気だるい母親、言うことを聞かない悪い子にはお仕置きよ?
夜明け前のエスペル邸。その天空は、磨き上げられる前の冷徹なサファイアのように、天頂の最も深き濃紺から地平の縁の脆い霜白へと、極めて精緻なグラデーションを描いていた。
クリスタルの微光を帯びた薄い朝霧が、聳え立つ尖塔と反重力防護リングの間を音もなく漂う。邸宅上空を覆う光学迷彩力場は、初紅の曙光を微かに屈折させ、水面を渡る波紋のような淡い紫の残光を揺らめかせていた。
遥か地平の果てでは、生まれたての日光が静かに夜の帳を引き裂き、温もりを孕みつつも冷気を帯びた淡金を、波打つ雲海の頂へとゆっくりと塗り広げていく。
空は凍りついたかのように静寂に包まれていた。鳥の羽音一つなく、ただ極高軌道の防衛マトリクスが通過した軌跡だけが、仄暗い光の中に現れては一瞬で消え去る。
迫り来る嵐の予兆を孕みながら、エスペル邸はその澄み渡り、冷え切った、荘厳なる払暁の静寂の中に佇んでいた。
「私たち……本当にうまくいくのかな?」
オフィウクスの冷たく狭隘なコクピットの中で、セリアは通信チャンネル越しに不安の色を滲ませた声を送った。
実のところ、レオのコクピットに座るルネの胸中にも、払拭しきれない重苦しい暗雲が垂れ込めていたのだ。
リリスの存在を知って以来、彼女の心には巨大な鉛が居座り続けていた――もしイレーナがすべてを見通しているのだとすれば、この完璧に見える未明の強行脱出すら、最初からあの女の描いた盤上の筋書き通りなのではないか?
つまり、二人を勝手に出撃させること自体が、イレーナにとって都合の良い布石なのではないか、と。
純粋な戦略的観点から言えば、「屋敷から一歩も動かない」ことこそが最も安全であり、防衛論理に適った選択だった。ならば、今こうして打って出る行為は、自ら罠に飛び込むに等しい。
だが、留まり続けることが形を変えた幽閉に過ぎないのなら、鳥籠の中で飼い殺されるのと何の違いがあるというのか。どちらに転んでも行き止まりである以上、前を向いて突き抜ける以外に道は残されていなかった。
「もう四の五の言ってられないわ、今の私たちには突っ切るしか選択肢がないの! それに……あの損することの一切嫌いなママよ? 本当に止める気なら、私たちがコクピットに入ることすら許さなかったはずだわ。今こうして何の邪魔も入らないってことは、少なくとも黙認されてるってことよ――なんたって、あの屋敷でママの目を盗めることなんて何一つないんだから。」
ルネの凛とした断固たる声が通信帯域を震わせ、迷うセリアの視界を的確に切り拓いた。深く考えれば、まさにその通りだった。
イレーナのあの底知れぬ掌握力をもってすれば、二人の行動を叛逆と見なした時点で、防衛システムによって即座にピンポイントで制圧されていたはずだ。
障害なくここまで来られた以上、これは暗黙の了解による放任であると賭ける他なかった。
通信の向こうで互いの覚悟を確かめ合い、陣容を整えた瞬間、地下格納庫の深部から重力バッファー隔壁の重厚な地鳴りが轟き始めた。
けたたましい警報ブザーの咆哮とともに、眩い黄金色の誘導灯が一斉に点灯し、エスペル邸の広大な地下格納庫が激しく稼働を開始する。
厚さ数メートルに及ぶ合金フロアが左右へと滑らかに開き、その下から天空を四十五度の角度で睨み付ける巨大なリニアカタパルトが姿を現した。
オフィウクスの重厚かつ威容を誇る機体は、レールスライダーの上に寸分の狂いもなく固定され、胸部コアから放たれた深遠な蒼光が、配管を通じて奔流の如く激しく脈動する。
その背後にはルネの駆るレオが控え、装甲表面には冷徹な軍用防護力場が展開されていた。
「射出カウントダウン、スリー、ツー、ワン――」
ドォォォンッ!
屋敷の基礎構造が瞬時に激しく軋みを上げ、鋼鉄すら融解せしめる凄まじい推進力がカタパルトの底部から爆発的に解き放たれた!
二条の閃光は夜を引き裂く雷霆の如く、鼓膜を劈く衝撃波を伴って、未明の脆き霜白の朝霧を粉々に打ち砕いた。
オフィウクスの背面推進器から鮮烈なピンク色のエネルギーが猛烈に噴流し、大気を切り裂く圧倒的な突風を纏って天空へと垂直に駆け上がる。
冷冽なサファイアの天蓋を力ずくで食い破り、機体は振り返ることなく、うねる雲海の彼方、外海域へ向けて一直線に疾走した。
だが、確信に満ちていたはずの夜明けの突囲は、雲海を抜けたまさにその瞬間、想像すらしていなかった招かれざる客と正面から衝突することとなった。
朝靄の晴れぬ冷酷な天空に、リリスは太古の神の如く静かに宙に浮かび、待ち構えていたのだ。
機体表面を覆う多次元の光彩を放つ時間トポロジー装甲が、払暁の微光を受けて空間そのものを歪めるような揺らめきを放っている。
その巨躯は、雲海を突き破ってきた二機を見下ろすように、高度一万メートルの航路の中央にただ静然と佇んでいた。
直後、オープン通信回線から、眠気を帯びた、成熟した女性特有の気だるく艶やかなイレーナの声が響き渡った。
『これ以上待たされたら……コクピットの中で眠ってしまうところだったわ。まさかあの子たち、出撃するまでにここまでグズグズ手間取るなんて思わなかったもの。』
その何気ない軽口は、セリアとルネの背筋に氷を突き立てるような戦慄を一瞬で走らせた。
言葉の意味はあまりにも明白だった――イレーナはこの脱出劇を最初から予見し、とうの昔にリリスを飛翔させ、悠々と宙空で待ち伏せていたのだ。
彼女たちが屋敷の中で怯え、探り合い、時間を浪費していたせいで、ここまで待たされる羽目になったのだと。
『ママ……どうして、ここにいるの?』
ルネは必死に声を平静に保とうとしたが、操縦桿を握る両手は抑えようもなく震えていた。
エースパイロットである彼女だからこそ、眼前に横たわる絶望的な戦力差を誰よりも痛感していた。
自身の専用機であるレオは強力な電磁力場兵装を誇るが、因果律と時間の流れを自在に干渉するリリスの「時間トポロジー装甲」の前では、マクロな物理法則や電磁撹乱など赤子の戯れに過ぎない。
圧倒的な無力感が一気に押し寄せ、ルネの脳裏にはいっそ部屋に戻って二度寝でもしてしまいたいという自暴自棄な諦念すら過った。
だが、ルネの心に退却の二文字が浮かんだ、まさにその刹那――
『外に出る気になったのなら、無傷で引き返せるなんて思わないことね。』
リリスの天を覆うほどの巨大な機械巨腕がゆっくりと持ち上がり、冷え切った漆黒の手の平が、真っ直ぐにレオへと向けられた。
主光学センサー越しに、ルネはリリスの掌の中心に穿たれた重砲口をはっきりと視界に捉えた――合金フレームに支えられたその砲口径は、全高十六メートル級の通常兵装が携行するライフルなど比較にならないほど無骨で巨大であり、周囲のエネルギーリングは目に見える速度で眩い白熱光を狂ったように収束させていく!
『二人に、この先吹き荒れる嵐へ立ち向かう資格があるのかどうか……私がこの手で確かめさせてもらうわ。その前に、母親として、しっかりとお仕置き(教育)をしてあげなくちゃね。』
ウィィィン――!
リリスのジェネレーターが空間を極限まで圧縮し、耳を劈く低周波の咆哮を上げた。
刹那、極太の光柱と化した粒子加速砲が、すべてを消滅せしめる超高熱の噴流を伴い、限界を突破した光速の域で天空を両断し、レオめがけて一直線に放たれた!
ルネの戦闘直感が神経ネットワークの中で悲鳴を上げる。リリスの前では、いかなる通常の回避機動も時間予知によって封殺される。生き残る道は、正面から受け止める以外にない!
「全出力・電磁偏向防御マトリクス――展開ッッ!!」
ルネは奥歯を噛み締め、レオの全身を巡るアルファクリスタルのエネルギーラインが一瞬にして爆発的なエメラルドグリーンの光彩を放った。
重低音の唸りとともに、幾重もの目に見える強磁性偏向スクリーンがレオの目前に積層展開され、荒れ狂う電磁アークが編み上げる巨大な菱形の力場シールドへと結実する。
ズドォォォッ――!
灼熱の白光を放つ粒子の濁流が、万鈞の質量となって電磁スクリーンへと容赦なく激突した。
高度一万メートルの宙空で二つの極限エネルギーが真っ向から衝突し、視界を焼き尽くすほどの衝撃波を撒き散らす。
電磁力場は超高温と超高密度の粒子流に洗われて激しく歪曲し、連続する耳障りな雷鳴を轟かせた。ルネのコクピット内には限界過負荷の警報がけたたましく鳴り響き、凄まじい運動エネルギーが緩衝システムを突き破ってレオの機体を数百メートルも力づくで押し戻し、関節部から激しい火花を散乱させる。
飛散した粒子流は、全方位へと降り注ぐ無数の致命的な光条となって狂乱の如く四散した。
幾重もの激昂する光線が眼下のエスペル邸の広域防御力場を容赦なく叩き、鏡のように透明だった防護ドームには真紅と深緑が交錯する激しい波紋が幾千と刻まれ、宙に焼き焦げた痕跡を残しては、エネルギーの減衰とともに残雪の如く薄れて消えていく。
それは単なる牽制の一撃に過ぎないというのに、レオの電磁シールドを完全に過負荷の限界へと追い詰めていた。
リリスは荒れ狂う余波の中に浮かび、その優雅な姿勢をミリ単位すら崩していなかった。
「ルネ――ッ!」
粒子砲の激流にレオが数百メートルも弾き飛ばされ、装甲から激しいスパークが噴き出す光景を目にした瞬間、セリアの思考は真っ白に染まり、本能がその身体を突き動かした。
自分の未熟な技術でイレーナに挑むなど蟷螂の斧に過ぎないと知りながらも、たとえ一秒の猶予を稼ぐためだけに過ぎなくとも、あの神の如き怪物に妹が嬲り殺されるのを黙って見ていることなど絶対にできなかった。
アスクレピオスシステム――完全解放。
ギィィィン――!
オフィウクスの中心に座す暗黒物質リアクターが、暴走寸前の深紅の奔流を噴出させ、神経同調率は限界点へと一気に跳ね上がった。
空気を切り裂く金属音とともに、背面の拘束フレームが弾け飛び、二振りの重厚な実体剣がその両手に収まる。
ナノエッジに極超短波の熱輻射が激しく励起され、刀身はまるで流れる溶岩のような灼熱の赤光を放ち、その超高熱は大気すらも歪ませ、陥没させていく。
オフィウクスは上空一万メートルで空間跳躍じみた赤き残影と化し、二振りの刀を必殺の十字に交差させ、天空を両断する凄まじい運動エネルギーを纏ってリリスの巨大な機械両腕へ向けて斬りかかった!
ガギィィィン――ッッ!
それは通常の金属衝突音ではなく、空間そのものが軋みを上げる重苦しい衝撃音だった。
通常の重装甲を一瞬で溶断せしめるはずの超高温の双刀がリリスの装甲に激突した刹那、刃の周囲の次元が不気味な多次元光の波紋を放った。
時間トポロジー装甲が、零点数マイクロ秒の間に微視的な「因果のズレ」を発生させたのだ――刃は確かに装甲を捉えていた。
しかし、ダメージが確定するはずの「時間軸の位相」が強制的に書き換えられ、受け流されたのだ。溶岩の如く熱された双刀は装甲の表面を虚しく滑り落ち、薄い白線一本すら刻むことはできなかった!
『あらあら……私のセリア、ずいぶんと迷いなく動けるようになったのね。』
オープン通信から、イレーナの蕩けるように甘く、底知れぬ溺愛に満ちた声がゆったりと響いた。
『でもね、母親に刃を向けるような聞き分けのない子は……ママ、好きじゃないの。ちゃんとお仕置きしてあげないとね。』
その柔らかな囁きは、この瞬間、最も冷酷な呪詛となって神経同調ラインを伝い、セリアの全身の神経を侵食した。
絶対的な恐怖に全身が凍りつき、理性は今すぐ距離を取り、ルネの手を引いてこの神の支配する宙域から逃げろと警鐘を乱打していた!
生き残るための本能に突き動かされ、セリアはオフィウクスの空間干渉能力を強引に励起させた。機体周囲のエネルギーを臨界突破させ、リリスの直前に直径数百メートルに及ぶ局所的重力井戸を一瞬にして構築、超重力の特異点によってこの巨神を強引に拘束しようと試みる!
だが、彼女は最も絶望的な物理法則を見落としていた――時間軸を自在に操るリリスの御前において、重力も空間も、時間に付随する下位の事象に過ぎないのだ。
『ママの前で重力遊び? 本当に無邪気で可愛らしいこと。』
天を覆うリリスの巨大なマニピュレーターが、虚空を軽く握り締めるように動いた。
圧縮されていた重力井戸は瞬時に反転・歪曲され、オフィウクスは敵を足止めするどころか、暴虐な空間の逆引力に引きずり回され、投げ出された小石のようにリリスの冷徹無比なフェイスマスクの眼前へと真正面から引きずり倒された!
三十メートル級の神の巨躯の前に立つ十六メートルのオフィウクスは、まるで巨人の前に引き摺り出された幼子そのものだった。
リリスの多次元装甲に覆われた重拳一つだけで、オフィウクスの上半身全体に匹敵する質量を誇っている。
次元そのものが異なる体格差は、息を詰まらせるほどの絶望を突きつけていた。
セリアが無重力の眩暈から立ち直る間もなく、リリスの右腕が虚空に残酷な軌跡を描いた。
山が落ちてくるような鋼鉄の拳が、大気を爆砕する暴風を伴い、一切の小細工なしに、オフィウクスの胸部コクピットへ向けて真っ直ぐに叩きつけられた!
ドグゥゥゥンッ――ッ!!!!
何層もの防護力場を易々と貫通した純粋な物理衝撃が、胸部装甲のド真ん中を正確無比に捉えた!
「うあああああっ――!!」
コクピットの中でセリアは悲痛な叫びを上げ、全方位シートの上で全身を激しく打ち据えられた。内臓を生身で高速列車に衝突させられたような衝撃に、視界が一瞬で血のような真紅に染まる。
警報が狂ったように鳴り響く中、堅牢を誇る複合装甲は無惨なまでに窪み、金属の亀裂からは電弧と冷却液が鮮血の如く噴き出した。
オフィウクスを駆って以来、規格外の同調率と圧倒的な機体性能によって、いかなる戦場でも勝利を収めてきたセリアであったが――いま、この本物の魔神の前では、オフィウクスはただの脆い玩具のように蹂躪されていた。
『やんちゃな子ね。でも、これはまだ最初のレッスンよ。』
イレーナの優雅で気だるげな声が、一方的な蹂躪の幕開けを告げるように再び響いた。
言葉が終わるよりも早く、リリスは体勢を立て直す隙を一切与えなかった。
三十メートルの巨神は、その質量からは信じがたい俊敏さで左手を伸ばし、鋼鉄の五指が万力のようにオフィウクスの首元を鷲掴みにすると、十六メートルの機体を宙空高く軽々と吊り上げた!
そして、リリスの右拳が暴風雨の如き重杭打機と化し、最も無慈悲で原始的な徒手格闘による滅多打ちが始まった!
ドガッ! ボゴッ! ドンッ!
一撃目のアッパーがオフィウクスの下顎を粉砕し、フェイスマスクの半分が吹き飛んで光学センサーが盲目の閃光を爆発させる。
二撃目のフックが合金フレームを軋ませ、右肩の武装ラックが関節ブロックごと力づくでへし折られ、断裂したエネルギーパイプから蒼い火花が狂乱の如く噴き出した。
三撃、四撃……重く鈍い破壊音が間断なく空に木霊する。すべての打撃は中枢の生命維持ブロックを正確に外しつつも、オフィウクスの四肢の関節、姿勢制御バーニア、そして外層装甲を余すところなく凹ませ、罅割れさせていく!
「カハッ……あ……っ!」
神経同調の痛覚フィードバックにより、セリアは全身の骨が粉々に砕かれたような激痛に襲われ、冷汗を滝のように流しながら口元から一筋の血を滴らせた。
最後に、リリスの巨大な手が首元を放すと同時に、隕石の衝突にも似た重厚な回し蹴りが、オフィウクスの無惨に破壊された胴体へと容赦なく振り抜かれた!
ズドォォォンッ!
オフィウクスは火花と黒煙を撒き散らす糸の切れた凧のように、数千メートル彼方へと回転しながら吹き飛ばされ、システムの大半が赤く機能停止したまま、眼下の雲海へと無力に墜落していった。
『ルネ、受け止めなさい。』
通信回線から、イレーナの息の乱れ一つない、氷のように静かな命令が届く。
『……セリアッッ!!』
息の詰まる戦慄から弾かれたように我を取り戻したルネは、歯が砕けんばかりに噛み締めた。迷う余地などなかった。
レオの推進力を限界まで引き絞り、機体から暴烈な金蒼の噴流を噴出させると、雲を切り裂く黄金の稲妻となって、黒煙を引いて落下するセリアの機体へ向けて死に物狂いでダイブした!
ルネの思考は一瞬、空白に呑まれていた。
オフィウクスとの同調率200%を誇り、規格外の超絶武装を操り、これまでのあらゆる死線を勝ち抜いてきたあのセリアが……ほんの数十秒の間、純粋な肉弾戦のみによって、ここまで屈辱的に完膚なきまで叩き伏せられるなどと。
だが、さらにルネの背筋を凍らせたのは――もしあの場にいたのが自分だったなら、レオの装甲では最初の二撃にすら耐えられず、コクピットごとミンチにされていたという冷酷な事実だった。
リリスの基礎出力は、あまりにも常軌を逸し、あまりにも絶望的だったのだ。
複雑な兵装も、破壊的な光線すら必要としない。あの三十メートルの神躯が振り抜く鋼鉄の拳の質量と運動エネルギーだけで、通常戦艦の主砲や重実体弾を遥かに凌駕しているのだから。
ルネの心臓は早鐘のように打ち鳴らされていた。それは、母イレーナという存在に対する、魂の底からの恐怖と畏怖だった。
今この瞬間、彼女はようやく理解したのだ――なぜこのエスペル邸が、動乱の星系において数百年もの長きにわたり君臨し続けられたのか。
なぜ星網を支配する軍閥や政要、財閥の首魁たちが、「イレーナ・エスペル」の名を耳にしただけで骨の髄まで怯え竦むのかを。
眼前の母と、彼女の駆る魔神は、私設艦隊を組織しようと、通常戦力をどれほど集めようと、決して抗うことのできない「歩く天災」そのものだったのだ。
過負荷を告げる警告音が鳴り響く中、レオは高度一万メートルの雲海の縁でオフィウクスの落下軌道へと強引に割り込み、両腕の電磁バッファーフィールドを全開にして、火花と黒煙を吹き上げる蛇夫座の機体をその腕の中へとしっかりと抱き留めた。
最近、大型トラックを運転して人を異世界へと送り届ける女性ドライバーが主人公の小説を書いています。
個人的にこの設定がかなり気に入っていて、しばらくの間はこちらの作品に少し多めのエネルギーを注ぐことになるかもしれません。
思えば、私はヒロインに裕福な実家や恵まれた家柄というバックボーンを持たせるのが好きなようです。
というのも、物語を進めていく中で資金難などの問題が発生すると、その後の展開をフォローするのが何かと難しくなってしまう気がして。
たとえば新しい装備を揃えるのにもお金がかかりますし、その後の様々な出来事に対処するにも一定の資金的な裏付けが必要になりますよね。そうしたお金の出どころを一から描写するのは少し骨が折れるので、いっそのこと最初からお金持ちという設定にしてしまった方が早いんじゃないかと。
……これも私のちょっとした手抜き(横着)なのかもしれませんね(笑)。
By. 酣睡 台湾・桃園 21:48 P.M.




