも施してくれるのなら、一度きりでいい、それを藁に縋る思いで骨の髄まで抱き留め、二度と手放しはしないという確信があった。
けれど今……身を竦める少女を前に、愛の狂気に堕ちた彼女はすべての牙を収め、涙と口づけの狭間で、かつて自ら投げ捨てたはずの温もりを卑屈に乞うことしかできなかった。
セリアは、カレナの抱く息の詰まるほどに重い愛情を、肌の芯まで思い知らされていた。
その感情は、イレーナの歪んだ母性よりも遥かに手に負えないものだった――イレーナの執念は、数百年の輪廻を超えて失われた過去を埋め合わせようとする贖罪に過ぎない。
しかし、カレナの双眸に燃えているのは、自分を骨まで喰らい尽くし、跡形もなく我が物にしようとする剥き出しの狂気そのものだった。
崩壊寸前の女の相貌を見つめ、セリアはとうとうその柔らかな心を折り曲げた。小さく息を漏らし、華奢な腕を伸ばすと、優しく、けれど解けぬ強さでカレナの首を抱き寄せ、その頭を自らの鎖骨の窪みへとそっと押し当てた。
長きにわたり人ならぬ兵器として蔑まれ、化け物として生きてきたこの女に、真実の体温と救いを差し伸べてやりたかった。
だが、その抱擁を与えながらも、セリアの唇は固く結ばれ、最後まで沈黙を貫き続けた――カレナが最も渇望する誓いの言葉だけは、決して口にしようとはしなかった。
「沈黙を選ぶってことは……私を拒絶するってこと?」
腕の中の少女がそれ以上の答えを返さないことを悟り、カレナは自嘲するように口元を歪め、呆れたように笑い声を漏らした。だが、堰を切った大粒の涙は留まることなく、セリアの白い肩口へと無残に零れ落ちていく。
「どうして……どうしてよ……」
カレナは自らの胸元の布地を爪が食い込むほどに強く掻き抱いた。愛する者に突き放され、心を素手で引き裂かれる痛みが、改造された神経ですら麻痺させられぬほどの激痛であるなど、彼女は知る由もなかったのだ。
今の自分が息も絶え絶えになるほど痛むのなら……過去の数年間、冷酷な言葉で幾度突き放されても、なお笑って背中を追い続けてくれたセリアは、どれほどの孤独な痛みに耐え忍んできたというのか。
――これこそが、因果の巡りという名の報いなのかもしれなかった。
カレナは僅かに身体を起こして深く息を吸い込み、最後の尊厳すら投げ打つように、再び沈み込んだ。漆黒の濡れた波打つ長髪が崩れ落ち、セリアの両頬を覆い尽くして、二人の視界を狭く昏い密室へと隔絶していく。
傷ついた獣のように、彼女は狂乱のままにセリアの冷ややかな唇へ食らいつき、貪るような力任せの口づけを繰り返した。
手放したくはなかった。ここで幕を引くことなど到底呑み込めない――この口づけでセリアを永遠に縛り付け、彼女が頷くまで、どこまでも力ずくで強要し続けてやりたいという病的な衝動すら頭をもたげていた。
背水の陣を敷いた最後の大博打であり、兵器として生きてきた彼女に残された、我が身を顧みぬ唯一の我が儘だった。
あの時間へ、どうしても帰りたかったのだ――日差しが斜めに窓辺を照らす穏やかな午後、セリアがソファに横座りして東野圭吾の推理小説を静かにめくり、その傍らで自分が所在なげに、不器用な手つきでマフラーを編んでいた、あの静謐な時間へ。
「……もう少しだけ、時間をちょうだい……お願いだから。」
息継ぎのわずかな隙間に、セリアはカレナの震える背中を優しく撫でさすり、祈るような柔らかな声を落とした。
彼女は、いまのカレナの精神状態が危うい均衡の上にあることを見抜いていた。
それは遺伝子を弄ばれたスーパーソルジャー特有の認知の乱れと、感情過負荷による反動なのかもしれない――「刺激によって容易く発狂へと至る欠陥兵器」という残酷な噂がセリアの脳裏を過り、彼女の胸中を占めたのは、ただひたすらな庇護と胸を締め付ける憐憫だった。
宥めるように囁きかける少女の慈愛に触れ、カレナの胸に渦巻いていた暴虐と屈託は、冷水を浴びせられた熾火のように、静かにその熱を失っていった。
「……あまり、待たせないで。」
カレナは子供のように頬をわずかに膨らませ、胸の内の口惜しさと妥協を不器用に誤魔化した。
だが、張り詰めていた神経は、精神の過負荷がもたらす激しい疲弊に抗うことはできなかった。鋭い牙のすべてが瞬く間に引っ込められ、彼女はセリアの柔らかく温かな胸元へと素直に頬を寄せた。
少女の刻む穏やかで確かな鼓動に耳を澄ませながら、警戒を解いた黒猫のように重い瞼を閉じ、やがて規則正しい、静かな寝息を立て始めたのだった。
最近、別作品の連載と並行して、息抜きに『魔界村』に手を出してしまったのですが……( ˙꒳˙ )
昔の人がこれをプレイしていたなんて、マジで信じられません(;´Д`)
製作者の方、私の人生で出会った中でダントツでドS&性悪すぎません……!?(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)
プレイするだけで10年分の脳血栓を引き起こしそうな、あまりにも悪意に満ちた鬼畜ゲーで、本気で震えました(っω<`。)ヒィィ…
BY 酣睡 台湾桃園 20:57 PM




